マンションの売却損が出ても大丈夫?利用できる控除の条件と方法を知っておこう

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マンションの売却損とは?利用できる控除の条件と方法を知っておこう

マンションなどの不動産を売却した際、利益が出る場合もあれば損が出る場合もあります。しかし、売却による損が出る場合、できるだけその損失を少なくできるに越したことはありません。

そこで、この記事ではマンションを売却して損が出た場合に適用できる控除や特例をわかりやすく説明します。ここで説明する控除や特例などを適用することで、売却損をいくらかでも補うことが可能です。

また、マンションを売却して売却損が出てしまった場合だけでなく、マンション売却を検討している人で損が出たかどうかわからない場合も、予め知っておくと安心です。この記事の内容を参考にして、万が一損が出た場合に備えてください。

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【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。

マンションの売却損について

マンションの売却損について

最初に、マンションを売却した際の売却損について説明します。マンションの売却損とは、売却した価格が安いか高いかで決まるわけではありません。ここでは、マンションの売却損とはどのようなものかを詳しく見てみましょう。

売却損とはマンションを売却して出た損失のこと

売却損とは、不動産をはじめとした資産を売却した際に出る損失のことです。売却は広く譲渡に含まれるため、売却損のことを譲渡した際の損失という意味で譲渡損失と呼ぶこともあります。

よって、マンションの売却損とは、売却をして出た損失のことです。通常、売却損はマンションを購入した額よりも安額での売却になった場合に多く発生します。

一方、売却した際に出た利益のことは、売却益(譲渡益)と呼びます。一般的に不動産などの資産を売却して出た利益に対しては譲渡所得税が課税されますが、利益が出なかったり売却損が出たりした場合は課税されません。

売却損が出ると所得税・住民税を軽減できる

不動産や株式以外の資産を売却した際の利益(譲渡所得)は、給与所得などほかの所得と合わせた総合所得として課税されます。しかし、不動産を売却した際の利益は、給与などのほかの所得を分けて課税されるため、別に計算しなければなりません。これを「分離課税」と言います。

よって、通常であればマンションを売却した際に損失が出たとしても、譲渡所得税がかからないだけで、給与などの所得に対する課税とは別になるため何ら影響がありません。

しかし、長期譲渡所得(対象となる不動産の所有期間が売却時に5年を超える場合)になる居住用の不動産を売却した際に生じた損失については、一定の要件を満たせば給与所得などのほかの所得との損益通算をすることが可能です。

損益通算の順番は、まず所得税が控除され、それでも控除しきればかった場合は住民税が控除されます。

最長4年間の所得税と住民税を軽減できる

譲渡損失の損益通算・繰越控除の仕組み

「居住用物件であること」や「売却までの所有期間が5年を超えている場合」など、一定の要件を満たしたマンションの売却損をほかの所得税などから控除しても1年分ではしきれない場合があります。そのような場合は、売却した年の翌年以降、3年間に渡って繰り越し控除することが可能です。

よって、マンションを売却して多大な損失が出た場合は、売却した年と合わせて最長で4年間、ほかの所得に課せられる所得税や住民税から控除することができるため、売却損に対するいくらかの補填になります。

【監修者コメント】
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所有期間が5年以下の場合は控除ができません。これは業者が転売を繰り返すなどした場合に控除が適用されないようにするためです。

売却損の計算方法

売却損の計算方法

次に、売却損の計算方法について説明します。先に述べた通り、売却損が出たかどうかは、対象となるマンションを購入した額と売却した額から算出されますが、その差額だけで決まるわけではありません。

マンションを売却した額から、購入時のマンションの代金だけでなく、購入にかかった諸費用や売却にかかった諸費用を差し引いてマイナスになれば売却損が出たと判断されます。

取得費とは、マンションなどの不動産を購入した際にかかった費用で、譲渡費用とは売却する際にかかった費用です。取得費には、マンションを購入した際に支払った代金(マンションの購入代金)も含まれます。

よって、売却損の計算、つまり課税される譲渡所得が出たかどうかの計算式は、次の通りです。

売却損(譲渡所得)=売却で得た代金-(取得費+譲渡費用)

マンションの購入費だけでなく、購入時や売却時の費用が多額にかかっていれば、譲渡損失が発生しやすくなります。

マンションの売却損が出た際に利用できる特例

譲渡損失が出た場合のフローチャート

前述の通り、マンションなどの不動産を売却して売却損が出た場合は、必要な条件を満たした状況であれば、本来ならば分離課税される不動産の譲渡所得を給与などのほかの所得と合わせた通算損益をすることが可能です。これにより、ほかの所得に課せられる所得税や住民税が減額されることになります。

このほかにも、マンションの売却損が出た場合に利用できる特例や控除があります。ここでは、どのような控除や特例があるのかを見てみましょう。

買替え時に利用できる特例

マンションの売却損が出た場合に適用できる特例のひとつとして挙げられるのが、マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例です。

この特例は、居住していたマンションを売却して新しく住居を購入した際に損益が出た場合に適用でき、損益分をほかの所得から控除することができます。

適用するために満たさなければならない要件は、おもに次の通りです。

  • 居住用として使っていた家であること
  • 家の所有期間が5年を超えていること
  • 適用できるのは、敷地面積500平方メートル以内の部分まで
  • 前に居住していた家の売却の場合は、住まなくなってから3年目の年末までに売却すること
  • 売却した年の前年の1月1日から翌年の年末までに次の家を購入すること
  • 新しく購入した家に、購入した年の翌年の年末までに入居、または入居見込みであること
  • 新しく購入した家は、床面積が50平方メートル以上であること
  • 返済期間が10年以上の住宅ローンを利用して新しい家を購入すること
  • 所得の総額が3,000万円以内であること

住宅ローンの残債がある自宅を売却した際に利用できる特例

次は、住宅ローンの残債がある家を売却して売却損が出た場合の特例(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)です。この特例も、適用するためには、おもに次のような要件を満たさなければなりません。

  • 居住用として使っていた家であること
  • 家の所有期間が5年を超えていること
  • 適用できるのは、敷地面積500平方メートル以内の部分まで
  • 売却する前日の時点で、住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること
  • 所得の総額が3,000万円以内であること

この特例を適用して損益通算できる額は、家を売却する前日の時点で残っている住宅ローンの額から、売却した代金を差し引いた金額です。

5,000万円の住宅ローンを組んで6,000万円で購入した家の売却額が2,000万円だった場合、取得費や譲渡費用を計算に入れなければ売却損は4,000万円になります。

しかし、損益通算できる額は、売却した時点での住宅ローンの残りの額から売却額を差し引いた額になりため、この例でローンが2,500万円残っていた場合、2,500万円-2000万円=500万円が損益通算できる額になります。

住宅ローン控除も併用可能

居住用の家を売却した際に出た売却損をほかの所得と通算損益できる特例は、住宅ローン控除の特例と併用可能です。両方の特例を使えば、より控除できる額が多くなります。

ただし、売却損の通算損益で所得税が全額控除された年は、住宅ローン控除を適用することができませんので注意しておきましょう。

マンション売却損の特例を受けるには確定申告が必要

マンション売却損の特例を受けるには確定申告が必要

マンションの売却損が出た際に、控除の特例などを適用する場合は、売却の翌年の確定申告を行う必要があります。

確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日ですが、状況によって日程が変更されることもあるため、前もって調べておきましょう。

売却して出た利益に課せられる譲渡所得税がある場合は確定申告が必須となり、申告しなければ罰せられますが、譲渡所得がなかったり、売却損が出たりした場合は、確定申告の義務はありません。ただし、確定申告をしなければ控除が受けられないため注意が必要です。

確定申告のおおまかな手順は、次のようになります。

1. 確定申告に必要な書類を準備する
2. 必要事項を記入して確定申告書を作成する
3. 作成した確定申告書を税務署に提出する

確定申告で必要な書類

ここでは、確定申告の際に必要となる書類を説明します。

買換えで損失が出た場合に必要となる書類と、住宅ローンが残っている家の売却で損失が出た場合に必要となる書類、そして両方に必要となる書類は次の通りです。

【両方で必要となる書類】

書類名 入手先
譲渡所得の内訳書 税務署の窓口またはオンライン
確定申告書B様式 税務署の窓口またはオンライン
確定申告書第三表 税務署の窓口またはオンライン
売買契約書の写し(取得時と売却時) 各自で準備
売買にかかった費用を記した領収書の写し 各自で準備
売却した不動産の全部事項証明書 法務局の窓口またはオンライン
源泉徴収票やマイナンバーなど 各自で準備

【譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(買換え特例)に必要となる書類】

書類名 入手先
居住していたことを証明する書類 各自治体の窓口
売買契約書の写し 各自で準備
購入した家の全部事項証明書 法務局の窓口またはオンライン
住宅ローンの残高証明書 借入先の金融機関
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 税務署の窓口またはオンライン
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 税務署の窓口またはオンライン

【特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例に必要となる書類】

書類名 入手先
居住していたことを証明する書類 各自治体の窓口
売買契約書の写し 各自で準備
譲渡資産の借入金残高証明書(売買契約前日時点) 借入先の金融機関
特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 税務署の窓口またはオンライン
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 税務署の窓口またはオンライン

特例を受ける場合はこのような必要書類を前もって確認し準備しておくとスムーズです。

もっと詳しく知りたい方は下記の記事もおすすめです。

マンションの売却で損を出さないためには

マンションの売却で損を出さないためには

最後に、マンションを売却した際に損失を出さないためのポイントや工夫について説明します。

マンションの売却損がどうしても出てしまう場合もありますが、少しでも高く売却できれば、その分だけ損を減らすことが可能です。したがって、マンションの売却損を出さない、または減らすためには、高く売却することがポイントになります。

ここでは、マンションを少しでも高く売れるようにするポイントを見てみましょう。

複数社に査定を依頼して比較して選ぶ

マンションの売却は、まず不動産会社に査定を依頼することがほとんどです。その際、複数の不動産会に査定を依頼して、それぞれの不動産会社を比較して売却の依頼先を決めることが大切です。

不動産会社を選ぶ際は査定額だけでなく、査定時の説明のわかりやすさや販売戦略なども比較して選ぶようにしましょう。査定の説明や販売戦略をしっかりとしている不動産会社に売却を依頼すれば、より高く早く売れる可能性が高くなると言えるでしょう。

マンション売却に強い不動産会社へ依頼する

マンションを少しでも高く売却するには、マンション売却に強い不動産会社に依頼をすることがおすすめです。

不動産会社によって、取り扱いが得意な物件が異なります。土地や戸建ての売却を得意とする不動産会社に依頼するよりも、マンションの売却を得意としたり専門としたりしている不動産会社に依頼するほうが、成功する確率が高くなると言えます。

売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、その不動産会社が何を得意としているかを調べておくようにしましょう。

信頼できる担当者に依頼する

不動産会社だけでなく、担当者が信頼できるか、能力が高いかどうかも大切なポイントになります。

担当者のチェックポイントとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 査定を出した際の価格の根拠が明確である
  • 難しい専門用語を使わずに説明がわかりやすい
  • どのようなことでも質問できて相談しやすい
  • マンション売却仲介経験が長い
  • 宅地建物取引士の資格を保有している

マンションの売却期間中、一緒に売却成功を目指せる人物かどうかをしっかりとチェックするようにしましょう。

【監修者コメント】
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不動産取引は数ヵ月や年単位で動きます。そのため、売却損を出さないためには売り急がないことが何よりも大切です。

マンションの売却損が出たら控除や特例を活用しよう

マンションの売却損が出たら控除や特例を活用しよう

マンションを売却した際は、売却できた額によっては損失が出ることがあります。マンションなどの不動産の損失は、要件を満たせばほかの所得から控除することができるため、税金の減額が可能です。

家の買替えやローンが残っている家の売却で損失が出た場合は、まず要件を満たしているかどうかを確認しましょう。そして、特例が適用できることが判明したら、売却の翌年の確定申告をして控除の手続きをします。

また、売却損を減らすためには、少しでも高くマンションを売却することが必要です。売却を依頼する不動産会社や担当者をしっかりと選択して、マンション売却の成功を目指しましょう。

【監修者コメント】
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「売却額=手元に残る金額」ではありません。住宅ローンの返済やさまざまな手数料、税金などがかかります。このような費用を売却活動前におおまかに把握しておくことで、いくらくらいで売却すれば損が出ないのかを予測できます。

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