認知症の親の不動産を売却する方法|成年後見制度の仕組みや税金について解説!

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認知症の親の不動産を売却する方法|成年後見制度の仕組みや税金について解説!

「親が認知症になってしまった」という人の中には、親を施設に入所させるためやトラブルを防ぐために「親の不動産を売却したい」と考えている人もいるでしょう。

しかし、親が認知症を既に患っている場合は、親の不動産を売却することが難しくなるため、注意が必要です。本記事では、認知症の親の不動産を売却する方法や、法定後見人制度の利用方法などについて紹介します。

【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!

認知症になった親の家を売るのは難しい?

高齢化の進行により、親が認知症(痴呆症)を発症し、判断能力を失うことによる問題が増えています。そのため、「親を施設に入所させる」または「トラブルを回避する」といった理由で、「親の住まいや土地などを売却したい」と考えている人もいるでしょう。

しかし、親が重度の認知症で会話もできないといったように、著しく判断能力を失っている状況では、不動産売却の話が一向に進みません。

不動産売却は、基本的に本人が行わなければならず、本人の意思能力の有無によって売却できるかどうかが決まります。意思能力とは、契約や手続きといった法律行為を行った場合、自身の権利や義務がどのように変化するのかを理解する能力です。

認知症を患っていたとしても、「意思能力がある」と判断された場合は不動産売買が成立する一方、「意思能力がない」と判断された場合は契約無効になるため、注意が必要です。

認知症の親の不動産を売却する方法

不動産売却は、本人の意思と関係なく成立することがないよう、基本的に本人が行い、代理人が行うことはできません。しかし、そのままでは、認知症によって判断能力を失っている親がマンションや戸建住宅といった建物、土地などを勝手に売却し、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。

そこで、親が認知症になった場合は、「成年後見人制度」を利用し、不動産を売却することが可能となっています。成年後見人制度とは、親が認知症によって判断能力が不十分な場合に、だまされたり、本人の意思に反したりして自宅を売却してしまうことがないよう、法的に守る制度です。

以下、法定後見人制度について、詳しく見ていきましょう。

任意後見人と法定後見人の違い

成年後見人制度には、「任意後見人制度」と「法定後見人制度」の2種類があります。両者の違いは、以下の通りです。

【任意後見人の特徴】

  • 判断能力があるうちに、万が一の事態に備えて、あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりに行ってほしいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度

【法定後見人の特徴】

  • 判断能力の低下によって、一人で決断することに不安を感じた場合、家庭裁判所によって成年後見人などを選んでもらう制度

「任意後見人制度」は判断能力に問題のない人が将来に備えるために利用し、「法定後見人制度」は判断能力が既に低下している人が利用します。

「法定後見人制度」は、判断能力の低下の程度に合わせて、補助人、保佐人、成年後見人が選ばれます。症状が比較的軽度な場合は、補助人が重要な財産行為の一部の同意・代理を、中程度の場合は、保佐人が重要な財産行為の同意・代理を、重度の場合は、成年後見人が代理を行います。

法定後見人制度の注意点

「親が認知症になってしまった」という人の中には、相続問題、相続税対策などの観点から、「生前贈与」を考えている人もいるでしょう。

生前贈与は、親の意思能力の有無を成立要件としているため、認知症を既に発症している場合、生前贈与を行うことは難しいです。ただし、医師が「財産処分に関する意思能力がある」と診断した場合、認知症を発症していたとしても、生前贈与を行える可能性があります。

法定後見人制度を利用したからといって、生前贈与を行えるというわけではありません。成年後見制度は、対象者の財産を減らさないように保護することを目的としているため、成年後見制度を利用したとしても、生前贈与ができないことを覚えておきましょう。

法定後見人制度の利用方法

法定後見人制度を利用するためには、いくつかの手続きを行わなければなりません。手続きを進める際には、不備によって何らかのトラブルが生じることを回避するために、事前に手順を把握しておくことが大切です。法定後見人制度を利用する際の手順は、以下の5つです。それぞれのステップについて、詳しく説明します。

【法定後見人制度利用の手順】

  • 1.成年後見人制度の審判を申請
  • 2.家庭裁判所で審理
  • 3.法定後見人が選定
  • 4.不動産会社と契約して売却する
  • 5.買主と売買契約を結ぶ

成年後見人制度の審判を申請

成年後見制度の審判の申請には、必要な書類をそろえ、本人の住民票上の住所地を管轄している家庭裁判所に、成年後見人、保佐人、補助人の選任を申し立てます。

審判の申し立てを行えるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者に限られています。審判の申請に必要な書類は、以下の通りです。必要書類は、状況によって異なるため、どのような書類が必要なのか、管轄の家庭裁判所に確認しておきましょう。

【成年後見人制度に必要な書類】

  • 収入印紙
  • 郵便切手
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 住民票または戸籍附票
  • 後見・保佐・補助開始の申立書
  • 後見登記されていないことの証明書
  • 診断書

家庭裁判所で審議

審判の申し立て後は、家庭裁判所で審査が行われます。本人や候補者からの事情の聞き取りが必要と判断された場合は、医師によって本人の判断能力の診断が行われ、後見人としてふさわしいかどうかを判断するために、精神鑑定や親族の調査などが実施されます。審判の結果次第で、「財産」については弁護士といった専門知識を有する者、「本人の身の回りの世話」については親族を選任するといったように、複数人の後見人が選ばれるケースもあります。

法定後見人が選定

「申請すれば、すぐに法定後見人が選定される」と思っている人もいるかもしれませんが、法定後見制度は、対象者の財産や権利を守ることを目的としているため、慎重に審査が進められます。申請から審判までは、2ヵ月程度の期間を要すため、逆算した上で、早めに申請を済ませましょう。

審査の完了後は、申立人と後見人に対して、決定内容の通知である審判書が送付されます。審判書の送付から2週間以内に誰も不服を申し立てない場合は、審判の法的な効力が確定し、審判内容が登記されます。登記完了後は、不動産の売却に取り掛かることが可能です。

不動産会社と契約し売却する

登記の完了を経たことで、不動産の売却に取り掛かることができますが、不動産を自由に売却できるというわけではありません。本人が居住している不動産や、病院から退院後に戻る予定の家などを売却する場合、裁判所の許可(居住用不動産処分の許可の申し立て)が必要です。居住用不動産処分の許可申し立てには、以下のような書類の提出が求められます。必要書類は、状況によって異なるため、どのような書類が必要なのか管轄の家庭裁判所に確認しておきましょう。

【居住用不動産処分の許可申し立てに必要な書類】

  • 申立書
  • 不動産の全部事項証明書
  • 不動産売買契約書の案
  • 処分する不動産の評価証明書
  • 不動産業者が作成した査定書
  • 本人または成年後見人などの住民票に変更があった場合は変更があった者の住民票の写しまたは戸籍附票
  • 意見書
  • 収入印紙や郵送用の郵便切手

買主と売買契約を結ぶ

裁判所から許可が下りた後は、通常の不動産売却と同様、不動産会社と契約して不動産の売却を進めていきます。購入希望者が見つかった場合、契約・決済・引き渡しを行うことで、不動産売却は完了です。

もし家庭裁判所の許可を得ず、居住用不動産を勝手に売却した場合、行為自体が取り消されるのではなく、法的に「無効」と判断されます。売却時に受け取った代金を買主に変換しなければならないだけではなく、義務違反を理由に後見人を解消される可能性が高いため、注意しましょう。

親の家を売却した場合の税金

家を売却する際には、各種税金が課されます。親の家を成年後見人が売却する際にも各種税金は課されますが、成年後見人が課税対象となるわけではありません。

あくまでも家の所有者である親に税金が課されるため、税金納付に関するトラブルを未然に防ぐためにも、どのような税金が課されるのかについて、把握しておくことが大切です。親の家を売却する際に課される税金としては、以下の3つが挙げられます。それぞれの税金について、詳しく見ていきましょう。

【親の家を売却した場合の税金】

  • 譲渡所得税
  • 印紙税
  • 相続登記の登録免許税

譲渡所得税

「譲渡所得税」とは、不動産の売却によって、利益が発生した場合に納める税金です。譲渡所得税の計算方法は、以下の通りです。

【譲渡所得税の計算方法】

譲渡所得税 = 課税譲渡所得(譲渡所得-特別控除)×税率

税率は、建物の所有期間によって、以下のように異なります。

  • 短期譲渡所得(5年以下):住民税9%、所得税30.63%
  • 長期譲渡所得(5年超):住民税5%、所得税15.315%

譲渡所得税は、不動産を売却した翌年の確定申告で納めます。確定申告までにお金を使ってしまうことがないよう、税金の納付に必要なお金を確保しておきましょう。詳しくは、こちらの記事をご確認ください。

印紙税

「印紙税」とは、経済取引に関連して作成される文書に課される税金です。税額、は売買契約書に記載されている物件の金額によって、以下のように異なります。印紙税を納めるのは、売買契約を締結するタイミングです。あらかじめ、1万~3万円程度かかることを想定しておきましょう。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
出典元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

相続登記の登録免許税

認知症の親が亡くなり、家を相続してから売却することになった場合は、「相続登記の登録免許税」が課されます。登録免許税とは、不動産の所有者(名義)を変更する際に課される税金です。

「相続登記の登録免許税」は、不動産の固定資産税評価額の0.4%とされています。例えば、4,000万円の不動産の相続登記を行う場合、登記時に「4,000万円×0.4=16万円」を納めなくてはなりません。登録免許税は、登記申請書の余白または別紙に収入印紙を張り付けて納めます。収入印紙の貼り間違いがないように、注意しましょう。

親の家を売る場合の税金控除特例

親の家を売った際に課される税金の中で最も税額が大きくなるのは、「譲渡所得税」です。確定申告時に「お金が不足して納税できなかった」という事態にならないためにも、売却代金から納税に必要な金額をあらかじめ確保しておきましょう。

また、譲渡所得税の控除特例を利用すれば、負担を軽減できます。控除特例は、自動で適用されるわけではなく申告が必要であるため、忘れないように申告しましょう。親の家を売る場合に利用できる控除特例としては、以下の2つが挙げられます。以下、各控除特例について、詳しく説明します。

【譲渡所得税の控除特例】

  • マイホーム売却時の3,000万円特別控除
  • 相続空き家売却時の3,000万円特別控除

マイホーム売却時の3,000万円特別控除

マイホーム売却時の3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した際に最高3,000万円までの控除を利用できる制度です。控除を利用できた場合、譲渡所得3,000万円までであれば、譲渡所得税が0円になります。

基本的にマイホームであれば控除を利用できますが、以下のような物件は、対象外となります。

【特例の対象外となる物件】

  • 特例の適用だけを目的として購入された物件
  • 仮住まい用、一時的な目的で入居した物件
  • 別荘のような主として趣味や娯楽、保養のために所有された物件

また、特例を利用するためには、以下のような要件を満たす必要があります。

【特例の適用要件】

  • 居住用住宅の売却である
  • 空き家の場合、住まなくなった日から3年以内に売却する
  • 売却した年の前年または前々年にこの特例のほか、他の特例を利用していない
  • 売主と買主が親子や夫婦のような特別な関係ではない

相続空き家売却時の3,000万円特別控除

相続または遺贈によって取得した不動産を売却する際、相続空き家売却時の3,000万円特別控除を利用できます。マイホーム売却時の3,000万円特別控除と同様、条件を満たせば、譲渡所得3,000万円までであれば、譲渡所得税が0円になります。以下のような条件を満たす物件は、控除を利用できます。

【特例の対象となる物件】

  • 1981年5月31日以前に建築された物件
  • 区分所有建物登記がされていない物件
  • 相続開始直前に被相続人以外が居住していない物件

また、特例を利用するためには、以下のような要件を満たす必要があります。

【特例の適用要件】

  • 相続や遺贈によって不動産を取得した
  • 売却代金が1億円以下である
  • 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
  • 売主と買主が親子や夫婦のような特別な関係ではない
出典元:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

要件が複雑であるため、利用できるかどうかについては、しっかり確認しておきましょう。

まとめ

成年後見人制度は、対象者の財産や権利を守るために作られた制度です。不動産を売却する際は、不動産所有者が直接立ち会うのが原則ですが、認知症によって判断能力が低下している場合は、成年後見人制度を利用することで、第三者が代わりに不動産を売却することができます。

成年後見人制度を利用するためには、手続きが必要で、制度利用時にはいくつかの注意点が挙げられます。速やかに手続きを終え、制度利用によるトラブルを未然に防ぐためには、成年後見人制度についての知識をしっかり深めておきましょう。

この記事についてのおさらい

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