不動産買取の流れを解説|買取業者を選ぶ際のポイントや利用するメリットを解説

不動産を売却する際は不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらうのが一般的ですが、最近では不動産買取を利用するケースも増えています。不動産買取は不動産会社の仲介とは売却の流れが違うため、速やかに進めるためにも売却の流れを事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、不動産買取の流れと業者を選ぶ際のポイントなどを紹介します。

【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
不動産買取の流れ

不動産を売却する際は、不動産会社に仲介または買取を依頼します。仲介と買取では流れが異なるため、不備なく速やかに売却を進めるためにも流れを事前に把握しておくことが大切です。
不動産買取の流れは以下の通りです。
- 1.不動産に関係する情報の収集
- 2.対象不動産の買取査定
- 3.買取金額の提示
- 4.条件を確認して取引業者を決定
- 5.売買契約の締結
- 6.入金の確認後に物件の引き渡し
- 7.確定申告
それぞれの流れについて詳しく見ていきましょう。
①不動産に関係する情報の収集
不動産買取を進める際は、不動産に関係する情報の収集から入ることが大切です。
不動産買取業者は、不動産を安く買い取って高く売却することによって利益を得ているため、少しでも安く買い取ろうとします。損をしないためにも売却予定の相場を確認しておくことは大切です。
業者の買取価格は、一般的な相場より20~30%程度低くなると言われています。相場を知っておけば交渉を有利に進められるほか、不動産会社選びに役立つでしょう。
②対象不動産の買取査定
不動産会社に仲介を依頼した場合、査定結果に基づいて売出価格を設定しますが、その価格で必ず売れるとは限りません。一方、不動産買取の場合、不動産会社が提示した査定結果がそのまま買取価格となります。
そのため、1社だけではなく複数の業者に査定を依頼して、少しでも高い価格を提示してくれる業者を見つけることが大切です。
不動産買取業者が行う買取査定は、机上査定と訪問査定の2種類です。両者の違いを詳しく解説していきます。
机上査定
机上査定とは、現地調査を行わず、築年数や構造、面積などの条件が似ている類似物件の過去の取引事例に基づきながら物件のおおまかな価値を算出する査定方法です。
簡易的な査定で、現地調査のための不動産会社とのスケジュール調整、不動産に関連する書類を用意する必要もないので査定にかかる時間と手間を省けます。
そのため、単にいくらくらいの価値があるか知りたい、時間を確保できない、遠方で現地調査に立ち会うことができないような人に向いている査定方法と言えるでしょう。
訪問査定
訪問査定とは、机上査定の結果に現地調査を追加することによって物件の正確な価値を算出する査定方法です。
訪問査定では劣化状況や日当たり、周辺環境などの細かな要素も現地調査を通じて査定に反映します。そのため、物件の現地調査を行わない机上査定と比べると査定の精度が高く、査定結果がそのまま買取価格になるのが一般的です。
そのため、最終的な買取価格を知りたい、正確な価値を把握したいという人に向いている査定方法と言えるでしょう。
③買取金額の提示
査定を依頼した後は、各不動産買取業者から金額の提示を受けます。提示を受けてもその場で決めるのではなく、一度持ち帰って各業者の査定結果や周辺相場などから買取額の目安を決めます。
目安を決めてからは、業者と買取額について交渉を進めることになりますが、各業者と交渉するのは時間と手間がかかるのでおすすめしません。
査定を依頼した時の対応の良さや売却実績、査定結果などを踏まえながら交渉する業者を絞りましょう。
④条件を確認して取引業者を決定
交渉する不動産買取業者を決めた後は、条件を確認して最終的に買取を依頼する業者をどこにするのかを決めていきます。
確認する条件とは、売主の提示した買取額に応じてくれるのかどうか、今後の売買スケジュールや物件内に残っている家具の処分についてなどです。
物件に残っている家具や荷物を業者が引き取るまたは買い取ってくれる場合には特に問題ありませんが、自分で処分しなければならない場合には時間と手間、場合によっては費用がかかります。
また、契約日に代金が支払われるとは限らないため、いつ支払われるのか必ず確認しておきましょう。
⑤売買契約の締結
不動産買取業者と条件が合致した場合、売買契約の締結に移行します。売買契約を締結する際には、不動産に関連する書類を提出する、契約書の内容を確認して記名・押印を行います。
必要書類の不備があった場合や契約書の確認が不十分で不備があった場合は、売買スケジュールに支障が生じたり、不備が原因でトラブルに発展したりする恐れがあるため、事前に必要書類を準備し、入念に契約内容をチェックすることが大切です。
続いて、売買契約を締結する際に必要な書類について詳しく見ていきましょう。
売買契約締結時に必要な書類
売買契約を締結する際に必要な主な書類は以下の通りです。
土地 | 一戸建て | マンション | |
---|---|---|---|
登記済権利証、登記識別情報 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定資産税納付通知書 | 〇 | 〇 | 〇 |
建築確認済証、検査済証 | 〇 | 〇 | 〇 |
土地測量図面、境界確認書 | 〇 | 〇 | - |
マンションの管理規約 | - | - | 〇 |
本人確認書類、印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
上記の書類の中には、建築時に受け取っている書類もあるため、探すのに時間のかかるものもあります。再発行できる書類に関しては、売買契約締結までに用意しなくてはならないので早めに確認しておくことが大切です。
また、必要書類は不動産会社によって異なるため、どのような書類が必要なのか確認しておきましょう。
⑥入金の確認後に物件の引き渡し
売買契約書に記載されている物件の引き渡しの当日は、不動産買取業者から売買代金の入金が行われ、入金の確認後に物件を引き渡します。登記の抹消、固定資産税の精算、鍵や関係書類の引き渡しなどを終えれば、不動産会社との取引は完結です。
引き渡しまでの期間が短い場合、速やかに引き渡しの準備を進めなくてはなりません。物件の引き渡しを問題なく終えるには、物件の引き渡しまでに済ませておくことをきちんと把握しておくことが大切です。
続いて、物件の引き渡しまでに済ませておくことについて解説していきます。
物件の引き渡しまでに済ませておくこと
引き渡し当日までに済ませておくこととして、不動産会社や司法書士などから指示された書類の準備、引越し、公共料金の支払いなどが挙げられます。
引越しは繁忙期だと業者の確保が困難なので、余裕をもって計画を立てておくことが大切です。また、ガス会社や電力会社、水道局、NHKなどへの移転連絡も忘れずに行いましょう。
住所が変わることによって、転出届や住民税の変更手続きといった役所や会社での手続きも必要になります。速やかに新しい生活をスタートさせるためにも、どのようなことを済ませておかなければならないのかをしっかり確認しておきましょう。
⑦確定申告
不動産買取業者に不動産を買い取ってもらった人の中には、確定申告が必要な人もいます。確定申告とは、1年間で得た所得に対して納める税金を算出し、税務署に納める手続きのことです。
不動産を売却した際に利益を得なかった場合は確定申告を行う必要はありません。しかし、利益を得た場合は利益に対して所得税を納めなくてはならないため、確定申告が必要です。
確定申告が必要であるにもかかわらず確定申告を行わなかった場合は、延滞税といった別の税金を納めなくてはならないので注意してください。確定申告が必要か不安に感じる人は、住所地を管轄する税務署に相談してみましょう。
不動産買取業者を選ぶ際のポイント

「提示した買取価格の高い不動産買取業者=高く不動産を買い取ってくれる業者」なので、業者を選ぶ際は査定額の高い業者を選べばいいと考えている人も多いと思います。
しかし、業者の中には、高い査定額を提示するものの、何らかの手数料を徴収することで最終的な手残りを減らすような悪質な不動産業者もいるので注意してください。
業者選びに失敗しないためにも、以下のようなポイントを押さえながら選ぶことをおすすめします。
- 担当者は信頼できそうか
- 実績は充実しているか
- 対象不動産がある地域に詳しいか
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
担当者は信頼できそうか
不動産買取業者の担当者の中には、自分の意見を押し付ける、難しい専門用語を使って説明してくるといったように、売主に寄り添ってくれない担当者もいます。
そのような担当者とは、建設的な話し合いができない可能性が高いため、買取を依頼することはおすすめしません。
納得いく買取を実現するには、しっかり話を聞いてくれる担当者か、考えを押し付けず売主の立場になって物事を考えてくれる担当者かどうかを確認してから依頼しましょう。
実績は充実しているか
不動産買取業者の中には、買取実績が少ない不動産会社もいます。実績が少ないということは、買取を依頼する人が少ないということなので、業者に何らかの問題が潜んでいる可能性が高いです。
起業から日が浅く、実績が少ないだけというケースもあるため、一概に実績が少ない不動産会社が悪いとは言い切れませんが、買取件数やユーザー評価などを踏まえながら信頼できる業者かどうかを判断しましょう。
対象不動産がある地域に詳しいか
買取を依頼したのが対象不動産の地域にあまり詳しくない場合、査定結果が適切ではなく、相場よりも低い価格で不動産を売却することで損をする恐れがあります。
地域に詳しいからこそ、査定から買取までの流れがスムーズかつ査定の精度が高い、誠実な対応が期待できると言えるため、対象不動産がある地域に詳しい不動産買取業者を選択することをおすすめします。
不動産買取を利用するメリット

不動産売却を検討している人の中には、不動産買取を選択すべきかどうか悩んでいるという人もいると思います。最適な売却方法を選択するためには、不動産買取を選択することにどのようなメリットがあるのかを理解した上で選択することが大切です。
不動産買取を選択することには、以下のようなメリットが挙げられます。
- 仲介手数料が不要
- 近隣の人などに知られずにプライバシーを考慮した売買が可能
- 室内状況を整備する必要が基本的には無い
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
仲介手数料が不要
不動産買取の場合、仲介手数料が発生しません。不動産仲介を選択して買主が見つかった場合には、売買契約締結時に不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
物件価格が400万円以上の不動産を売却する場合の仲介手数料の上限は「物件価格×3%+6万円+消費税」です。仲介手数料を徴収されると手残りがその分だけ少なくなります。
しかし、買取の場合には仲介手数料が発生しないため、諸費用を減らすことで手残りを増やせるでしょう。
近隣の人などに知られずにプライバシーを考慮した売買が可能
不動産買取では、業者が不動産を直接買い取ってくれるので、外部に向けた募集広告を行いません。そのため、近隣の人などに知られずにプライバシーを考慮した売買が可能です。
一般的な不動産仲介の場合には、近隣の住居への物件のポスティング、不動産ポータルサイトへの掲載といった募集広告を行うため、近隣住民に不動産売却がバレる可能性があります。
不動産買取であれば、いくらで売っているといったことを周囲に知られずに売却を終えられるでしょう。
室内状況を整備する必要が基本的には無い
不動産買取では、現況引き渡しとなるので室内状況を整備する必要が基本的にはありません。一般的な不動産仲介では、不動産の劣化が進行している場合、そのままでは購入希望者が現れにくいだけでなく、瑕疵が潜んでいた場合には瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負うため、多少の整備が必要になります。
しかし、不動産買取は基本的に現況引き渡しです。また、瑕疵担保責任(契約不適合責任)も免責されるため、手間や費用をかけずに不動産を売却できるでしょう。
まとめ

不動産買取は一般的な不動産仲介とは流れが異なるため、不動産買取を選択する場合には、事前に売却の流れを把握しておくことが大切です。
また、どの業者に買取を依頼するかによる売却結果の差が大きいため、事前に業者選びのポイントを押さえてから依頼することも重要です。
不動産買取ではなく不動産仲介を選択した方が良いケースもあるため、不動産買取のメリットを把握し、自分に合った売却方法を選択しましょう。