共有名義の不動産は売却できる?売却方法と注意点を解説
共有名義とは、その名の通り、1つの不動産に対して複数人を所有者として登記を行うこと指します。
本記事では、共有名義不動産の売却方法、売却のための必要書類、売却する際の注意点まで詳しく解説します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
共有名義の不動産は売却できる?
共有名義の不動産は、共有者全員の同意が得られれば、共有名義の不動産は売却できます。言い換えると、一人でも売却に反対する共有者がいれば、共有名義の不動産は売却できません。
共有者は共有持分に応じて共有名義不動産を所有しています。そのため、共有物全体を売却する場合には、共有者全員の同意が必要であると、民法251条が規定しています。
なお、土地の所有者と建物の所有者が異なる場合は、共有名義にはなりません。
共有名義の不動産を売却する方法
共有者全員の同意を得られたとして、共有名義の不動産を売却するためにはどのような方法があるのでしょうか。それぞれ詳しく解説します。
【方法1】全員で不動産を売却する
不動産を売却して現金化して分ける方法です。共有者全員の同意が得られれば、不動産全体の売却は可能となります。相場価格で売却でき、共有者間で分配が可能です。
売却益、売却するための諸費用は、原則として持分割合によって分けられます。この点はあらかじめ共有者間で確認しあっておきましょう。
【方法2】自己の持分のみの土地売却
共有不動産が土地の場合に、自己の持分のみを売却する方法です。自己の持分だけの売却なので、他の共有者の同意は必要ありません。
しかし一般の人が共有持分のみを購入することは、ほぼありません。共有持分は土地の一部分の権利なので、使い勝手が悪いからです。そのため共有持分買取業者に買い取りを依頼するケースが多いです。
この場合に注意することは、買取業者は共有持分購入後に他の共有者に持分の売却を求めてくることです。
買取業者から持分売却を求められて、共有者は一部が売却されたことに初めて気付きます。これでは共有者とのあいだにトラブルが起こりかねません。
自分の持ち分を売却する際は、あらかじめ共有者に持分売却を伝えておくことが大切です。
【方法3】他の共有者に売却する
共有不動産が土地の場合に、自己の持分のみを他の共有者に売却する方法です。共有している不動産を利用している共有者がいれば、話が進みやすいでしょう。共有者が利用している土地に自己の持分が加われば、土地の利用価値が上がるからです。
共有持分買取業者への売却と比較してトラブルになるリスクも低いでしょう。
【方法4】他の共有者から買い取り所有者を1人にする
ほかの共有持分権者の共有持分割合をすべて購入し、自分が所有者になる方法です。単独名義になれば共有者の同意を得る必要がないため、自由に不動産売却が可能になります。
共有名義不動産の売却に必要な書類
共有名義不動産の売却での必要書類は、通常の不動産売却と同じです。しかし共有者全員の印鑑証明書・身分証明書などの本人確認書類が必要になるため、通常の場合よりも集めるのに時間を要します。売却が決定したら、できるだけ早く用意を始めましょう。
不動産に関する書類
不動産に関する書類はおもに以下の3つです。
- 登記識別情報…不動産の所有者に登記所から通知される書類
- 地積測量図(土地の場合)…道路や隣接する土地との境界が定められた上で測量され、その結果が記載された図面
- 境界確認書(土地の場合)…隣地との土地の境界を明確にするために測量し、その結果確定した境界を証明する書類
どれも不動産取得時に入手済みの書類となるので、スムーズに売却するためにも事前に準備しておきましょう。
共有者全員が用意する書類
共有者全員が用意するものは以下の4つです。
- 実印
- 印鑑証明書(取得日から3ヵ月以内のもの)
- 身分証明書
- 住民票
- 委任状
契約に立ち会えない共有者分は委任状が必要
共有名義不動産の売買契約日、代金の決済日、物件の引き渡し日に立ち会えない共有者がいる場合、下記の内容が記載された委任状が必要です。
- 委任する人と受任する人の住所と氏名
- 委任する内容と取引する日
- 委任する範囲(売買契約の締結、代金の受領、不動産の引き渡しなど)
- 権利を持つ不動産の情報など
委任する人は、委任状に実印を押し印鑑証明書を添付します。
共有名義不動産を売却する際の注意点
共有名義不動産の売却にあたって注意することは次の3つです。
- 共有物分割請求をされる可能性
- 譲渡所得税支払いの可能性
- 共有持分買取業者による強引な営業に遭う可能性
それぞれ詳しく解説していきます。
共有物分割請求をされる可能性がある
共有物分割請求とは、共有名義不動産の共有状態を解消し、持分割合に応じて分割する手続きのことです。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項)。したがって共有物の分割を請求された場合、各共有者は分割について話し合わなければなりません。
話し合いで決着がつかなければ、共有物分割請求訴訟を提起し判決を受けることになります。判決の内容によっては、不動産が競売にかけられ売却価格が大幅に下がることもあり得ます。
このようなことを発生させないように、早い段階で売却や分筆について話し合っておいたほうがいいでしょう。
譲渡所得税の支払いが発生する可能性がある
共有不動産売却により利益が発生すれば、譲渡所得税を支払わなければなりません。
共有名義不動産の共有持分を売却した場合は、各共有者が売却後に分配された金額やそれに掛かった費用などをまとめて確定申告する必要があります。
共有持分買取業者による強引な営業に遭う可能性がある
共有者が共有持分買取業者に自己の持分を売却すると、買取業者は買い取った持分を他の共有者に高値で買い取るよう請求します。あるいは、共有者の持分を格安で売却するよう要求してきます。
買取業者は不動産全体を所有したうえで、買取金額よりも高値での売却を狙っているからです。対策としては、不動産トラブルに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
共有名義の不動産をどうするかは早めに話し合おう
共有者の死亡による相続、離婚後も名義を変えないことなどで権利関係が複雑になり、売却に不可欠の共有者全員の同意が得られなくなる可能性もあるでしょう。
そのような事態を避けるためにも、共有名義不動産の売却を考えているのであれば、共有者全員で早めに話し合うことが重要です。