不登校の回復期は焦らず見守りを。回復のサインをキャッチしよう

不登校は、学齢期の子供にとって大きな問題となっています。その数は年々増加しており、また不登校の長期化も課題のひとつです。しかし、子供はずっと不登校でいたいわけではありません。「そろそろ学校に復帰したいな」と、回復の兆候を見せるタイミングが訪れます。そのタイミングを見極め、適切な段階を踏むことで、子供は自ら不登校を抜け出すことができるでしょう。今回は、不登校から回復する段階と、親や周りの大人の関わり方などについて紹介します。

不登校における「回復期」とは?

不登校の要因とされるのは、「学校生活に起因する要因」「家庭生活に起因する要因」「本人に起因する要因」の大きく分けてこの3つです。これらの要因から不登校へとつながった子供はいくつかの段階を踏んで不登校を脱します。

その段階の1つでもある「回復期」は、不登校でつまずいた子供の心に活力が見えてくるタイミングです。回復期のタイミングとはどのようなときなのかを知っておくと、子供の変化に気づきやすくなるでしょう。回復期の概要について紹介します。

回復期に医学的な定義はない

不登校とは病気として定義されるものではなく、学校生活における問題の1つです。そのため回復期という言葉を使っていますが、具体的な回復期の定義はありません。

では、どのように回復期を見極めれば良いのでしょうか。簡単に言えば、回復期とは「子供の活力がわいてきて、次の一歩を踏み出そうとしているとき」といえるでしょう。

具体的には、後半の回復のステップで紹介します。回復期がくると、子供自ら外出を試みたり、勉強に意欲的になったりと自分から行動する活力が出てきます。 回復期は段階を追って徐々に進んでいくため、大人はゆっくりと見守ることが大切です。

克服までの期間は「3ヵ月~1年程度」が一般的

不登校から回復して克服するまでの期間は、3ヵ月から1年ほどとされています。しかしこれはあくまで目安の期間だと考えたほうが良いでしょう。

なぜなら子供が不登校になった要因や本人の回復力によっても、回復にかかる時間に差があるからです。3ヵ月かからないうちに学校復帰ができる子もいれば、1年経っても回復期に入っていかない子もいることをまずは認識しておきましょう。

親や周りの大人は、それぞれ回復期には差があると理解して関わる必要があります。

親の「早く学校に行ってほしい」といった気持ちを子供は敏感に受け取り、プレッシャーに感じてしまいます。 長期的な観点から回復期をいっしょに過ごしていく姿勢をもち、子供を支えていきましょう。

「回復期」を迎えるまでの3ステップ

先ほど紹介したように、回復は一気に進むのではなく、段階を経て進むものです。具体的には回復期を迎えるまでに「混乱期」「安定期」「転換期」の3つのステップを進むことになります。

それぞれの段階で子供が見せる特徴を理解することで、親としても子供への理解が深まるでしょう。各ステップについて詳しく解説します。

親も子供にパニック状態にある「混乱期」

「混乱期」は、登校への渋りから不登校へ移行した時期です。子供は何らかの要因で、不定期にでも行けていた学校に足が向かなくなります。

そんな子供の様子に親も子供も焦りを覚え、混乱する時期といえるでしょう。混乱期の子供は、自分の中にある不安感をどうにかしようと現実逃避をしがちです。

ゲームやインターネットに没頭してしまい、昼夜逆転することもあります。また無気力状態が続くと、ベッドの上にいて何もせずに過ごし、怠けているように見えることもあるでしょう。

親としてはそのような子供の様子を見ていると、つい注意したり、学校に行くよう促したりするものです。しかしこの時期の子供に対して、厳しい声かけは逆効果となります。

親からの言葉に追い詰められた子供は暴力をふるったり、親に対して無理難題を押しつけたりすることもあるため、注意しなければなりません。混乱期は2、3ヵ月ほどとされていますが、親との関係性がうまくいかないと1年以上続くこともあります。

心がけたいのは、普段の何気ない会話からコミュニケーションをとることです。子供から発信がなくても、「わたしはあなたのことを気にかけている」というメッセージを伝え、子供が自分から話をしてくるのを待つようにしましょう。

抵抗が弱まる「安定期」

「安定期」は、大人が無理に学校に行かせようとしなくなるため、子供の抵抗感がなくなる時期です。混乱期に親に対しての暴力があったとしても、徐々に収まってきます。

また自分の行動に落ち着きがでてくるため、周りのことが気になったり、興味関心が広がったりするころでしょう。ただし、まだ実際に外に出たり誰かに会ったりするのは、まだ難易度が高い時期です。

「安定期」は外に出るリハビリ期間といえます。親はあまり無理な言葉がけをしなくなりますが、放置も正しくありません。安定期に要する時間は長いため、状況が変わらなくなると大人があきらめてしまいがちです。

しかし根気よく対話を重ねることで、子供の口から「外出してみようかな」といった前向きな言葉を聞けることがあります。子供の自立心を育めるように、焦らず見守りましょう。

生活や態度に変化が生まれる「転換期」

「転換期」は、子供自身が自らの意思で外へ向かえるようになる時期です。外の世界への関心がより具体的になり、将来の夢や学校への復帰について自ら語るようになります。

少しずつ外出にもチャレンジし、自信をもって行動できるでしょう。親とのコミュニケーションも変化し、日々のニュースや何気ない会話が弾むようになります。

親は、普段のコミュニケーションのなかで、子供の言葉に共感するのが有効です。親からの共感によって子供は自分の意見に自信を持ち、相手へ発信することへの抵抗感を減らせます。

また転換期は大人からのメッセージも受け取れるようになるため、「私はこう思う」とメッセージを伝えるようにすると良いでしょう。ただし子供は勢いよく前に進むとガス欠を起こすものです。

疲れているときには無理をしないで休養をとるように促してあげてください。親と子供が寄り添え合える環境づくりが大切です。

回復期の子供にみられる5つのサイン

回復期の子供は、回復のサインをさまざまな形で見せてくれます。ここで紹介するようなサインが見られたときは、回復の兆候があると覚えておきましょう。

またそのサインに親がどう反応するかで、回復への進み具合に差が生じます。それぞれの内容に正しく理解し、実践してみましょう。

周囲との会話が増えて自分の意見を発信する

不登校の初期段階で心を閉ざしてしまうと、親や周囲の友達との会話はほとんどありません。会話への疲れや抵抗感、無気力が要因とされています。

不登校の原因には、学校での人間関係のトラブルが多くあげられており、それによって相手への不信感がつきまとっているのです。回復期に入ると、自分から徐々に会話をしたり、会話に参加して意見を発信したりできるようになります。

会話をしたいという意欲の表れは、不登校からの回復の兆しを見せ始めている状態です。先に解説しましたが、子供からの発信に対して大人は「関心を向けてあなたの話を聞いている」というメッセージを伝えていくと良いでしょう。

外出の頻度が多くなる

不登校になってから、部屋にこもったままで外に出ない子供は珍しくありません。子供たちなりに、自分の心身が消耗しないように守られた空間から出ない選択をしている状態です。

また興味の幅も狭まり、外の世界に関心が向かなくなります。しかし回復期になると、何らかの理由で外に出ることが増えてきます。

例えば「買い物に行く親についていく」「自分から散歩に出かける」といったものです。心身が安定してくると、活力が外の世界に向きます。

しかし外出の頻度を極端に上げると疲れが出てしまい、外に出向くことが負担になる場合もあるでしょう。あくまでも子供主体で、徐々に外に出る練習を進めましょう。

将来や進路に興味を持ち始める

不登校になり、その後のことや将来の自分に不安を持つのは、だれよりも子供本人です。しかし不登校の最中では、無気力状態に陥りやすいため、動きたくても何もできない状態といえます。

しかし回復期になると将来のために必要なことを考え、自ら教科書をめくって勉強したり、将来の夢について語ったりと、前向きな行動が増えるでしょう。不登校になったからといって、進路が閉ざされたわけではありません。

今はフリースクール通信制高校といった選択肢もあります。子供の将来進む方向に合った進路選びに、親も協力していける体制づくりをしましょう。

暇だと感じる言動や行動がみられる

不登校になると気持ちが落ち込みやすく、無気力状態になることがあります。部屋に引きこもっていたとしても、活力がない状態では特にすることがなく、日々が過ぎてしまうものです。

回復期になると、無気力状態から徐々に元気を取り戻していきます。元気が余った状態で部屋にいても、日々のライフスタイルは変わらないため「暇」を訴えるケースもあるのです。

暇な時間にちょっとした家事の手伝いを頼んだり、親と出掛ける機会をつくったりと少しずつ過ごし方を提案してみてください。

勉強に意欲的に取り組む

不登校になると、学校でおこなっていた勉強へ恐怖心を抱くケースがあります。

しかし、回復期には、先ほど紹介したように将来や進路のことを考え、勉強にも意欲的に取り組む様子がみられます。このころの親は、勉強をする姿を見て「もうすぐ学校に行けるのでは」と思ってしまいがちです。

しかしあくまで回復期は通いだしのタイミングで、学校に再登校できる状態ではありません。次のステップへ行くまでの充電期間と捉えるべきでしょう。

不登校の回復期に親が注意すべきポイント

不登校の子供を持つ親にとって、回復期のサインを見つけられたときにはうれしくなるものです。しかし回復期だからこそ注意すべき点がいくつかあります。

回復期の子供はまだ回復途中であることを忘れてはいけません。大人は次の点を理解した上で、子供と関わるように心がけましょう。

親が子供の先回りをしない

子供が学校へ戻っていけそうな兆しが見えると、親はできる限り早く復帰してもらいたいと思ってしまいます。学校へ行けるように親が先回りして準備を進めてしまうと、子供は親の態度に反応して引きこもり状態に逆戻りすることがあるのです。

これは子供が自分なりに考えて学校に戻るためのステップを踏んでいたにもかかわらず、親に決めつけられたと思い、抵抗を表している状態といえます。

まずは子供自身が一歩を踏み出すのを見守りましょう。場合によっては先回りしなかったことで子供は失敗するかもしれません。そのようなときも、次はどう対応するのか一緒に考えていくようなスタンスで関わることで、子供の安心につながるのです。

変化に対しては過剰に反応しない

回復期にみられるプラス面の変化を見ると、つい過剰にほめたり、喜んだりしてしまいがちです。しかし子どもにとって過剰な反応は、回復へのプレッシャーとなる可能性があります。

その結果として、親に反抗的になったり、心が折れて初期の段階にもどったりするケースもあるため十分に注意しましょう。少しずつ変化している様子に気づいた場合は、対話の中で子供を肯定するようにしましょう。自己肯定感を高められると、自分の行動に自信が持てるようになります。

復帰計画を親が勝手に立てない

回復期が進むと、今後どのような生活するかの計画立てが必要です。しかしこれを親が独断で決めてはいけません。

子供の考えを確認しながら、一緒に話し合って決めていきます。子供は自分の考えを言葉にすることで、具体的に必要な行動を確認できるでしょう。その際、大人はその計画を批判せずに丁寧に耳を傾け続けることが重要です。

不登校からの復帰に時間がかかる3つの理由

不登校の回復期は、長い時間をかけて徐々に進んでいきます。大人が思っている以上にゆっくりとしたペースで進むこともあるため、焦りは禁物です。

復帰に時間がかかるのには理由があり、それを正しく理解していなければ子供を正しく導くことができません。なぜ不登校の回復には時間を要するのかを具体的に解説します。

苦しんだ分だけ回復にも時間がかかる

不登校の子供は、学校に行かなくなる以前の段階で、何らかの苦しい思いをしています。長い間それをひとりで抱え込んだ結果が、不登校につながっている場合もあるでしょう。

苦しんだ時間だけ、回復にも時間がかかってしまうのです。大人には苦しんできた子供の声に耳を傾け、共感する姿勢が求められます。

時間をかけることで、子供の苦しみが徐々に和らいでいくでしょう。焦らずに、子供と向き合う時間をつくるようにしてみてください。

以前の恐怖を思い出してしまう

不登校となる要因には、学業不振人間関係のトラブルが関係する場合も多くあります。不登校となった原因を「自分がうまくできなかったせいだ」「自分の努力が足りなかったからだ」と思い込んでいることもあるでしょう。

それによって自分に自信をなくしたり、同じことを繰り返したりするのではないかと恐怖心を持つようになるのです。回復の兆しをみせていても、「また失敗するのでは」と以前の恐怖がトラウマとなり、何度も思い出すようになってしまいます。

子供が自分のこれからを考えていくうえで、克服に長い時間をかける必要があるといえます。

引きこもりがちで体力が落ちている

不登校の子供は部屋に引きこもって生活するケースも多いでしょう。無気力で1日中寝ていたり、ゲームをして過ごしたりと、外出する機会が極端に減ります。

引きこもった生活をしていると、体力の低下も顕著になるでしょう。

ただし強引に外出や運動をさせることはおすすめしません。親としては、体力が落ちていく子供を見ているのは非常につらいものですし、「自分が外出や運動を促さないことが原因だ」とも勘違いしやすいものです。

しかし子どもは、外出するかしないかは自らの気持ちと折り合いをつけて判断します。自分のタイミングではなく、他人から押し付けられと感じたら本末転倒です。

子供の回復期には時間をたっぷりかけよう

ここまで不登校の子供の回復過程と、それを支える大人がおさえておくべきポイントを解説しました。不登校は、長い時間子供が苦しんできた中で起きる出来事です。

突然学校に行かなくなったというわけではなく、子供なりの理由があることを忘れてはいけません。回復の段階でゆっくり確実に前へ進んでいけると、その後の生活でも自信を取り戻しやすくなります。

大人は目の前の状況に焦らず、子供としっかりと向き合ってあげてください。多くを期待したり先回りして準備してしまうと、逆効果になることがあるからです。

子供と向き合うのに疲れたときや悩んだときは、カウンセラー教育相談室などに相談することもおすすめです。子供は日々不安感を持って生活しているため、大人がおおらかに関わってくれると、安心感を得ることができます。

親の安心感も、子供が自ら一歩進むための大きな力となるでしょう。