中学生が不登校になる原因は?不登校の現状や親の対応方法をご紹介

中学生になると思春期に突入するため、学校生活や勉強に複雑な思いを抱く子どもが増えます。このような状況下で不登校になると、子どもの将来が心配になる親も多いでしょう。そこで今回は、中学生が不登校になる原因や親の対応方法をご紹介します。

中学生における不登校の現状

中学生になると男女ともに思春期に入り、小学生のころよりも人間関係が複雑化します。また勉強の難易度も高くなるため、授業についていけない子も少なくありません。このような学校生活のなかで、不登校になる中学生もいます。

自分の子供が学校に行かなくなると、進学や就職など子供の将来が心配になる親も多いでしょう。そこでまずは中学生の不登校に関する知識を深めるために、中学生が不登校になる割合や不登校から引きこもりにつながる理由を解説します。不登校の中学生の進学や就職率も紹介しているので、将来が心配な人は参考にしてください。

約4%の中学生が不登校になっている

2020年に実施された文部科学省の調査によると、不登校になる中学生は3.9%いることが明らかになりました。言い換えると中学生の26人のうち1人程度が不登校だということです。中学生の不登校は2012年に一度減少したものの、翌年2013年から今に至るまで増加の一途をたどっています。

ちなみに同調査で、小学生の不登校者数は0.8%、高校生の不登校者数は1.6%の割合で、中学校で不登校になる学生が一気に増加していることがわかりました。中学生が不登校になる原因は人によってさまざまですが、子供が学校に行きたくない様子が見えたら、親が早めに対処することが大切です。

参考:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査

不登校が引きこもりのきっかけになることも

中学生で不登校になったときに子供が部屋から出てこなくなり、「このまま引きこもりになってしまうのではないか……」と不安になる親も多いでしょう。実際に不登校がきっかけになり、その後引きこもりになる子もいます。

内閣府の調査によると引きこもりのきっかけが不登校だった割合は、5.8%で決して高い数値ではありません。ただ不登校になった原因が学校生活の人間関係によるものである場合は、引きこもり化しやすいといわれています。

参考:令和元年版 子供・若者白書

不登校の中学生の進学・就職率

文部科学省は中学生時代に不登校だった人を対象に、20歳時点での生活状況を調査しています。その結果によると、就職して働いている割合がもっとも高いことがわかりました。逆に勉強も仕事もしていなかった人は、全体の2割にも満たない状況です。

就職状況に関していえばパート・アルバイトがもっとも多く、次いで正社員といった割合になりました。進学状況は、大学・短大・高等専門学校を選択する人が多い結果となっています。

【進学・就職の状況】

進学・就職の状況
就職
34.5%
進学
27.8%
就職・進学
19.6%
非就職・非進学
18.1%

【就職状況】

就職状況
正社員
9.3%
パート・アルバイト
32.2%
会社経営・家事手伝いなど
3.4%

【進学状況】

進学状況
大学・短大・高等専門学校
22.8%
高等学校
9.0%
専門学校
14.9%
参考:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~

文部科学省の調査結果は、あくまで20歳時点での話です。この時点で学校に行っていなかったり働いていなかったりしても、20歳を超えてから進学や就職している人も多くいるので安心しましょう。

>>中学は不登校でも卒業できる?将来や進路、高校に向けて勉強するには?

中学生が不登校になる7つの原因

中学生は思春期に突入して多感な時期で、学校で嫌なことがあると行きたくなる子もいます。とはいえ子供がいきなり「学校に通いたくない」と言い始めたら、戸惑いを感じる親も多いでしょう。また不登校になる中学生に対して、どのように対応すれば良いかわからないこともあるかもしれません。

子供が不登校になる場合、そこには必ず原因があります。不登校の問題を解決するには、まず子供がなぜ学校に行きたくないのか、その原因を明確にすることが大切です。中学生が不登校になるきっかけで多い原因には、次のようなことが考えられます。

  • 同級生と良好な関係を築けない
  • コンプレックスを指摘された
  • 勉強が難しく成績が伸びない
  • 学校の規則にうまく適応できない
  • 学校の生活が理想と違った
  • 家庭内不和でストレスを感じている
  • 自分の進路に不安を抱いている

該当する項目がないか確認してみましょう。

1.同級生と良好な関係を築けない

中学生になると、仲の良い友達同士でグループを組んで遊ぶことが多くなります。良好な関係を築けているうちは問題ありませんが、些細なことがきっかけでグループから追い出されてしまい、それが不登校の原因になることもよくあります。

グループから外れてしまうと、仲間はずれ状態になるので教室で孤独になってしまいます。場合によっては、人間関係のもつれがきっかけでいじめに発展することも少なくありません。学校にいるのが嫌で友達から逃げるように不登校になります。

またグループから外れてしまうこと以外にも、クラス替えで仲の良い友達と離れてしまったり担任の先生とうまくコミュニケーションを取れなかったりなど、人間関係のもつれが不登校の原因になることがあります。

2.コンプレックスを指摘された

中学生は多感な年頃で、身長やスタイルなどに対してコンプレックスを抱えて悩む子も多いです。親から見ると些細なことであっても、本人には大きな問題で精神的につらい思いをしている子もいます。

このような状況で、友達から自分のコンプレックスを指摘されたことがきっかけで不登校になる中学生も少なくありません。指摘した子に悪気はなくても、当の本人は自尊心を傷つけられてしまいます。

自分のコンプレックスを他人に見られたくないという思いから学校に行かないだけでなく、部屋に閉じこもってしまう子も多いです。コンプレックスが外見だった場合「こんな自分に産んだ親が悪い」という発想になり、親を攻め立てることもあります。

3.勉強が難しく成績が伸びない

小学生から中学生になると、勉強の難易度が上がります。また定期的にテストが実施されるため、必死に勉強に付いていかなければいけません。学校によっては学力の順位が公開される場合もあり、同級生と比べられる機会もあります。

ただ思ったように成績が伸びなくて勉強への意欲が低下し、不登校になる事例も多いです。勉強は一度つまずいてしまうと、授業についていくのも難しくなるので自分だけ取り残されたように感じます。

特に中学3年生になると、高校受験が待ち構えています。毎日必死に勉強しているにもかかわらずテストの成績が上がらないと、将来が見えない不安から不登校になる中学生も多いです。親には子供の学力を上げるための対策が必要になるでしょう。

4.学校の規則にうまく適応できない

中学校のなかには、厳しい規則を設けている学校もあります。髪型・服装・所作などが校則に違反していないか、細かく確認される場合もあります。特に女の子は異性の目が気になる年頃で、化粧をしたり髪の毛を染めたりしたい子も多いようです。

ただし校則に違反している場合は、先生から注意を受けることになります。学校の厳しい規則に適応できず、不登校になる事例も多いです。このような理由で学校に通わなくなる子は、学校以外で仲間を作り非行に走ることも少なくありません。

夜中まで遊び回ったりお酒やたばこに手を出したりすることもあり、心配になる親も多いはずです。しかしこの場合の不登校は、学校の規則に疑問を感じ適応できていないだけなので、転校して学校を変えれば、また通い始めることもあるでしょう。

5.学校の生活が理想と違った

不登校になる原因で多いのが、無気力といわれています。例えば学校生活が理想していたものと違ったことも、不登校になる一つの要因です。中学生になればもっと楽しい生活が送れると思っていたものの、勉強が難しかったり学校の規則が厳しかったりなど現実に直面します。このギャップを感じたときに無気力になり、結果的に不登校になってしまうのです。

そのほかにも中学受験で燃え尽き症候群になり、不登校になる子もいます。燃え尽き症候群とは、今まで熱心に勉強に取り組んでいた人が中学校に入学したあとに急に熱意や意欲を失ってしまう状態のことです。別名「バーンアウト」と呼ばれるもので、中学受験をした子にもよく見られます。

無気力が理由で不登校になった場合、無理やり学校に行かせるのは良くありません。親からすると少しでも早く学校に行かせたいと思いますが、本人を休ませることが一番です。無気力から前に進みたい気持ちが戻るまで、見守ってあげることが大切です。

6.家庭内不和でストレスを感じている

中学生が不登校になるのは、学校生活や勉強だけが原因ではありません。家庭内不和でストレスを感じて学校に行かなくなる子もいます。例えば学校で友達から休日に家族で遊んだなどと話を聞くと、自分の家庭と比べて落ち込んでしまうのです。

家庭内不和以外にも、両親の離婚やリストラなど家庭環境が不登校の原因になることもあります。家庭環境が原因で不登校になった場合、夜遊びや非行に走る子もいれば自分の部屋に閉じこもる子もいます。子供によって、反応はそれぞれ異なるでしょう。

心配をかけないように子供の前では仲良くしているつもりでも、子供は両親の変化を敏感に察知します。また子供は親に気を遣って苦しい気持ちを打ち明けられず、親子ですれ違いが起こることもあるでしょう。

7.自分の進路に不安を抱いている

中学3年生になると、自分の将来と向き合わなければいけません。明確な目標や目的があれば迷うことなく進む道を決められますが、なかには自分がこの先どのような人生を歩むべきか答えが出ない子もいます。このような場合、自分の進路に対して不安を感じ不登校になることがあるようです。

また行きたい高校が明確にあっても、自分の成績では難易度が高い場合は「自分はダメな人間だ」と思い込み自暴自棄になる子も多いです。このような状態が続くと、最終的に友達に会うことや勉強することが嫌になり学校に行かなくなります。

このまま放置すると高校受験を受けないといった決断をすることもあるので、親は子供に対してさまざまな選択肢があることを教えてあげることが大切です。

不登校の中学生に対して親が注意すべき対応

子供が不登校になる原因を明確にして適切な対応をすれば改善されることもあります。不登校の中学生に親が注意すべき対応は、以下のとおりです。

  • 学校を休んで良いことを伝える
  • 子供が相談しやすい環境を作る
  • 子供の頑張りを褒めてあげる
  • 個別塾や家庭教師の利用を検討する
  • 保健室登校を子供に提案する
  • 担任の先生と話す時間を設ける
  • 放置せず子供に寄り添う

それぞれの項目を確認していきましょう。

1.学校を休んで良いことを伝える

中学生で不登校になった子供は、どこか罪悪感を感じながら学校を休んでいることも多いです。「学校に行かないことは良くないことだ」と頭ではわかっていても、「今は学校には行きたくない」といった相反する葛藤を抱えています。

このような状況下で、親が学校を休んでも良いことを伝えると子供は安心するのです。親は自分の味方だと強く認識し、子供から不登校になった理由を話してくれることもあります。無理やり学校に行かせるのではなく、子供に時間を与えてあげましょう。

2.子供が相談しやすい環境を作る

いきなり子供が学校に通わなくなると、「怠けているだけだ」と子供を頭ごなしに叱ったり話を聞き流したりする親もいるでしょう。不登校になる理由はさまざまですが、親からすると些細な事でも子供にとっては深刻な問題です。

問題を軽く受け止められたり適当に話を聞き流されたりすると、子供は自分の殻に閉じこもってしまい親に頼ることを諦めてしまうかもしれません。不登校の問題を解決するには、家庭では子供が相談しやすい環境を作ってあげることが大切です。

3.子供の頑張りを褒めてあげる

「模試の成績が上がらない」「部活で良い結果を残せなかった」など、自分のがんばりに反して求める成果を得られなかったことが原因で不登校になる子もいます。このような場合は、子供を責めるのではなく今までのがんばりを褒めてあげましょう。

また「今まで大変だったね」「毎日がんばってたもんね」などがんばりを労う言葉をかけることも大切です。親から褒められたり労いの言葉をかけられたりすることで、また意欲が上がる子もいます。不登校から抜け出す糸口になることも多いです。

4.個別塾や家庭教師の利用を検討する

「思うように成績が伸びない」「学校の勉強が難しくて授業についていけない」などの理由から不登校になる中学生も多くいます。このような場合は、子供の基礎学力を上げる対策が必要でしょう。

子供は勉強に関して自分に自信がない状態なので、学力を上げて自信を取り戻し勉強への意欲を復活させることが大切です。具体的には、個別塾や家庭教師の利用を検討するのが良いでしょう。

5.保健室登校を子供に提案する

子供は不登校のきっかけになった悩みに加え、学校に行けない罪悪感を抱えている子も多くいます。罪悪感は子供の自信や気力を奪うので、新たに学校に行けない理由になることも多いです。

このような場合は、保健室登校を子供に提案するのがおすすめです。保健室登校は教室ではなく保健室に登校する方法で、子供の罪悪感を和らげる効果があります。保健室登校を導入していない学校もあるので、確認したうえで子供に提案してみましょう。

6.担任の先生と話す時間を設ける

進路への不安や学校の規則が理由で不登校になっている場合は、親子で問題を解決することが難しい場合があります。このような場合は、担任の先生を交えて話し合うことで子供が抱える悩みを解消できるかもしれません。

ただ中学生は多感な時期なので、担任の先生に話したくないこともあるはずです。場合によっては子供の傷が深まる可能性もあるので、先生を交えて話し合いをしたい場合は、まず子供に確認を取りましょう。

7.放置せず子供に寄り添う

子供がいきなり学校に行かなくなると、どのように対応していいかわからず放置したり諦めたりする親もいます。ただ子供は親の行動や態度を敏感に察知するので、親は自分の味方ではないと認識されることもあるかもしれません。

親子関係に亀裂が入ると、子供とまともに話し合いが行えない状態に陥る可能性もあります。放置したり諦めたりせず、常に子供の気持ちに寄り添って見守っている姿勢を示すことが大切です。

不登校の中学生でも高校に進学できる?

中学生で不登校になり学校を休みがちになると、高校に進学できるか不安に感じる親も多いでしょう。ただ中学生で不登校になっても全日制高校定時制高校通信制高校など、子供の状況に応じた高校に進学することができます。

なかには高校で環境が変わったことを機に、学校に通えるようになる子供もいます。ひと口に高校進学といっても、さまざまな選択肢があることを子供に伝えてあげましょう。

>>不登校から高校進学を叶えよう!入試や受験、高校選びの注意点

中学生が不登校になるのはさまざまな原因がある

中学生が学校に通わなくなる原因は、さまざなことが考えられます。難しい問題ではありますが、「どのように子供に接すればいいかわからない」と放置するのは良くありません。まずは話をじっくり聞いて、親が子供の気持ちをきちんと理解してあげることが大切です。

少し時間は必要になるかもしれませんが、子供の気持ちを汲んだうえで正しく対応できれば不登校が改善されることもあります。高校進学もさまざまな選択肢があるので、子供に提案してあげましょう。