3000万円特別控除とは?適用要件やよくある疑問も解説!

不動産売却時に適用される特例に「3,000万円の特別控除」と呼ばれるものが存在します。
適用条件に該当していれば3,000万円までを限度に譲渡所得税が控除されます。しかし適用条件は少々複雑です。
そこで今回は3,000万円特別控除の適用条件や申請方法、併用可能な他の控除などを紹介します。

【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
3,000万円特別控除の概要

3,000万円控除と言われても、どんな条件で利用できるのかイメージできる人は少ないでしょう。
そこで3,000万円特別控除の概要から適用条件について詳しく解説します。
この記事で解説した内容を元に特別控除を利用できるかどうかチェックしてみましょう。
3,000万円特別控除の内容
3,000万円特別控除とは、譲渡所得を3,000万円まで控除できる制度のこと。
譲渡所得とは何かについては、国税庁が以下のように説明しています。
要するに、不動産を売却して得た利益は譲渡所得として認識されます。
ここで重要な点は、売却益と成約価格は異なるということです。
売却益は、成約価格から不動産の購入時の価格を引いた金額を指します。
特定の条件を満たせば、最大3,000万円までの特別控除を利用することが可能です。
つまり、不動産の売却から得た譲渡所得は、この特別控除を適用すれば、最大で3,000万円まで控除することができます。
3,000万円特別控除の適用要件
では、不動産売却における3,000万円特別控除の適用条件とは、どのようなものなのでしょうか。
第一に不動産売却における3,000万円特別控除を利用にすためには、マイホームであることが前提条件です。
投資用不動産、事業用不動産などの譲渡所得は控除の対象外なので注意しましょう。
その他の具体的な適用条件は以下の通りです。
(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地などの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
(4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(5)災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
出典:国税庁HP No.3302 マイホームを売ったときの特例
その他適応外の条件なども存在するので、興味のある人は国税庁のウェブサイトを見てみましょう。
3,000万円特別控除を申請するには

3,000万円特別控除を申請するにはどのような書類を準備して、どのように申請すればいいのかを解説します。
申請に必要な書類
3,000万円特別控除の申請手順を解説する前に必要な書類にはどんなものがあるかを見てみましょう。
必要書類は以下の4点です。
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 戸籍の附票
- 売買契約書(取得時と売却時)
確定申告書と譲渡所得の内訳書は確定申告に使用する書類です。
税務署や国税庁のウェブサイトからダウンロードをするか、確定申告の相談会場などに用意されているものを使用する形になります。
戸籍の附票は関しては本籍に記載されている市町村窓口で取得が可能です。
マイナンバーを持っていればコンビニでも発行できるので、日中忙しい人などは活用しましょう。
申請方法
3,000万円特別控除を適用させるためには、確定申告をしなければなりません。
確定申告の申請先はお住まいの地域管轄の税務署で行いましょう。
またネット上で確定申告できるサービス「e-tax」も利用できます。
画面の案内に従って必要事項を入力すると申告書が出来上がるので、比較的簡単に確定申告が行えます。
確定申告書は代理で作成依頼も可能です。税理士に作成依頼すれば必要書類を揃えてくれます。
作成費用は事務所によって異なり、3〜10万円程度が相場です。
お金はかかりますが、税務知識を活かして正確に書類を作成できるので、差し戻しなどによる手間は発生しにくく時間短縮に繋がります。
なお確定申告の申請期間は例年、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までです。忘れずに確定申告を行いましょう。
10年超所有軽減税率の特例を併用してさらに節税

譲渡所得税の特例には他に10年超所有軽減税率の特例というものが存在します。
この特例は3,000万円特別控除と併用が可能なので、併せてご紹介します。
10年超所有軽減税率の特例とは名前の通り、10年を超える居住用不動産であれば譲渡所得の税率が軽減される特例のことです。
譲渡所得税は所有期間により税率が変わります。
所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得となり、税率は39.63%です。
対して所有期間が5年超の場合は、長期譲渡所得で税率は20.315%に変わります。
さらにこの特例を受けると所有期間が10年超えている場合、6,000万円までは14.21%に税率が軽減されるようになります。
譲渡所得税率の一覧表
譲渡所得の種類 | 税率 | |
---|---|---|
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 20.315% | |
10年超所有軽減税率の特例 | 6,000万円以下 | 14.21% |
6,000万円超の部分 | 20.315% | |
短期譲渡所得 | 39.63% |
3,000万円特別控除と併用すれば節税効果が高くなるので、ぜひ活用しましょう。
注意!住宅ローン控除は併用できない

3,000万円特別控除を利用してマイホームを売却する人の中には、新しく家を購入する人もいるでしょう。
ただし購入の際に住宅ローンを組む場合は注意が必要です。
住宅ローンを組む際に多くの人が利用する節税方法に住宅ローン控除があります。
住宅ローン控除は別名「住宅借入金等特別控除」とも呼ばれ、名前の通り住宅ローンを利用した際に所得税の控除が受けられる制度です。
実は住宅ローン控除は3,000万円特別控除との併用ができません。
そのため利用前にシミュレーションを行い、どちらの控除を利用したほうがお得かを確認するといいでしょう。
ちなみに住宅ローン控除の場合、借入額によりますが最大控除額は年間35万円、控除期間は13年間なので合計455万円です。
先ほど紹介した譲渡所得税の税率表から控除額を計算して比較してみましょう。
3,000万円特別控除に関する疑問

3,000万円特別控除を利用する際のよくある疑問をまとめました。
今回ご紹介する疑問は以下の通りです。
- 共有名義の場合は共有者ごとに利用できる?
- 家を取り壊して売却する際は利用できる?
- 相続した実家を売却する際は利用できる?
- 家を貸し出していても利用できる?
- 賃貸併用している家を売却する際は利用できる?
- 店舗併用している家を売却する際は利用できる?
それぞれ詳しく見てみましょう。
共有名義の場合は共有者ごとに利用できる?
結論から言うと、共有者ごとに特例が利用できます。
マイホームを所有している家庭の中には共有名義となっている場合も少なくありません。
その際は、それぞれの持分に対して3,000万円特別控除が利用できます。
例えば夫婦で均等な持分を共有していた場合、6,000万円までの売却益が控除として利用できます。
3,000万円特別控除を利用する際は各々で申請を出す必要があるので忘れず行いましょう。
家を取り壊して売却する際は利用できる?
先ほど3,000万円特別控除はマイホームの売却益に対して適用されると説明しました。
では、マイホームを解体して売却する際はどのような扱いになるのでしょうか。
結論としては、期間内に売買契約を締結できれば控除の利用が可能です。
国税庁のウェブサイトによると、以下の記述があります。
ただし、取り壊し後に貸し駐車場などのその他の用途として利用してしまうと適用外になるため注意しましょう。
相続した実家を売却する際は利用できる?
両親が亡くなり、相続した実家を売却する際も譲渡所得の3,000万円控除が利用できます。
ただし、先ほどから紹介しているマイホーム売却にかかる譲渡所得とは別の「空き家にかかる譲渡所得の特別控除」と呼ばれる制度を利用します。
制度が違うため、適用条件や提出書類が異なるので注意が必要です。
詳しくは国税庁のウェブサイトを確認してください。
家を貸し出していても利用できる?
仕事や家庭の都合で転居し、自身が住まなくなった家を賃貸として貸し出すケースもあるでしょう。
このケースも条件付きで3,000万円特別控除の利用が可能です。
3,000万円特別控除の適用条件として「居住の用として利用しなくなった日から以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば適用する」といった項目があります。
今回のケースの場合、居住の用として利用しなくなった事由に該当します。
そのため家を貸し出してから約3年間は3,000万円特別控除が適用可能です。
賃貸併用している家を売却する際は利用できる?
住居部分の一部を賃貸として貸し出している賃貸併用住宅の場合も控除の対象になります。
ただし自身が居住用として使用している部分のみ(居住用部分の割合は登記事項証明書等で確認可能)特別控除の対象となるので注意しましょう。
店舗併用している家を売却する際は利用できる?
先に解説した賃貸併用住宅同様、店舗併用住宅も居住用として使用している部分のみ3,000万円特別控除の対象になります。
ただし居住用の部分が全体の90%以上の場合は、全体を居住用として使用しているとみなされます。
店舗併用住宅で3,000万円特別控除を利用する際は、居住用として使用している部分の床面積が分かる資料を用意しなければなりません。予め資料を確認しておきましょう。
3,000万円特別控除の要件に適用しているか確認しよう

3,000万円特別控除とは、マイホームを売却する際に得られる売却益の3,000万円までを限度に、譲渡所得税が控除される税制特例です。
この特例以外にも住宅ローン控除、相続した空き家の譲渡所得の特別控除など、さまざまな制度があります。
ただし、控除が適用されるのは条件にあてはまる場合のみです。
条件がたくさんあり、ややこしく感じてしまうかもしれませんが、節税を行う上でとても大事ですので、本記事で紹介した内容を呼んで理解を深めましょう。