住宅ローンが払えないときの対処法|滞納すると何が起こる?
住宅ローンの返済額や期間は、利用者ごとにさまざまです。最長35年以上もの期間をかけてローンを返済していくことになります。無理のない範囲で契約しても、もしものことがあれば途中で返済が難しくなることも考えられるのです。
返済が滞っても、すぐに何らかのペナルティが課せられるわけではありません。しかし、滞納が一定期間続くとブラックリストに登録され、やがて競売にかけられることになります。家のローンが払えなくなったときには、状況に応じた対処法があります。
滞納期間が長くなるほど状況が悪化するため、早めに対処することが大切です。この記事の前半では、住宅ローンが払えなくなる原因を解説します。後半には状況別の対処法を解説するので、ローンの返済に不安がある人はぜひ役立ててください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
住宅ローンが払えなくなる原因
戸建てやマンションのローンは、この先も同じように払い続けられるとは限りません。ローンが払えなくなる原因は、失業や病気などによる収入減少だけではありません。ここでは、住宅ローンが払えなくなる原因を解説します。
さまざまな事情による収入減少
住宅ローンを借入れる際には、審査に通る必要があります。審査項目や基準は金融機関ごとに異なりますが、基本的に収入面を重視するところが多いです。例えば、継続して安定的な収入があることや勤続年数などです。
契約時点で審査に通っていても、収入状況はいつ変化するかわかりません。次の状況に直面して収入が減少すると、ローンを払えなくなることがあります。
- 会社の倒産
- 会社の業績悪化
- リストラ
- 転職
- 病気
- ケガ
- 災害による影響 など
何らかの災害が発生した場合、会社や自宅が直接的な被害を受けて休業を余儀なくされることも珍しくありません。被災してもローンの返済義務はあるため、基本的には払い続けていく必要があります。
想定外の支出増加
次のような想定外の支出があった場合、ローンが払えなくなるケースがあります。
子供の将来のために貯蓄したり学資保険をかけたりしていても、進学先によっては賄えないケースもあります。教育費を支払ってしまった結果、住宅ローンが返済できなくなってしまうという事態が起きかねません。
事故に遭ったり病気になったりした場合、想像以上に治療費がかかることがあります。医療保険に加入していれば通院や治療にかかる費用の補償はされるかもしれません。しかし入院が長引いて仕事ができなかったり、治療費がかさみ、住宅ローンの返済が厳しくなる可能性が考えられます。
内閣府が公表した資料によると、2019年10月1日時点での高齢化率は28.4%であることがわかっています。親の介護で支出が増加し、家のローンが払えなくなったという人も多いようです。
出典:内閣府「令和2年版高齢社会白書」
返済比率に見合わない借入れ
住宅ローンで借りられる金額は、返済比率と呼ばれる割合を基準に考えます。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合です。金融機関の中には、返済比率の上限を設けているところもあります。
上限は金融機関ごとに異なりますが、30~50%が一般的です。一方で、無理のない返済比率は20~25%以下だと言われています。ローンを組む際には、上限の金額で借りる人も多いのが現状です。
しかし、一般的な返済比率を上回っている場合はローンの負担が大きく、払えなくなる人もいます。
住宅ローンが払えなくなったらどうなる?
ローンが払えなくなっても、債権者によってすぐに何らかの措置が講じられるわけではありません。措置は、時間を追って段階的に講じられます。最初の数ヵ月には催促状や督促状が届き、一定期間が経過すると信用情報機関に登録されます。
信用情報機関とは、ローンやクレジットカードなどの借入れ状況を管理している機関です。登録されると金融機関やクレジットカード会社などに情報が提供され、一定期間は新たな借入れができなくなります。
信用情報機関に登録された後もローンが払えない状況が続くと、最終的には競売にかけられます。
住宅ローンの滞納から競売になるまでの流れ
ここからは、住宅ローンが払えなくなってから競売にかけられるまでの流れを解説します。ローンを借りた以上は、どのような状況に陥っても返済義務を果たさなければなりません。そのため、払えない期間が長くなるほど債権者から講じられる措置は厳しくなります。
ローンが払えなくなってから競売に至るまでの基本的な流れは、次の通りです。
- 【滞納から1~3ヵ月程度】催告状や督促状が届く
- 【滞納から3~6ヵ月程度】期限の利益が喪失
- 【滞納から6~10ヵ月程度】競売開始決定通知書が届く
- 【滞納から10ヵ月目以降】入札開始~立ち退き
それでは、各項目を詳しく解説します。
【滞納から1~3ヵ月程度】催告状や督促状が届く
まずはローンが払えなくなってから1~3ヵ月程度経った頃、債権者から返済を求める催促状や督促状が届きます。この時点までに返済の目途が立てば期限の利益があるため、信用情報機関への登録を免れる可能性は高いです。
期限の利益とは、金銭消費賃借契約を結んだ際に債権者から債務者に与えられるもので、決められた期限までなら債務の履行が求められません。つまり、借りた金額に対しての分割返済が認められた権利です。
一方で期限の利益を喪失すると分割返済の権利を失うため、一括返済が求められます。利益が担保されている期間は、債権者と交渉する余地がまだ残されている状態になります。
【滞納から3~6ヵ月程度】期限の利益が喪失
催促状や督促状が届いてもローンを払えない状態が続いた場合、債権者から与えられていた期限の喪失を知らせる代位弁済通知書が届きます。ここまでの期間は、ローンが払えなくなってから3~6ヵ月程度が目安です。
期限の利益が喪失すると分割返済できなくなるため、残債の一括返済が求められます。この頃になると、信用情報機関に登録し始める債権者も多いです。債権者と交渉する余地は、基本的に期限の利益の喪失とともに無くなると考えて差し支えありません。
しかし、任意売却を選択すれば、競売を免れる可能性がまだ残されています。なお、任意売却に関しては【滞納後】住宅ローンが払えなくなったときの対処法で詳しく解説します。
【滞納から6~10ヵ月程度】競売開始決定通知書が届く
期限の利益が喪失してもなおローンを払えない場合は、裁判所から競売開始決定通知書が届きます。通知書は、債権者が債権を回収するために裁判所に競売を申し立て、受理されたことを知らせる文書です。
特別送達で通知書が送付されるため、正当な理由がない限りは受取拒否できません。ここまでに至ると、ほとんどのケースで競売を免れなくなります。通知書が届いた後は、裁判所の執行官と鑑定人が強制的に現地調査を行います。
競売は予め決められた最低競売価格からのスタートになるため、市場価格に近い価格での売却は難しいです。物件の売り出し情報は専門サイトやチラシに掲載されるため、周囲に競売の事実が知られる可能性があります。
【滞納から10ヵ月目以降】入札開始~立ち退き
裁判所による現地調査を経て最低競売価格が決められた後は、期間入札通知書が届きます。通知書は、競売予定物件に関する次の情報が記載されています。
- 入札開始から入札終了までの期間
- 入札の開札日
入札期間は1週間以上1ヵ月以内の範囲で決められますが、通知書が届いた時点で入札開始までの時間はほとんどありません。入札開始日以降は購入希望者が裁判所に金額を提示し、いつでも申し込める状態になります。
この時点でも任意売却を申し出ることはできますが、ここまでに至ると承認を得られないケースが多いです。落札後の売却代金で完済できない場合は、不足分が支払い終わるまで以後の給料などが差し押さえられるケースも。
物件の所有権は落札者に移るため、最終的には立ち退きを余儀なくされます。
【滞納前】住宅ローンが払えないときの対処法
戸建てやマンションのローンが払えなくなっても、競売にかけられてしまうとあきらめる必要はありません。ローンが払えないときには、状況に応じた対処法があるからです。払えない期間が長くなるほど解決が大きいため、何よりも早めに対処することが大切です。
ここでは、ローンの返済が滞る前にできる対処法を解説します。
銀行に相談する
ローンが払えなくなりそうなときには、まず借入先の金融機関に相談しましょう。状況次第では、返済計画を変更してもらえる可能性があるからです。変更できるおもな内容は、次の通りです。
月々またはボーナス月の支払い金額を減らすことで、最終返済期日を延長することができます。
ローンは、元金と利息を同時に払い続けるのが一般的です。元金返済据置では、最終返済期日を変更せず、一定期間は利息だけを支払います。一定期間を過ぎると、再度元金の支払いがスタートします。
返済条件変更では、月々またはボーナス付きの支払い金額を見直せます。割賦金変更と異なり、最終返済期日は延長しません。
返済計画の変更自体は滞納にはあたらないため、基本的には承認してもらえます。ただし、変更するためには、金融機関を納得させるための確固たる根拠が必要です。金融機関によっては、収入や離職の状況が確認できる書類の提出が求められることもあります。
住宅ローンを借換える
家のローンが払えなくなりそうなときには、今よりも金利の低いものに借換えるのも手段のひとつです。ローンは元金と利息をあわせて支払うため、金利が低いほど毎月の返済額を抑えられます。
金融機関によっては、借換えで返済期間を延ばせることもあります。しかし、元金の返済が先送りになるため、結果的に総返済額が増えることもあるので注意しましょう。また、借換えには次の諸費用が必要です。
既存のローン |
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借換えローン |
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どのくらいの費用がかかるかは金融機関によって異なりますが、40~50万円程度をイメージしておくといいでしょう。業界団体や金融機関の中には、借換えのシミュレーションができるサイトを用意しているところもあります。
シミュレーションを利用すると、借換え前後のおおまかな返済額や総返済額などが確認できます。
不動産会社の仲介で売却する
家のローンが払えなくなりそうなときには、家を売却して完済するのも選択肢のひとつです。ここでのポイントは、できるだけ早く売却することです。ローンが払えなくなって一定期間経つと、信用情報機関に登録される可能性があります。
一度登録されると一定期間は新たな借入れができないため、ほかの住宅を購入して住み替えることもできません。また、自宅を売却する際には、売却方法にも注意しましょう。自宅の売却方法には、仲介と買取りの2種類があります。
仲介は、不動産会社に買い手を探してもらって売却する方法です。一方の買取りは不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、買取価格は市場価格の70%程度だと言われています。そのため、買取りよりも仲介を選んだほうが高い売却が期待できます。
自宅を売却する際には、不動産会社による査定が必要です。査定額は不動産会社ごとに異なるため、複数社に依頼して比較するようにしましょう。
保険が適用されないかを確認する
金融機関は住宅ローンを組む際に、契約者に団体信用生命保険への加入を義務付けています。団体信用生命保険とは、契約者が死亡したり高度障害になったりしたときなどに、保険金で住宅ローンを完済できる生命保険です。
例えば腎臓病によって永久的に人工透析が必要になった場合、団体信用生命保険が適用できる可能性があります。
特定疾病保障のオプションもあるため、病気やケガなどが原因でローンが払えなくなったときは、契約内容を確認してみてください。
【滞納後】住宅ローンが払えなくなったときの対処法
すでに家のローンが払えなくなった状態でも、いくつかの対処法は存在します。対処法の中には、居住中の自宅を手放さずに済む方法もあります。この時点で対処できる方法は、任意売却またはリバースモーゲージです。
任意売却する
住宅ローンを滞納した後は、任意売却と呼ばれる方法で完済するのもひとつの手です。任意売却は金融機関の合意を得た上で自宅を売却し、ローンを完済する方法です。競売開札日の前日までは切り替えができるため、競売開始決定通知書が届いてもすぐに対応すれば間に合います。
競売の場合、最低競売価格から入札がスタートするため、高値での売却は難しいです。その一方で任意売却は、市場価格に近い金額での売却が期待できます。不動産会社ごとに得意分野が異なるため、任意売却に強いところを選びましょう。
オーバーローンになった場合は、金融機関との協議で残債を返済していく流れになります。ただし、任意売却すると信用情報機関への登録は免れません。
リバースモーゲージを視野に入れる
住宅ローンを滞納した後の対処法には、任意売却のほかにリバースモーゲージと呼ばれる方法もあります。リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から融資が受けられる高齢者向けの金融商品です。
住宅ローンの場合、元金と利息をあわせて返済します。一方のリバースモーゲージは、利息のみの返済になります。年齢条件は金融機関によって異なりますが、60~80歳に設定しているところが多いです。
契約期間は契約者の死亡をもって終了となりますが、基本的に残債の返済は相続人に引き継がれます。相続人が自宅を売却し、売却代金で一括返済する選択肢もあります。借入額は物件の担保価値によって異なりますが、評価額の5~7割程度が一般的です。
リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら受け取った融資でローンの完済が目指せる方法です。
まとめ:住宅ローンは払えなくなる前に対処しよう
家のローンが払えなくなる状況は、誰にでも起こる可能性があります。滞納しても債権者からすぐに措置が講じられるわけではありませんが、早めに対処したほうがダメージは少なくなります。
措置は段階的に講じられ、最終的には競売にかけられることになります。滞納が始まって数ヵ月後には信用情報機関に登録されるため、払えなくなる前に対処したほうがいいでしょう。自宅に住み続けたいなら、リバースモーゲージも選択肢のひとつです。
しかし、金利変動や短期間で資金を使い果たしてしまうなどのリスクもあるため、利用する際には家族とよく話し合うようにしましょう。