専任媒介契約を解除したい!違約金はかかる?解除通知書の書き方は?
不動産会社との契約締結後に、不動産会社に対して不信感が生じた場合や売買を中止したい理由ができた場合、契約期間中でも解除できるのかは気になるところではないでしょうか。
結論から言えば、契約解除は可能です。ただし、解除理由によっては違約金や費用償還などが発生する場合もあります。
この記事では、専任媒介契約を期間中に解除できる理由とともに、発生する可能性のある費用や困ったときの相談先、解除の手順を詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
専任媒介契約は契約期間中に解除できるのか?
専任媒介契約の契約期間は最長3ヵ月で、契約期間中でも解除できます。国土交通省が定める「専任媒介契約約款」の第14条では、期間中の解除について次のように記載しています。
甲は売主(または買主)、乙は不動産会社(宅地建物取引業者)のことです。一方が契約書に記載された義務を履行していないときは、契約期間中でも解約できることを示しています。
不動産会社の義務とは専任媒介契約約款第4条、第5条で定める、積極的な努力や業務報告、説明責任などです。
例えば、不動産を売却したい売主が、不動産会社と専任媒介契約を締結したとします。そこで不動産会社が買主候補を積極的に探さなかったり、買主候補が現れても売主に報告しなかったりすれば、義務を履行していないため契約解除できるということです。
専任媒介契約を解除するだけなら違約金はかからない
専任媒介契約を期間中に解除するだけであれば、違約金の支払は不要です。ただし、契約解除すれば、あらゆる費用がかからないというわけではありません。違約金がかからない理由と、費用が発生する場合について解説します。
専任媒介契約の解除に関する違約金はない
違約金とは「契約に定めた事項の債務不履行」について、相手方に支払う金銭のことです。専任媒介契約書には有効期間が記載されていますが、契約期間中に解約しても違約金がかかる旨の設定がされていません。そのため、期間中契約を解除しても違約金は発生しません。
また、契約解除の理由が不動産会社の責めに帰すべき事由、つまり「落ち度」がある場合には、不動産会社が営業活動に要した費用の支払いも求められません。
不動産会社側の落ち度とは、専任媒介契約書記載の「成約に向けての義務」に記載されている内容が果たされていないを指します。具体的には次のような事項です。
- 不動産指定流通機構(レインズ)への期限内の登録
- 契約書で指定した頻度の報告義務
- そのほか営業活動
万が一、不当に違約金を請求された場合は、宅建協会、弁護士(法テラス)、都道府県庁の担当部署などに相談しましょう。
費用償還の可能性はある
契約期間中の解除による違約金はかかりませんが、不動産会社に落ち度がなく、売主の事情によって契約解除する場合は、営業活動にかかった実費を不動産会社が売主に請求できる「費用償還」が存在します。
以下は、専任媒介契約約款の第12条「費用償還の請求」に記載されている内容です。
実費の上限額は約定報酬額です。ただし、実費分しか支払う必要はないので上限額が請求されるとは限りません。費用償還を請求された場合は、交通費、広告費、通信費などの明細書をしっかり確認しましょう。
契約違反した場合のみ違約金がかかる
違約金が発生するのは、売主が契約違反をした場合のみです。売主の違反は主に、専任媒介契約を締結した不動産会社とは別の不動産会社と媒介契約し、その不動産会社の仲介によって物件の売買契約を成立させることを指します。
専任媒介契約は、媒介契約を結べる不動産会社が1社に限定されているので、一般媒介契約のように、ほかの業者とも契約をすることはできません。
これに違反し、別の不動産会社の仲介によって知り得た買主と売買契約を成立させると違約金が生じます。違約金の額は専任媒介契約書で定めた約定報酬額です。
なお、違約金ではありませんが、費用償還とは別に約定報酬額を請求されるケースもあります。
専任媒介契約の有効期間と有効期間満了後の2年以内に、当該の不動産会社が紹介した取引相手と直接取引きした場合です。
この直接取引は不動産会社の仲介によって成立したものとみなされるため、不動産会社から請求されれば仲介手数料として約定報酬額を支払う必要があります。
専任媒介契約を解除するか迷ったときの対処法
専任媒介契約締結後、契約解除の決め手となるような事由がなくても、不動産会社に「不信感があった」「不快な思いをした」といった場合の対処法を紹介します。
ほかの不動産会社に相談する
契約した不動産会社に不信感があるときは、ほかの不動産会社に相談しましょう。専任媒介契約は、ほかの不動産会社と契約することを禁止していますが、契約せずに相談することまでは禁止していません。
不動産会社では、専任媒介契約書で定められている不動産流通機構(レインズ)への売却物件情報の登録が行われているかどうかを調べられます。
また、どのような販売活動や広告活動がなされているかを確認してもらえることもあるので、契約解除の判断材料をそろえられるでしょう。
宅地建物取引業協会へ相談する
契約を解除したい理由があるものの、不動産会社の落ち度と言えるのかわからない場合や、苦情をしかるべき場所へ報告しておきたい場合は、宅地建物取引業協会(宅建協会)、または全日本不動産協会(全日)に相談しましょう。
宅建協会、全日は47都道府県にそれぞれ設置されている公益社団法人です。消費者が安心・安全な不動産取引ができるよう、無料相談を受け付けています。
相談できるような不動産会社が見つからない場合は、宅建協会に相談することをおすすめします。
ほかの不動産業者への相談は「自社への切り替え」を提案されるため、完全な第三者目線で判断してくれる協会へ相談するほうがおすすめです。
ただし、不動産業者でも知り合いの業者や親身になってくれるところならいいかもしれません。
なお、協会は全国宅地建物取引業協会と全日本不動産協会の2団体ありますので、現在契約を結んでいる不動産業者が所属する協会へ相談しましょう。
専任媒介契約の解除方法
最後に解説するのは、専任媒介契約の解除方法です。ただし、積極的に契約解除をするのではなく、契約期間満了を待つという手段もあるため、期間満了と契約解除の2種類のパターンに分けて解説します。
契約期間満了を待つ場合
不動産の売買を急ぐ必要がないのであれば、契約期間満了による契約終了を待つというのもひとつの手です。専任媒介契約には自動更新がないため、契約書で定めた最長3カ月の契約期間を過ぎれば契約は終了します。
また、不動産会社に明確な落ち度がない場合でも、納得できる取引ができなければ売買に応じる必要はありません。つまり、どれほど不動産会社が積極的に営業活動しても、期間満了による契約終了なら違約金や費用償還を請求されないということです。
不動産会社の態度が何となく悪い、売却活動に満足できないなど不信感があるものの、明確な落ち度を追求できず、なおかつ不動産の売買を急いでいないのであれば、契約期間満了を待つとスムーズです。
専任媒介契約の契約期間中に解除する場合
すぐにでも専任媒介契約を解除したいのであれば、次の手順で進めましょう。
1. 不動産会社の担当者に解除する旨を伝える
2. 猶予期間を設定する
3. 解除通知書を内容証明で郵送する
「1. 不動産会社の担当者に解除する旨を伝える」は、電話で連絡するだけで構いません。
「2. 猶予期間を設定する」の猶予期間とは、不動産会社の営業活動を改善するための猶予を与える期間で、3~7日が目安です。これは専任媒介契約約款第15条(契約の解除)の「相当の期間を定めて履行を催告し、」という文言に則っています。
なお、買主と売主の両方から手数料を得ることを目的とした「囲い込み」など悪質な行為がある場合や、法律違反等がある場合は即解除できるため、猶予期間は不要です。このことは、専任媒介契約約款第16条で示されています。
「3. 解除通知書を内容証明で郵送する」の解除通知書の書式については、次の項目で解説します。
内容証明は、郵便局が誰から誰宛にどのような内容の文章を送ったかを証明する制度です。この方法で郵送すれば、不動産会社へ解除通知書を送ったことを証明できるため、通知書が届いていないことを理由にした不動産会社による契約解除の拒否を避けられます。
下記の記事でより詳しく解説しています。
専任媒介契約解除の書式
書式の設定は自由ですが、必ず次の内容を記載しましょう。
- 契約解除通知書の作成年月日
- 宛先(不動産会社の名称と代表者の名前)
- 自分の住所氏名
- 「専任媒介契約解除通知書」というタイトル
- 媒介契約を解除するという内容
- 媒介契約締結日
- 契約内容(解除する理由も含める)
解除する理由の文言に迷ったときは、ほかの不動産会社や宅建協会に相談することをおすすめします。
ほかの不動産会社に相談してから専任媒介契約を解除しよう
契約を解除するかどうかを迷ったときはもちろん、契約解除を最初から決めている場合でも、ほかの不動産会社に相談してから、現在の専任媒介契約を解除するとスムーズです。
売却を急がないとしても、売却自体を取りやめるのでなければ、ほかの不動産会社に相談してからのほうが、ロスタイムなく売買活動を継続できるからです。
信頼できる不動産会社が見つからない場合は、宅建協会への相談や、無料で複数社へ査定を依頼できる不動産一括査定サイトなどの活用をおすすめします。その上で、契約解除をする際は手順や解除通知書への必要事項の記入を守り、円滑に進めましょう。
3ヵ月で切れる契約を前倒しで解除したいということは、それ相応の理由があるかと思います。
相手はプロですから、対応を誤って逆にこちらが損してしまわないよう、しっかりと作戦を練ってから動きましょう。
解除については、まずは担当者に相談しましょう。費用がかかることであれば事前に何らかの報告が入っているはずです。
また、解除の理由についても説明を求められる可能性が高いので、解除理由についてはきちんと説明しましょう。