離婚時の任意売却|メリット・デメリット・離婚前がいい理由を解説
離婚で家の売却を検討する人もいるでしょう。しかし住宅ローンが残っている場合、売却する際に一括返済しなければなりません。そのため、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回っている場合は、自己資金などを充てる必要があります。
しかし、自己資金がない場合などはどうすればよいでしょうか。このような場合、一定の条件をクリアーすれば家を売却できる方法があります。それは任意売却です。
そこでこの記事では、任意売却とはなにか、任意売却のメリット・デメリット、売却にあたっての注意点、手続きの流れなどを詳しく解説します。自宅の売却金額が住宅ローンよりも下になりそうで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの支払いが滞った場合、競売になる前に金融機関の合意を条件として一般市場で売却できる方法のことです。
金融機関の合意を得ることにより、住宅ローン残高が土地・家の売却価格を上回っていても売却が可能になります。
離婚時や離婚後に任意売却になるケースがある
それまでは問題なく過ごしていた場合でも、離婚が原因で任意売却を選択しなければならないケースがあります。
それは、夫婦ペアローンで住宅ローンを借りていた場合です。夫婦ペアローンとは、夫婦それぞれが契約者として住宅ローンを組む方法です。夫婦で2つの住宅ローンを契約し、夫は妻の連帯保証人になり妻は夫の連帯保証人になります。
離婚に伴い一方だけではローンの返済能力が不足することから、支払いが滞り任意売却へと進むケースが多くなります。
任意売却するメリット
任意売却と聞くと、競売と同じように思ったり、印象があまり良くないのでは、と思いがちですが、任意売却は競売よりもメリットがあります。任意売却のおもなメリットは以下のとおりです。
- 競売より高く売れやすい
- 裁判所の不関与
- 周囲に知られず売却可能
それぞれ詳しく解説していきます。
競売より高く売れやすい
住宅ローンの支払いの延滞が続くと、金融機関から一括返済を請求されます。一括返済できなければ、競売手続きが開始されます。
競売での売却価格は、市場価格の8割程度にしかならないケースがほとんどです。売却価格から競売費用も差し引かれます。
競売に対し任意売却では、一般の売却と同じ仲介で売却されるため競売より高く売れやすい傾向にあります。仲介とは、不動産会社が売主と買主の間に立ち両者の契約を成立させることです。
裁判所の不関与
競売は裁判所による売却手続きですが、任意売却では裁判所が関与しません。競売では、裁判所の執行官や評価人が家の現況調査のために訪ねてきます。売却のスケジュールも裁判所側でどんどん進んでいくので、住人にとって大きなストレスとなる可能性があります。
任意売却の場合は通常の仲介で売り出されるので、競売よりはストレスを受けにくいと言えるでしょう。
周囲に知られず売却可能
競売では新聞広告などで売却物件情報を公開するため、近隣住民に競売の事実を知られてしまう可能性があります。
これに対し、任意売却では売却情報がおおやけにされないため、周囲に知られず売却手続きを進められます。
任意売却するデメリット
任意売却は競売よりはメリットはあるものの、もちろんデメリットもあります。それは次の3つです。
- 希望価格で売れない可能性がある
- 債権者(金融機関)との交渉が必要
- 新しい借り入れが難しくなる
それぞれ詳しく説明します。
希望価格で売れない可能性がある
物件の査定額や売り出し価格は、あくまでもこちら側の希望価格です。必ずしも売却物件が希望価格で売れるとは限りません。立地条件、設備内容、築年数などによって売り出し価格を決めます。購入希望者が現れないケースでは想定よりも低い価格でしか売却できない可能性もあるでしょう。
債権者(金融機関)との交渉が必要
任意売却では、ローン借入先である金融機関の同意を得ることが必須条件です。金融機関との交渉には専門的知識と経験を要するため、任意売却では専門会社に依頼することが一般的です。
住宅ローンのある不動産には金融機関が物件を担保にする「抵当権」が設定されています。法律上は抵当権の設定がある家でも売却できますが、抵当権のある家(担保に取られている家)を購入したいと思う人はいないでしょう。
そこで、抵当権を外してもらうために、抵当権者である金融機関の同意を得なければなりません。ローンを完済していない状態で抵当権を抹消してもらうように交渉したところで、素人では金融機関の同意を得るのはかなり難しいです。任意売却の際は任意売却問題に精通した会社に依頼することが大切です。
新しい借り入れが難しくなる
任意売却が選択される理由の一つとして、住宅ローンの滞納が挙げられます。
61日以上のローン支払い滞納は、金融事故情報として(いわゆるブラックリスト)掲載される条件の一つです。つまり、金融事故として情報が残っているので、新たな住宅ローン、クレジットカード作成が一定期間不可能(借金完済後から5年間)になります。
また、任意売却の際に家の売却価格が住宅ローンの残債より低かった場合は、残りの足りない金額を債権会社が売主の代わりに立て替えます。債権会社が不足金を金融機関に支払い抵当権を外してもらうため、任意売却後の返済相手は住宅ローンの金融機関から債権会社に変わります。すでに多額の借り入れが金融情報に載るので、このような面から見ても新しい借り入れは難しいでしょう。
離婚前に任意売却したほうがいい理由
離婚に伴う土地・家の任意売却は離婚の後ではなく、離婚する前にしたほうがいいと言われます。
- 離婚後は話し合いが難しくなること
- 任意売却には期限があること
それぞれ詳しく解説します。
離婚後は話し合いが難しくなる
離婚後はそれぞれ新しい生活を始めるため、元配偶者との接触をできるだけ避けようとしがちです。万が一連絡が取れなくなることがあると、任意売却の手続きに必要な連帯債務・連帯保証人などの解決も難しくなります。
困難な問題を解決するためには、問題を先送りせず離婚前に夫婦でしっかりと任意売却について話し合いましょう。
任意売却には期限がある
住宅ローンの滞納が続くと、金融機関が競売の準備を始めます。任意売却の手続きは競売と同時進行で進められるので、開札期日までに売却が完了していなければなりません。
遅くとも入札日の前日までに、任意売却を完了(=引き渡し、決済の終了)させる必要があります。
任意売却時の注意点
任意売却を行う際には注意するポイントが2つあります。気をつけないと手続きができないため、しっかり確認しておきましょう。
登記上の名義と売却人は一致していなければならない
不動産を売却する際には、登記上の名義と売却人が同一でなければなりません。また、登記識別情報での住所・氏名と任意売却契約上の住所・氏名も一致していることが必要です。
スムーズに手続きを始めるためにも、事前にこれらを確認しておきましょう。
連帯保証人の同意が必要
任意売却するためには、連帯保証人の同意が必要です。任意売却しても住宅ローン残債が残っている場合には、金融機関が連帯保証人にローン支払いを請求することが可能です。
そのため連帯保証人が同意しなければ、任意売却の手続きは進められません。
任意売却手続きの流れ
ここでは、金融機関からのローン支払い督促から物件引渡しまでの一連の手続きの流れは次のとおりです。
【1.】金融機関からの督促
住宅ローンに支払いが滞ると、金融機関から郵送で督促通知が届きます。
【2.】任意売却を取り扱う不動産会社へ相談
督促通知が届いたら、できるだけ早く任意売却を取り扱う不動産会社に相談してください。不動産会社は今後どうすべきかアドバイスをしてくれるでしょう。
【3.】不動産会社による物件の査定
不動産会社に査定を依頼して、おおよその売却価格を把握します。不動産会社によって査定価格やサービスが異なります。できるだけ多くの不動産会社に査定を依頼して査定価格やサービス内容を比較するといいでしょう。
【4.】債権者との相談(任意売却活動と並行)
任意売却の手続きを進めるためには、債権者である金融機関の許可が必要です。不動産会社と協力して、金融機関と相談・交渉します。
【5.】不動産会社と媒介契約
物件を売却するにあたっては、不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。媒介契約とは、不動産会社が不動産を売ろうとする人または売買当事者の双方とのあいだで結ばれる契約です。契約内容は、不動産会社が売買当事者のあいだに立ち、売買契約成立のためにあっせんすることです。
【6.】売却活動開始
媒介契約が結ばれると、不動産会社は物件を売るために、広告や現地案内といった売却活動を開始します。
【7.】買主候補との商談
買主候補が現れたら、内覧が行われます。同席する際は、基本的なことは不動産会社の担当者に任せ、実際に住んでいるところのアピールポイントなどがあれば伝えるといいでしょう。内覧後、買主候補から最終的な値段の交渉がはいることもあります。不動産会社と相談して、採取どこまで下げられるかもあらかじめ決めておくといいです。
【8.】売買契約・売却代金受領・物件引渡し
買主と売買契約を締結し、決済日に売却代金受領、物件引渡し、所有権移転登記申請を同日中に行います。
任意売却は実績の豊富な不動産会社に頼ろう
家を売却しないためには、ローンの支払いを延滞させないことです。しかし、どうしても支払いができなければ任意売却を選択することもひとつの手段です。
金融機関からの支払督促通知が届いた段階で、できるだけ早く任意売却案件の取扱実績豊富な不動産会社に相談してください。今後どうすべきか適切なアドバイスをしてくれるでしょう。