ホームステージングは売却に必要?メリットと費用相場・依頼先を解説
家やマンションなどの売却を検討されている人のなかには、「ホームステージング」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ホームステージングとは、一言で説明すると、売り出し中の物件を魅力的に演出する手法です。
ホームステージングを効果的に利用すれば、中古で売り出している家やマンションなどの早期売却につながります。また、より高値での売却を狙える可能性もあるでしょう。ホームステージングの効果を最大限にするには、ホームステージングについて理解を深めておくことが大切です。
この記事では、ホームステージングについてくわしく説明します。ホームステージングとはどのようなものなのか、具体的に何をするのか、どこに依頼すればいいのかなど、ホームステージングが気になっている人は、ぜひ一読して参考にしてみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
ホームステージングとは
ホームステージングとは、売却中の家やマンションなどを家具や小物を使って演出し、購入希望者にアピールするためのサービスを指します。新築のマンションや戸建ての販売を促進するモデルルームのようなイメージに近いと言えるでしょう。
日本の中古物件の売却でホームステージングが注目され始めたのはここ数年ですが、日本よりもホームステージングが進んでいるアメリカでは、40年以上前からホームステージングの概念が定着しており、家を売却する際の戦略のひとつとして一般的に利用されています。
ホームステージングが中古物件の売却に効果的であることはさまざまな調査や実績で明らかになっているため、今後、日本でもホームステージングの需要や実施が増えていくと言えるでしょう。
ホームステージングは必要?
ホームステージングは、購入希望者が早く見つかったり通常よりも高値で売れたりする効果が期待できます。しかし、家やマンションを売却する際、必ずしも行わなければならないわけではありません。
また、空き家で行われることが多いホームステージングですが、住みながら売却をする物件で行うことも可能です。
居住中の物件の場合は、基本的にホームステージングのコーディネーターのアドバイスを参考にしながら、現在、室内にある家具の配置替えやインテリアの設置などを自身で行うことになります。その際に荷物を減らす必要もあるため、手間がかかることが多いです。
一方、空室の物件の場合だと、室内に家具や荷物がないためホームステージングが行いやすくなります。多少のコストがかかってもできるだけ早く高値で空室の物件を売却したい場合、ホームステージングは行いやすく、また効果的です。
ホームステージングのメリット・デメリット
ホームステージングがどのようなものであるかがわかったところで、次にホームステージングのメリットとデメリットについて見てみましょう。
中古の家やマンションを売却する際に効果的なホームステージングですが、メリットだけでなくデメリットもあります。それらを理解した上で、利用するかどうかを検討することが大切です。
ここでは、ホームステージングのメリットとデメリットについて、ひとつずつ説明します。
メリット
まず、ホームステージングのメリットについて、どのようなものがあるかを詳しく見てみましょう。
物件の価値を高められる
売り出し中の家やマンションなどの室内にホームステージングを実施すれば、効果的な演出によって物件の良さを引き出し、より魅力的に見せることが可能です。ホームステージングを行った室内の写真を物件情報に掲載すれば、内覧の申込みにつなげることができます。
中古物件の売却を成功させるためには、まず購入希望者に内覧をしてもらわなければなりません。ホームステージングを行えば、中古物件でも新築のモデルハウスのような空間を演出できるため、中古物件を探している購入希望者に興味を持ってもらいやすくなり、内覧や成約の可能性を高めることができます。
実際に住んだときをイメージしやすい
最近では、売買であっても賃貸であっても、物件選びの際にインターネットを利用する人が多いです。家やマンションなどの不動産売却を成功させるには、購入希望者に掲載されている物件の写真を見て興味を持ってもらうことが第一歩となります。
部屋に何もない状態の室内写真よりも、実際におしゃれな家具や小物が置かれている写真のほうが、実際に住んだ場合をイメージしやすいため、購入希望者の興味を引きやすくなると言えるでしょう。
売却期間の短縮や高値での売却が目指せる
ホームステージングを行うことで、何もしなかった場合に比べて売却までの平均日数が短くなり、売却価格がアップしたという事例も少なくありません。
日本ホームステージング協会が実施した「ホームステージング実態調査」によると、ホームステージングをしなかった場合では売却までの平均日数が124日なのに対し、ホームステージングをした場合は40日と、約3分の1に短縮されたという結果でした。
特に戸建ての中古物件におけるホームステージングの効果が顕著で、ホームステージングすると平均37日で成約しています。しかし、ホームステージングをしなかった場合は、売却までの平均日数は210日です。ホームステージングすることで、成約までの日数が約5分の1に短縮されていることがわかります。
売りに出してもなかなか売却できない中古物件の場合、値下げを余儀なくされるケースが多いです。しかし、いくらかの費用をかけてホームステージングを実施することで、売り出し価格を下げることなく売却活動を続け、成約を目指すことも可能だと言えるでしょう。
デメリット
中古の家やマンションなどの早期売却や高値での売却に効果があると言われているホームステージングですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
ここでは、ホームステージングのデメリットとしてどのようなものがあるかを見てみましょう。
居住中の場合は手間がかかる
居住中で売却に出している物件であっても、ホームステージングを行うことは可能です。しかし、購入希望者が現れて内覧をする都度、ホームステージングをするのは手間がかかるため、住みながら売却活動をしている物件では行いにくい点がデメリットだと言えます。
住みながら売却する家やマンションにホームステージングをする場合は、生活しながらできる範囲になります。そのため、ホームステージングコーディネーターのアドバイスに従って室内の家具の配置を整えたり、使っていないものをレンタル倉庫に預けたりするといった方法が一般的です。
費用がかかる
家やマンションなどの不動産を売却する際には、売却を依頼した不動産会社に支払う仲介手数料やさまざまな税金などの費用が必要です。その上、業者に依頼してホームステージングを実施するとなると、さらなる費用が必要になります。
また、売却するまえにホームステージングの費用がかかるため、手元の資金を使わなければなりません。売却代金が手に入る前にまとまった費用が必要な点が、ホームステージングのデメリットだと言えます。
特に空き物件でホームステージングを行う場合は、部屋を魅力的に演出するための家具や小物は数ヵ月間レンタルするのが一般的です。その期間中に買い手が見つからない場合は、さらにホームステージングの費用がかかります。
効果が保証されるものではない
売却中の家やマンションにホームステージングを行うと、物件を魅力的に演出することができるため、売却期間が短縮されたり高値で売却できたりする可能性が高くなります。しかし、費用をかけてホームステージングをしても、必ずしも短期間での売却や希望しているような額での売却が叶うとは限りません。
ホームステージングを行い、きれいに整えられた室内を内見して購入希望者が気に入ったとしても、立地条件や広さ、共用部分、築年数といった部屋以外の条件がネックとなり、成約に至らない可能性もあります。効果が必ずしも保証されるものではない点も、ホームステージングのデメリットだと言えるでしょう。
ホームステージングの費用相場
次に、ホームステージングを行う場合、どれくらいの費用がかかるかを見てみましょう。
ホームステージングが中古物件の早期売却や高値での売却に効果があるとわかっていても、費用がかかり過ぎると本末転倒になってしまいます。ホームステージングにかかる費用がいくらくらいになるのか相場を把握した上で、売却価格と手元に残るお金との計算をしましょう。
依頼先や状況によって異なる
ホームステージングの費用は、ホームステージングの依頼先やどの程度行うかによって異なります。
一般的に、居住中の家やマンションにホームステージングを行う場合の費用相場は5万円程度、空き家の場合は家具や小物のレンタル費用などがかかるため15万円~30万円程度が費用相場です。
ホームステージングの専門業者に依頼する場合は、どの程度行うかのプランによって費用が異なります。業者に依頼する場合でも、居住中の物件よりも空き家をホームステージングするほうが、家具などのレンタル費用が必要になるため高くなりやすいです。
空き家で使用する家具や小物などのレンタル期間は3ヵ月程度が一般的ですが、必要に応じて選べるプランもあります。ホームステージングだけでなく、物件の図面や広告に掲載する室内の写真撮影をプラスすると、さらに費用が高くなりやすいです。
費用の内訳
ホームステージングにかかる費用の内訳は、おもに次の通りです。
- プランニング費用
- 家具や小物などのレンタル費用
- 搬入や設置費用
- 写真撮影費用
- 出張費用 など
プランニングやコーディネートのみの場合、費用相場は5万円程度です。そこに家具のレンタル費用が加わると15万円程度になります。リビングや居室だけでなく、玄関や水回りなどトータルにコーディネートした場合、内容にもよりますが30万円程度の費用が必要です。
レンタル費用には、家具だけでなく演出に必要なインテリア用品や観葉植物、小物などが含まれています。また、写真撮影費用には、撮影だけでなく編集やデータ買取りなどの費用が含まれているのが一般的です。
ホームステージング業者の中には、相談費用や出張費用が無料のところもあります。相談の際や見積もりを出してもらう際に確認しておくといいでしょう。
ホームステージングの費用を抑える方法
ホームステージングを行う際に、できるだけ費用を抑えたいと考える人も多いことでしょう。ホームステージング費用を抑えるためには、不動産会社を利用するのもひとつの手です。
大手の不動産会社のなかには、媒介契約を結ぶことでホームステージングをサービスとして提供しているところもあります。
ただし、媒介契約の種類を専任媒介契約や専属専任媒介契約にしたり、物件の竣工年や査定額、エリアなどの条件があったりする場合があるため確認が必要です。ホームステージングのサービスを行っている不動産会社に売却の仲介を依頼したい場合は、前もって不動産会社探しの際にホームステージングサービスの有無をチェックしてみるといいでしょう。
ホームステージングの依頼先
ここでは、ホームステージングを行いたいと考えた場合に、どこに相談したり依頼したりすればいいかを説明します。それぞれの依頼先の特徴を把握した上で、物件や希望する売却方法にマッチしたところを選ぶことが大切です。
専門業者
まず、ホームステージングの依頼先として挙げられるのが、ホームステージングの専門業者です。専門業者には、ホームステージングのプロフェッショナルであるホームステージャーやインテリアコーディネーターが在籍しています。そのため、より購入希望者に物件の魅力をアピールできるようなホームステージングのプランニングが期待できるでしょう。
ホームステージングの専門業者を選ぶ際には、これまでの実績や事例などをしっかりと確認することが大切です。業者によって得意とするインテリアやテイストが異なるため、売却したい物件に合ったプランを得意とする業者を選ぶようにしましょう。
家具・インテリア専門店
大手の家具やインテリア専門店のなかには、ホームステージングサービスを提供しているところもあるため、調べてみるのもひとつの手です。家具だけでなく、インテリアに必要なキッチングッズやカーテンといったさまざまなアイテムをまとめてそろえることができます。
店舗やショールームなどを訪れてコーディネートをチェックすれば、どのような雰囲気になるのかイメージしやすい点もメリットだと言えるでしょう。ホームステージングで使用した家具や小物が気に入れば、そのまま買い取ることができるところもあります。
不動産会社に相談する
大手の不動産会社のなかにはホームステージングサービスを提供しているところもあります。先にも述べた通り、媒介契約を結んだ売り手の特典サービスとして、無料で行ってくれたりすることもあるため、前もって不動産会社に問い合わせてみてもいいでしょう。
また、無料でホームステージングサービスを行っていない不動産会社でも、連携しているホームステージングの専門業者の窓口となって紹介してもらえるケースも多いです。売却を依頼する不動産会社を選ぶ際は、そのようなサービスがあるかどうかもチェックしてみましょう。
ホームステージングに関するよくある質問
最後に、よくあるホームステージングに関する質問に対する回答の形で、ホームステージングについてより詳しく説明をします。さらにホームステージングの理解を深めていきましょう。
バーチャルホームステージングはどんなサービス?
近年増えてきているのが、バーチャルホームステージングのサービスです。バーチャルホームステージングとは、実際に家具や小物などの現物を室内に配置して演出するのではなく、コンピューターグラフィックス技術を駆使してホームステージングをするサービスになります。
実際に家具や小物を準備する必要がないため、居住中の物件でも利用しやすい点がメリットです。データを入れ替えるだけで配置する家具を増やせるだけでなく、部屋全体の色味やテイストも変更して、手軽にさまざまなインテリアで室内を演出することができます。また、費用が安くリモート内見でも対応可能な点もメリットです。
家具はどうやって準備すればいい?
ホームステージングで室内を演出するために使用する家具の準備方法は、「購入する」「レンタルする」「売り手の家具を使用する」の3つがあります。
購入する方法は、ホームステージングで使用した家具も家をいっしょに売却することが多く、アメリカなどで主流です。一方日本では、購入する方法を取ることは少なく、ホームステージングを依頼した業者や家具・インテリア専門店でレンタルするケースがほとんどになります。
居住中の物件の場合、売り手が所有している家具や小物だけでホームステージングを行うこともありますが、演出したい部屋のテイストとマッチしないこともあるため、必要に応じてレンタルした家具や小物を合わせるなど、柔軟に対応するといいでしょう。
ホームステージングを利用して不動産を早く高く売却しよう
中古の家やマンションを売却する場合、どのような販売活動を行うかといった戦略が大切になります。中古物件をより早く、より高く売却できる戦略のひとつが、室内を魅力的に演出するホームステージングです。
趣味の良い家具や小物を配置して室内を整えるホームステージングを行うことにより、購入希望者に与える印象をアップさせ、売却成約につなげやすくなります。ホームステージングは空室で売却されている家やマンションで行われることが多いですが、居住中の物件で行うことも可能です。
それなりに費用がかかる点がホームステージングのデメリットですが、専門業者や家具店に依頼するだけでなく、不動産会社が媒介契約を締結する際のサービスとして行っている場合もあります。サービスでのホームステージングの場合、費用を抑えられることが多いため、不動産会社を選ぶ際のポイントにしてもいいでしょう。
費用や手間はかかりますが、ホームステージングを上手に、かつ効果的に活用して早期売却や高値での売却を狙い、不動産売却成功につなげましょう。