事故物件を売却する方法|告知義務はいつまで?高く売るためのポイントも紹介!
不動産の売却を検討している人の中には、売却を検討しているのが事故物件だという人もいると思います。事故物件は人の生死に関わるようなトラブルのあった物件のことなので、一般的な物件と比べて需要が低く、買い手を見つけることが容易ではないという点に注意が必要です。
この記事では、事故物件とはどのような物件なのか、事故物件の販売方法、高く売るポイントなどを紹介します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
事故物件とは?
事故物件とは、過去に敷地や建物内で人の生死に関わるようなトラブルが発生した物件のことです。しかし、人の生死に関わるようなトラブルと言っても、老衰や病死などの自然死と殺人や自殺では意味合いが大きく異なります。
事故物件については明確な定義がなく、売主側の判断で事故物件であることを買主に告げず、トラブルに発展することも珍しくありませんでした。
そこで、2021年に国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で事故物件について明確に定義しました。
事故物件に該当しない | 事故物件に該当 |
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事故物件の該当項目は売買と賃貸で同じとなっています。
事故物件かどうかは瑕疵(かし)の有無で決まる
瑕疵とは、一般的に備わっていて当然とされる機能が備わっていない状態のことです。品質や性能が欠如している状態を指します。瑕疵の種類と不動産売買における瑕疵の事例をまとめると以下の通りです。
- 心理的瑕疵:(例)自殺や事件など過去の出来事によって住み心地を欠く状態
- 環境的瑕疵:(例)火葬場や葬儀場などの嫌悪施設が近くに存在している状態
- 物理的瑕疵:(例)シロアリによる腐食や土壌汚染といった物理的な欠陥が存在している状態
- 法律的瑕疵:(例)接道義務や建蔽率といった建築基準法に違反している状態
事故物件はこの中で心理的瑕疵に該当します。
事故物件の告知義務とは
心理的瑕疵に限らず、購入したマンションや土地などに瑕疵が潜んでいた場合には、買い手は購入目的を達成できない可能性があります。
そこで、買主が安心して購入できるように、売主には何らかの瑕疵がある場合はそれを買主に伝えなくてはならないという告知義務が課されています。
告知義務に違反した場合は、損害賠償請求や代金減額請求(価格の値引き)、修補請求(従来あるべき状態に戻してから引き渡すまたは費用負担)、契約解除などの対象となるので注意が必要です。
買主とのトラブルを避けるためにも必ず瑕疵を告知しましょう。
事故物件の告知義務はいつまで?何年?
事故物件は心理的瑕疵を有する物件に該当しますが、心理的瑕疵の捉え方は人によって違います。例えば、事故から年数が経過している場合、心理的瑕疵は既にないと考える売主も多いと思います。
しかし、心理的瑕疵は売主目線ではなく、買主目線で考えることが大切です。事故物件の告知義務は賃貸と売買で以下のように期間が異なります。
- 賃貸の場合:事故発生から3年以内は義務あり
- 売買の場合:経過年数に関係なく義務あり
賃貸の場合は売買の場合と異なり、事故からの経過年数によっては告知義務が免除されます。しかし、売買の場合は事故から10年以上であっても告知義務が必要と考えられています。買主側の判断で勝手に告知しなかった場合には、告知義務違反となるので注意してください。
事故物件は安くなる?売買相場
事故物件は需要が低いという理由から、一般的な物件の相場と同じ値段で売ることは容易ではありません。基本的に相場よりも安い値段で売りに出して、購入希望者を募ることになります。
事故物件の値段は、心理的瑕疵の内容によって以下のように変化します。
- 自殺:通常相場の7割程度
- 他殺:通常相場の5割程度
あくまでも上記は1つの目安です。人によって心理的瑕疵の捉え方は異なり、立地条件が良い、築年数が浅い場合は上記より好条件で売却できる可能性がある一方、事故後の状況によっては下がる可能性もあります。
そのため、少しでも高く売却したいのであれば、最初は少し相場よりも安く売り出してみて、市場の反応を見ながら価格を下げましょう。
事故物件の売却方法
事故物件は心理的瑕疵を有しており、一般的な物件とは違い、購入希望者が見つかりにくい点が大きなデメリットです。そのため、成約率を高めるためには、売却方法に対する工夫が求められます。
事故物件の売却には、以下の4つのやり方が挙げられます。
- 通常通りの方法で売却する
- 事故物件専門サイトで売り出す
- 期間をあけてから売り出す
- 不動産会社で買取してもらう
各売却方法を詳しく見ていきましょう。
通常通りの方法で売却する
事故物件は、必ずしも特別な売却方法を選択しなくてはならないというわけではありません。一般的な不動産と同様、通常通りの売却方法を選択することも可能です。
不動産情報が数多く掲載されている不動産ポータルサイトでも、訳あり物件という名称で事故物件が売りに出されているケースも見られます。
ただし、事故の内容によっては、成約が困難であるという理由で不動産会社に仲介を断られる可能性もあるので注意が必要です。まずは不動産会社に事故物件の仲介が可能かどうか相談してみましょう。
事故物件専門サイトで売り出す
不動産会社の中には、事故物件の取引を専門とする不動産会社もいます。事故物件の取引専門の不動産会社は、事故物件の情報を求めている人に情報が届きやすいのが大きなメリットです。
無料であったとしても事故物件を購入したくないという人もいれば、事故物件でも良いので安く不動産を購入したいという人もいます。
事故物件にはこのように一定数の需要があり、事故物件専門サイトには事故物件情報を求めている人が集まるため、通常通りの売却方法を選択するよりも成約する可能性が高いと言えるでしょう。
期間をあけてから売り出す
事故物件をすぐに手放したいという人もいると思いますが、すぐに手放すよりも期間をあけてから売りに出した方が売却に有利になりやすいです。
事故や事件直後の場合、印象が強く残ってしまうため、住むには抵抗があるという理由からそう簡単には購入希望者が現れません。しかし、時間が経過すれば、心理的瑕疵が和らぐ可能性が高いです。
売り出すまでにハウスクリーニングやリフォームなどをしておけば、印象も良くなるので成約率を高められるでしょう。
売主の中には、時間が経過した場合や事故物件を解体した場合は告知義務がないと考えている人もいると思います。しかし、期間をあけた、建物がなくなったからと言って告知義務がなくなるわけではないので注意が必要です。
不動産会社で買取してもらう
事故物件を売り出してみたもののなかなか購入希望者が現れない、事故物件を売ろうとしていることが周囲にバレるのを避けたいという人には、不動産会社で買取してもらうという方法をおすすめします。
不動産買取では不動産会社が直接買い手となってくれるため、契約条件にさえお互いが合意すれば、速やかに契約を成立させる、周囲にバレずに売却することが可能です。
しかし、買取業者は安く買い取って高く売却することによって利益を得ています。そのため、買取価格が他の売却方法の売却価格よりも低くなってしまうという点に注意してください。
事故物件をできるだけ高く売却するポイント
事故物件は需要が低いため、相場よりも値下げして購入希望者を募ることになります。しかし、売却方法を工夫すれば一般的な不動産の相場までとは言えませんが、事故物件の相場よりも高く売却することは可能です。
事故物件を少しでも高く売却するためのポイントとして、以下の2つが挙げられます。
- 特殊清掃をする
- 複数の業者の見積もりを比較する
それぞれのポイントを詳しく説明していきます。
特殊清掃をする
特殊清掃とは、通常の正装で汚れを落とすことが困難な部屋の掃除をすることです。例えば、自殺や事件などの事故が発生した部屋(事故物件)、ゴミ屋敷などの掃除です。
事故物件はどのような事故が発生したかにもよりますが、臭いやシミなどが残っている場合があります。事件を連想させる状況が残ったままだと、買取価格が大きく下がってしまいます。
特殊清掃の費用は部分的な清掃の場合は数万円程度、部屋丸ごと清掃する場合は数十万円が相場です。清掃に不用品処分や片付けを含む場合はさらに高額になります。
費用を少しでも抑える、スムーズに清掃に取り掛かってもらうためにも、遺品整理をして家の中を空っぽにしておきましょう。
複数の業者の見積もりを比較する
仲介を依頼する不動産業者はどこも同じと考えている人もいるかもしれませんが、不動産業者によって査定結果が違う、営業力にも差があるため、信頼できる不動産業者に依頼することが大切です。
信頼できる不動産業者を見抜くには、複数の不動産会社に査定を依頼して、査定結果やスタッフの対応、実績などを考慮しながら総合的に判断する必要があります。
しかし、複数の不動産業者に査定を依頼するのは、手間と時間がかかるので面倒です。そこでおすすめするのが不動産一括査定です。
まとめ
通常の不動産売却とは異なり、事故物件は心理的瑕疵を有していることから、そう簡単には買い手が見つかりません。
「事故物件であることを黙っていればバレない」と思っている人もいるかもしれませんが、瑕疵を有している物件の売却には告知義務が課されており、それに違反した場合は損害賠償請求といったペナルティの対象になるので注意が必要です。
事故物件だからと言って、買い手が全く見つからないわけではありません。一定数の需要は期待できるため、信頼できる不動産会社に相談して成約へと導いていきましょう。