土地売却の査定方法|査定額の算出方法と土地の評価ポイント
土地の査定を不動産会社に依頼する作業は、土地を売却する際の第一歩になります。不動産会社から提示された査定額は土地の売り出し価格のベースになるため、売却価格に大きく影響するからです。
この記事では、土地売却時の査定方法や査定額の算出方法をわかりやすく解説します。査定前に把握しておきたいチェックポイントも併せて解説しているので、これから土地の売却を検討している人はぜひこのまま読み進めてみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
土地売却時の査定方法は2種類
物件種別に関わらず、一般的に不動産を売却する際には不動産会社に査定を依頼します。
査定とは物件情報や現地調査で得た情報などを参考にし、約3ヵ月以内での売却が予想される価格を査定額として算出する作業です。
不動産会社による査定方法は2種類あります。
- 机上査定
- 訪問査定
ここでは、机上査定と訪問査定、それぞれを詳しく解説します。
机上査定
不動産会社に土地の査定を依頼した場合、まずは机上査定が行われます。机上査定は簡易査定と呼ばれることもあり、土地の場合は次のような点を参考に査定額を算出する方法です。
- 所在地
- 地目
- 面積
- 形状
- 間口の広さ
- 用途地域 など
通常は1~2日程度で査定結果が通知されますが、現地調査を行ってないので査定の精度は高くありません。
机上査定の依頼方法は不動産会社に直接問い合わせるほかに、一括査定サイトやAI査定サイトなどのインターネット経由でも行えます。
訪問査定
机上査定でおおまかな査定額を算出したら、次に訪問査定が行われます。
訪問査定は机上査定で得た情報に、不動産会社の担当者が現地調査で得た次のような情報を加えて査定額を算出する方法です。
- 地形
- 形状
- 接道状況
- 日当たり
- 周辺環境
- インフラ状況 など
情報量が机上査定よりも多くなるため、査定結果が通知されるまでに1週間程度かかりますが、より精度が高く実際の売却価格に近い査定額が算出できます。
より詳しい内容は下記の記事で解説しています。
土地の査定額の算出方法
不動産の査定を行う際には、「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」のいずれかが用いられるのが一般的です。しかし、どの方法を用いるかは不動産を売却する目的や物件種別などで異なります。
ここでは、土地の査定額の算出方法を解説していくので理解を深めましょう。
土地は取引事例比較法
通常、土地の売買では査定方法に取引事例比較法が用いられます。
取引事例比較法は公示地価や相続税路線価に加え、面積や形状などが類似する物件の過去の取引情報をもとに査定額を算出する方法です。
まずは複数の類似物件から平均坪単価を算出し、それに査定対象となる物件の坪数をかけて、査定額のベースになる金額を算出します。
【ステップ1:類似物件の平均坪単価を算出】
類似物件の平均坪単価=(類似物件1:坪単価)+(類似物件2:坪単価)+(類似物件3:坪単価)÷3
【ステップ2:査定額を算出】
査定額=査定対象となる物件の坪数×類似物件の平均坪単価
なお、物件独自の要因や地域差などがある場合は、一旦算出した査定額に補正が施されます。
取引事例比較法を用いたシミュレーション
それでは、取引事例比較法を用いて算出する査定額をシミュレーションしてみましょう。類似物件と査定対象となる物件の仮定条件は次の通りです。
価格 | 坪数 | |
---|---|---|
類似物件1 | 800万円 | 40坪 |
類似物件2 | 1,000万円 | 50坪 |
類似物件3 | 900万円 | 40坪 |
査定対象となる物件 | - | 30坪 |
まずは、類似物件の坪単価を算出します。
(800万円÷40坪=20万円/坪)+(1,000万円÷50坪=20万円/坪)+(900万円÷40坪=22.5万円/坪)÷3=20.8万円/坪
次に、査定対象となる物件の査定額を算出します。
30坪×20.8万円=624万円
そのほかの査定額算出方法について
不動産の査定額を算出する際には、取引事例法のほかに原価法と収益還元法が用いられることがあります。
建物には原価法
戸建てのように土地に建物が建っている場合、建物部分には原価法が用いられることがほとんどです。
原価法ではまず建物の再調達原価を求め、その金額から経年劣化分を差し引いて現在の価値を算出します。
再調達原価とは建物を一旦取り壊して同じものを建て直した場合に、どのくらいかかるかを試算した金額のことです。
投資用不動産には収益還元法
居住用ではなく投資用不動産には、収益還元法が用いられるケースがほとんどでしょう。
収益還元法は、純利益をベースに現在の価値を考慮して査定額を算出する方法です。純利益とは、不動産が投資用物件として将来生み出すと予想される利益になります。
土地の査定時のチェックポイント
訪問査定を受ける際には、不動産会社の担当者が現地に訪れてさまざまな項目を評価します。このときにチェックしている項目は、おもに次の通りです。
- 土地の状況
- 接道の状況
- 土地周辺の環境
- 土地の法規制
ここでは、土地の査定時にチェックされる項目を詳しく解説します。
土地の状況
面積や日当たりなどの状況は土地によって異なります。それでは、査定時にチェックされる土地の状況を見ていきましょう。
土地の形状
土地の査定時には形状のチェックが行われます。形状は建物を建てる際の影響が大きく、同じ面積の土地でも形状によって査定額が変動するからです。
通常は正方形に近い整った形状の土地ほど評価は高く、不整形であるほど評価は低くなります。不整形な土地でも、建物が建てられる広さが確保できる場合は評価が低くなりにくいです。
土地の日当たりや通風
土地の査定時には日当たりや通風のチェックが行われます。日当たりや通風が良好な場合は、評価が高い傾向です。しかし、査定時にチェックされるのは現在の状況だけではありません。
現時点では日当たりや通風を遮るものがなくても、将来的に建物が建って状況が変動する可能性があるからです。そのため、土地の周辺に日当たりや通風を遮る建物の建築予定がないかどうかを調べておくといいでしょう。
接道の状況
査定時には、土地に面する道路との関係性のチェックが行われます。それでは、査定時にチェックされる接道の状況を見ていきましょう。
接道の幅
都市計画においてエリアごとの容積率が決められているため、査定時には接道の幅のチェックが行われます。
チェックの視点は接道義務を満たしているかどうかです。接道義務とは、建物を建てるためには幅4mの道路に2m以上接道している必要があることが、建築基準法により定められています。
また、容積率とは建物の敷地面積に対する延床面積の割合です。建物を建てる場合、建築基準法の規定によって容積率を超える延床面積の建物を建てることが禁止されています。
前面道路の幅が12メートル以上の場合は、エリアごとに決められた容積率を上限に建物を建てることが可能です。一方、12メートル未満で居住系用途地域の場合、前面道路の幅に対して0.4を乗じた容積率になります。
土地と接道の高低差
土地と面する道路に高低差も、査定時のチェックポイントです。道路よりも低い位置に土地がある場合、排水にともなう設備の増設にコストがかかったり日当たりが悪かったりするので評価は低くなります。
一方で道路よりも高い位置にある土地は、排水に関してはスムーズなので評価が低くなることはほとんどありません。
しかし、道路よりも高すぎる位置にある土地は、入口までの階段や擁壁(ようへき)の設置が必要になるケースがあります。このような場合、建築基準法に準じた擁壁が設置されているかどうかや劣化具合などが査定時にチェックされます。
土地周辺の環境
査定時には、形状や接道などの土地自体の状況だけでなく、周辺環境もチェックの対象です。
周辺環境は、マンションや戸建てなどの査定時にも影響を及ぼす項目になります。それでは、土地を取り巻く周辺環境のチェックポイントを見ていきましょう。
生活利便施設との距離
土地の購入希望者の中には、病院やスーパーマーケットなどの生活利便性を重視する人も少なくありません。査定時にチェックされるおもな生活利便施設と評価が高くなる目安は次の通りです。
生活利便施設 | 評価が高くなる目安 |
---|---|
最寄り駅・バス停 | 徒歩10分程度 |
公共・公益施設(病院・学校など) | 徒歩10分程度 |
商業施設(スーパーマーケット・コンビニなど) | 徒歩5分以内 |
生活利便施設は距離が近いほど評価が高い傾向となります。
嫌悪施設の有無
土地の周辺に次のような嫌悪施設がある場合、査定時の評価は低くなる傾向があります。
- 産業廃棄物処理場
- 下水処理場
- 高速道路
- ガソリンスタンド
- 墓地
- 送電線
- 軍事基地
- 風俗店 など
どの範囲までが嫌悪施設かは明確化されていませんが、宅地建物取引業法ではネガティブな情報として取り扱われているのが現状です。
土地を売却する際の売買契約時には、嫌悪施設を告知義務事項として重要事項説明時に買い手に伝える必要があります。
土地の法規制
土地の所在地によっては、都市計画法で利用用途が決められている場合があります。
国内の土地は、都市計画法で都市計画区域・都市計画区域外・準都市計画区域の3種類です。
区域 | 内容 |
---|---|
都市計画区域 | ・ひとつの都市として整備・開発・保全が計画的に進められる地域 ・市街地に多い ・都道府県が指定 |
都市計画区域外 | ・都市計画区域と準都市計画区域に該当しない地域 ・過疎地に多い |
準都市計画区域 | ・将来的な市街化が予想される場合に整備・開発・保全が計画的に進められる地域 ・都道府県が指定 |
都市計画区域はさらに細かく区分されており、市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域の3種類があります。
市街化調整区域は整備や開発に制限がかけられているため、査定時の評価は低い傾向になるでしょう。
土地の訪問査定前にしておくといいこと
訪問査定をスムーズに進めるためには事前に流れを把握し、必要書類を準備しておくことがおすすめです。また、自分で相場を調べておくと、不動産会社から提示された査定額が適正かどうかを判断するのに役立ちます。
ここでは土地の訪問査定前にしておくと良いことを解説していくので、ぜひ参考にしてください。
査定の流れを把握する
それでは、まず査定の流れを見ていきましょう。
- 必要書類の準備
- 不動産会社に査定を依頼する
- 机上査定
- 訪問査定
- 査定結果の通知
査定時には土地に関するさまざまな情報が必要なので、不動産会社に査定を依頼する前に書類を準備しておくとスムーズです。
不動産会社に査定を依頼し、まずは簡易査定を受けます。机上査定でおおまかな査定額の通知を受け、具体的に売却を検討したら次は訪問査定です。
調査自体は1~2時間程度で終わります。そのため、訪問査定の日程を決める際には時間に余裕を持ったスケジュールを伝えるといいでしょう。その後、1週間程度の期間を経て不動産会社から査定結果が通知されます。
なお、更地の場合は所有者の立ち会いが不要なケースがほとんどです。
必要書類を準備する
査定時に必要な書類はおもに次の通りです。
書類名 | 入手方法 |
---|---|
登記簿謄本の写し(登記事項証明書) | 法務局(オンラインでの入手も可能) |
測量図 | 法務局(オンラインでの入手も可能) |
公図 | 法務局(オンラインでの入手も可能) |
登記済権利証または登記識別情報 | 各自で保管 |
身分証明書 | 各自で保管 |
印鑑証明書 | 各自治体 |
測量図には、形状や面積などの土地に関するさまざまな情報が記載されています。特に確認しておきたいのは、隣接する土地との境界が確定しているかどうかです。
境界が未確定の場合、売却後に買い手が建物を建てる際に隣接する土地の住人とトラブルになるリスクがあります。
境界が確定していない土地は、売却前に測量を求められる場合があり、測量が必要になると数ヵ月の期間を要する可能性が高いでしょう。そのため、境界が確定しているか否かは早めに確認しておくことが大切です。
土地の相場を調べる
不動産会社に査定を依頼する前に、自身で土地の相場を調べておきましょう。相場を把握しておけば、不動産会社から提示された査定額が適正かどうか判断できるからです。
土地の相場を調べる方法は、おもに次の3種類となります。
- 土地総合情報システム
- 不動産会社の物件検索サイト
- 公示地価・基準地価
どの方法もインターネット環境さえあればいつでもアクセスできるので、内容を比較して自身に合うものを利用してみましょう。
【土地総合情報システム】
土地総合情報システムは不動産の取引き価格をデータベース化した情報サイトで、国土交通省が運営しています。サイト上で閲覧できる情報は、過去に実際に不動産を取引きした人から回収したアンケート結果です。
サイトにアクセスし、「不動産取引価格情報検索」で物件種別やエリアなどの条件を選ぶと類似物件の取引き価格が閲覧できます。
【不動産会社の物件検索サイト】
不動産会社の中には、独自で物件検索サイトを運営しているところもあります。サイトによって選べる条件や取扱い件数などは異なりますが、類似物件の売り出し価格の相場が把握できます。
【公示地価・基準地価】
土地の場合、公示地価・基準地価で相場を調べることが可能です。公示地価と基準地価は、評価時期や公表時期などが異なります。実勢価格は公示地価の1.1~1.2倍程度が目安です。
項目 | 公示地価 | 基準地価 |
---|---|---|
調査の実施機関 | 国土交通省(土地鑑定委員会) | 各都道府県 |
基準地 | 全国約26,000ヵ所 | 全国約22,000ヵ所 |
評価方法 | 基準地1ヵ所につき不動産鑑定士2名以上による鑑定評価 | 基準地1ヵ所につき不動産鑑定士による鑑定評価 |
評価時期 | 毎年1月1日時点 | 毎年7月1日時点 |
公表時期 | 毎年3月下旬頃 | 毎年9月下旬頃 |
どちらも土地総合情報システムの公式サイトにアクセスし、「地価公示都道府県地価調査」でエリアや用途区分などを選ぶと土地の価格が閲覧できます。
公示地価や基準地価の基準地は場所が限られるため、ピンポイントでの相場を調べることが難しい場合があるでしょう。このような場合、道路ごとに土地の評価がされている相続税路線価で調べられます。
土地売却時の査定に関するQ&A
査定に関するよくある質問と回答をまとめているので、疑問や不安がある場合は査定を受けるまでに解消しておきましょう。
査定は無料でできるの?
不動産会社に査定を依頼する場合は、一切費用がかかりません。
費用の支払いが必要になるのは、売却活動を依頼したあとで売買契約が成立したときです。この費用は仲介手数料と呼ばれており、売却活動を行って契約をまとめた報酬として不動産会社に支払います。
一方で不動産鑑定士に鑑定を依頼する場合は有料です。不動産鑑定士への依頼は相続や裁判などの法的根拠が必要な場合に利用するケースが多いため、通常の売買であれば不動産会社による査定で十分でしょう。
売却時の査定依頼は1社だけではだめ?
不動産会社に査定を依頼する際には、1社ではなく複数社に依頼することがおすすめです。
複数社に依頼すれば査定額や担当者の比較ができるため、信頼できる不動産会社に出会える可能性が高まります。しかし、複数の不動産会社にそれぞれ査定を依頼するには手間がかかります。
そこで、一度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼できる一括査定サイトを利用してみましょう。一括サイトはインターネット環境さえればいつでもアクセスでき、査定の依頼から結果の受け取りまでがスムーズです。
より詳しい内容は下記の記事で解説しています。
査定価格で売却できるの?
不動産会社から提示された査定額は、売却価格とイコールではありません。査定額は、概ね3ヵ月以内に売却できると予想された価格だからです。
売却活動の前には、査定額をもとに売り出し価格を決めます。しかし、売り出し価格も売却価格とイコールになるとは限らないのが現状です。
売れない期間が長引けば不動産会社から値下げを提案されることもあり、買い手から値下げ交渉を求められることもあります。
繰り返しになりますが査定額は売却価格と同じ金額で売却できるとは限らないため、不動産会社は査定額の高さだけを基準に選ばないようにしましょう。
土地を売却するなら査定を依頼しよう
土地を売却する際に不動産会社が行う査定方法には机上査定と訪問査定の2種類があり、不動産会社の担当者がさまざまな情報をもとに査定額を算出します。
机上査定での査定結果はおおまかな査定額で、より精度が高いのは訪問査定です。土地の訪問査定時には形状や接道状況などのさまざまな項目がチェックされ、状況に応じて評価が変動します。
すべての不動産会社が同じ査定額を出すとは限らないため、他社と異なる場合は根拠を聞いてどの項目の評価が低いのかを確かめることが大切です。
査定額が相場よりも低い、または高いこともあるため、土地総合情報システムや不動産会社の物件検索サイトを参考に自分でも相場を調べておきましょう。