【不動産所有者に調査】生産緑地の「2022年問題」を知らない人が約9割!問題点・影響・解決策を徹底解説

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【不動産所有者に調査】生産緑地の「2022年問題」を知らない人が約9割!問題点・影響・解決策を徹底解説

もうすぐ2022年。不動産業界では「生産緑地の2022年問題」が話題になっています。

しかし、実際に生産緑地に該当する土地や物件などを所有している人は、2022年問題の内容をどれくらい把握しているのでしょうか。2021年11月、編集部独自のアンケートを実施したところ、約9割の人が2022年問題の内容を知らないということがわかりました。

そこで、本記事では2022年問題の概要と解決策について解説します。土地や物件を所有している人は今後の不動産市場に影響する可能性が高いため、ぜひ参考にしてください。

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【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!

知らないと答えた人が約9割!生産緑地の2022年問題とは?

「生産緑地の2022年問題」とは、生産緑地に指定されている土地が市場に出回ることで、周辺の地価が下落するのではないかと懸念されている問題のこと。

今回は、この問題に関する調査を実施し、その結果を踏まえつつ「生産緑地の2022年問題」について詳しく説明していきます。

▼現在、あなた自身もしくはあなたの世帯で不動産を所有していますか?

現在、あなた自身もしくはあなたの世帯で不動産を所有していますか?のアンケート

「現在、あなた自身もしくはあなたの世帯で不動産を所有していますか?」という質問に対し、「所有している」と回答した人は76.0%(816名)でした。

▼「生産緑地の2022年問題」についてご存じですか?

「生産緑地の2022年問題」についてご存じですか?のアンケート

その816名を対象に、「生産緑地の2022年問題についてご存じですか」と尋ねてみたところ、「はい(知っている)」と答えた人が10.2%であるのに対し、「いいえ(知らない)」と答えた人が75.0%、「聞いたことはあるが、内容はわからない」と答えた人が14.8%でした。

つまり、2022年問題の内容を知っている人は全体の約1割程度しかおらず、残りの約9割の人は知らないということがわかりました。

生産緑地とは?

生産緑地とは、1992年に生産緑地法で定められた、市街化区域内の良好な環境維持のために指定された農地や山林のこと。

東京や大阪などの大都市は、都市計画法によって「都市計画区域」に指定されており、そのなかでも街として発展させたい「市街化区域」と、自然環境を守りたい「市街化調整区域」に分けられます。

東京都の23区内や大阪市などはほぼ「市街化区域」です。かつては街の発展に目を向けていたため、市街化区域内の農地や山林に住宅並みの固定資産税と都市計画税を課税しました。

しかし、農業を続けたい農家にとっては重い税負担になることや環境保全の面から、一定の条件を満たす農地・山林を生産緑地に指定し、「最低30年間は農地・緑地として維持する代わりに、固定資産税の減税や相続税の納税猶予が与えられる」といった、税制の優遇措置が取られたのです。

「2022年問題」は何が問題なの?

生産緑地制度が施行されたのは1992年です。つまり、2022年は生産緑地制度の指定期間である30年が解除される年となります。生産緑地の指定から30年を経過すると、税金の優遇を受けられなくなる一方で、宅地への転用が可能になります。

現在、生産緑地の8割が2022年に指定解除となると言われています。もしも日本の大都市圏の農地や山林を所有している人が、戸建てやマンションなどの住宅用地として売却すると、その周辺の地域は供給過多となり、結果的に大都市の地価が下落する恐れがあるのです。

2022年問題の対象となる土地を所有している人はわずか4.5%

▼所有している不動産のうち「生産緑地の2022年問題」の対象となる土地(生産緑地)はありますか?

所有している不動産のうち「生産緑地の2022年問題」の対象となる土地(生産緑地)はありますか?のアンケート

「不動産を所有している」と答えた人のうち、生産緑地の対象となる土地を所有している人はわずか4.5%で、所有している都道府県は東京都、埼玉県、大阪府が上位でした。

また、約3割の人は「自分が所有している土地が生産緑地に該当するかわからない」と答えています。

自分が所有している土地が生産緑地かどうかを知るには?

自分の土地が生産緑地かどうかは次の2つの方法で簡単に調べることができます。

  • 固定資産税が優遇されているか
  • 農地・山林に生産緑地の看板が掲げられているか

固定資産税が優遇されている農地は、評価が高くなるような地域でも固定資産評価額が大幅に低くなっており、固定資産課税台帳や固定資産税課税明細書などで確認できます。

また、生産緑地に指定されている農地・山林の場合、現地に「生産緑地地区」と書かれた看板が掲げられています。

生産緑地の売却意向がある人は4割以上!活用を考える人も約3割

それでは、生産緑地を所有している人は2022年以降、どのような対策を考えているのでしょうか。

▼「生産緑地の2022年問題」の対象となる土地(生産緑地)を今後どのようにする予定ですか?

「生産緑地の2022年問題」の対象となる土地(生産緑地)を今後どのようにする予定ですか?のアンケート

「すでに売却を決めている」「売却したいが時期は未定」といった売却の意向がある人は、生産緑地を所有している人の約4割でした。しかし「時期は未定」という割合が最多となっており、まだ今後の対応について悩んでいることが窺えます。

また、売却はしないものの「現状のまま所有し続ける」という人と、「活用を考えている(貸し農園など)」という人が約3割ずつで、「10年の延長申請をする予定(もしくは申請した)」という人はわずかでした。

国土交通省では各自治体に、生産緑地の所有者全員に10年間の延長申請について意向確認をするように呼びかけていますが、所有者のなかには存在を知らない人もいるのかもしれません。10年の延長申請についてはこの後詳しく解説します。

生産緑地ではない不動産については、所有継続の意向が多い

続いて、生産緑地ではない不動産を所持している人に2022年以降どのような対策を考えているかを尋ねてみたところ、「特に何もせずに所有し続ける」という回答が64.5%で最多でした。

▼「生産緑地の2022年問題」に伴い、現在所有している生産緑地以外の不動産を今後どのようにする予定ですか?

「生産緑地の2022年問題」に伴い、現在所有している生産緑地以外の不動産を今後どのようにする予定ですか?のアンケート

マンションや戸建てなどの不動産を所有している人は、生涯にわたって住むことを前提にしている人が多いため、このような結果は順当でしょう。

しかし、自分が所有している不動産は生産緑地に該当しないからといって、まったく関係ないわけではありません。2022年問題は、広い農地や山林が売られることでその周辺の地価が下落する可能性を示しているからです。

例えば、今現在、資産価値の高いマンションを購入して住んでいるとします。もし同じ地域内にある生産緑地が売られ、新しいマンションが建設されれば、自分の住んでいるマンションの価値が下がるかもしれません。

今は売るつもりがなくても、所有している不動産のある地域の市況や動向にアンテナを張っておくといいでしょう。

生産緑地の所有者必見!2022年問題の解決策

生産緑地の所有者必見!2022年問題の解決策

生産緑地の指定が解除されると、農地を続けなくていい代わりに、これまで優遇されていた税制の優遇措置もなくなります。したがってそのまま所有し続けると、固定資産税の額が大幅に上がってしまいます。

急激な増額負担を避けるため、5年間にわたり毎年少しずつ引き上げられる緩和措置が取られていますが、最終的には宅地並みの課税税額となることは避けられません。

そこで、生産緑地の指定が解除される農地・山林は今後どうすればいいのか、3つの方法を紹介します。

1. 10年の延長申請をする(特定生産緑地にする)

1つ目は、10年の延長申請を行い特定生産緑地する方法です。

すでに生産緑地に指定されている農地・山林が30年を経過するまえまでに、新たに「特定生産緑地」に指定されると、10年間の延長となり税制優遇を引き続き受けられます。

また、特定生産緑地は10年毎の更新制で繰り返しの延長が可能です。これからも農業を継続する意向がある人や、貸し農地としての活用を考えている人におすすめな方法です。

ただし、「特定生産緑地」の指定を受けられるのは、生産緑地の指定が解除されるまえまでです。30年を過ぎ、指定が解除された場合は、特定生産緑地と指定できないので注意しましょう。

2. 宅地に転用し活用する

2つ目は農地を宅地に転用するという方法です。

具体的には、アパートやマンションを建てたり、駐車場にしたりする活用方法が挙げられます。ただし、アパートやマンションを建築するにはそれなりの費用がかかります。また入居者がいなければ家賃収入もないため、赤字となる可能性もあるでしょう。

農地を宅地に転用して活用するまえに、周辺の需要をよく調べることや運用利回りをシミュレーションすることが重要です。

3. 宅地に転用し売却する

3つ目は農地を宅地に転用してから売却する方法です。

農地をそのまま売却する場合、農地の購入者は農家や農業参入者に限定されます。また売却時には農業委員会の許可が必要です。申請せずに農地を売却した場合は、無効になる可能性があります。

このように、農地のまま売却するには手間がかかる上、なかなか買い手が見つからないこともあるでしょう。そこで、農地を宅地に転用してから売却するのです。

農地を宅地に転用するには「立地基準」と「一般基準」の2つの基準を満たす必要がありますが、生産緑地は市街化区域内のため、通常は農業委員会に届け出を行うことで転用できます。

市街化区域にある広く大きい土地は希少価値があります。また買主となるのは一般的にデベロッパーや建設会社です。売却時には不動産鑑定士や専門業者に土地の査定を受け、複数者と比較してから売却先を決めるといいでしょう。

生産緑地の2022年問題に備えよう

生産緑地の2022年問題に備えよう

1都3県や大阪市、名古屋市などの大都市にある500平方メートル以上の規模の農地や山林は、生産緑地の可能性が高いと言えます。

生産緑地の指定が解除されると、税制の優遇措置が受けられなくなるため、延長を申請するか宅地に転用して活用または売却するか、早めの対策をとることが大切です。

自分の農地や山林が生産緑地かわからない場合は、固定資産税課税明細書や所有している不動産の現地に看板がないかを確認しましょう。

また、生産緑地ではない不動産を所持している人も、生産緑地が売られると自分の不動産も価値が下がってしまう可能性があるため、周りに生産緑地がある人は特に今後の不動産市況をこまめに確認しておくことをおすすめします。

調査概要

調査目的 生産緑地における2022年問題について、浸透度の確認
調査期間 2021年11月23日~11月29日
調査方法 インターネットによる回答
調査対象 「保険スクエアbang! 自動車保険」「ズバット 車買取比較」「ズバット 引越し比較」「ズバット 不動産売却」の過去利用者
有効回答数 1,073
男女比率 男性860名(80.1%)、女性194名(18.1%)、無回答19名(1.8%)
年代比率 20代 1.0%、30代 4.2%、40代 18.9%、50代 34.2%、60代 28.4%、70代 11.7%、80代 1.5%、90代 0.2%
平均年齢 54.7歳
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