不動産の共有持分は売却可能!方法やトラブルにならないための注意点を解説
不動産を共有している人のなかには、持分を売却したいものの、自分だけで売却できるのか疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。
結論として共有持分は売却可能です。しかし、通常の不動産売却とは異なる点が多いため、共有持分売却の仕組みを把握する必要があります。
そこで本記事では、共有持分の売却方法や注意点を解説します。本記事を読んでいただければ、他の共有者とのトラブルを避けながら売却できるでしょう。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
共有持分とは
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有するときの所有権割合のことです。
不動産を複数人で所有するのは、夫婦で資金を出し合ってマイホームを購入した場合や、親の不動産を兄弟で相続した場合などです。
通常、持分は支払った金額に応じて割合が決められます。例えば、4,000万円の不動産を購入する際に、夫が3,000万円、妻が1,000万円支払った場合、夫の持分は3/4で、妻の持分は1/4です。
相続の場合は遺言書がない限り、法定相続分に応じて持ち分が決まります。父が所有していた不動産を母と2名の子で相続する場合の持分は、母が1/2で、子がそれぞれ1/4ずつです。
特段の決め事がない限り、税金なども持分に応じて負担します。
共有持分は売却できる
冒頭でも述べた通り、共有持分は売却できます。しかし、通常の不動産売却と異なる部分があるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 共有持分だけなら単独で売却可能
- 第三者への売却は難しい
これらの具体的な理由を解説します。
共有持分だけなら単独で売却可能
不動産を共有していたとしても、自分の持分だけであれば単独で売却可能です。あくまでも持分の売却であり、共有不動産全体の売却ではないためです。
通常、不動産は共有者全員の同意がなければ売却できません。そのため、共有者が多いほど意思決定が難しく、売却したくてもできない状態に陥るケースが散見されます。これが不動産を共有することの1つのリスクです。
しかし、個人の持分だけであれば自由に売却できることを覚えておきましょう。
第三者への売却は難しい
個人の共有持分は自由に売却できますが、第三者への売却は難しいと考えましょう。共有持分を購入する買主が見つかりにくいためです。
買主からすると共有持分だけ持っていても、あまり使い道がありません。むしろ、見ず知らずの人と不動産を共有することになるため、購入を敬遠する人のほうが多いでしょう。
このように、共有持分は自由に売却できるものの、取引が簡単に成立する訳ではありません。自ずと売却先は限られてしまいます。
共有持分を売却する方法
共有持分は売却できますが、第三者への売却は困難であることを解説しました。しかし、売却先が見つからないと、いつまでも共有持分を手放せません。そこで、本章では共有持分を売却する方法を紹介します。具体的な売却方法は、以下の4パターンに分けられます。
- 共有持分買取の専門の不動産会社に売却する
- 同じ不動産を共有している人に売却する
- 他の共有者と共有物全体を売却する
- 土地を単独名義にして売却する
共有持分買取の専門の不動産会社に売却する
不動産会社のなかには、共有持分の買取を専門にしている会社があります。そのような会社に依頼することで、スムーズに共有持分を売却できます。
共有持分の買取を専門にしている会社の、主な事業内容は以下の通りです。
- 購入した持分を他の共有者に売却する
- 他の共有者からも持分を買い取り、単独所有にしたうえで売却する
これらの売却方法は不動産会社に依頼せずとも可能です。しかし、共有者同士が不仲で直接の取引に応じてもらえない場合や、諸事情で至急売却しなければならないケースも珍しくありません。
そのような際には、不動産会社の買取が便利です。なお、不動産会社の買取は、通常の売却よりも安くなってしまう点に注意しましょう。
同じ不動産を共有している人に売却する
同じ不動産を共有している人に売却するのが、最もシンプルな方法です。
例えば、相続した不動産に住んでいる兄と、遠方に住んでいる弟が1/2ずつ持分を持っていたとしましょう。この場合、兄は自分が住んでいる家であっても、弟の許可なく解体や売却はできません。
一方、弟は住んでいないにもかかわらず、固定資産税や都市計画税を納める必要があります。
このような問題を解決するのが、共有者への持分売却です。弟は持分がなくなるので納税義務から解放され、兄は単独所有になるので、不動産を自由に活用・処分できるようになります。
しかし、共有者同士という理由で相場よりも安い価格で取引すると、贈与とみなされて課税される恐れがあるため注意しましょう。
他の共有者と共有物全体を売却する
他の共有者と一緒に共有不動産全体を売却するのが、最も高値で売却できる方法です。他の共有者と一緒に売却することで、通常の不動産売却と同じ条件になります。
しかし、この方法は共有者の数が多くなるほど難しくなります。全員で足並みを揃える必要があるので、一人でも売却価格に納得しない人がいれば売却できません。
共有者が多い場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して進めるのがおすすめです。
土地を単独名義にして売却する
共有している不動産が土地の場合は、土地を分筆して単独名義にしてから売却する方法があります。
この方法が有効なのは、共有者で土地利用の意見が割れている場合です。例えば、2名で1/2ずつ持分を持っており、売却したい人と家を建てたい人で意見が割れているとしましょう。この場合、土地を2つに分けて、それぞれが単独所有になれば自分の好きなように土地を利用できます。
しかし、分筆は土地の形状によって向き不向きがあるため注意しましょう。正方形の土地など、間口が広い整形地であれば問題ありませんが、間口が狭い長方形の土地の場合、分筆すると建築基準法上の接道要件を満たさない土地になる恐れがあります。
他にも敷地延長の土地や台形地、三角地などの不整形地は分筆すると建物を建てにくい土地になるでしょう。分筆後に本来の目的を達成できるか考える必要があります。
共有持分の売却時にかかる費用
共有持分の売却方法がわかったところで、本章では共有持分の売却時にかかる税金や費用について解説します。主な項目は以下の通りです。
- 登記費用
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 不動産仲介手数料
- 司法書士への手数料
登記費用
登記費用とは、不動産を登記する際にかかる登録免許税を指します。
不動産は所有権を移転するときや、抵当権を抹消するときなどに登記しなければいけません。登録免許税の計算式は以下の通りです。
登録免許税=固定資産税評価額×税率
所有権移転登記にかかる費用は、通常であれば買主負担です。一方、売主は売却時に以下のような費用がかかります。
- 相続登記(相続の場合):固定資産税評価額×0.4%
- 抵当権抹消登記(抵当権が残っている場合):不動産1つにつき1,000円
- 住所変更登記(購入時から住所が変わっている場合):不動産1つにつき1,000円
なお、敷地権登記がされている場合を除き、土地と建物は別々に課税される点に注意しましょう。また、土地が分筆登記されている場合は、土地の数だけ費用がかかります。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産が購入時よりも高く売れて利益が出た際に課される税金です。税額は以下の計算式で求められます。
- 課税譲渡所得=マンションの売却価格(譲渡所得)-(取得費用+譲渡費用)
- 譲渡所得税=課税譲渡所得×税率
税率は所有期間に応じて異なるため注意しましょう。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超え) |
15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
取得費や譲渡費用の計算は複雑であるため、税理士などの専門家に譲渡所得税が課されるか売却前に確認しておくと安心です。
印紙税
印紙税とは、不動産の売買契約書に貼付する収入印紙のことです。
不動産の売買契約書は印紙税法に定める課税文書に該当するため、所定の収入印紙を貼付しなければいけません。収入印紙の金額は売買金額によって異なるので、以下の表を参考にしてください。
売買価格 | 収入印紙の金額 (印紙税額) |
---|---|
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
不動産仲介手数料
仲介手数料とは、不動産の売買が成立した際に不動産会社へ支払う報酬です。
不動産会社を通さずに取引する場合は不要ですが、不動産会社に仲介を依頼する場合は必要となります。仲介手数料は売買価格によって上限が設定されているため、以下の表を参考にしてください。
売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+消費税 |
売買価格が400万円を超える場合は、以下の速算式で計算できます。
売買価格×3%+6万円+消費税
例えば、売買価格が3,000万円で消費税が10%の場合、仲介手数料は105万6,000円です。
司法書士への手数料
司法書士への手数料とは、登記を依頼する司法書士へ支払う報酬です。
登記は自分で行うこともできますが、所有権移転登記など、第三者や金融機関も関わる取引では、安全性を確保するために司法書士へ依頼するのが一般的です。
依頼する登記の内容にもよりますが、抵当権抹消登記や住所変更登記の場合10,000〜20,000円の費用がかかると考えましょう。
なお、通常の取引では、所有権移転にかかる費用は買主が負担します。
トラブルにならないための共有持分売却時の注意点
共有持分の売却は、通常の不動産売却と比べてトラブルが発生しやすい傾向にあります。
具体的には共有者との関係悪化や、税金の滞納などです。このようなトラブルを避けるためにも、売却時には以下のポイントに注意しましょう。
- 不動産の共有者を確認しておく
- 持分割合を把握しておく
- 売却を専門家に相談する
それぞれについて詳しく解説します。
不動産の共有者を確認しておく
共有持分を売却する際には、必ず共有者を確認し、売却する旨を伝えましょう。
共有者のなかで相続が発生している場合などは、多くの所有者で不動産を共有していることも考えられます。そのなかで自分一人が第三者などに売却すると、他の共有者に迷惑がかかってしまうでしょう。
親族で共有している場合は、親族の関係にひびが入ってしまう恐れもあります。必ず他の共有者に連絡を取り、売却の了承を得ましょう。
持分割合を把握しておく
他の共有者に迷惑をかけないためにも、自分の持分割合を把握しておきましょう。
共有している不動産の利用・管理・処分の決定は、持分割合に応じて異なります。具体的には以下の表の通りです。
必要な持分割合 | できること |
---|---|
単独 | 【保存行為】 ・現状維持を目的とした修繕・リフォーム ・不法占拠者に対する明渡し請求 ・不正登記に対する抹消請求 ・共有不動産の使用 ・持分のみの売却 |
過半数 | 【管理行為】 ・賃貸物件としての利用(短期間) ・資産価値を高めるリフォーム・リノベーション |
全員 | 【変更・処分行為】 ・建物の解体 ・賃貸物件としての利用(長期) ・共有不動産の売却 |
例えば、自分に過半数以上の持分がある場合、短期間の賃貸物件としての利用や資産価値を高めるリフォーム・リノベーションを自由に実施できます。
これが見ず知らずの第三者に渡ると、第三者が事前相談なしに不動産を賃貸に出すなど、他の共有者に迷惑がかかる恐れがあります。また、税金を滞納された場合、他の共有者が納税しなければいけません。
自分がどの程度の権利を持っているのかを事前に把握しておきましょう。
売却を専門家に相談する
共有持分の売却では、共有者から了承を得られない場合があります。そのような際には、共有持分の買取を専門にしている不動産会社や、不動産仲介会社、税理士などに相談しましょう。
専門家から共有者に売却のメリット・デメリットを伝えてもらうことで、共有者全員で売却できる可能性もあります。
しかし、なかには共有持分を買い取った後に、共有者に対して強引な営業をかけるような不動産会社があるのも事実です。共有持分を売却する際には、口コミや評判を調べるだけでなく、実際に相談して信頼できると感じる不動産会社を選びましょう。
特に、共有持分の取引実績や、弁護士・司法書士など、各専門家との繋がりを重視するのがおすすめです。
まとめ
共有持分は単独での売却が可能です。しかし、共有持分だけではあまり使い道がないため、第三者への売却は現実的ではありません。共有持分の買取を専門にしている不動産会社や、他の共有者への売却が現実的な方法でしょう。
共有者全員で売却すれば、通常の不動産売買と同じ条件になるので、共有持分の売却と比べて高値での取引が期待できます。
また、共有持分の売却はトラブルが発生しやすい傾向にあります。売却する際には、共有者や持分を確認したうえで、専門家に相談するのがおすすめです。
本記事で解説した内容を参考に、トラブルを避けながら共有持分を売却しましょう。