物件を更地にして売る方法|手順と家の解体にかかる費用や税金についても解説
家の売却を検討している人の中には、建物を解体し更地として売却すべきか、それとも古家付きの土地として売却すべきか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
両者には、それぞれメリット・デメリットがあり、最適な売却方法を選択するためには、違いを把握してから売却に臨むことが大切です。本記事では、「更地としての売却」と「古家付きの土地としての売却」のどちらが良いかについて解説します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
更地と古家付き土地はどちらで売るのが良いか?
築年数の経過した古家を売却する際には、「建物を解体し更地として売却する」または「古家付きの土地として売却する」といった2つの方法のいずれかを選択することになります。
更地の場合は、買主がその土地に好きな建物を自由に建てることができ、古家付きの土地の場合は、建物をリフォームすれば、費用を抑えてマイホームを取得することができます。需要の高い方を選択できれば売却を有利に進められるため、まずは以下の2つを把握しておくことが大切です。それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
- 更地にすると良いケース
- 更地にしない方が良いケース
更地にすると良いケース
更地にした方が良いケースとしては、以下の2つが挙げられます。
- 空き家の維持管理が困難
- 建物の劣化が進行している
空き家になっている古家を売却する場合、買主が見つかるまでは、劣化が進行しないように維持管理を行う必要があります。しかし、古家の維持管理には、手間や時間、費用がかかる点に注意が必要です。
解体を選択した場合は、手間や時間を省くことができます。また、解体費用はかかるものの、維持管理の費用よりも少なく抑えられる可能性があります。建物の劣化が進行している場合は、リフォームで印象を良くするために多額の費用がかかります。リフォームしないままだと印象が悪くなるため、需要を高めるには、解体して更地にした方が良いでしょう。
更地にしない方が良いケース
更地にしない方が良いケースとしては、以下の3つが挙げられます。
- 建物に価値がある
- 再建築不可物件である
- 解体費用が高額である
「古民家としての利用価値がある」といったように、建物の価値が認められる古家の場合、解体せずに売却した方がより高く古家を売却することが可能です。再建築不可物件の場合は、建物を解体すると建て直すことができません。解体費用が高額な場合は、手元に残るお金が少なくなるため、解体せずにそのまま売却した方が良いでしょう。
更地にして売却するメリット・デメリット
古家を解体し、更地にしてから売却することは、メリットだけでなく、デメリットも伴います。メリット・デメリットを理解しないまま解体を選択した場合、想定と異なる結果となって後悔する可能性もあり、注意が必要です。以下、詳しく説明します。
- 更地にして売るメリット
- 更地にして売るデメリット
更地にして売るメリット
古家を解体し、更地にしてから売却するメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 流動性・需要が高くなる
- 倒壊のリスクを回避できる
- 管理の手間と負担を軽減できる
土地を探している人の多くは、「新築」を希望しています。そのため、古家付き土地として売り出すよりも、更地として売り出した方が解体費用を削減できる上、すぐに着工できるため、流動性と需要が高くなるでしょう。また、古家の場合は、劣化が進行していて倒壊のリスクが高いため、維持管理に手間と費用がかかります。更地にすれば、倒壊のリスクを回避でき、管理の手間と負担を軽減できるでしょう。
更地にして売るデメリット
古家を解体し、更地にしてから売却するデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 税金が高額になる
- 解体費用がかかる
- 流動性・需要が低くなる
宅地の場合は、控除を受けられるため、固定資産税の負担を軽減できます。しかし、更地にすると控除が受けられないため、固定資産税の負担が大きくなります。また、解体費用が高額だと、手元に残るお金が少なくなる点もデメリットです。
売却するのが再建築不可物件の場合は、古家を解体すると、建物を再建築できません。利用用途が限られるため、流動性・需要が低くなる可能性がある点に注意しましょう。
更地にして売るときにかかる費用
古家の解体にかかる費用は、解体業者や建物の規模によって異なります。また、更地の売却時にも諸費用や各種税金が発生するため、どのくらいの費用がかかるのか、おおよその費用を把握しておくことが大切です。古家の解体にかかる費用としては、以下の3つが挙げられます。それぞれ費用がどのくらいかかるのか、詳しく見ていきましょう。
- 更地にするための家の解体にかかる費用
- 更地にした土地を売る際にかかる費用
- 更地にした土地の売却によって生じる税金
更地にするための家の解体にかかる費用
更地にするための家の解体にかかる費用としては、以下の3つが挙げられます。
- 解体工事費
- 付帯工事費用
- 廃材処分費用
「解体工事費」とは、古家を取り壊す際にかかる費用です。解体費用は、規模・構造によって以下のように異なります。
- 木造:3万~4万円/坪
- 鉄骨造:4万~5万円/坪
- 鉄筋コンクリート造:5万~6万円/坪
「付帯工事費用」とは、ブロック塀や庭などの付帯物を除去する際にかかる費用です。「廃材処分費用」とは、古家の解体によって発生した廃材を処分する際にかかる費用です。「付帯工事費用」は付帯物の種類・量によって、「廃材処分費用」は廃材の量によって差が生じます。
解体費用の総額は、古家の規模・構造によって異なりますが、100万~200万円程度かかることを想定しておきましょう。
更地にした土地を売る際にかかる費用
更地にした土地を売却する際にかかる費用としては、以下の4つが挙げられます。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- 測量費用
- 地盤調査費用
「仲介手数料」とは、不動産会社に仲介を依頼し、更地を売却した場合に必ずかかる費用です。宅地建物取引業法に上限が設定されており、「売却価格×3%+6万円+消費税」という速算式で上限を算出できます。
「抵当権抹消費用」とは、住宅ローンの契約時に設定した抵当権の抹消にかかる費用です。必ずかかるわけではありませんが、土地と建物で1,000円ずつかかります。
「測量費用」「地盤調査費用」などは、売買契約のトラブルを回避するために行う調査費用です。測量には30万~60万円程度、地盤調査には6万円程度かかります。
更地にした土地の売却によって生じる税金
更地にした土地を売却する際にかかる税金としては、以下の2つが挙げられます。
- 印紙税
- 譲渡所得税
印紙税の金額
「印紙税」とは、経済取引に関連して作成する文書に課される税金です。税額は、売買契約書に記載されている金額によって以下のように異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
譲渡所得税の金額
「譲渡所得税」とは、更地を売却し、利益が発生した場合に課される税金です。「売却価格̠-(取得費用+譲渡費用)」の計算結果がプラスになった場合、所得税と住民税が課されます。税額は、不動産の所有期間によって、以下のように異なります。
種類 | 所有期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下 | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年超 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
古家を解体して更地にして売る方法・手順
通常の不動産売却の場合は、仲介を依頼する不動産会社を決めると、不動産会社が買主を探してくれるため、基本的に任せておけば問題ありません。
しかし、古家を解体し、更地にして売却する方法の場合は、通常の不動産売却と異なる部分がいくつかあるため、どのような手順で売却を進めるのか、事前に把握しておくことが大切です。売却の手順は、以下の2つに分かれます。それぞれの流れについて、詳しく見ていきましょう。
- 更地にするまでの流れ
- 更地を売却するまでの流れ
更地にするまでの流れ
古家を解体し、更地にするまでの流れは、以下の通りです。
<更地にするまでの流れ>
- ①更地にすべきかどうかを不動産会社に相談する
- ②解体業者を探す
- ③現地調査(見積もり)
- ④解体のための準備
- ⑤解体作業
- ⑥登記手続き・業者への支払い
上記の手順で重要となるのは、不動産会社への相談と解体業者の選定です。更地にすべきかどうかについては、状況によって異なってくるため、最善の選択ができるよう、必ず不動産会社に相談してから決めましょう。
また、解体費用は業者によって異なります。費用を抑え、トラブルを防ぐためにも、複数の解体業者に査定を依頼し、各社の査定結果と実績などを比較した上で選定しましょう。
更地を売却するまでの流れ
更地を売却するまでの流れは、以下の通りです。
<更地を売却するまでの流れ>
- ①更地を売りに出す
- ②売買契約を締結する
- ③更地を引き渡す
- ④更地を売った翌年に確定申告する
更地の査定結果は、不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。
建物を解体して更地にする際の注意点
建物を解体して更地にすれば、流動性・需要が高まるため、速やかな売却が期待できます。また、劣化した建物を解体すれば、維持管理にかかる手間や費用を抑えられる点も大きなメリットです。しかし、建物を解体して更地にすることにはデメリットも伴うため、以下の2点に注意が必要です。それぞれの注意点について、詳しく説明します。
- 更地にすると土地にかかる税金が増える
- 新たな建築が可能な土地なのか事前確認が必要
更地にすると土地にかかる税金が増える
宅地は、「住宅用地」と「非住宅用地」の2つに区分されます。古家付きの土地は、「住宅用地」として扱われるため、住宅用地の軽減措置によって、固定資産税の優遇を受けられます。一方、建物を解体して更地にした場合は、「非住宅用地」として扱われるため、住宅用地の軽減措置が適用されません。
優遇が受けられない場合、固定資産税の負担は3~4倍程度と大きくなります。更地にしてからすぐに買主が見つかった場合は、軽微の影響で済むものの、更地にしてからなかなか買主が見つからない場合は、税負担が大きくなる点に注意が必要です。
新たな建築が可能な土地なのか事前確認が必要
建築基準法の制定前あるいは改正前に建築された物件の中には、現行の建築基準法や各種法律・法令に違反している物件もあります。
「再建築不可物件」とは、そのような現行の建築基準法や各種法律・法令に違反している物件のことであり、一度建物を解体すると再建築できません。古家が再建築不可物件であるにもかかわらず解体すると、「駐車場」「資材置き場」といったように用途が限られ、流動性・需要が低下します。再建築可能な土地なのかどうかについては、事前に確認しておきましょう。
まとめ
築年数の経過した古家の売却を予定している場合は、古家を解体して更地として売却するのか、もしくは古家付きの土地として売却するのか、いずれかを選択することになります。それぞれメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが良いとは言い切れません。しかし、古家を解体する場合は、一度解体すると元に戻せないため、メリット・デメリット、注意点を踏まえた上で、総合的に判断しましょう。