専任媒介契約の期間は3ヵ月!更新や途中解約の方法を解説
不動産を仲介で売却する際には、売り手と不動産会社の間で「媒介契約」と呼ばれる契約を結びます。媒介契約は、不動産の売却活動を売り手に代わって宅地建物取引業者である不動産会社が引き受けるという契約です。
媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があり、それぞれ内容が異なります。専任媒介契約の内容は、一般媒介契約と専属専任媒介契約の言わば中間的な存在です。
この記事では、専任媒介契約の期間やルールをわかりやすく解説しています。満期を迎えた場合の手続きや途中解約も併せて解説しているので、専任媒介契約の理解を深めて適切な期間で契約しましょう。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
専任媒介契約の期間
媒介契約は、種類に関わらず有効期限を設けて契約します。宅地建物取引業法では一般媒介契約以外の媒介契約に契約期間の上限が定められているため、それ以上の期間で契約できません。
ここでは、専任媒介契約の期間を詳しく解説します。
専任媒介契約の上限期間は3ヵ月
専任媒介契約の期間は、3ヵ月が上限です。これは、宅地建物取引業法第34条の2第3項及び4項で定められています。
最初に結んだ専任媒介契約で不動産の売却に至らなかった場合、更新後も3ヵ月が上限です。
3ヵ月というのは、宅地建物取引業法で定められている期間はあくまでも上限になります。そのため、売り手と不動産会社で協議し、1ヵ月や2ヵ月などの上限を下回る期間でも契約できます。不動産会社から上限よりも短い期間を提案されることもあれば、売り手からの提案も可能です。
契約期間に上限が設けられている理由
専任媒介契約と専属専任媒介契約に契約期間の上限が設けられている理由は、売り手が不利な立場にならないようにするためです。
例えば、契約期間を長くしすぎた場合、不動産会社が売却活動を積極的に行わずに不動産がなかなか売却できない事態に陥る可能性も少なくありません。
特に専任媒介契約は1社の不動産会社としか契約できないルールがあるため、不動産会社が有利な立場になりやすいもの。しかし、3ヵ月という契約期間の上限があることで、売り手は売却活動を依頼する不動産会社の見直しがしやすくなるのです。
専任媒介契約期間中のルール
売り手と不動産会社で専任媒介契約を結んだあとは、売り出し価格を設定したり広告を作成したりと、売却活動がスタートします。
契約期間中には売り手に対するいくつかのルールがあり、違反すると不動産会社から違約金を請求される場合もあるので注意しましょう。
契約期間中のルールは、次の表の通り媒介契約の種類ごとに異なります。ここでは、専任媒介契約のルールを解説します。
契約可能な不動産会社は1社
契約可能な不動産会社数は媒介契約の種類で異なり、専任媒介契約と専属専任媒介契約は1社に限られています。一方、一般媒介契約は、複数の不動産会社との契約が可能です。
専任媒介契約は1社の不動産会社としか契約できないため、不動産会社選びが重要になります。不動産の売却を成功に導くためには、不動産会社が持ち合わせているノウハウや実績などの手腕が大きく影響するからです。
また、不動産会社によっては、専任媒介契約に持ち込むために相場よりも高い査定額を提示するところもあります。このような場合、売り出し価格を設定する際になって査定額よりも低い金額を提案され、結果的に相場よりも安く売却することになってしまう可能性も少なくありません。
査定額と売却できる価格とはイコールではありません。査定額の高さだけで専任媒介契約を結ぶ不動産会社を決めないようにしましょう。
買い手と直接取引が可能
専任媒介契約の期間中は、売り手自身が買い手を見つけた場合、直接取引が可能です。不動産会社を介さない直接取引は、不動産の専門用語で自己発見取引と呼ばれています。
不動産会社を介して売買契約が成立した場合には仲介手数料の支払いが発生しますが、自己発見取引は仲介手数料の支払いが不要です。しかし、契約内容によっては自己発見取引になった際に、これまで売却活動のために要した実費を不動産会社から請求される可能性もないとは言えません。
そのため、売却活動のすべてを不動産会社に頼らずに自身でも買い手を探したい場合は、専任媒介契約を結ぶ前に確認をとっておくといいでしょう。
レインズへの登録義務がある
レインズとは「Real Estate Information Network System」の略称で、公益財団法人不動産流通機構が運営する不動産情報システムです。
物件情報のレインズへの登録することで、より多くの不動産会社が閲覧できるため、買い手が見つかりやすくなり早期の売却が期待できます。
専任媒介契約では、契約から7日以内にレインズへの物件情報登録と、登録完了後の証明書の交付が義務づけられているため、不動産会社が申請した内容に誤りがないか登録証明書をチェックしましょう。
進捗状況の報告義務がある
3種類ある媒介契約のうち、不動産会社から売り手に進捗状況の報告義務があるのは専任媒介契約と専属専任媒介契約の2種類になります。
専任媒介契約では、不動産会社から報告を受ける頻度は2週間に1回以上です。
報告方法にルールはなく、電話・文書・メールなどさまざまです。どのような方法で報告を受けるかは、媒介契約を結ぶ際に売り手が選べます。報告内容をきちんと管理したい場合は、文書やメールなどの保管しやすい方法を選ぶといいでしょう。
専任媒介契約の期間が満期を迎えたら?
一般媒介契約は自動更新の特約を付帯できますが、専任媒介契約では認められていません。専任媒介契約の期間は自動更新されないため、満期を迎えたら更新または終了のいずれかを選びましょう。
この内容は宅地建物取引業法の第34条の2で定められており、売り手からの申し出がない限り勝手に更新できません。なお、満期を迎えるまでに売買契約が成立していない場合は、仲介手数料の支払いは必要ありません。
ここでは、契約期間の満期を迎えて更新する場合と終了する場合の手順を解説します。
契約を更新する場合
期間を更新する場合と終了する場合の大きな違いは、同じ不動産会社と契約するか否かです。同じ不動産会社に引き続き売却活動を依頼する場合は、更新する必要があります。更新する場合の基本的な手順は次の通りです。
1. 満了を迎える前に不動産会社から更新するかどうかの確認が来る
2. 不動産会社に更新する旨を伝える3. 不動産会社から手続きに必要な書類を受け取る
4. 内容を確認し、署名・捺印の上不動産会社に渡す
5. 更新手続き完了
一般的に不動産を売却するまでに平均で6ヵ月程度かかるといわれているため、同じ不動産会社で更新するケースも多いです。更新するか否かは、これまでに不動産会社が行ってきた売却活動や対応などを総合的にチェックして判断するようにしましょう。
契約を終了する場合
たとえ契約書類に自動更新の特約が記載されていても、宅地建物取引業法で定められているため専任媒介契約の場合は無効です。そのため、同じ不動産会社と契約を更新しなければ満期をもって終了になります。
通常は、不動産会社に更新する意思がないことを伝えれば終了です。しかし、契約の際には書面を交わしているため、終了する旨を記載した書類を作成して不動産会社に渡すことをおすすめします。
不動産会社から更新を打診された場合でも、更新の意思がなければきちんと断るようにしましょう。更新を断っても広告費や違約金を請求されることはありません。
専任媒介契約期間中の途中解約について
媒介契約の種類に関わらず、契約期間中であっても売り手から不動産会社に解約を申し出ることは可能です。解約の理由は、おもに不動産会社に問題がある場合と自己都合の場合の2種類があります。
ここでは、専任媒介契約期間中の解約について、不動産会社に問題がある場合と自己都合の場合をそれぞれ解説します。
不動産会社に問題がある場合
契約期間中に解約する理由には、不動産会社に問題があるケースも考えられます。
例えば売却活動が積極的でなかったり、進捗状況の報告義務をきちんと行わなかったりなど業務の怠慢が見られた場合です。
しかし、このような状況下でも少し様子を見てもいいでしょう。不動産会社に不満を伝えることで、状況が改善されるケースもあるからです。それでも改善が見られないときは、不動産会社が契約内容の義務を果たしてないと判断できます。
このような場合、たとえ契約期間中であっても途中解約が可能です。解約申し出の際には、今後のトラブルを回避するためにも、解約する旨を記載した書類を作成して手続きを行いましょう。
自己都合の場合
不動産会社に問題がない場合でも契約期間中に解約を申し出ることは可能です。しかし、これまでに要した費用を請求される可能性があります。
自己都合による解約の際に請求される可能性のある費用はおもに次の通りです。
- 現地調査に要した費用
- 権利関係の調査に要した費用
- 広告・宣伝に要した費用
解約の際に費用を請求された場合は、明細の提示してもらい記載されている項目をきちんとチェックします。不透明な項目があれば根拠の説明を求めましょう。
違約金の上限額は、簡単に言うと「仲介手数料上限と同額まで」と法律で決まっています。契約期間は最大でも3ヵ月です。上記の違約金を避けるためにも極力中途解約はせず、契約満了を待ちましょう。
専任媒介契約に関するQ&A
ここでは、専任媒介契約に関するよくある質問と回答をいくつか紹介します。専任媒介契約への疑問がある場合は、不動産会社と契約を結ぶまでに解消させておきましょう。
契約期間中にほかの不動産会社に相談してもいい?
専任媒介契約のルールでは、期間中はほかの不動産会社と契約できません。万が一、ほかの不動産会社と契約して売買契約が成立した場合は、違約金を請求される可能性があるので注意しましょう。
しかし、契約期間中であっても相談のみであればほかの不動産会社にアドバイスを求めても問題ありません。契約中の不動産会社に不満がある場合や更新を迷っている場合は、ほかの不動産会社に早めに相談しておくのもいいでしょう。
解約を申し出るタイミングはいつがいい?
不動産会社に問題がある場合、または自己都合で解約を検討している場合、申し出るタイミングは基本的にいつでも問題ありません。しかし、自己都合の場合は、解約の際に売却活動のために要した費用を請求される可能性があります。
例えば、現地調査のために要した交通費や買い手を募集するために要した広告費などです。このような違約金のリスクに不安がある場合は、契約期間中の解約ではなく、更新のタイミングを待って終了に持ち込むほうがいいでしょう。
より詳しい内容は下記の記事で解説しています。
契約終了後の取引きに制限はある?
専任媒介契約では、売り手自身が買い手を見つけた場合、不動産会社を介さずに直接取引きできます。ただし、不動産会社を介して知り合った買い手の場合は直接取引できません。
不動産会社を介した取引きでは、仲介手数料が発生します。売り手の中には仲介手数料の支払いを避けるために、契約終了後のタイミングを狙って不動産会社を介して知り合った買い手との取引きを試みるケースもあります。
このような事態を避けるために、契約終了後の2年以内は、不動産会社を介して知り合った買い手とは直接取引できないルールが存在するので注意しましょう。万が一、ルール違反が発覚した場合、不動産会社から仲介手数料と同等の金額を請求される可能性があります。
専任媒介契約の契約期間は慎重に決めよう
専任媒介契約の期間は3ヵ月が一般的ですが、あくまで宅地建物取引業法で定められた上限にすぎません。売り手と不動産会社が協議をして合意すれば、1ヵ月や2ヵ月などの短期間で契約することも可能です。
複数の不動産会社と契約できる一般媒介契約と異なり、専任媒介契約は1社に限られるため、契約期間は慎重に検討するようにしましょう。また、不動産の売却を成功に導くためには、不動産会社選びが重要です。
不動産会社ごとに得意分野や持ち合わせているノウハウが異なるため、最初から1社に絞るのではなく、複数社を比較して選びましょう。売却力に優れ、信頼できる不動産会社を探す際には、複数社に一括で査定を依頼できる「ズバット 不動産売却」のような一括査定サイトの利用がおすすめです。
契約期間は3ヵ月が上限です。もし、媒介契約している不動産会社を変えたい場合は、期間中に新しい仲介会社に相談しておき、現在の契約期間の満了後に新しい仲介会社と正式に媒介契約を結ぶといいでしょう。
専任媒介契約は、営業マンが最も販売に力を入れてくれる契約形態です。なぜなら、1社のみとしか契約できないので契約期間中はほかの業者に横取りされることもありませんし、営業担当者自身の成果に直結するからです。