不動産売却に適した時期とは?見極める基準やタイミングを解説
不動産の売却時期は最終的な成約金額や、売却活動の期間に影響する重要なポイントです。
慎重かつ計画的に見極める必要があります。とは言え、見極めるための基準を理解していなければ売却に適した時期を判断できないでしょう。
そこで、この記事では不動産を売却する時期を見極める基準や、売却に不向きなタイミングを解説します。今後の不動産市場動向予測も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
不動産を売却する時期を見極める基準
不動産はいくつかの要素で価格や需要が変動していきます。これらの要素を押さえて売却タイミングを見極めることで、不動産の売却活動を有利に進められるでしょう。
具体的な要素は以下の通りです。
- 季節
- 築年数
- 税金
- 相場
- 金利
それぞれ詳しく見ていきましょう。
季節
不動産売却時期に大きく関わるポイントに「季節」があります。実は不動産の需要は季節により大きく変わってきます。
ここで、統計データを見てみましょう。総務省統計局のデータによると、不動産取引業の売上高は例年3月がピークになっています。
なぜ売上が高いかというと、3月は年度末シーズンで、新生活や新学期など生活スタイルが変わる方が多い時期のためです。日本では生活スタイルの変化が多い年度替わりに合わせて、不動産を購入を検討する方が多い傾向があります。
そのため購入検討者が集まる年度末に合わせて不動産売却の準備を進めると、買い手が見つかる可能性がぐっと上がります。
築年数
続いての売却時期を見極めるポイントは築年数です。不動産の価値は土地と建物で考え方が異なります。土地は周辺の相場や土地形状などで決められるため、周辺の土地と比べても大きな価格差は生まれません。土地は経年による劣化もないため、持ち続けることで価値が下がるわけではありません。
しかし建物の価値は築年数が大きく影響します。
下のグラフは木造の戸建て物件の市場価値を簡易的に表したものです。
このグラフによると、築年数が20年の時点で建物の価値は、ほぼゼロになります。
構造の種類、戸建てかマンションかで価値がゼロになる年数は異なりますが、建物は築年数が浅いほど高値で売れる可能性が上がります。
税金
不動産売却時期の見極めポイント、3点目は税金です。
先に述べたように築件数は浅いほど高値で売れやすいですが、物件の取得期間が5年以下の場合、税金も多くなる可能性があります。
不動産売却時に譲渡所得税と呼ばれる税金がかかり、譲渡所得税の課税基準は物件の所有年数で、5年をボーダーラインにして税率が切り替わります。
具体的な税率は以下の通りです。
【短期譲渡所得の税率(所有期間が5年以下)】
所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%<
【長期譲渡所得の税率(所有期間が5年超)】
所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
つまり所有期間が5年を超えているかどうかで税率が約20%異なります。
ただしマイホームの売却は、築10年を超えた物件を対象に税率が軽減される「所得軽減税率」や、3000万円分の利益であれば課税対象にならない「3000万円特別控除」などの特例が利用可能です。
相場
不動産相場も売却時期の見極めに欠かせないポイントです。下のグラフは令和4年12月に発表した国土交通省のデータです。
住宅・マンションともに2013年から上昇傾向で、2020年ごろからはさらに急激に価格が増加しています。
このように不動産相場は経済状況や景気に影響を受け、変動します。相場から見た売却のタイミングは購入したときよりも高い相場で推移している状態です。
相場が上昇傾向のタイミングで売却できれば、所得時の価格よりも高く売れる可能性も十分考えられるでしょう。
金利
売却時期を見極めるためのポイント、最後は「金利」です。金利は多くの方が不動産購入時に利用する住宅ローンのコストに関わってきます。
基本的に低金利の状態は住宅ローンの金利も低くなり、借入コストが少なく済みます。借入コストが低くなれば不動産購入のハードルが下がり、結果として不動産市場が活発になります。
また売却時は住み替えを前提した方もいるため、低金利の状態は住み替えコストも低くなります。
このように金利は不動産市場の活動だけでなく売主の住み替えコストへも影響を与えます。
不動産売却に不向きなタイミング
不動産売却時期を見極める基準を踏まえて考えていくと、売却に不向きなタイミングが見えてきます。不向きなタイミングでの売却は損をしたり、買い手がなかなか見つからなかったりなどの問題が発生する可能性が上がります。
具体的には以下の点が不動産売却に不向きなタイミングです。
- 家を購入してから5年以上経っていない
- ローンが高金利の状態
それぞれ詳しく見てみましょう。
家を購入してから5年以上経っていない
不動産売却に不向きなタイミングの例として、家を購入してから時間が経っていないケースが挙げられます。
理由は先に述べたように譲渡所得税の税率が大きいためです。マイホームとして所有している家であれば3000万円分の売却益は控除されますが、およそ40%もの税率がかかるため損をする可能性があります。
また住宅ローンを利用して家を購入している場合、購入から5年では返済額が多く残っているケースが多いでしょう。
住宅ローンで一般的に採用されている返済方法は「元利均等返済」と呼ばれる方法です。この方法は「元金」と「利息」を合わせた返済額が完済時まで「均等」になるよう調整されます。返済スタートから返し終わるまで、金利が変わらなければ返済額は一定です。
元利均等返済の性質上、ローン返済初期では金利の返済割合が大きくなります。そのため購入後間もない状態での売却では元金の減りが少ないです。そのため売却金額より元金が多い状況に陥る可能性が高いです。
このように購入後5年以上経っていない物件を売却するのはデメリットが大きいため不向きでしょう。
ローンが高金利の状態
住宅ローンが高金利の状態も、不動産の売却に不向きなタイミングです。
ローンの金利が上がると不動産を購入するための利息が増加します。高金利な状態ほど余分な利息を払わなければならず、買い手の購買意欲が下がってしまいます。
この点はデータからも読み取れます。下の図は東証リート指数とマイナス金利の関係性を表したグラフです。
東証リート指数とは株で言う日経平均株価のことで、不動産の市場価格と相関関係があります。
国土交通省のデータによるとマイナス金利の導入後、東証リート指数は急激に上昇しています。価格が高くなったと言うことは、高くても売れる需要があると受け取れます。
逆を言えば、高金利状態では需要がなくなり、物件が売れにくくなると予測できるでしょう。
不動産の売却時期を逃さないポイント
不動産の売却時期はさまざまな要素が絡んでいます。売却に不向きな時期も存在するため、見極めをあやまると多くの税金がかかったり、安値での売却になったり、そもそも売れない可能性も考えられます。
そのため不動産の売却時期はかなり重要なポイントです。売却時期を逃さないためには、どのような点に気をつけるべきかを解説します。
売却したいタイミングより前から準備をする
不動産の売却は、おもに以下のようなステップで進んでいきます。
【1.】査定:不動産会社に査定価格を提示してもらう
【2.】媒介契約:不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を依頼する
【3.】売却活動:不動産会社が買主を探す、購入希望者が現れたら契約条件の交渉などを行う
【4.】売買契約の締結:条件に合意出来たら契約を結ぶ
【5.】決済・引渡し:売買代金の受領と同時に建物を引渡す
1〜5のステップを完了するまでに、おおむね3〜6ヵ月ほどの期間が必要です。そのため売却時期を逃さないためには、売却したい時期から逆算して売却活動をスタートさせましょう。
例えば、年度替わりに合わせて3月末に売却・住み替えを完了させたいのであれば、前年の10月~12月ごろに査定依頼を始めるといいでしょう。
今後の不動産市場を把握しておく
将来的に不動産売却を考えている場合は、今後の日本の不動産市場の動向を把握しておく必要があります。
不動産市場の動向を把握しておけば、売却タイミングの判断材料になるので、機会損失の防止が可能です。
とは言え、何がどう不動産市場に影響を与えるのかわからない方が多いでしょう。
不動産市場に影響を与える現象や問題で現段階で予想されているものを、詳しく解説します。
資源高騰で今後も不動産価格も上昇する可能性がある
2023年現在は新型コロナウイルス、ウクライナ・ロシア情勢が改善されないなどの影響でエネルギー資源をはじめとした原材料の価格が高騰しています。これらの資源高騰が、世界規模の物価上昇を促しています。
そして物価上昇の波は新築物件だけでなく、中古市場の需要へも影響を与え、不動産価格が上昇する要因のひとつです。
未だ世界情勢の改善は見通しが立たない状況のため、今後もしばらく不動産価格の上昇は続くと予想されます。
2030、2040年問題が影響する可能性がある
日本は将来2030年、2040年問題などの人口問題に直面する状況下にあります。どちらも我が国の人口問題の呼び名です。2030年、2040年はそれぞれ、団塊世代、団塊ジュニア世代が高齢者になり日本の高齢化が激しくなると予想されています。
2010年の1億2,806万人をピークに減少し始め、2040年ごろには、およそ1割減の1億1,092万人となると予測されています。この急激な人口減少で空き家がさらに増加する点が今後の不動産ん市場にとっての懸念事項です。
空き家が増加すると家を売りたい人が増加し、不動産市場に出回る家の数が飽和状態になるためです。また空き家の増加に対して自治体の数は人口減少に伴い減少していくと予想されています。
結果、地方郊外エリアを中心に不動産の価値が減少していく恐れがあります。将来不動産売却を検討している方は2030年、2040年問題を加味した上での売却タイミングを検討するといいでしょう。
不動産会社との相性を見極める
不動産売却でも重要とされているのが、どの不動産会社と媒介契約を結ぶかです。
売却時期を逃さないためには、売却予定物件のエリアが得意、売却が得意な不動産を選びましょう。
また高額で大切な不動産の売却を任せるわけですから、営業担当との相性も重要です。
質問をしても1週間以上返答がない、説明内容が適当で納得ができないなど、うまく担当者とコミュニケーションが取れない事がチャンスを逃してしまう原因につながりかねません。「この人なら信頼できる」という担当者に任せましょう。
見極める基準を理解し、ベストなタイミングで売却しよう
不動産売却に適した時期は以下の点から総合的に判断する必要があります。
- 季節
- 築年数
- 税金
- 相場
- 金利
タイミングを間違えてしまうと損をしてしまったり、売却益だけでは住宅ローンが完済できなかったりするケースが考えられるため慎重に判断しましょう。
またベストタイミングを逃さないためには必要な売却期間から逆算して動き出す必要があります。
このように売却時期に関しては慎重かつ計画的な判断が求められます。そのため信頼できる不動産会社を見つけ出し、プロの力を借りながらタイミングを見極めるといいでしょう。