住み替えローンの仕組みとメリット・デメリット|利用するときの注意点を解説!
既に住宅を所有している人の中には、転勤や家族構成の変化などの理由で自宅の住み替え・買い替えを検討している人もいると思います。
住宅ローンを完済していれば住宅を住み替える・買い替えるのは特に問題ありませんが、住宅ローンの返済が残っているケースでも問題はないのでしょうか?
この記事では、住宅ローンの返済が残っている場合の住み替えについて解説します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
完済していなくても新居が買える住み替えローン
転勤や家族構成の変化、離婚などのさまざまな理由で自宅の住み替えが必要になることがあります。住宅ローンの返済が完了している場合、新居を購入する際にかかる費用は、新規に契約した住宅ローンで補うことが可能です。
しかし、返済が完了していない状況では新規に住宅ローンを契約することはできません。そのようなケースでは、住み替えローンの利用を検討することになります。
住み替えローンとは、残債があっても新規に借り入れできるローンのことです。残債の残っている不動産を売却する際は、銀行がローンの担保として不動産に設定した抵当権を解除しなくてはなりません。
住み替えローンでは、売却代金と自己資金を合算しても繰り上げ返済できないような場合に、完済できない分の借り入れと新居の資金の合計額を借りることができます。
住み替えローンのメリット
住宅を住み替えるにあたり住み替えローンを利用すべきかどうか悩んでいる人もいると思います。利用してから後悔しても手遅れであるため、住み替えローンのメリット・デメリットをよく把握してから利用を開始することが重要です。
住み替えローンのメリットとして、以下の三つが挙げられます。
- 自己資金が足りなくても新居を購入できる
- 住宅の住み替えにかかる費用を抑えられる
- ローンを一本化できる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
自己資金が足りなくても新居を購入できる
住宅ローンを完済していない状況で住宅を住み替える場合には、まず住宅ローンを完済しなくてはなりません。そのため、通常は自己資金や親族からの資金提供などで残債を完済することになります。
しかし、全ての人が完済できるほどの自己資金を有している、資金提供を受けられるわけではありません。十分な資金を確保できなければ住み替えを諦めることになります。
住み替えローンでは、残債の完済に不足している金額と新居購入資金を合算した金額のローンを組むことが可能です。急に住み替えることになって十分な資金を確保できない場合でも、安心して住み替えられる点がメリットといえるでしょう。
住宅の住み替えにかかる費用を抑えられる
住み替えローンの利用では、基本的に物件の売却と新居購入を同時に進行することが条件です。もし、住宅の売却を先行して購入を後回しにした場合、次の新居がすぐに見つからなければ、仮住まいの確保に無駄な費用がかかります。
また、新居が見つかったとしても、仮住まいへの引越し、新居への引越しと2回引っ越すことになるため、引越し代が大きくなる点もデメリットです。
住み替えローンを利用して物件売却と新居購入を同時に行えば、無駄な費用を少しでも抑えられるでしょう。
ローンを一本化できる
住み替えローンを利用せずに住み替えをする場合、住宅ローンを完済するためのローンと新居を購入するためのローンの二重のローンを組むことになります。
二重のローンを組むことになった際、それぞれ引き落とし日が異なる、引き落とし口座が異なるといったケースでは、管理が疎かになって、引き落としができずに金融機関とトラブルに発展するというリスクが高まります。
住み替えローンでは支払いを一本化することで引き落とし日や引き落とし口座をまとめられるため、返済を管理しやすいでしょう。
住み替えローンのデメリット
住み替えローンのメリットを見て、住宅ローンの返済がまだ完了していないものの、住み替えローンを利用して住み替えを実行したいと考えた人も多いと思います。しかし、住み替えローンにはデメリットも伴うので注意が必要です。
住み替えローンのデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 借入金額が大きくなる
- 審査が厳しい
- 住み替えのスケジュールがタイト
それぞれのデメリットについて詳しく説明していきます。
借入金額が大きくなる
住み替えローンを利用すれば、住み替えを行いやすくなる一方で、売却する家の残債分と新居の購入資金分の両方を補うことでオーバーローン状態に陥ります。
オーバーローン状態では、最初に住宅ローンを契約したときよりも借入金額が大きくなることがほとんどで、返済負担が大きくなるという点に注意が必要です。
また、住み替えローンは住宅ローンのように国から優遇措置がなされないため、単に借入金額が大きくなることによる返済負担の増加だけでなく、金利が高くなることで利息が増えることによる返済負担の増加も伴います。
毎月の返済額や返済期間についてよく考えてから利用しましょう。
審査が厳しい
ローン審査は借入金額が大きいほど厳しくなるのが一般的です。そのため、借入金額の大きい住み替えローンは審査が一般的なローンと比べて必然的に厳しくなります。
そのため、住み替えローンを利用して住み替えることを希望していても、必ずしも審査に通るとは限らず、ローンを組めない可能性があるという点に注意が必要です。
住み替えローンを利用できる前提で話を進めていると、審査に通らずに計画倒れになる可能性もあるということを十分に理解しておきましょう。
住み替えのスケジュールがタイト
住み替えローンでは、住宅ローンの残債を売却代金で補えない場合に、不足分と新居の購入資金分を借り入れます。現在の住居に設定されている抵当権の抹消と新居の抵当権の設定を同時に行わなくてはならないため、売却と新居の購入の決済および引き渡し日を同日に設定しなければなりません。
しかし、売却準備と購入準備を同時に進行することは簡単ではありません。売却が先行すると購入、購入が先行すると売却のスケジュールがタイトになります。
もしタイミングが合わなかった場合には、融資を受けられなくなる可能性もあるので注意が必要です。
住み替えローンのシミュレーション
ローンを無理なく返済していくには、契約前に住み替えローンのシミュレーションを行っておくことをおすすめします。
三井住友銀行の「住み替え資金計画シミュレーション」を利用したシミュレーション結果は以下の通りです。
シミュレーション条件
- 年齢:40歳
- 年収:600万円
- ローンの残高:3,000万円
- 売却予定額:1,500万円
- 住み替え住宅の価格:5,000万円
- 自己資金:500万円
- 住み替えローンの希望借入期間:35年
- 住み替えの理由:転勤
シミュレーション結果
- 受取金額:2,000万円
- 支払金額:売却時諸費用60万円、購入時諸費用250万円、合計8310万円
- 必要な借入金額:6,310万円
- ゆとりのある借入金額目安:2,823万円
- 毎月の返済額:225,579円
※毎月の返済額は年利2.5%で算出
出典元:三井住友銀行「住み替え資金計画シミュレーション」上記シミュレーション結果では、必要な借入金額とゆとりある借入金額の目安との乖離が大きいため、親族から資金提供を受けて借り入れを減らす、場合によっては住み替えを見送った方がよいでしょう。
住み替えローンを利用するときの流れ
住み替えローンを利用した住み替えを速やかに行うためには、住み替えローンを利用するときの流れを押さえてから行動に移すことが重要です。
住み替えローンを利用する際の主な流れは以下の通りです。
- 1.ローンの残債を確認
- 2.不動産会社に住み替えについて相談
- 3.住み替えローンが組める銀行を探す
- 4.事前審査+本審査に申し込む
- 5.ローンを組む
特に重要なのは3番で、金利や融資額は金融機関によって異なる、審査に通るとは限らないため、複数の金融機関をピックアップしておくことをおすすめします。また、本審査は1~2週間かかるため、逆算してスケジュールを組みましょう。
住み替えローンを利用するときの注意点
住み替えローンをうまく利用すれば、住み替えを速やかに行うことができる一方、誤って利用すると返済負担が大きくなり、返済不能に陥る可能性があるので注意してください。安心して利用するには、住み替えローンを利用するときの注意点を押さえておくことが大切です。
住み替えローンを利用するときに押さえておくべき注意点として、以下の三つが挙げられます。
- しっかりと返済計画を立てる
- 早めに新居を探す
- 住宅ローン控除の申告をする
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
しっかりと返済計画を立てる
住み替えローンは借入金額が大きいため、返済負担が大きくなります。返済負担が大きいということは、返済計画に支障が生じた場合は返済不能に陥るリスクが高いということです。
返済負担が大きくなるのは、借入金額が大きいからという理由だけではありません。一般的な住宅ローンとは異なり、金利が高い、返済期間が短く設定されるケースも多く、それが返済負担を大きくしています。
返済不能に陥った場合、せっかく住み替えた家を手放さなくてはなりません。そのような事態に陥らないようにするためにも無理のない返済計画を立てましょう。
早めに新居を探す
住み替えローンは、原則現在の住居の売却と新居の購入を同時に行わなくてはなりません。住居の売却を優先すると、売買契約の締結や物件の引き渡しまでに新居を探さなくてはならないため、新居探しの時間が限られてしまいます。
新居探しの時間が限られてしまうと、時間が足りなかったことが原因で、希望通りの物件を見つけられず、新居に不満を抱きながら住むことになる可能性があります。
新居探しに十分な時間をかけて、希望通りの物件に住み替えるためにも、早めに新居を探しましょう。
住宅ローン控除の申告をする
住宅ローンには住宅ローン控除があるため、控除を利用するために確定申告を行っていた人が多いと思います。住み替えローンは住宅ローンとは異なるため、住宅ローン控除を利用できないと考えている人もいるかもしれませんが、住宅ローンと同じく住宅ローン控除を利用できます。
住み替えローンで住宅ローン控除を利用する場合にも、確定申告は必要です。自動的に適用されるものではないため、控除を最大限に生かすためにも、確定申告を忘れないように注意しましょう。
まとめ
住み替えローンを利用すれば、住宅ローンの完済に必要な資金と新居の購入に必要な資金の両方を確保できるため、住み替えを速やかに行いやすいです。
しかし、住み替えローンは借入金額が大きく、金利や返済期間が一般的な住宅ローンよりも条件が悪いため、返済負担が大きいという点に注意しなくてはなりません。
返済計画に支障が生じて、せっかく購入した新居を手放さなくてはならないといった事態に陥らないためにも、無理のない返済計画をしっかりと立ててから住み替えローンを利用しましょう。