全国のマンション価格推移 - 価格変動の要因とは

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全国のマンション価格推移|価格変動の要因とは

全国的に見ると、マンション価格は2013年から2023年現在まで上昇傾向で推移しています。
この記事では、過去15年の全国のマンション価格の推移と、近年の首都圏、大阪府、愛知県の地域別傾向、その地域ならではの価格変動の要素を解説します。
マンション価格の動向は売り手と買い手の双方に影響があるため、マンションの売買を検討している人はぜひ参考にしてください。

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【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。

全国のマンション価格推移(2008年~2023年)

不動産価格指数(住宅)
出典:国土交通省「不動産価格指数 令和5年1月・第4四半期分」(令和5年4月28日)

このデータは国土交通省が公表している年間約30万件の取引価格情報をもとにした全国の不動産価格指数です。

2008年に起こったリーマンショックでは、住宅関連の金融機関の株価が大幅下落して、世界的な金融危機が起こり、日本の不動産市場もこの影響を受け、マンション価格が下がりました。

しかし2013年、日本銀行によって金融緩和が導入されたことにより長期金利が過去最低まで低下したことで再びマンション価格の上昇が始め、2023年まで大きな暴落はなく右肩上がりだと言えます。

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首都圏のマンションの価格推移

首都圏のマンションの価格推移

東日本不動産流通機構が2023年3月度に公開した「月例速報 Market Watch サマリーレポート」によれば、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の中古マンション成約件数は1.1%増にアップしました。

また、在庫件数は前年同月比19.8%の上昇、成約平米単価は平均的に上昇傾向となっており、需要の高まりが窺えます。

ここからは、東京都、神奈川県、埼玉県の価格について、このサマリーレポートで示された数値をもとに詳しく解説します。

東京都

「東京カンテイ プレスリリース 中古マンション価格(年間版)」によると、東京都のマンション価格は2013年から上昇し続けており、この上昇の背景には人口の増加が関係していると考えられます。

東京都による人口推計を見てみましょう。

東京都の総人口(推計)の推移(昭和31年~令和5年)
東京都の令和4年中の地域別人口増減数
出典:東京都「人口の動き(令和4年中)令和5年1月1日現在)

地域別の人口の増減が必ずしもマンション価格と連動しているというわけではありませんが、人口が増えている千代田区、中央区、港区、渋谷区はマンション価格の上昇傾向にあるエリアです。

東京都の成約平米単価

上記の表を見てみると、中古マンションにおける2023年3月の東京都区部の成約平米単価は91.97万円で、前年同月比4.2%増。

一方で人口が1人~1,999人減となっている多摩地域では成約平米単価は51.57万円、前年同月比6.1%減の値を示しています。

神奈川県

神奈川県の成約平米単価

神奈川県は直近数ヵ月の価格上昇率はほぼ横ばいです。横浜市と川崎市の中古マンション成約平米単価は60.08万円で前年同月比9.1%増、ほかの地域でも成約平米単価は38.78万円と価格自体は低いものの、上昇率は4.3%となっています。

また、成約件数は横浜市、川崎市が前年比1.6%増だった一方で、ほかの地域は前年同月比-4.8%と減少していることにも注目です。東京にアクセスしやすいエリアの人気が高まっていることもひとつの要因として考えられるでしょう。

2023年(令和5年)1月1日現在の神奈川県全体の人口は前年より3,276人減少しています。これは高齢化がおもな要因です。

出典:神奈川県年齢別人口統計調査結果報告(令和4年1月1日現在)

出典:神奈川県の人口と世帯 令和5年1月1日現在

神奈川県全体では高齢化のため人口が減少すると考えられています。一方で横浜市などの人気のある地域では、新しく転入してくる人が多く平均年齢も低いです。このような現象が、将来のマンションの需要や価格にも影響してくると考えられています。

横浜市の年少人口、生産年齢人口及び老年人口の割合の推移
埼玉県の成約平米単価

埼玉県の中古マンション成約平米単価は44.52万円で、前年同月比9.8%増です。成約件数は下降しており前年同月比8.4%減と、需要の低下が見られます。

人気のエリアは大宮や浦和といった代表的な都市部だけではありません。人口上昇率から見ると、東京と荒川を挟んだ戸田市や、「越谷レイクタウン」「ららぽーと新三郷」といった大規模商業施設へのアクセスがよく、街並もきれいな吉川市も注目を浴びているようです。

大阪府のマンション価格推移

大阪府のマンション価格推移

公益社団法人近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)が発行している「マンスリーレポート2023年4月号」では、大阪府を地域別で見ると、2023年3月時点での前年同月比で大阪市は成約件数が9.8%増、成約平米単価は56.7万円で前年同月比7.3%上昇しています。

また、これまで人気が高かった大阪府北部・東部・南部の人気が下がっています。

大阪府北部では、成約件数は6.5%減、成約平米単価は41.1万円で前年同月比11.4%上昇しています。大阪府東部では、成約件数は16.1%減、成約平米単価は30.8万円で前年同月比10.5%増でした。

また、大阪府南部も成約件数は15.8%減ですが、成約平米単価は23.9万円で前年同月比4.3%増となっています。

愛知県のマンション価格推移

愛知県の中古マンション価格推移
出典:国土交通大臣指定 公益財団法人 中部圏不動産流通機構 中古マンション(愛知県)成約・在庫価格推移

愛知県は2023年3月の中古マンションの成約平米単価が30.9万円で、前年同月と比べて微減しています。成約件数は2023年1月に300件まで減少しましたが、2月~3月にかけて300件台後半に回復しています。

長久手市に注目!

愛知県の人気エリアとして注目されるのは最も人口が増加した長久手市です。

長久手市は「日本一若い街」とも呼ばれており、2015年の国勢調査では平均年齢が38.6歳でした。

若い人が多く転入した理由としては、都市部へのアクセスが比較的良く、大型ショッピングモールが揃っていることや、愛・地球博記念公園などの自然があることも挙げられます。

さらに、小学校から大学まで教育機関が多いことから子育て世代にも人気です。

マンション価格が変動する要因とは

マンション価格が変動する要因とは

マンション価格と人口増減には少なからず関係があることが見えてきましたが、価格変動の要因はそれだけではありません。

人口の増減以外の景気から政策、マンション自体の価値に至るまで、要因となり得ることを解説します。

国内および世界全体の景気

景気は不動産市場にも大きな変動をもたらします。

いわゆるバブル期は国内の経済が急激に上向いたため、不動産全体の価格も急上昇。しかしバブルが崩壊すると不動産価格も急落しました。

また、物価が下落するデフレ期に入ると、労働者の収入も下がるため高いマンションは売れにくくなり、買主を獲得するために売主は価格を下げ始めます。さらに国内の景気は、リーマンショックのような世界的な経済事情にも大きな影響を受けると言えるでしょう。

ただし、「景気が下がっている=マンションが安くなる」とは言いきれません。景気が落ち込んでいるときは、不景気に強い好立地にしかマンションが建設されず、売買されるマンション価格が高くなるという状況も見受けられます。

政策・税制の影響

今から約30年前の1990年前後は、不動産バブルのピークで土地の価格が跳ね上がったため、マンションも高額になりました。このバブルが生じた背景には、いわゆる「プラザ合意」で政治的に進行させたドル高是正、円高ドル安誘導があります。

そして政府の予想を超える速度で円高が進行したため、輸出に関わる事業が不況に陥るのを回避すべく日本銀行(日銀)が低金利政策を実行しました。その結果、市場の資金に余剰が生まれ、株式や不動産へ大量に流れたことで、不動産価格全体が高騰したのです。

また、消費増税が発表された際には、実際に増税されるまでの期間に駆け込み需要が生まれ、マンションが売れる数が増えることから価格も高騰する傾向にあります。

このように、政策と税制も不動産価格に大きな影響を与えると言えるでしょう。

2022年問題

「生産緑地の2022年問題」も、今後の不動産市場に影響を与えると考えられています。

生産緑地とは、都市化が進む地域の緑地や農地を守るために、自治体が指定する市街化地区にある農地などのことです。

生産緑地に指定されると、市街化地区にあっても固定資産税が農地並みの低い水準になる代わりに30年間の営農義務があります。

この生産緑地の指定は1992年に施行されたため、2022年で30年が経過することになります。指定が解除されると、固定資産税が一般農地と同様の水準から一気に上昇してしまうため、生産緑地指定を解除された土地が一斉に売りに出される可能性があります。これが「2022年問題」です。

宅地転用した土地が大量に売りに出されると「需要と供給のバランス」が崩れ、不動産市場全体が落ち込むのではと懸念されています。

需要と供給のバランス

需要と供給のバランスが価格に影響を与えるのは、不動産に限ったことではありません。

例えば、ひとつしかない物を10人が買いたいと手を挙げれば、売主は最も高く買ってくれる1人に売却するでしょう。その価格がその物の価値となります。

一方、1人しか買い手がいないのに10人の売主が同じ商品を持ち寄れば、買い手を逃さないために価格競争が始まり、物の価値は下がります。

先ほどの2022年問題は、まさにこの構図が関係しています。土地を欲しがる買主の数よりも、供給される土地の数が増加するため、土地全体の価格が下がるということです。

買い手にとっては不動産を安く購入できるチャンスとなる一方で、売り手にとっては競合が増えることで売れにくくなったり、相場が下がったりという不利益が生じる可能性が考えられます。

築年数と物件の条件

物件ごとの価値や価格は築年数や間取り、立地、生活や通勤の利便性など物件の条件によって大きく左右されます。

例えば、マンションでは5年以内の築年数は築浅物件と呼ばれ、設備や間取り、周辺の環境などが新築時と大きな差がないため、新築物件とあまり変わらない価格で売買されることが多いです。

そのほか、通勤通学に欠かせない公共交通機関の充実度、スーパーや商店街など日常の買い物ができる場があるかどうか、騒音や日照などの生活全般に関わる条件が価格に影響します。

また、建築基準法の耐震基準が改訂された、1981年6月以降に建てられたか否かも重要なポイントです。それ以前に建てられたマンションで耐震診断の基準に沿っていないものは改修の必要があるため、そのままの状態で高く売ることは難しいと言えます。

【監修者コメント】
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不動産市場は景気により変動します。

景気は国の政策や物価、株式市場の市況、為替の変動などにより動いています。

2023年以降のマンション価格の推移はどうなる?

2023年以降のマンション価格の推移はどうなる?

2023年4月現在、不動産のマンション価格の推移は右肩あがりであり、上がり続けるかどうかはさておき、今後も暴落する見込みはないという意見が多いようです。

むしろ、リモートワークの促進や外出制限によって家にいる時間が増えたことから、住宅の質や居住性が重視されるようになり、需要が増えるとも言われています。

ただし、これまでの人気エリアが高価格を維持し続けるとは限りません。

資産価値が下がりにくい一等地に関しては、引き続き高価格が続くと予想される一方で、一等地周辺の高価格帯エリアでは人気が低下しており、平米単価の安い郊外に人気が出始めています。

実際に「借りて住みたい街」ではありますが、以前は人気エリアとして上位ではなかった神奈川県の本厚木が3年連続1位となっています。都心からは遠いものの、小田急小田原線が新宿まで直通しているため、急行なら1時間かからないという利便性が評価されているようです。

このように、住宅の需要は都心の一等地と郊外の二極化が進むと見られ、マンション価格もこの需要に伴って変動することが予想されます。

【監修者コメント】
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あくまで私見ですが、今後のマンション価格は大きく上がることはなく、どこかの時点で下がり始めると考えています。


地方ではすでに顕著に数字に表れています。なぜなら、日本の人口が減少していく中で、住居の需要の減少は間違いないと思われるからです。

ただし、もし大胆な移民受け入れなどがあれば、そうはならないかもしれません。

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マンションの価格は複数の要因によって変動する

マンションの価格は複数の要因によって変動する

マンション自体の価値は立地や間取りなど物件の条件によって査定されますが、査定の基準となる相場は景気や政策、需要と供給のバランスといったさまざまな要因によって変動します。

売りどき、買いどきを見極めるためには、これらの要因を調べて総合的に考えることが大切です。

しかし、最高値や最安値がどの程度になるのかはプロでも予想が難しいと言えるでしょう。

そのため、価格推移を参考にしつつ、自分にとって売買可能な金額や最低売却価格を設定したうえで、売却のタイミングを見計らって売りに出しましょう。

【監修者コメント】
監修者画像

マンション価格の推移と、自身のマンションの買い時・売り時の価格は必ずしも合致するわけではありません。


なぜなら、それぞれのライフプランの中で買い時・売り時は存在するわけであり、また何よりも不動産はそれぞれ世の中に1つしかないものです。

ですから、各所から発表されるマンション価格の推移等を気にし過ぎて不動産売買をためらう必要はあまりありません。

この記事のおさらい

2023年現在の全国のマンション価格推移は?
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