不動産売却時の減価償却とは|計算方法などの基礎知識を解説!
不動産を売却し、取得費の経費計上を行う際は、減価償却を行います。しかし減価償却には複数の計算方法があり、かつ不動産の条件によってさらに計算方法が異なってくるため、理解が難しいかと思います。
この記事では、不動産売却時における減価償却費の計算方法について解説します。ケース別に計算方法の解説を行うため、あなたが売却を検討している不動産の減価償却費も把握できるでしょう。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
減価償却とは
減価償却は、不動産や機械などをはじめとした資産の経費計上方法の種類のひとつです。なぜ減価償却を行うのかというと、資産は時間の経過とともに価値が減少していくためです。
したがって、試算価値の下落分を一定期間毎年経費として計上できます。また資産の取得に要した費用も、取得時に全額経費計上するのではなく、資産の使用可能期間内で分割して資産計上を行います。
不動産は「建物部分」のみが対象
不動産における減価償却は、建物部分のみが対象となります。したがって、土地そのものや、土地の賃借権などの権利は減価償却の対象とはなりません。
これらは時間が経過したり、使用したりしても価値は下落しないためです。また、減価償却の対象とならない資産を「非減価償却資産」と呼びます。
法定耐用年数は建物の構造によって異なる
建物の法定耐用年数は、その種類や構造によって異なります。法定耐用年数は、財務省によって定められています。では、法定耐用年数の例を表で確認してみましょう。
構造 | 事業用 耐用年数 |
非事業用 耐用年数 |
---|---|---|
軽量鉄骨造 (骨格材肉厚が3mm以下の場合) |
12年~22年 | 12~19年 |
木造または 合成樹脂造のもの |
9~24年 | 9~22年 |
木骨モルタル造のもの | 11~22年 | 15~20年 |
譲渡所得の計算に減価償却費が必要
不動産の譲渡所得を計算する際は、減価償却費を把握しなければなりません。
理由としては、譲渡費用のひとつである不動産取得費は一括ではなく、使用期間内で分割して資産計上する決まりになっているためです。不動産の売買時点で大きく譲渡所得を抑えられるわけではない点は要注意です。
減価償却費の2つの計算方法
減価償却費の計算方法には、下記の2つの計算方法があります。
- 定額法
- 定率法
定額法
定額法とは、毎年の減価償却費を原則一定とするための計算方法です。定額法は、建物や建物付属設備などの減価償却費の算出に用いられます。定額法による減価償却費の計算方法は、以下のとおりです。
減価償却費=資産取得価額×定額法の償却率
※定額法の償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:国税庁「減価償却資産の償却率表」定率法
定率法とは、どのような計算方法なのか、どうやって計算するのか、どのような場合にこの方法で計算するのかなどを解説
定率法とは、毎年一定の減価償却率を期末の償却残高にかけて、減価償却費を算出する方法です。定率法は、機械装置や工具器具備品などの減価償却費の算出に用いられます。定率法による減価償却費の算出方法は、以下のとおりです。
減価償却費=固定資産の未償却残高×定率法の償却率
※定率法の償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:国税庁「減価償却資産の償却率表」また、減価償却費が償却保証額(資産の取得価額に、耐用年数に応じた保証率(耐用年数省を掛けて計算した金額)を下回る場合は、以下の計算式が適用されます。
減価償却費=改定取得価額×改定償却率
ちなみに定率法は、定額法よりも早いタイミングで多くの減価償却費を計上できるため、税負担を削減できます。
【ケース別】減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法は、ケースによって異なります。では、以下のケースごとの減価償却費の計算方法について見ていきましょう。
- 個人が不動産売却する場合の譲渡所得の計算
- 事業用不動産の減価償却方法
- 非事業用不動産の減価償却方法
個人が不動産売却する場合の譲渡所得の計算
個人が不動産を売却する際は、譲渡所得の計算が必要となります。なぜなら、譲渡所得の金額によって、税金の発生の有無や税額が異なるためです。もし税金が発生する場合は、不動産売却翌年の2月16日~3月15日の期間に確定申告を行い、納税する義務があります。
譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。
譲渡所得=譲渡価額-(不動産取得費+譲渡費用)-特別控除
なお、特別控除については国税庁ホームページに記載があるため、気になる方はあわせてご覧ください。
出典元:国税庁「譲渡所得の特別控除の種類」事業用不動産の減価償却方法
事業用不動産とは、収益を得ることを目的に所有・利用される不動産のことを指します。例えば、店舗や事務所などが事業用不動産に該当します。
事業用不動産の減価償却費の計算方法は、取得年月日によって異なります。具体的には、以下のとおりです。
平成19年(2007年)3月31日以前に取得した資産:減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×業務に供された月数 ÷ 12
平成19年(2007年)4月1日以降に取得した資産:減価償却費=建物購入価額×償却率×業務に供された月数÷12
償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:国税庁「減価償却資産の償却率表」非事業用不動産の減価償却方法
非事業用不動産とは、収益ではなく居住を目的とした不動産のことです。例えば、自身が住む一戸建てやマンションなどが該当します。
非事業用不動産とは、居住用の建物を指します。具体的な例としては、自分自身が住む一戸建てやマンション、セカンドハウスなどが該当します。
非事業用不動産の減価償却計算方法は、以下のとおりです。
減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数
償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:国税庁「減価償却資産の償却率表」事業用不動産の減価償却費の計算と異なるのは、経過期間を月単位ではなく年数で計算する点です。1年に満たない部分は、6ヵ月以上の場合は1年として換算、6カ月未満の場合は切り捨てとなります。
中古の不動産を取得したときの計算方法
減価償却費の計算方法は、中古の建物の場合でも異なります。では、以下の2種類の計算方法について解説します。
- 中古の事業用不動産を取得した場合
- 中古の非事業用不動産を取得した場合
中古の事業用不動産を取得した場合
中古の事業用不動産を取得した場合は、法定耐用年数をすべて経過しているか、一部のみ経過しているかによって耐用年数の計算方法が異なります。例えば、法定耐用年数が20年の店舗を築25年の時点で購入した場合はすべて経過、築10年の時点で購入した場合は一部経過とみなします。具体的な耐用年数の計算方法は、それぞれ以下のとおりです。
法定耐用年数をすべて経過している場合:耐用年数=法定耐用年数×20%
法定耐用年数を一部経過している場合:耐用年数=法定耐用年数-経過年数×20%
不動産の法定耐用年数は、財務省によって定められています。具体的な法定耐用年数を確認したい方は、財務省の資料をご覧ください。
出典元:財務省「償却資産の評価に用いる耐用年数」上記によって算出した耐用年数に1年未満の端数が出る場合は切り捨てとなります。また、耐用年数が2年未満の場合は2年と見なされます。
減価償却費の計算方法は、以下のとおりです。
減価償却費=建物購入価額×償却率×業務に供された月数÷12
償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:国税庁「減価償却資産の償却率表」中古の非事業用不動産を取得した場合
中古の非事業用不動産の場合は、事業用不動産の場合とは異なり、耐用年数などの計算は行いません。そのため、新築物件と同様に構造のみで償却率が決まります。中古の非事業用不動産の減価償却費の計算方法は、以下のとおりです。
減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数
償却率は、国税庁によって定められています。具体的な償却率を確認したい方は、国税庁の資料をご覧ください。
出典元:出典:国税庁「減価償却資産の償却率表」まとめ
減価償却費は、建物が事業用であるか否か、中古であるかなどの要因によって変わってきます。減価償却費を計算する際は、あなたが売却を検討している不動産の条件に該当するケースを参考にしてみてください。