不動産売却した年の固定資産税はどうなる?清算方法と注意点

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不動産売却した年の固定資産税はどうなる?清算方法と注意点

不動産を所有することで納めなければならない税金はいくつかありますが、そのひとつとして挙げられるのが土地や建物といった固定資産に課せられる固定資産税です。固定資産税は固定資産所有者に毎年課せられる税金で、不動産の場合土地と建物、それぞれ別に税金が計算されます。

不動産の所有者に1年分が課税されるため、途中で売却などにより所有者が変更された場合、固定資産税をどうすればいいのか気になるところです。特に、不動産を売却する側だと、所有者が変わってから以降の固定資産税も負担しなければならないのかと心配になるかもしれません。

そこで、この記事では土地や家などの不動産を売却した際の固定資産税の清算方法について、詳しく説明します。具体的な計算方法も例に挙げて解説するので、これから不動産の売却を予定している人や売却時の費用を予め計算しておきたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

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【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!

不動産売却したら固定資産税はどちらが支払う?

不動産売却したら固定資産税はどちらが支払う?

土地や建物といった不動産に課せられる固定資産税は、その不動産の所有者に課せられます。不動産の売却が行われた場合、その土地の途中で所有者が変わるため、固定資産税の負担がどうなるのか気になることでしょう。ここではどの時点で誰が納税者になるのか、また売主と買主の負担について解説します。

固定資産税はその年の1月1日時点の所有者が納税者

固定資産税とは、土地や建物などの不動産をはじめとした固定資産にかけられる税金です。その年の1月1日時点で、対象となる固定資産を所有している人に納税義務があります。納税義務者は1月1日時点での所有者のため、途中で所有者が変わっても納税義務者の変更はありません。

固定資産税は地方税のため、課税しているのは市区町村になります。ただし、東京都23区は区ではなく課税するのは東京都です。1月1日時点の固定資産の所有者に対して、4月~6月頃に市区町村または東京都から送られてくる納税通知書で納付します。

送られてくる納付書は、一括払いできるものと1期から4期までの分割払いできるものの2種類です。一括と分割、どちらも納付できますが、例えば3期の納付書で支払った分を1期の支払いとすることはできません。分割で支払う場合は、それぞれの納付書の期限や順番に注意しましょう。

納税対象者が決定するのは1月1日時点ですが、支払いの対象となる月は4月から次の年の3月になります。

一般的に固定資産税は売主と買主で分割する

売却などにより土地や家といった不動産(固定資産)の所有者が途中で変わった場合、固定資産税はすでに1月1日時点での所有者に課税されている状態になります。そのため、その土地の固定資産税の納税義務者は、あくまでも1月1日時点での所有者です。

しかし、そのままだと売主は不動産を売却したあとの固定資産税も負担することになります。そこで、土地や家を売却した際は、買主と話し合った上で売却後の固定資産税を分割して負担する方法が一般的です。

買主は、不動産を購入した際にかかる諸費用の一部として、買主負担分の固定資産税の清算金を一括で売主に支払うことになります。

固定資産税は引渡日をもとに日割り清算する

土地や家を売却した際の売主と買主との固定資産税の清算は、引渡日を基準に日割り計算する方法が慣例です。しかし、特に法律日割にすることが決まっているわけではないため、売主と買主との協議によっては月割りにするケースもあります。

買主から売主に支払われる固定資産税の清算方法は、おもに次の2通りです。

  • 売主が買主から引渡し日以降の買主負担となる固定資産税分の金額を受け取り、すでに手元に届いている納付書を使って収める。
  • 売買を仲介した不動産会社が、売主と買主の双方からそれぞれの固定資産税の納税額を受け取り、売主から預かった納付書を用いて支払う。

固定資産税は、納付書を使えば納税義務者本人でなくても支払うことができるため、不動産会社の担当者に代わりに収めてもらうことも可能です。

不動産売却時の固定資産税の清算方法について

不動産売却時の固定資産税の清算方法について

ここでは、不動産を売却した際の固定資産税の清算方法を説明します。売主に支払う買主の固定資産税負担分を日割りする際、どの時点を基準として分割するかによって売主と買主との負担割合が変わってくるため、予め分割方法を決めておかなければなりません。

具体的な固定資産税清算時の日割りの方法や計算例について、詳しく見てみましょう。

起算日によって清算金の額が変わる

売却などで土地や家、マンションといった不動産の所有者が変わった場合、先に述べた通り、通常はその不動産に課せられる1年分の固定資産税を売主と買主で分割します。ここで大切なのが、起算日をいつにするかです。起算日によって固定資産税を分割して負担する割合が変わってきます。

固定資産税の負担分を分割する起算日は、年初めである1月1日にする場合と年度初めである4月1日にする場合の2種類です。起算日をどちらにしなければいけないという法律や決まりはないため、売主と買主との話し合いによって決定します。

商慣例的には、関東では年初めの1月1日、関西では年度初めの4月1日を固定資産税分割の起算日にする傾向がありますが、あくまでも一般的な例です。最近では、関西であっても1月1日を起算日にする場合が増えているため、売買契約を締結する前の交渉時に売主と買主とできちんと決めておきましょう。

起算日別に固定資産税の清算金をシミュレーション

ここでは、固定資産税の清算金がいくらになるのか、起算日別に計算をしてみましょう。実際の売買契約時に固定資産税の清算金がいくらかかるかは、ここで紹介する計算式の数字を入れ替えるだけでシミュレーションできます。不動産の売却時または購入時にかかる費用を試算する際に、ぜひ役立ててください。

1月1日が起算日の場合

  • 固定資産税額:30万円
  • 引渡し日:7月1日

まず、日割り分の固定資産税額を算出します。
30万円÷365日=821.91≒822円

次に、所有者が売主の期間と買主の期間の日数を割り出します。

  • 売主が所有者の期間:181日(1月1日~6月30日まで)
  • 買主が所有者の期間:184日(7月1日~12月31日まで)

それぞれの日数に日割り分の固定資産税額を乗じて、負担する分を算出します。

  • 売主:181日×822円=14万8,782円
  • 買主:184日×822円=15万1,248円

※端数が出た場合は、売主と買主との協議で負担額の調整をする。

4月1日が起算日の場合

次に、起算日を年度初めの4月1日に設定した場合の固定資産税清算をシミュレーションしてみましょう。売却時の状況は、先と同じです。

  • 固定資産税額:30万円
  • 引渡し日:7月1日

日割り分の固定資産税額の算出は同じです。
30万円÷365日=821.91≒822円

所有者が売主の期間と買主の期間の日数を割り出すところで、日数のカウントが変わります。

  • 売主が所有者の期間:91日(4月1日~6月30日まで)
  • 買主が所有者の期間:274日(7月1日~翌年の3月31日まで)

それぞれの日数に日割り分の固定資産税額を乗じて、負担する分を算出します。

  • 売主:91日×822円=7万4,802円
  • 買主:274日×822円=22万5,228円

不動産売却時に固定資産税を清算する際の注意点

不動産売却時に固定資産税を清算する際の注意点

最後に、土地や家、マンションなどの不動産を売却する際に、売主と買主とで固定資産税を清算する際の注意点を説明します。

ここで取り上げるポイントや注意点を知っておくことで、固定資産税を清算する際の疑問点がかなり解消されることでしょう。ほかにもどうすればいいかわからなかった点が出てきた場合は、不動産会社の担当者に質問するなどしてクリアにしておくことがおすすめです。

固定資産税の清算金には消費税がかかる場合がある

固定資産税に消費税はかかりませんが、不動産売却時の固定資産税の清算金は固定資産税そのものではなく売上代金の一部と見なされるため、仲介手数料などと同じように消費税がかかる場合があります。

不動産会社が仲介をした売主も買主も個人である個人間取引の場合だと、売買した不動産の代金に消費税は課せられません。しかし、売主が課税業者の場合、建物部分の代金に消費税が課せられます(土地の代金には、売主が課税業者であっても消費税は非課税)。そして、建物部分の固定資産税の清算金は、この建物の売上代金として見なされるため消費税の課税対象となるのです。

例えば、課税業者から購入した建物部分の代金が1,200万円で建物の固定資産税清算金が15万円だった場合、1,200万円に15万円をプラスした1,215万円に消費税が課せられるため、建物部分の代金の支払い総額は1,212万円×1.1=1,336万5,000円になります。固定資産税清算金分の消費税額は1万5,000円です。

課税業者から家やマンションなどの不動産を購入する際は、このような費用についても予め把握しておくようにしましょう。

不動産売買の固定資産税の清算は法律上決められたものではない

先にも述べましたが、不動産売買取引の際の固定資産税の清算は、法律で定められているわけではありません。そのため、売買契約を締結する際の固定資産税の清算は、必ず行われるものではないことを踏まえておきましょう。

売却時期によっては、売主が固定資産税の全額を支払ってから引渡しをしたり買主が全額を負担して支払ったりするケースもあります。

固定資産税の清算方法の決め方やトラブルにならないようにするための注意点を見てみましょう。

事前に不動産会社に固定資産税の清算について確認する

売主と買主による固定資産税の清算は、法律上の手続きではなく不動産取引の慣例のため、売買契約を結ぶ前に不動産会社にどのようにするのかを確認をしておくようにしましょう。

仲介を依頼されたほとんどの不動産会社は、売買契約時に固定資産税の清算内容を提示して売主と買主との交渉をまとめてくれます。しかし、こちらから言い出さないと固定資産税の清算交渉をしてくれない場合もあるため、契約の説明を受ける際に確認しておくと安心です。

契約書での固定資産税の扱いについて確認する

仲介をしてもらう不動産会社に固定資産税清算の内容を交渉してもらったあとは、その内容が売買契約書に反映され、記載されているかどうかを確認しておきましょう。

不動産を購入した買主が、売主がすでに支払った固定資産税を負担するのは決して義務ではありません。引渡し日以降の固定資産税を買主が負担しなくても問題がないため、口約束だけでなく、不動産売買契約書にその旨が記載されているかの確認が重要です。もし、明記されていない場合は、きちんと記してもらうように依頼しましょう。

引渡日が1月~5月だと前年度の固定資産税額で清算される

固定資産税の納税通知書は、4月下旬~5月ごろに1月1日時点での所有者の住所に郵送されるため、売買された不動産の引渡し日が1月~5月の場合、売主の手元にその年の固定資産税の通知書が届いていない場合があります。

そのような場合、清算する際の基となるのは前年度の固定資産税額です。前年度の固定資産税額で計算して清算を行い、通知書が届いてから再清算する場合もあります。

あとから再計算することを取り決めた場合も、きちんと契約書の特約欄などにその旨を記載しておくようにしましょう。

確定申告で固定資産税清算金は譲渡価額に含まれる

土地や家などの不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合は、売却の翌年に確定申告をして譲渡所得税の支払いが必要です。

売却時に買主から支払ってもらった固定資産税の清算金は、先にも述べた通り固定資産税そのものではなく不動産の売買代金の一部と見なされるため、譲渡価額(売却代金)に含めることになります。確定申告の計算をする際には、忘れないように注意しましょう。

不動産売却する際は固定資産税の清算金を確認しよう

不動産売却する際は固定資産税の清算金を確認しよう

土地や家などの不動産に毎年課せられる固定資産税は、1月1日時点での所有者に納税義務があります。そのため、年の途中で所有者が変わった場合、新しい所有者となる買主が引渡し日以降分の固定資産税を日割で清算して負担することが一般的です。

ただし、固定資産税の清算は法律で定められたものではないため、売主と買主との話し合いによって決定します。負担分をどのようにするかは仲介の不動産会社を交えて契約前に話し合っておき、決まった内容が契約書にきちんと記載されているかどうかを確認した上で、売買契約を締結するようにしましょう。

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