住宅査定とは?知っておきたい依頼方法や査定時のチェックポイント
住宅を売却する際には、不動産会社に査定を依頼するのが一般的。この記事では、住宅の売却が初めての人に向けて、査定自体の意味やどのように依頼すればよいのかなどをわかりやすく解説します。
査定時にチェックされているポイントも併せて解説しているので、住宅の売却を検討している人はぜひこのまま読み進めてみてください。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
住宅査定とは
住宅の価値は購入時から同じではなく、築年数や市場状況などのさまざまな要素によって変動します。そのため売却する際には、不動産会社に住宅の価値を割り出してもらうための住宅査定が必要です。
ここでは、住宅査定の特徴や方法などを詳しく解説します。初めて住宅査定を受ける予定の人は、まずは住宅査定への理解を深めておきましょう。
3ヵ月以内に売却できるであろう価格を算出すること
住宅査定とは、実際に物件を売り出してから3ヵ月程度の売却活動で、不動産会社が売却できると予想した価格を算出することです。このときに算出される価格は査定額と呼ばれており、売却を予定している物件と似た条件の過去の事例をベースに割り出します。
ただし、不動産会社が算出する査定額はあくまでも売却できると予想される価格なので、売却価格とイコールではありません。多くの不動産会社が住宅査定の際に用いるのは、公益財団法人不動産流通センターが提供する「価格査定マニュアル」と呼ばれるツールです。
しかし、最寄り駅からの距離や日当たりなどの個別要素の評価は不動産会社ごとに異なるため、どこに依頼しても同じ査定額になるとは限りません。
不動産会社の住宅査定は無料
不動産会社に住宅査定を依頼する場合、費用を請求されることはありません。住宅査定は、不動産会社にとって営業活動の一環だからです。住宅を売却する場合、おおまかには査定・媒介契約・売却活動・売買契約・引渡しの手順が一般的な流れになります。
不動産会社は住宅査定をきっかけに売り手と媒介契約を結び、売買契約につながれば仲介手数料と呼ばれる報酬を得ることが可能です。住宅査定を受ける相手は不動産会社にとって言わば将来の見込客になるため、査定はどこも無料で行っています。
住宅の査定方法は2種類ある
不動産会社による住宅査定には、簡易査定と訪問査定の2種類があります。
- 簡易査定
- 訪問査定
通常は最初に簡易査定を依頼し、訪問査定に進むのが一般的です。ここでは、2種類ある住宅査定の方法を詳しく解説します。
簡易査定
簡易査定は物件情報をベースに査定額を算出する方法で、机上査定と呼ばれることもあります。簡易査定で用いられる物件情報は、おもに次の通りです。
- 物件種別
- 所在地
- 面積
- 築年数
- 間取り など
査定結果は、依頼から数時間または3日程度で通知されます。しかし、不動産会社の担当者が現地に出向いて物件をチェックしていないので精度は低いのが現状です。精度が高い査定額を把握したい場合は、次で解説する訪問査定を受けましょう。
訪問査定
訪問査定は簡易査定で用いた物件情報に加えて、不動産会社の担当者が現地に出向いて物件をチェックした情報を合わせて査定額を算出する方法です。査定結果が出るまで、不動産会社の担当者による訪問から10日~1週間程度の期間がかかります。
おおまかな査定額が把握できる簡易査定に対し、訪問査定はベースになる情報が豊富なので精度の高い結果を得ることが可能です。
住宅査定を依頼する方法
住宅査定は、直接不動産会社に依頼する方法以外にもいくつかあります。最近ではインターネットの普及にともない、住宅査定を依頼できるウェブサイトも数多く登場しているため、パソコンやスマホから気軽に利用が可能です。
ここでは住宅査定を依頼する方法を3つ解説します。特徴やサービス内容を比較して、適したものを見つけましょう。
匿名査定を利用する
インターネット経由で住宅査定を依頼する方法は、匿名査定や一括査定サイトなどがあります。
通常は住宅査定を依頼する際に、物件情報に加えて氏名や電話番号などの個人情報の入力が必要です。しかし、匿名査定の場合、メールアドレス以外の個人情報の入力は一切求められません。
物件種別や所在地などの物件情報とメールアドレスだけを入力すればいいため、手軽に査定結果が把握したい人におすすめです。
また、住宅査定の依頼後は、希望していないにも関わらず不動産会社から営業電話を受けるケースも少なくありません。匿名査定は電話番号の入力が不要なので、営業電話を受ける可能性がない点がメリット。一方で、匿名査定は物件情報だけを用いる簡易査定なので、精度は高くありません。
直接不動産会社に査定を依頼する
住宅査定を依頼する場合、不動産会社に直接問い合わせる方法があります。不動産会社の数は多く、規模や売買実績などはさまざまです。
その中から住宅査定を依頼したい不動産会社が決まっている場合は、直接問い合わせてみるのもいいでしょう。不動産会社の担当者と直接やり取りできるため、疑問や不安がある場合はその場で解消しやすい点がメリットです。
大手不動産会社の場合、公式ウェブサイト上に住宅査定の依頼ページが設けられているケースも。通常は最初に簡易査定が行われますが、訪問査定も依頼すれば精度の高い査定額を把握できます。
一括査定サイトを利用して査定を依頼する
一括査定サイトは物件情報や個人情報を入力し、複数の不動産会社に一度に住宅査定を依頼できるサービスです。
不動産会社以外の第三者が、住宅査定の依頼窓口として運営しています。インターネットにアクセスできるデバイスがあれば時間や場所を問わず利用できるため、気軽に依頼しやすい点がメリットです。
住宅査定を依頼できる不動産会社は、一括査定サイトごとに提携しているところに限られます。すでに住宅査定を依頼したい不動産会社が決まっている場合は、利用前に一括査定サイトと提携しているかをチェックしておきましょう。
下記の記事でより詳しく解説しています。
不動産会社が住宅査定時にチェックしているところ
通常は簡易査定でおおまかな査定額を算出したあと、訪問査定に進みます。精度が高い査定額が把握できると、売却までのプロセスがよりイメージしやすくなるでしょう。
訪問査定では、より詳細な査定額を算出するために不動産会社の担当者が実際に物件を訪れます。不動産会社の担当者がチェックするのは、物件情報だけでは得られないさまざまな項目です。ここでは、不動産会社の担当者が住宅査定時にチェックしているところを項目別に解説していきます。
建物の状況
住宅査定時には、次のような建物の状況が見られています。
- 構造と築年数
- 間取り
- 設備
建物の構造と築年数
建物の構造は木造や鉄筋コンクリート造などいくつかあり、それぞれ法定耐用年数が異なります。評価は、構造に関わらず築年数が古いほどマイナスなるのが一般的です。木造の場合、築20年を超えると新築購入時の1割程度の価格になると言われています。
このほかのチェックポイントとして挙げられるのは、耐震構造や防火性能などです。1981年6月1日以降に建築確認を受けた住宅は、震度7の地震に耐えられる新耐震基準が適用されています。
一方、旧耐震基準で建てられた住宅は、耐震補強工事を施していない限り評価はマイナスになりやすいです。また、防火地域や準防火地域に住宅がある場合は火災による延焼の可能性が高いため、防火性能のチェックが行われます。
建物の間取り
住宅査定時に建物の間取りでチェックされる項目は、おもに次の通りです。
- 部屋数
- 広さ
- 収納の有無 など
このほかには、建物全体が料理や洗濯などの家事がしやすい動線になっているかもチェックポイントになります。また、家族構成やライフスタイルがどのようなタイミングで変化するかわからないため、フレキシブルに対応できたりリフォームしやすいような間取りだったりする場合はプラス評価です。
建物の設備
不動産会社の担当者は、住宅査定時に次のような建物の設備のチェックも行います。
- キッチンや浴室などの水回り
- 冷暖房の設備
- 自然エネルギーを利用した設備
- ホームオートメーション設備 など
太陽光発電システムや床暖房などの設備が設置されている場合は、評価のアップが期待できます。
また、これまでに設備の修繕やリフォームを施している場合は、履歴が確認できるように請負契約書や設計図を事前に準備しておきましょう。
日照・風通し・眺望が良いか
不動産会社の担当者は、住宅査定時に建物の日照条件・風通し・眺望のチェックも行います。
【日照条件】
日照条件でプラス評価なのは、接道の向きが南・東・西・北の順です。角地の場合は、南東の評価がプラスになります。
また、住宅の周辺に高層ビルやマンションがある場合は、日照条件が悪くなるので評価はマイナス傾向です。将来的に日照条件が悪くなる可能性を考慮し、新たな建設が予定されてないかも併せてチェックされます。
【風通し】
住宅の構造上、高い評価が期待できるのは風通しが良く湿気がこもりにくい場合です。風通しが悪いと建物内に湿気がこもりやすく、カビが発生する原因になってしまいます。
【眺望】
高台に位置する住宅の場合、部屋やベランダからの眺めが良ければプラス評価が期待できます。例えば山や海などの自然環境、観光スポットやランドマークになる建物が見える場合です。
土地の状況
住宅査定時には、次のような土地の状況が見られます。
- 境界
- 面積・形状
住宅査定時にチェックされる土地の状況を詳しく見ていきましょう。
土地の境界
不動産会社の担当者は、住宅査定時に土地の境界をチェックします。土地には境界の明示義務があり、境界が確定していない場合は隣接する土地の住人とトラブルになる可能性があるからです。
次の書類がある場合は、土地の境界が確定している証拠になります。
- 確定測量図
- 筆界確認書
- 地積測量図
- 現況測量図
土地の境界が確定していない場合、不動産会社から住宅の売却までに測量を求められるケースも多く、費用や時間がかかります。
土地の面積・形状
不動産会社の担当者は、住宅査定時に土地の面積や形状のチェックも行います。面積は広いほど評価はプラス傾向ですが、広すぎる場合はマイナスになることもあります。住宅があるエリアが第一種低層住宅専用地域の場合、用途が低層の戸建てやマンションなどに限られるからです。
形状は整形かどうかも評価基準となり、プラス評価になるのは整形な場合です。一方で歪んだ形や三角形などの不整形の場合は、使いにくいと見なされてマイナス評価になります。土地の面積や形状でプラス評価が期待できるのは、住宅の購入者が使いやすいかどうかがポイントです。
周辺の状況
住宅査定時には、次のような周辺の状況もが見られます。
- 騒音・臭気・振動がないか
- 周辺の利便性が良いか
住宅査定時にチェックされる周辺の状況を詳しく見ていきましょう。
騒音・臭気・振動がないか
不動産会社の担当者は、住宅査定時に周辺の騒音・臭気・振動の具合をチェックします。騒音・臭気・振動のいずれかがある場合は、住宅査定時のマイナスポイントになります。
騒音と振動のマイナス評価になる原因は、おもに高速道路や新幹線・鉄道などの線路です。窓を閉めた状態でも騒音や振動を感じる場合は、評価が低くなります。しかし、防音性の窓サッシが設置されている住宅は、騒音の影響を少なからず抑えることが可能です。
住宅査定時には防音性の窓サッシがどのくらい効果があるかを実際に示し、マイナス評価を少しでも軽減しましょう。また、汚臭を発生させる下水処理場や工場などが周辺にある場合は、マイナス評価の対象になります。
周辺の利便性が良いか
不動産会社の担当者は、住宅査定時に周辺の利便性が良いかどうかもチェックします。住宅の周辺にあるとプラス評価になりやすい立地条件は、おもに次のような施設がある場合です。
【プラス評価になりやすい立地条件】
- 駅
- バス停
- 商店街
- スーパーマーケット
- コンビニ
- 郵便局
- 金融機関
- 公共施設(病院・公園)
- 教育施設(学校・保育園) など
一方で嫌悪施設が周辺にある場合は、心理的瑕疵(かし)物件と見なされてマイナス評価になる可能性があります。心理的瑕疵(かし)物件に該当する嫌悪施設はおもに次の通りです。
【マイナス評価になる可能性のある立地条件】
- ゴミ処理場
- 墓地
- 刑務所
- 火葬場 など
不動産の査定は、良くも悪くも「普通ではない点」をチェックしていく作業でもあります。
ですから、特に知っている気づいている悪い点は包み隠さず正直に伝えることで、結果としてよい査定結果を得られることに繋がります。
住宅査定を依頼する際のポイント
住宅査定をスムーズに進めるためには、不動産会社への査定依頼前にしておきたいことがいくつかあります。
ここでは不動産会社への依頼前にしておきたいことと、依頼する際のポイントをまとめました。コツを押さえてスムーズに住宅査定を進めていきましょう。
査定を依頼する前に相場価格を調べておく
不動産会社に住宅査定を依頼する前に、売却を予定している住宅の相場価格を自分で調べておきましょう。なぜかと言うと、不動産会社から提示された査定額が相場に近いかどうかを判断できるからです。
提示された査定額が相場と大きく離れている場合、不動産会社の担当者にその根拠を質問できます。相場価格は、レインズ・マーケット・インフォメーションや土地総合情報システム、物件検索サイトなどで調べることが可能です。
レインズ・マーケット・インフォメーションは、国土交通大臣が指定する公益財団法人不動産流通機構が運営する不動産情報システムです。直近1年間に過去の取引情報が掲載されているので、類似物件とエリアで絞り込めば相場価格が把握できます。
土地総合情報システムは、国土交通省が運営する不動産情報システムです。掲載されている取引情報は、実際に不動産取引きした人のアンケート結果をもとに作成したものです。どちらもインターネット環境さえあればアクセスできるため、自分で相場価格を調べることができます。
査定時には必要書類を揃えておく
住宅査定時にはここで紹介するすべての書類を揃えなくてもいいですが、売却時には必要になるので予め準備しておくといいでしょう。
売却時にはおもに次の書類の準備が必要です。
- 登記簿謄本
- 購入時の売買契約書
- 重要事項説明書
- 土地の測量図
- 建物の図面
- 登記権利証または登記識別情報
- 本人確認書類
- 印鑑証明書(発行から3ヵ月以内)
登記簿謄本は、建物や土地に関するさまざまな情報が記載されています。住宅の場合、建物と土地の両方の登記簿謄本を取得する必要があります。登記権利証または登記識別情報は、物件の所有者であることを証明するための書類です。
2005年3月7日以降は、不動産登記法改正によって登記済権利証から登記識別情報に切り替えられました。登記識別情報には12桁の英数字が記載されており、抵当権の設定や所有権移転などの登記の際に必要になります。
紛失した書類がある場合は再発行に時間を要する可能性があるため、住宅の売却を検討した際には準備を早目にスタートしましょう。ただし、登記識別情報は再発行ができず、紛失した場合は弁護士や司法書士に依頼して内容証明を作成してもらう必要があります。
下記の記事でより詳しく解説しています。
査定は複数の不動産会社に依頼して比較する
住宅査定は、複数の不動産会社への依頼がポイントとして挙げられます。依頼する不動産会社を1社に限定した場合、提示された査定額が高いのか低いのか判断できなかったり、担当者の対応や説明が比較できなかったりするからです。
査定額は不動産会社ごとに異なるため、まずは事前に調べた相場価格と比較します。その上で複数社の査定額を比較し、より高い価格を提示してくれたり、誠実な対応をしてくれたりする不動産会社を候補に検討すると良いでしょう。
不動産業者によっては、あなたがどれくらい知識があるかによって査定結果を変えてくる業者もいます。
相場から大きく下げられた査定結果とならぬように、事前に相場を調べて、ある程度の根拠を以て希望価格をいえるくらいになってから臨むのが理想ですね。
住宅がいくらで売れるか査定して確認しよう
住宅査定を依頼する際には、登記簿謄本や土地の測量図などの書類を事前に準備しておくとスムーズです。また、不動産会社ごとに査定額が異なるため、住宅査定は複数社に依頼して比較しましょう。
住宅査定を複数の不動産会社にスマートに依頼したい場合、同時に複数の不動産会社へ依頼できる不動産一括査定サイトの利用がおすすめです。
20年以上の運営実績を持つ「ズバット 不動産売却」は、大手から中小まで幅広い規模から一度に最大6社まで住宅査定を依頼できます。住宅査定を通じて信頼できる不動産会社を探したい人は、ぜひ利用してみてください。
住宅査定は、実際に売却活動へ入っていく準備段階とも言えます。
ある程度はプロである不動産業者へ任せる形となっていきますが、相場や地域性、不動産の知識を備えておくことはとても重要です。
査定はさまざまな方法がありますが、1つではなく複数の査定を受けることでわからなかった相場がなんとなくでも見えてきます。
できるだけ1社だけの査定は避けましょう。