相続の際に使われる土地評価額の種類と計算の仕方

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相続税の計算は自分でも行えます。事前に金額を知りたい方や、専門家へ依頼する手間を省きたい方は、自分で計算してみても良いでしょう。

自分で相続税を計算する際には、土地評価額を用います。しかし、相続する際に活用される土地評価額がどのようなものなのか知らない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、相続の際に使われる土地評価額の種類と、それぞれの相続における活用シーン、相続税の目安を算出するために用いる土地評価額の計算方法を紹介します。

この記事でわかること
  • 土地評価額の種類と相続での活用シーンがわかる
  • 相続税評価額の計算方法がわかる
  • 相続税評価額の補正についてわかる
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【執筆】竹中啓倫 税理士・米国税理士 岐阜県出身。長年、地元の岐阜で開業していたが、2023年8月、名古屋市内に事務所を移転する。竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。自己の経験をもとにした大会社の経理に詳しく、また、M&Aなどの事業再編を得意とする。それ以外にも、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。

相続の際に使われる土地評価額

土地の相続を行う際には、一般的に実勢価格と相続税評価額の2つが用いられます。それぞれの相続での活用シーンは下記の表のとおりです。

土地評価額の種類 相続での活用シーン
実勢価格(時価) 遺産の分割
相続税評価額 相続税の計算

遺産の分割をする場合は、実勢価格を基準にします。実勢価格は、実際に不動産を売却する際の価格であるため、不動産を相続しない相続人とのあいだに不公平感が生まれにくいとされています。

一方、相続税評価額は、相続税の計算を行う際に活用され、価格の設定は実勢価格の約8割に設定されています。例えば実勢価格が1000万円だとすると、相続税評価額は800万円です。

相続税評価額は実勢価格の約8割

相続税評価額の価格が実勢価格よりも約20%安く設定されている背景には、市場価格の変動によって相続税の過払いを防ぐ目的があります。

相続税評価額を計算する路線価は1年に1度しか改定されないため、時価の変動を反映させることができません。

変動によって納税者の負担が増え、損になってしまわないように80%の水準になるように設定されているのです。

実勢価格

実勢価格は実際に売買が成立した価格です。例えば不動産を3,000万円で売出し、その売り出し価格で売れても、値段交渉で2,500万円となった場合、2,500万円が実勢価格になります。

なお、実勢価格は時価であるため、市場動向によって価格が大きく変動することも特徴です。

実勢価格を調べる際は、国土交通省の土地総合情報システムを活用する、不動産鑑定士に依頼するといった方法があります。が、リサーチや依頼の手間がかかります。

相続した土地の売却を検討している場合は、一括査定サイトを利用して複数の不動産会社に査定を依頼すると、査定額の比較ができて実勢価格に近い価格が確認することが可能です。

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相続税評価額

相続税評価額は、相続税や贈与税を算定するときに基準として用いられる価格です。例えば、相続税評価額が4,000万円だった場合、その4,000万円は相続税や贈与税の課税対象となります。

なお、相続税評価額を計算する方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。

・路線価方式

路線価の定めがある地域は、路線価を利用して相続税評価額の計算が可能です。路線価は国土交通省のサイトにある路線価図から確認ができます。

・倍率方式

地域によっては路線価の定めが無い場合もあるため、その際は、倍率方式によって相続税評価額を計算します。

土地の相続税評価額の計算方法

相続税評価額の計算を自分で行うことで、事前に相続税の目安を知ることができ、専門家に依頼する手間も省けます。

相続税評価額の計算は路線価方式を用いて計算するケースが多いですが、地域によって路線価が設定されていない場合は倍率方式を用います。ここでは、路線価方式と倍率方式の計算方法をそれぞれ紹介します。

路線価方式

路線価方式は、道路ごとに決められた1㎡あたりの土地の価格(路線価)に土地の面積(地積)を掛けて評価額を算出する計算方法です。路線価方式の計算方法は下記のとおりです。

路線価 × 地積 = 相続税評価額

また、路線価方式で計算するためにはいくつか情報を集める必要があります。その際は下記の手順で進めましょう。

  1. 固定資産税納税通知書に記載されている地積を確認する
  2. 路線価図で所有している土地に面している道路を探す
  3. 路線価図に記載のある数字と地積を掛けて土地評価額を計算する
路線価図

上の図は路線価図の一例です。記載されている数字は1㎡あたりの土地の価格で、いずれも1,000円単位で表記しています。

例えば相続する土地に「185E」と記載があった場合は、1㎡あたりの土地の価格が18.5万円となります。そのため、18.5万円に地積をかけることで相続税評価額が算出が可能です。計算例を見ていきましょう。

(例)地積が100㎡の場合
18.5万円×100=1,850万円

この場合、1,850万円が相続税の算定基準となる相続税評価額です。

なお、数字の横のアルファベットは、土地を借りている場合の割合を表す記号です。土地を借りている場合の計算方法は後述します。

倍率方式

路線価が設定されていない地域の場合は、固定資産税評価額税に評価倍率を掛けて評価額を計算します。その際の計算式は下記のとおりです。

固定資産税評価額税 × 評価倍率 = 相続税評価額

倍率方式で計算する場合は、固定資産税評価額のほかにも、評価倍率を国税庁のサイトから確認する必要があります。下記の手順に沿って進めましょう。

  1. 固定資産税納付通知書に記載されている固定資産税評価額を調べる
  2. 倍率を調べるために評価倍率表を開く
  3. 都道府県を選択後、「評価倍率表」「一般の土地等用」の順にクリックして倍率表を表示する
  4. 対象の地域の倍率を探す
  5. 固定資産税評価額と倍率を掛けて土地評価額を計算する
倍率表

上記の図は倍率票の一例です。この場合の倍率は「1.2」であるため、固定資産税評価額に1.2を掛ければ相続税評価額が計算できます。

(例)固定資産税評価額が2,000万円の場合
2,000×1.2=2,400万円

相続税の算定基準となる相続税評価額は、2,400万円ということがわかります。

土地評価額のより詳しい計算方法は下記の記事で紹介しているため、こちらも参考にしてみてください。

土地の相続税評価額|状況別の計算式

土地の状況によっては、相続税評価額の計算方法が異なります。下記に当てはまる場合の計算方法をそれぞれ紹介します。

  • 借りている土地の上に建てた家を相続する場合
  • 共有で所有している土地を相続する場合
  • 賃貸物件を相続する場合

借りている土地の上に建てた家を相続する場合

借りている土地は、所有する土地と比べて利用方法に制限があるため、その分評価が下がります。なお、借りている土地の上に建物を建てた場合は、その土地の上に建物を建てる権利(借地権)を所有しているため、その権利ごと相続されます。

まず、上記で解説したように土地の相続税評価額を算出します。その相続税評価額に借地権割合を掛けると、借りている土地の相続税評価額がわかります。

相続税評価額 × 借地権割合 = 相続税評価額
路線価図2

借地権割合は路線価図から確認することができます。その際は数字の横にあるアルファベットと右上の記号を照らし合わせることで借地権割合がわかります。たとえば、「185E」と記載があれば「記号」Eを参照するため、借地権割合は50%となります。

なお、倍率方式の場合は、倍率表に借地権割合の記載があるため、そちらを参照してください。

倍率表2

共有で所有している土地を相続する場合

共有で所有している土地を相続する場合、例えば、土地を共有で所有している人が亡くなって、もう片方の所有者が相続するケースなどでは、持分割合を用いて計算を行います。路線価方式と倍率方式それぞれの計算方法は下記のとおりです。

▼路線価方式の場合
路線価 × 持分割合 × 地積 = 相続税評価額
▼倍率方式場合
固定資産税評価額 × 持分割合 × 倍率 = 相続税評価額

なお、持分割合は共有している所有権の割合を表すものです。持分割合は登記簿謄本を取得することで確認できます。登記簿謄本は法務局に出向くかオンライン請求で取得できるため、計算する際は事前に確認しておきましょう。

賃貸物件を相続する場合

マンションやアパートといった、賃貸用の土地のことを貸家建付地と言います。貸家建付地は個人で自由に使用することができないため、その分土地の評価は下がります。

計算の際は、路線価方式か倍率方式で算出した土地の相続税評価額をもとに行います。その際の計算方法は下記のとおりです。

土地の相続税評価額 -(土地の相続税評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )

借家権割合は一律30%と国税庁により決められていますが、先程ご紹介したように路線価図や評価倍率表で確認できます。また、賃貸割合は下記のように床面積の専有部分から計算します。

課税の時期に賃貸される専有部分の床面積÷専有部分の合計の床面積

貸している部屋が満室であれば、賃貸割合は100%となるため、相続税の減税額も多くなります。

相続税評価額は土地の利用価値で変わる

土地の利用価値は、立地や形といったさまざまな要因で変わります。たとえば、三角形の土地よりも四角い土地のほうが利用価値は高いため、土地の評価は高くなります。

利用価値を反映した土地評価額を算出するためには、補正率を用いて行います。補正の内容や項目は主に以下のとおりです。

奥行価格補正土地の奥行の長さに応じた補正
不整形地補正四角形に整形されていない土地に応じた補正
間口狭小補正間口の狭さに応じた補正
奥行長大補正奥行が長い土地に応じた補正
がけ地補正急傾斜面が含まれて居る土地に応じた補正
特別警戒区域補正特別警戒区域に指定されている土地に応じた補正

なお、補正率によっては土地の評価額が下がりますが、それと併せて相続税にかかる課税額も下がるため、負担自体は減ることになります。

土地評価額の相続まとめ

土地の相続は実勢価格と相続税評価額が用いられ、それぞれ遺産の分割や相続税の計算に使用します。

また、相続税評価額の計算方法がわかれば、自分で相続税の目安を知ることが可能です。

相続税の計算は、路線価方式と倍率方式の2つがありますが、それぞれの計算を行うには手間やリサーチが必要になります。

借りている土地や共有で土地を所有している場合も計算方法が異なるため、相続税がどれぐらいか知りたい方は、今回紹介した内容を参考にしてみてください。

【監修者コメント】
監修者画像

土地は、何の不自由もなく利用できる場合は100%の価値で評価されますが、その利用や処分に制限が加えられる場合、その価値は減額されます。
相続税減額を目的としていろいろな節税提案がなされ実行されたりしていますが、土地の利用可能性に制限が加えられていることは忘れてはいけません。

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