ローンの残っている家を売って新居を買いたい!方法と手順を解説
家庭の事情やライフスタイルの変化により、新居に買い替えたいという人もいるのではないでしょうか。今の家が賃貸物件なら、希望条件の合う新居が見つかり次第、買って転居できます。
しかし、今の家が買った家の場合、すぐに転居するのは難しいのが現状です。特に住宅ローンが残った家は、買替えたくても希望通りにいかない可能性があります。そのため、まずは住宅ローンの残債を確認することが大切です。
そこでこの記事では、住宅ローンが残っている家を売って新居を買替えられるのかを解説します。方法や手順などもわかりやすく解説するので、住宅ローンが残った家の買替えを検討している人は参考にしてください。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
ローンの残っている家を売って新居を買えるかは「完済」できるかどうか
住宅ローンが残っている家を売り、新居に買い替えること自体は可能です。ただし、買替えできるのは、今の家を売却するときに住宅ローンを完済できることが条件であり、完済できなければ買替えはできません。
住宅ローンが残っていても、売却代金が残債を上回るアンダーローンの場合は買替えできます。また、売却代金が残債を下回っていても、自己資金を充てて完済できれば問題ありません。
完済ができないと買い替えは難しい
住宅ローンが残っている家の買替えの可否は、完済できるかどうかが鍵になります。残債が売却代金を上回るオーバーローンになる場合、残念ながら家の買替えは難しいのが現状です。
例えば残債が3,000万円で売却代金が2,500万円だった場合、500万円のオーバーローンになります。ただし、オーバーローンでも自己資金を充てて完済できれば、問題なく買替えできます。
自己資金を充てても完済できないと、残念ながら買替えをあきらめるしかないでしょう。オーバーローンで買替えできない理由は、抵当権が抹消できないからです。抵当権とは、債務者が返済不能になったときに備えて、家を担保にする債権者の権利のことを言います。
債務者が返済不能に陥った場合、家は最終的に競売にかけられて、強制的に売却されます。これは、債権者である金融機関側の抵当権が行使されるからです。抵当権は永久的に設定され続けるのではなく、住宅ローンの完済時に抹消できます。
抵当権を抹消できない限り自由に家を売れないため、買替えるためには住宅ローンの完済が必須というわけです。
家の買替えを希望していても、住宅ローンの残債によっては難しい可能性もあります。そのため、まずは現在の残債を確認することが大切です。残債を確認するおもな方法は次の通りです。
- 金融機関の窓口
- 返済予定表
- 残高証明書
- ネットバンキング
住宅ローンの残債は、借入先の金融機関窓口で確認できます。内容が個人情報に該当するため、本人確認が厳重におこなわれるでしょう。手元に運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を準備しておけばスムーズに問い合わせできます。
返済予定表とは、毎月の返済額や借入金残高などが記載されている書類です。最初の予定表は、借入れ日から1~2週間程度で金融機関から届きます。送付のタイミングは金融機関によって異なりますが、その後は定期的に発送されます。
残高証明書とは、その年の12月31日時点での住宅ローンの残高が記載された書類です。ただし、すべての債務者の手元に届くわけではありません。残高証明書は、10年以上の契約がある住宅ローン控除の対象者に対して送付されます。
手元に届くのは、年末調整や確定申告の時期に近い毎年10月頃です。また、住宅ローンの残債は、ネットバンキングでも確認できます。事前に登録していれば、いつでも確認できるので便利です。
住宅ローン返済中のマンションを一括返済する方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。マンションを売って新居の買替えを検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
住宅ローンが残っている家を買い替える方法と手順
今の家の住宅ローンが完済できれば、新居への買替えが可能です。住宅ローンが残っている家を買い替える方法には、次の3つがあります。
- 売り先行型
- 買い先行型
- 同時並行型
ここからは、それぞれの方法を詳しく解説します。
売り先行型
売り先行型は、今の家を売ってから新居を買う方法です。
メリット | ・購入資金の計画が立てやすい |
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デメリット | ・希望条件に合う新居がすぐに見つかるとは限らない ・仮住まいが必要になる可能性も考えられる |
今の家を先に売るため、新居を買う際の資金計画が立てやすくなります。しかし、希望条件に合う新居がすぐに見つかるとは限りません。
新居を見つけるまでに時間がかかると、今の家を売ったあとに仮住まいが必要になる可能性もあります。仮住まいに住むためには、家賃や引越し代がかかります。仮住まいと新居の2回引越しが必要になるため、その分費用がかかることを肝に銘じておきましょう。
買い先行型
買い先行型は、先に新居を買ってから今の家を売る方法です。
メリット | ・希望条件に合う新居を時間をかけて見つけられる |
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デメリット | ・買い手が見つかるまでは今の家と新居の住宅ローンを二重に返済する事態に陥る可能性がある |
すでに新居が決まっているため、売り先行型のように仮住まいを準備する心配がなく、引越しも1回で済みます。今の家の引渡し時期を考慮する必要がないため、希望条件に合う新居を時間をかけて見つけることが可能です。
その一方で、今の家を売り出してもすぐに買い手が見つかるとは限りません。売却の目途が立たない場合、今の家と新居の住宅ローンを二重に返済する必要が出てきます。
同時並行型
同時並行型は、今の家の売却活動をおこないながら新居の購入を同時に進めていく方法です。
メリット | ・売却と購入のタイミングを合わせられる ・仮住まいの準備が不要 |
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デメリット | ・ほかのタイプよりも実現が難しい ・買替えの断念を余儀なくされる可能性もある |
売却と購入のタイミングを合わせられるため、仮住まいの準備が不要です。ローンを二重に返済する心配もなく、スムーズに住み替えが完了できます。ただし、同時並行型は売り先行型や買い先行型に比べて難しいと言えます。
手続きも同時進行になるため、各物件の売り手と買い手、金融機関の担当者、司法書士などのスケジュール調整も必要です。なかなか買い手が現れない場合、買替えの断念を余儀なくされる可能性もあります。
断念するタイミングによっては、新居の売買契約時に支払った手付金を放棄しなければなりません。
住宅ローンが残っている家を買い替える際に利用できるローン
今の家の住宅ローンが完済できても、新居を買うためにはお金が必要です。住宅ローンの残債関係で困ったときには、買替えローンやつなぎ融資が利用できる可能性があります。
買替えローン
買替えローンとは、新居の住宅ローンに今の家で返済している残債を上乗せできるローンで、住み替えローンとも呼ばれています。
メリット | ・オーバーローンになっても買替えできる ・住宅ローンを二重に返済する心配が不要 |
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デメリット | ・通常の住宅ローンに比べて金利が高い ・通常の住宅ローンに比べて審査が厳しい |
本来なら、住宅ローンを完済できない場合は抵当権を抹消できないため、買替えはできません。
しかし、買替ローンを利用すれば、今の家を売って新居を買うことが可能です。今のローンに新たな借入額を上乗せできるため、二重に返済する心配もありません。ただし、通常の住宅ローンに比べて金利が高く設定されており、審査も厳しいのが現状です。
また、売却と購入のタイミングを同じ日に合わせる必要があるため、同時並行型で買替えを進めていかなければなりません。
つなぎ融資
つなぎ融資とは、今の家の売却と新居の購入のタイミングが合わない場合、その期間に限って受けられる融資のことです。
メリット | ・資金が貯まるのを待たずに新居を購入できる ・買い時を逃さずに済む |
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デメリット | ・通常の住宅ローンに比べて金利が高い ・元金は一括返済する必要がある ・住宅ローン控除の対象外 |
買い先行型では、今の家が売れるまで十分な資金を準備できない可能性があります。期日までに購入資金が準備できない場合、希望条件に合う新居の購入を諦めなければなりません。
しかし、つなぎ融資を利用すれば今の家が売れるまで融資を受けられます。そのため、買い時を逃す心配がありません。その一方で、通常の住宅ローンに比べて金利が高く、元金を一括返済する必要があります。
お金を借りられる期間は長くても1年以内で、数ヶ月のケースがほとんどです。融資期間中は利息だけを返済する形になり、期間が長くなるほど負担も大きくなります。また、つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外です。詳細については、「住宅ローンが残っている家を買い替える際の注意点」で解説します。
住宅ローンが残っている家を買い替える際の注意点
住宅ローンが残っている家を買い替えるときは、残債を確認するのはもちろんのこと、いくつか注意しなければならない点があります。ここでは、残債がある家の買替えでローンを利用する際の注意点を解説します。
住み替えローンは審査が厳しい
住宅ローンが残っている家を買い替える際には、住み替えローンやつなぎ融資を利用するのも選択肢のひとつです。住み替えローンは、通常の住宅ローンと同様に金融機関の審査を受ける必要があります。
しかし、今ある残債に加えて新居の購入費用も上乗せされるため、担保にする家の価値を超える融資を受けることになります。そのため、通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなっています。
また、住み替えローンを申し込んだ時点で信用情報機関に情報が提供されるため、6ヵ月以内はほかの金融機関で再チャレンジすることも難しくなります。審査に通りやすくするためには、頭金を準備するといいでしょう。また、今の住宅ローンと同じ金融機関を利用する方法もあります。
一度審査に落ちるとほかでの借入れが難しくなるため、事前に利用条件を確認しておきましょう。
つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外
住宅ローンが残っている家を買い替えるときには、住み替えローンのほかにつなぎ融資を利用する方法もあります。要件を満たしていると、入居時から10年間にわたって住宅ローン控除が受けられます。
しかし、つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外なので注意しましょう。対象外である理由は、住宅ローン控除に借入期間が10年以上という要件があるからです。つなぎ融資の借入期間は数ヶ月が多く、長くても1年程度です。
特例と住宅ローン控除が併用できないケースもある
家を買い替えると売却と購入でそれぞれ税金がかかるため、単に新居を購入するケースに比べて税負担が大きくなる可能性があります。税負担を軽減するためには、減税措置を利用するといいでしょう。
住み替えで利用できる減税措置は、次の通りです。
- 3,000万円特別控除
- 買換え特例
- 譲渡損失の損益通算
- 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
減税措置を上手く利用すると節税につながります。しかし、一部の減税措置は住宅ローン控除と併用できないので注意しましょう。併用できない減税措置は、3,000万円特別控除と所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例です。
減税措置の要件は、国税庁の公式ウェブサイトで確認できます。
出典元1:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」出典元2:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
出典元3:国税庁「No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合」
出典元4:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
残債があるのに買い替えするには何らかの大きな理由があるかとは思います。 しかしながら住宅ローンが残っている家の買い替えはデメリットが多いため注意が必要です。 仮に審査が通ったとしても通常より金利が高いなど将来においてのデメリットを把握した上で、後々困らないように慎重に検討しましょう。
住宅ローンの残っている家を高く売るなら一括査定がおすすめ
住宅ローンが残った家を売って新居を買う際には、まずは返済予定表や残高証明書などで残債を確認することが大切です。残債の状況によってはオーバーローンになり、買い時を逃す可能性があります。
オーバーローンでも住み替えローンやつなぎ融資が利用できれば買替えできますが、審査が厳しいことを覚悟しておきましょう。住宅ローンの残債を少しでも減らすためのポイントは、今の家をより高く売ることです。
同じ状態の家でも不動産会社によって査定額に差があるため、査定を受ける際には複数社に依頼して査定額を比較しましょう。複数社に査定を依頼するなら、一括査定依頼サービスがおすすめです。
新居を買うためには、手持ち資金と新たな別の融資承認が必要です。 ですから、買い替えローンを扱っている金融機関に新居候補の物件の見積書を持っていくなどして相談することから始めてみてください。
売り先行型→資金が少ない人向け。資金に余裕のない人は消去法的に売り先行型になります。 買い先行型→とにかく気に入った物件に住み替えたい人向け。資金に余裕が必要です。 同時並行型→売却相手が「買う物件が決まったらでいいよ」など融通が利く場合の人向け。あまりないですが、知り合いへの売却などの場合はこのようなパターンも可能です。