家の住み替えでかかる税金は?節税に役立つ控除や特例も紹介!
今住んでいる家を売却して、新しい家を購入する「住み替え」の場合は、売却と購入との両方をほぼ同時に行う必要があり、「売却と購入」両方の費用と税金がかかります。ただし、居住用の家であれば、住み替えに適用できるさまざまな特例や控除があるため、税金を安く抑えることも可能です。
この記事では住み替え時にはどのような税金がかかるのか、また住み替えで使える特例や控除にはどのようなものがあるかなどについて詳しく説明します。住み替え予定のある人や住み替えを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
住み替えにかかる税金(売却時)
住み替えには、家の売却と購入の両方が必要です。ここでは、家の売却にかかる税金について説明します。
売買契約書にかかる印紙税
家や土地などを売買した際には売買契約書を2通作成し、売主と買主が取引きに合意したことの証明として署名・捺印して、それぞれが保管します。
売買契約書は課税文書なので、契約書に記載されている取引きの額に応じた印紙税が必要です。印紙税額分の収入印紙を契約書に貼付します。
取引額に応じた印紙税の額は、次の通りです。
取引額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
※2024年(令和6年)3月31日までに作成する場合は軽減税率が適用
売主と買主、それぞれが自分の保管する契約書の印紙税を負担することが一般的です。ただし、売主にとっては手元にない不動産の契約書になるため、それほど重要ではありません。
そこで、不動産売買契約書の条項に「本契約書1通を作成し、買主がこれを保有し、売主はこの写しを保有する」といった文言を記載しておけば、売主は契約書の写し(コピー)でも十分です。写しの場合、印紙税は必要ありません。
写しの場合でも原則として契約の効力は同じですが、原本とコピーで違いがあった場合、原本のほうが効力はあります。
仲介手数料などにかかる消費税
不動産の売買では、不動産会社への仲介手数料や登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬に消費税がかかります。
土地や建物など不動産の価額については、個人間の売買取引であれば消費税は課せられません。購入先が法人(業者)の場合は、建物の価格にだけ消費税が課せられます。
土地の価格は消費税の課税対象でないので、個人間の取引きであっても法人からの購入であっても消費税はかかりません。
登録免許税(抵当権抹消登記)
不動産の登記情報を変更するのに必要な税金が登録免許税です。
売却の際に必要となるのは、住宅ローンを利用して不動産を購入した際に設定した抵当権を外す登記手続き(抵当権抹消登記)に課せられる登録免許税です。
抵当権抹消登記に必要となる登録免許税は、不動産ひとつにつき1,000円になります。
戸建ての場合は、土地と建物それぞれに抵当権が設定されているので、2つ分の抵当権抹消登記の登録免許税として2,000円が必要です。
土地の登記が2つ以上に分かれている場合は、登記の個数に応じた抵当権抹消登記の登録免許税が必要になります。
下記の記事でより詳しく解説しています。
売却益が出た場合にかかる譲渡所得税
不動産を売却して売却益が出た場合は、譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税は、所得税と復興特別所得税(所得税額の2.1%相当分)、住民税の合計です。復興特別所得税は、2037年(令和19年)まで課せられます。
譲渡所得税の計算式は、次の通りです。
課税譲渡所得(売却益)=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(適用要件を満たす場合)
課税譲渡所得×譲渡所得税税率=譲渡所得税の税額
取得費と譲渡費用、譲渡所得税について詳しく説明します。
取得費と譲渡費用
対象となる不動産を購入したときの費用として、次のような費用が取得費として認められます。
- 不動産を購入した代金
- 購入時の仲介手数料
- 設備費や改良費 など
ただし、建物の取得費は購入した代金そのままではなく、購入してから売却するまでの間の減価償却費(経年劣化による資産価値の減少分)を差し引いた額になります。
譲渡費用には次のようなものが含まれます。
- 売却した際の仲介手数料
- 建物の解体費用
ただし、建物を所有していた期間の修繕費や固定資産税などは譲渡費用に含まれません。どのような費用が取得費と譲渡費用に含まれるのかは、国税庁ウェブサイトで確認することができます。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
譲渡所得税の税率は、対象となる不動産の所有期間が5年以下(短期譲渡所得)か5年を超える(長期譲渡所得)かによって異なります。
税率 | |
---|---|
短期譲渡所得 (不動産の所有期間が5年以下) |
39.63% (所得税:30.63%、住民税:9%) |
長期譲渡所得 (不動産の所有期間が5年超) |
20.315% (所得税:15.315%、住民税:5%) |
※所得税には復興特別所得税2.1%が含まれます。
また、所有期間の数え方は実際に所有していた期間ではなく、売却した土地の1月1日時点で5年を超えているかどうかが基準となります。
住み替えにかかる税金(購入時)
新しく家を購入して住み替える場合は、購入する際の税金も必要です。
印紙税と消費税は売却時と同じ
売買契約時に必要となる税金(印紙税と消費税)は、売却時と同じです。
売主の場合、契約書に必要な印紙税はコピーでも可能ですが、買主の場合は手元に置いておく必要のある重要な書類であるため、印紙税は必須の費用です。
登録免許税(所有権移転登記・抵当権設定登記)
家の購入時には、中古の場合は所有者を変更する所有権移転登記の登録免許税が、新築の場合は新しく登記を設定する所有権設定登記が必要です。
所有権移転の登録免許税は買主が負担することが一般的ですが、特に法律で定められているわけではありません。売買契約時に確認しておきましょう。
また、住宅ローンを使って住み替え先の家を購入する場合は、借入金の担保として抵当権を設定するため、抵当権設定登記の登録免許税も必要になります。
所有権移転登記(所有権保存)の登録免許税
住み替えで新しく購入した家が既存住宅(中古住宅)の場合は所有権移転登記、新築の場合は所有権保存登記が必要です。
どちらも建物部分の登記については、条件によって税率が異なります。
【土地について】
土地部分の価額×2%(1,000分の20)
【建物について】
▼中古の場合
建物の価額×2%(1,000分の20)
※2024年(令和6年)3月31日までに取得した居住用の家の場合は、不動産価額×0.3%(1,000分の3)
▼新築の場合
建物の価額×0.4%(1,000分の4)
※個人が2024年(令和6年)3月31日までに居住用する新築の家を登記する場合は0.15%(1,000分の1.5)
登記する家の床面積や認定長期優良住宅、認定低炭素住宅などの場合も税率が低くなります。詳しい条件は、国税庁のウェブサイトで確認してみてください。
抵当権設定登記の登録免許税
抵当権設定登記の登録免許税は、次の計算式で求められます。
債権金額(借入額)×0.4%(1,000分の4)
※2024年(令和6年)3月31日までに居住用の家(登記床面積50平方メートル以上)を取得するために抵当権を設定した場合は0.1%(1,000分の1)
不動産取得税
不動産取得税は固定資産税などと同じ地方税で、中古、新築にかかわらず不動産を取得した際に一度だけ課せられる税金です。
不動産取得税を求める計算式は、次の通りです。
土地・建物の固定資産税評価額×4%
また、新築の建物の場合、床面積が50平方メートル以上で240平方メートル以下の場であれば、評価額から1,200万円(認定長期優良住宅の場合は1,300万円)が控除されます。
中古住宅などの場合は、建てられた年によって控除される額が異なります。詳しくは、対象となる不動産が所在する自治体のウェブサイトで確認してみてください。
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点で、土地や家などの不動産の所有者に対して課せられる税金(地方税)が固定資産税と都市計画税です。支払い時期は4~6月頃が一般的ですが、自治体によっても異なります。
中古の場合、購入した年の分はすでに前の売主が支払っているため、購入した日以降の分を清算して購入代金と共に売主に支払うのが一般的です。ただし、法的に定められているわけではないので、契約時に取り決めることがほとんどです。
固定資産税と都市計画税の清算方法は、合計額を日割りして、購入してからの日数を乗じて算出します。売主が固定資産税と都市計画税をいくら支払ったかは、固定資産納税通知書で確認しましょう。
例えば、固定資産税と都市計画税の合計が11万6,800円の家を8月1日に売買した場合、購入後の清算分の計算は次の通りです。
11万6,800円÷365日×152日(8月1日以降の日数)=48,640円
この精算額を買主から売主に支払うことになります。
住み替えで適用される税金の控除や特例
今の家を売却して新しい家を購入する住み替えの場合は、家の売却と購入の両方に課せられる税金の控除や特例を適用することが可能です。
ここでは、家の住み替えで適用される税金の控除や特例などについて説明します。
マイホーム売却時の3,000万円の特別控除
家や土地などの不動産を売却した際に、利益(譲渡所得)が出た場合は譲渡所得税の納税が必要ですが、売却した不動産が住居用であった場合には、譲渡所得税を計算する際に3,000万円を課税譲渡所得から控除することができます。
これが「マイホーム売却時の3,000万円の特別控除」で、課税譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得税が課せられないことになります。
この特例を適用した場合の課税譲渡所得の計算は、次の通りです。
課税譲渡所得(売却益のこと)=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(3,000万円)
この特例を適用するためには、おもに次のような要件を満たす必要があります。
- 居住用の家や居住用の家が建てられていた土地の売却であること
- 売却した年とその前年、前々年に、この特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例、マイホームの買替えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
- 収用などに適用される特別控除などを受けていないこと
- 売主と買主とが特別な関係(親子や夫婦)でないこと
詳しい適用要件については、国税庁のウェブサイトで確認できます。
住宅ローン減税の特例
住み替え先の家を購入する際に住宅ローンを利用して一定の要件を満たす場合、年末における住宅ローンの残高をその年の所得税額から控除できるというのが「住宅ローン減税の特例」です。
適用要件を満たせば、購入した年から10年(特別特定取得に該当する場合は13年)のあいだ、各年の所得税額から住宅ローンの残高を控除できます。
この特例を適用するためのおもな要件は、次の通りです。
- 2022年(令和4年)12月31日までに取得した住宅に、取得の日から6ヵ月以内に住み始めて適用を受ける各年の12月31日まで継続して住んでいること
- 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 取得した住居の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が居住部分であること
- 借入期間(住宅ローンの返済期間)が10年以上であること
詳しい適用要件については、国税庁のウェブサイトで確認可能です。
特定の居住用財産の買替えの特例
今の家を売却して新しい家に買い替えた際に、売却価格よりも高い価格の家を購入した場合は、その買替えで生じた譲渡所得税を次の売却時まで繰り延べられるという特例です。
例えば、今住んでいる家を7,000万円で売却して譲渡所得が4,000万円あった場合、マイホーム売却の3,000万円控除を適用しても、残りの1,000万円に譲渡所得税が課せられます。
しかし、購入した家が7,000万円よりも高ければ、今回、譲渡所得税は課せられず、購入した家を次に売却する際まで繰り延べられることになります。
ただし免税や減税ではなく繰り延べられるだけで、次の売却で支払いが発生する可能性があることに注意しましょう。
この特例を適用するためのおもな要件は、次の通りです。
- 居住用の家の売却であること(以前、住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年が経過する年末までに売却すること)
- 売却した年とその前年、前々年に、この特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例、マイホーム売却の3,000蔓延の特別控除などの特例の適用を受けていないこと
- 売却した家と購入した家の両方が日本国内にあること
- 売却代金が1億円以下のこと
- 売却した家の居住期間が10年以上で、かつ所有期間が10年を超えるものであること
- 買い替えた家の床面積が50平方メートル以上のもの(土地の面積は500平方メートル以下のもの)であること
- 売主と買主とが特別な関係(親子や夫婦)でないこと
その他、詳しい適用要件については国税庁のウェブサイトで確認ができます。
買替えで譲渡損失が生じた場合の控除
これは、住居を2023年(令和3年)12月31日までに売却して新しい住居を購入した場合、売却の際に損失(譲渡損失)が生じたとき、一定の要件を満たせばその譲渡損失をほかの所得から控除(損益通算)することができる特例です。
さらに、損益通算をしても控除しきれなかった損失分があれば、売却した翌年以後3年以内で繰り越して控除できます。
この特例を適用するためのおもな要件は、次の通りです。
- 居住用の家の売却であること(以前、住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年が経過する年末までに売却すること)
- 売却した年の1月1日における所有期間が5年を超えている国内の住宅の売却であること
- 売却した年の前年の1月1日から翌年の12月31日までに、国内にある床面積が50平方メートル以上の住宅を取得すること
- 買い替えた住宅を取得した年の12月31日の時点で、買い替えた住居に10年以上の住宅ローンがあること
詳しい適用要件については、国税庁のウェブサイトで確認してください。
住み替え後の確定申告について
住み替えで家を売却し、利益(譲渡所得)が出た場合は確定申告で譲渡職税を納める必要があります。
損益が出た場合の控除や特例の適用は確定申告しないと適用されないことが多いため、利益が出なくても、住み替えをした翌年の確定申告を行うことをおすすめします。
確定申告の際に必要となるおもな書類は、次の通りです。
- 家を売却した際と売却した際の売買契約書
- 取得費の領収書
- 譲渡費用の領収書
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- マイナンバーカードなどの証明書
- 確定申告書B様式(譲渡所得がある場合に必要)
- 確定申告書第三表(分離課税用の申告書)
- 譲渡所得の内訳書
これらの書類を準備して、売却した翌年の2月15日~3月15日までに確定申告をします。日程は変更されることがあるので予め確認しておきましょう。
書類の書き方や計算方法は、確定申告の相談コーナーや税務署の窓口で相談可能です。額が大きい場合や手続きがたいへんな場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
下記の記事でより詳しく解説しています。
住み替え時の税金は控除や特例を使って抑えよう
家を売却して購入する住み替えは、売却と購入の両方を行うため、それぞれに税金が必要です。住み替えの場合は資金計画が特に大切なので、予めどのような税金がいくらぐらいかかりそうなのかを把握しておくことが大切です。
また、住み替え時に課せられる税金には、さまざまな控除や特例があります。確定申告をしないと適用されない場合が多いので、売却と購入を伴う住み替えをした翌年は、確定申告を忘れないようにしましょう。