マンション売却の仲介手数料はいつ支払う?タイミングと計算方法
マンション売却で失敗しないためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。そのひとつとして挙げられるのが、マンションの売却に入る前に資金計画や売却スケジュールを立てておくことです。
予めマンション売却にどれくらい費用がかかるのか、売却の手順、スケジュールなどを把握しておけば売却がスムーズに進むだけでなく、売却したあとに手元に残るお金の額の見通しがつきます。特に、売却時にかかる費用の中でも大きな割合を占める仲介手数料は、いくらぐらいになるかを知っておくことが大切です。
そこでこの記事では、マンション売却時にかかる仲介手数料について、仕組みや支払うタイミング、計算方法まで詳しく解説します。マンション売却を検討している人や仲介手数料について理解を深めたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
マンションの売却にかかる仲介手数料とは?
マンション売却時にかかる仲介手数料の説に入る前に、そもそも仲介手数料とはどのようなものなのか、なぜマンションの売却時に仲介手数料が必要なのかを説明します。
仲介手数料は売買契約成立の成功報酬
マンションなどの不動産を売却する際、個人で売りに出すことはできます。しかし、素人が購入希望者を集めたり、売買契約の手続きを滞りなく進めたりすることは至難の業です。そこで、不動産会社に売却を依頼して購入希望者の集客や契約手続きの仲介を依頼します。
不動産会社に売却を依頼して、売買契約が成立した際に成功報酬として支払うのが仲介手数料です。
仲介手数料は成功報酬なので、依頼したマンションが売却できなかった場合(売買契約が成立しなかった場合)には支払い義務は発生しません。
仲介手数料に含まれるもの
不動産の仲介を主要業務としている不動産会社にとって、仲介手数料は大切な収益源であり、不動産売買に必要な手続きを行った上で得ることができる報酬になります。
仲介手数料に含まれるおもな費用は、次の通りです。
- 広告費用
- 物件案内
- 不動産の査定、調査費用
- 重要事項説明書・売買契約書の作成
- 重要事項説明と契約締結
- 引渡し時までの必要書類準備と事務手続き など
これらの費用が仲介手数料には含まれているため、あらためて広告費用や調査費用などが不動産会社から請求されることはありません。
しかし、物件を早く売却したい場合などで売主から新聞の折り込みチラシや雑誌への広告掲載依頼などの特別な宣伝を要求された場合は、仲介手数料とは別料金で広告費用が発生します。
このような場合は、あくまでも売主からの申し出であることが前提なので、不動産会社が勝手に行った広告などについては、売主がその費用を負担する必要はありません。
マンション売却にかかる仲介手数料の計算方法と相場額
マンション売却時に、いくらぐらいの仲介手数料がかかるのかの計算方法と、仲介手数料の相場額について説明します。
仲介手数料はマンションの売却額を基準として算出できるので、マンションがいくらぐらいで売れそうなのかがわかれば、自分でおおよその仲介手数料の額を計算しておくことが可能です。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料には定価や定額があるわけではなく、不動産会社が売主や買主に対して請求できる上限額だけが宅地建物取引業法で定められています。
よって、その上限額以下であれば、不動産会社が自由に仲介手数料の額を設定することが可能です。ただし、先にも述べた通り、仲介手数料は不動産会社にとって重要な収益源なので、上限額を仲介手数料の額に設定しているとことがほとんどです。
仲介手数料の上限額は、売却した額(取引額)を200万円以下の部分と200万円を超えて400万円以下の部分、そして400万円を超える部分に分けてそれぞれを計算し、すべてを合わせた額になります。
それぞれの額における計算方法は次の通りです。
取引額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 取引額の4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 取引額の3%+消費税 |
例えば、4,000万円でマンションを売却した場合の仲介手数料の上限額の計算は、次のようになります。
200万円×0.05+200万円×0.04+3,600万円×0.03=126万円
この額に消費税(12万6,000円)を加えた額が、仲介手数料の上限額です。
この方法だと計算過程が多くてたいへんなので、400万円を超える取引額の場合は、次のような速算式で仲介手数料の上限額が求められます。
400万円を超える取引額×3%+6万円(+消費税)
この式で、4,000万円の取引きの場合を計算してみると次のようになり、先ほどの計算と同じ額になることがわかります。
4,000万円×0.03+6万円=126万円(+消費税)
低廉な空き家等の売買の特例
仲介手数料の上限額は取引価格を基に算出されるため、取引価格が安い物件を売却した場合は仲介手数料の上限額も低くなってしまいます。
しかし、一般的に400万円以下であるような低廉な物件は地方や交通の便が悪い場所にあることが多く、不動産会社の負担が増える割には仲介手数料が安くなりがちです。
そのため、そのような物件の取引きの際には、売主から受け取ることができる仲介手数料の上限額に調査費用を上乗せして、仲介手数料の上限額を18万円(+消費税)にできると定められています。
「低廉な空き家等の売買の特例」は、あくまでも遠方の物件への交通費や調査費を仲介手数料に含めて計上できるというものです。400万円以下の物件なら仲介手数料は一律で18万円になるわけではない点に注意しましょう。
仲介手数料の相場額・上限額の早見表
仲介手数料は取引額を基にして算出され、法律で定められているのは上限額だけなので不動産業者によって自由に設定することが可能です。そのため、一般的な相場額や定価といったものは存在しません。
ただし、不動産業者では上限額いっぱいを請求額に設定している場合がほとんどです。
不動産売買の取引額における仲介手数料上限額の早見表は、次の表の通りです。
※消費税は10%(2021年現在)で計算しています。
取引額 | 仲介手数料の上限額 | 消費税 | 総額 |
---|---|---|---|
1,000万円 | 36万円 | 36,000円 | 39万6,000円 |
2,000万円 | 66万円 | 66,000円 | 72万6,000円 |
3,000万円 | 96万円 | 96,000円 | 105万6,000円 |
4,000万円 | 126万円 | 12万6,000円 | 138万6,000円 |
5,000万円 | 156万円 | 15万6,000円 | 171万6,000円 |
6,000万円 | 186万円 | 18万6,000円 | 204万6,000円 |
7,000万円 | 216万円 | 21万6,000円 | 237万6,000円 |
8,000万円 | 246万円 | 24万6,000円 | 270万6,000円 |
9,000万円 | 276万円 | 27万6,000円 | 303万6,000円 |
1億円 | 306万円 | 30万6,000円 | 336万6,000円 |
自分で仲介手数料の額を試算する方法
マンションを売却する際にかかる仲介手数料の上限額がどれくらいになりそうなのかを試算しておくには、いくらぐらいでマンションが売れそうなのかの把握が必要です。
また、予めマンションがどれくらいで売れそうなのか相場価格を調べておけば、資金計画が立てやすくなるだけでなく、不動産会社に出してもらう査定額が適切かどうかの判断材料にもなります。
自分でマンションの相場価格を調べる場合は、国土交通省のサイト「土地総合情報システム」や不動産流通機構が運営している「レインズ・マーケット・インフォメーション」などのサイトが便利です。
いずれもマンションや家など不動産の取引き成約価格を調べることができるので、売却したいマンションと立地条件や築年数、広さ、間取りなどの条件が似ている物件が、いくらぐらいで取引きされたのかがわかります。
マンションの売却で仲介手数料はいつ支払う?
仲介手数料は成功報酬なので、売却が成功したら(売買契約が成立したら)不動産会社への支払い義務が発生します。
ただし、マンションをはじめとした不動産売買取引は、契約すればそれで終わりではなく、引渡しまでが一連の手続きとして必要な場合がほとんどです。
そのため、売買契約の締結時に仲介手数料の半額を支払い、物件の引渡しが完了したときに残りの半額を支払うことが一般的です。
仲介手数料の支払時期は不動産会社によって異なるので、売却を依頼する際に確認しておくようにしましょう。
仲介手数料の値引きは可能?
マンションの売却費用の中でも仲介手数料は高額になるため、できるだけ安くしてもらいたいと考える人も多いかもしれません。
ここでは、仲介手数料の値引きについて、値引きが可能なのか、また値引きしてもらえるなら切り出すタイミングはいつが良いのかなどを詳しく説明します。
仲介手数料の値引きは可能
結論から述べると、不動産会社にもよりますが、仲介手数料を値引きしてもらうことは可能です。
なぜなら、法律で定められているのは仲介手数料の上限額だけなので、その範囲内であれば不動産会社が自由に取り決められることになっているからです。
ただし、無理に値引きをしてもらおうとすると、売却を依頼した不動産業者や担当者の売却活動にかけるモチベーションが下がることがあるので注意が必要です。
場合によっては仲介手数料を値引きしてもらうよりも、少しでも高くマンションを売却できるように売却活動を熱心に行ってもらうほうが、結果として得になることもあります。
より詳しい内容は下記の記事で解説しています。
仲介手数料の値引きを切り出すタイミング
媒介契約で仲介手数料の額や支払方法についての取り決めをするため、媒介契約が成立してから後から値引きを持ちかけるのは難しくなります。
そのため、仲介手数料の値引きしてもらいたい旨を不動産会社に切り出すのであれば、売却を依頼する際に締結する媒介契約のまえにしましょう。
仲介手数料の値引きの取り決めをしたら、媒介契約の内容に特約などの形で入れておいてもらうことをおすすめします。
仲介手数料の値引きのポイント
どうしても仲介手数料を値引きしてもらいたい場合は、値引きに対する条件を提示するのもひとつの方法です。
例えば、1社の不動産会社としか媒介契約を締結できない「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結ぶことを条件に出せば、値引きに応じてもらいやすくなると言えるでしょう。
また、買い替えを前提とした売却の場合は、購入の仲介も同じ不動産会社に依頼することで値引き交渉がしやすくなります。
仲介手数料の値引きについては、下記の記事でも詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
マンション売却の仲介手数料が半額・無料になる仕組み
マンションや家といった不動産の売却の仲介手数料が、半額や無料を謳っている不動産会社の広告や宣伝を目にしたことがある人もいることでしょう。
仲介手数料は不動産会社の重要な収益源であるにもかかわらず、なぜ半額や無料にできるのか疑問を感じる人もいるかもしれません。
ここでは、売却の仲介手数料が無料や半額にできるのはなぜなのか、その仕組みを説明します。
仲介手数料は売主と買主の両方が支払う
不動産売買時の仲介手数料は、売主と買主の両方がそれぞれ仲介を依頼した不動産会社に対して支払います。
そのため、ひとつの不動産会社で売却と購入、両方の仲介をすれば、売主からと買主からの両方の仲介手数料を得ることが可能です。これを「両手仲介」と言います。一方、売主と買主、どちらかだけの仲介を引き受けるのは「片手仲介」です。
両手仲介になるような売却活動をすれば、その不動産会社が手にする仲介手数料は2倍になります。そのため、売主からの仲介手数料を半額や無料にしても、買主からの仲介手数料があれば収益が出ることになるのです。
売主からの仲介手数料を半額や無料にするためには、買主からの仲介手数料が得られる「両手仲介」を目指すことが必要です。つまり、買主も自社で見つけなければなりません。そのような状況で発生するのが「囲い込み」です。
「囲い込み」とは、自社で買主を見つけるために、ほかの不動産会社から紹介される購入希望者を勝手に断ってしまうというものです。まだ購入希望者が現れていない場合でも、商談中や売却予定済みなどと偽って断ることもあります。両手仲介を狙うあまり、このような囲い込みをする不動産業者もあるので注意しましょう。
マンション売却時の仲介手数料に関する注意点
ここでは、マンション売却時の仲介手数料について注意すべき点を説明します。売却を依頼する不動産会社を選ぶ際のチェックポイントとしても、ぜひ参考にしてください。
仲介手数料の説明が怪しい会社に注意
仲介手数料の定めがあるのは上限額だけなので、上限額以下であれば不動産会社で自由に取り決めることが可能です。そのため、不動産会社によって仲介手数料の額が違うこともあります。
しかし、中には仲介手数料の上限額が定価であるような説明をして、上限額いっぱいの仲介手数料の請求を正当化してくる不動産会社もあります。そのような虚偽を持ち出してくる不動産会社には注意が必要です。
また、怪しい不動産会社の中には、仲介手数料以外に売主が認めていない宣伝費や広告費などを請求してくる場合や、売却活動前に着手金を請求してくる場合もあります。このような不動産会社には売却を依頼しないようにしましょう。
仲介手数料の安さだけで選ばない
仲介手数料の値引きや半額、無料などの謳い文句は魅力的ですが、仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ばないことが大切です。
先にも述べたように、仲介手数料半額や無料の前提として両手仲介を狙っている不動産会社に売却を依頼した場合、囲い込みをされて条件の良い購入希望者や売却のチャンスを逃すことになりかねないからです。
仲介手数料の値引きが行われなくても、不動産会社や営業担当者が熱心な売却活動をしてくれて良い条件で高く売却できれば、結果として手元に残るお金が多くなる場合もあります。
不動産会社を選ぶ際には、仲介手数料の額だけでなく売却活動や抱えている顧客の数や質、営業担当者の知識や手腕など、総合的に判断するようにしましょう。
仲介手数料Q&A
最後に、仲介手数料の疑問について回答していく形でさらに詳しく説明します。
仲介手数料に消費税はかかるの?
仲介手数料は消費税の課税対象になっているので、不動産会社に支払う際には消費税が必要です。
ただし、仲介手数料の上限額を算出する売買価格は、税抜き価格を基に計算されます。売買価格における土地の部分の代金には消費税が課せられていませんが、建物部分の代金には消費税が含まれた額になっていることがあるので注意が必要です。
建物の価格に消費税が含まれたまま仲介手数料の計算が行われると、その消費税分、余計に仲介手数料を支払うことになってしまいます。
マンション売却時には、建物の価格に課せられる消費税額分を含めた額を基にして仲介手数料が計算されていないかどうかを確認するようにしましょう。
仲介手数料の支払方法は?
不動産売買における仲介手数料の支払方法は、現金での支払いか振り込みかがほとんどです。仲介手数料の支払のみカード払いに対応している不動産会社もありますが、まだまだ数は多くありません。
不動産会社によって仲介手数料の支払方法は異なるので、予め確認しておくようにしましょう。
媒介契約を解除した場合の仲介手数料は?
仲介手数料は成功報酬なので、売買契約が成立しないと、例えそれまでのあいだ、不動産会社が売却活動をいくら行っても仲介手数料の支払義務は発生しません。
しかし、不動産会社が売却活動を開始したあとで、売主が一方的な都合で媒介契約を解約して売却を取りやめた場合は、仲介手数料の全額、もしくは一部を契約の違約金として支払うことになっている場合もあります。
媒介契約の解約や違約金については媒介契約書内に盛り込まれているので、契約を結ぶ前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
マンション売却前に仲介手数料を試算しておこう
マンションの売却を成功させるためには、予め売却スケジュールや予算や資金計画をしっかりと立てておくことが大切です。特に、マンション売却にかかる費用の中でも大きな割合を占める仲介手数料の額を把握しておくことは、売却計画を立てる上で欠かせないポイントになります。
売却時にかかる仲介手数料のおおよその額は、いくらぐらいでマンションの売却ができそうかがわかれば試算が可能です。予め売却するマンションの相場価格を調べ、仲介手数料をはじめとした売却費用の目途をつけて資金計画を立てておきましょう。
また、仲介手数料の額だけで不動産会社を選ばないようにすることも大切です。どのような形で売却したいのかを明確にし、希望に沿ったマンション売却を実現してくれる不動産会社を選んで売却を依頼するようにしましょう。