マンション売却時の注意点|失敗例から学ぶ「成功させるポイント」
マンションを売却するにあたって「希望通りの金額で売れるだろうか」「現金化したい日が決まっているが間に合うだろうか」など疑問に思うことがあるかもしれません。失敗を回避し、希望通りの売却を行うためには、おさえておきたい注意点がいくつかあります。
この記事では、マンション売却の流れに沿って具体的な失敗例を取り上げ、注意点と成功のためのポイントを解説します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
マンション売却の注意点【事前準備編】
マンションに限らず不動産を売却するときは、不動産会社に一任すれば終わりというわけではありません。売主主体の事前準備を十分に行うことで、希望の売却額や売却スケジュールに近づけられる可能性が高まります。
逆に事前準備をしなかった、または不十分だったことで失敗してしまうことも。ここでは、そのような失敗例からわかる注意点と改善策を説明します。
【失敗例】相場を後から知って売却額に後悔した
相場を知るまえに不動産会社に査定を依頼し、その査定額を信じて売却した結果、あとになって相場よりも格段に安い金額だったことを知るというケースです。
不動産会社によって取り扱う物件のタイプや立地など得意不得意があるため、1社の査定額だけでは本当の適正価格なのかがわかりません。自分でも相場を調べ、その上で複数の不動産会社に査定を依頼し比較検討することが大切です。
【成功へのポイント】相場を確認する
不動産会社に査定を依頼する前に自身で相場を調べておきましょう。
- 不動産ポータルサイト
- レインズマーケットインフォメーション
不動産ポータルサイトは売り出し中の物件が掲載されており、リアルタイムの相場を把握しやすいのが特徴です。ただし、希望を含めた高値がつけられていることもあり、実際に売却額は掲載されている金額よりも減額されている可能性があります。
レインズマーケットインフォメーションでは、直近1年間において実際に売買された物件の情報を閲覧できます。実売価格が掲載されているため、現実的な売り出し価格の設定に役立ちます。
どちらの場合でも、売却したいマンションと立地やその他条件が近しいものを参考にしましょう。
住宅ローンの残債があり、売却によって完済したい場合や、家の買換えでどうしても必要な金額が決まっている場合、相場よりも高値の「チャレンジ価格」で売り出すという手もあります。
ただし、相場からかけ離れた金額での売却は難しいため、あくまでも相場を把握した上での選択肢です。
また、人気エリアであることや室内の設備が充実しているなど、多少高額でも買い手がみつかる可能性が高い物件であることも前提と言えます。
【失敗例】契約に必要な書類と資金の準備に不手際があった
不動産売却に必要な書類がそろっておらず、準備だけで時間が経過し、売り出し期間が短くなってしまったというケースです。
さらに、住宅ローンの返済や次の購入する物件への資金確保を急いだ結果、当初の希望価格よりも安い金額で妥協してしまうこともあります。買主との売買契約時点で必要な書類や資金に不手際があれば、トラブルにも発展しかねません。
【成功へのポイント】必要書類はすべてそろえておく
事前に必要な書類の種類、取得できる場所や必要な時期を確認しておきましょう。
書類の種類 | 内容 | 取得場所 | 必要な時期 |
---|---|---|---|
マンションの権利証または登記識別情報通知書 | マンションの所有者が誰であるかを公的に証明するために必要な書類 |
マンション購入時に取得済み( 紛失している場合は法務局に問い合わせる) |
事前準備期間 |
マンション取得時のパンフレットや設備の取扱説明書 | 間取りや設備の詳細が書かれているもの | マンション購入時に取得済み | 事前準備期間と売却活動期間(不動産会社の査定時や売主候補へアピールポイントを説明するときにあると役立つ) |
マンションの管理規約や維持管理費に関する書類 | エレベーターや廊下といった共有部分の管理にかかる費用や修繕費積立金などが記載されたもの | マンション購入時に取得済み | 事前準備期間 |
ローン残高証明書 | マンションに関するローンを返済している場合に必要な、残債と返済額が記載されている書類 | ローンを借り入れた金融機関 | 事前準備期間 |
登記事項証明書 | 不動産の種類、大きさ、所在、建物番号などを記載した法務局が管理する証明書 | 法務局 | 不動産会社との媒介契約時と買主との売買契約時 |
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書 | 固定資産税の納税額を確認すための書類 | 自治体の窓口 | 物件引渡しの際の移転登記に必要な登録免許税を計算するとき |
身分証明書 | パスポートや免許証など | 各行政の窓口 | 書類の取得時や各契約時 |
印鑑証明書 | 印鑑登録を証明する書類(3ヵ月以内に発行したもの) | 自治体の窓口 | 各契約時 |
中には自治体の窓口に申請したり金融機関に問い合わせたりしなければ取得できない書類もあります。マンションの売却を考えている段階で、今手元にある資料を確認し、不足があれば時間に余裕をもって取得しておきましょう。
【成功へのポイント】売却に必要な費用に注意する
おもに契約関係で費用が発生します。マンションの売却代金が支払われるまえに必要な資金があるため、書類と同様に以下の資金も用意しておきましょう。
費用の種類 | 支払いタイミング | 金額の目安 |
---|---|---|
登記事項証明書発行の手数料 | 事前準備 | 1通あたり480~600円(オンライン・書面請求など手続きによって異なる) |
印紙代 | 売買契約書作成時 |
・契約金額が100万円を超え500万円以下のもの:2,000円 ・契約金額が500万円を超え1,000万円以下のもの:10,000円 ・契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下のもの:20,000円 ・契約金額が5,000万円を超え1億円以下のもの60,000円 |
仲介手数料 |
決済時 ※仲介手数料全体の5~10%を売買契約締結時に支払うのが一般的。これは買主から支払われる手付金で充当できる) |
・売却代金が200万円以下の場合:売却代金の5% ・売却代金が200万円を超えて400万円以下の場合:売却代金の4%+20,000円 ・売却代金が400万円超えの場合:売却代金の3%+60,000円 ※別途消費税 |
司法書士に登記を依頼した場合の支払い報酬 | 物件引渡し後 |
・所有権移転登記(売買):20,000~80,000円 ・抵当権設定登記:20,000~50,000円 |
譲渡所得税 | マンションを売却した年の分を確定申告した後の所得税と住民税 | 売却代金から経費などを差し引いた金額に、所有年数に応じた税率をかけて計算される |
固定資産税 | 5月頃 | 売却した年の1月1日時点で所有しているマンションにかかる固定資産税。物件引渡し日を起算日として、買主と売主で日割り計算して負担割合を決めるのが一般的 |
各種登記は自分でも手続きできますが、不備があるとトラブルにつながりかねないため、慣れていない場合は司法書士に依頼するのがおすすめです。
なお固定資産税はマンションを売却した年であっても、1月1日時点で所有している人に対して課税され、5月頃に納付書が届きます。
固定資産税は1年分であるため、不公平感が生じないよう、買主と売主が双方負担するのが一般的です。多くの場合、物件引渡し日から起算した日割り計算で負担割合を決めます。
マンション売却の注意点【不動産会社選び編】
売却活動を依頼する不動産会社選びに失敗し、その結果として希望額で売却できなかったり希望期日までに売却が間に合わなかったりするケースがあります。
【失敗例】相場よりも高い査定額の理由を聞かなかった
相場よりも高い査定額を提示してくれた不動産会社に依頼したにも関わらず、実際に売却した金額が査定額とは大きく異なるものだったというケースです。この失敗は「なぜその査定額を算出したのか」という理由を聞かなかった場合に起こりやすいと言えます。
【成功へのポイント】複数の不動産会社に査定依頼して見積もりを比較する
相場を把握しておくことの重要性は先述の通りですが、不動産の売買に慣れていないと、自分で調べた相場が正しいのか判断がつきにくいもの。
そのような場合、査定を依頼する不動産会社が1社だけであれば、その1社の査定額だけを見て「プロが言うのだからこちらが正しいだろう」と判断してしまうかもしれません。
しかし、その査定額は必ずしも適正価格であるとは限りません。複数の不動産会社に査定を依頼し、平均的な査定額を把握することが大切です。
相場や複数の不動産会社が出した査定額からかけ離れた、高額な査定額を提示された場合は注意が必要です。
実際にはその査定額で営業するノウハウがないにもかかわらず、高額査定をすることで契約を獲得し、手数料を得ようとする不動産会社がないとは言えません。
高額な査定額が出たときは、その査定額を出した理由を尋ねでみましょう。その内容に納得できれば依頼してみても構いませんが、言葉を濁されるなど怪しいところがある場合は、契約獲得目的の可能性を鑑みて避けましょう。
さらに不安なときはほかの不動産会社に、その高額な査定額で売却できる可能性があるのかどうか質問してみましょう。
【失敗例】不動産会社に実情を話せず後悔する結果に
「すぐにでも売却して住宅ローンを完済したい」「次の物件を購入するために最低限欲しい金額がある」といった事情を伝えないまま不動産会社に依頼してしまったというケースです。
この場合、本来の希望とは異なる期間の延長や値下げ交渉の受入れを求められる可能性が出てきます。
【成功へのポイント】営業担当者に詳細を打ち明ける
住宅ローンの返済遅滞による売却など、第三者に打ち明けづらい事情を抱えていることもあるかもしれませんが、依頼する不動産会社の営業担当者に詳細な事情を話しておかなければ、理想的な売却にはつながりません。
事情を打ち明けることで、いつまでにいくら必要なのか、どこまで妥協できてどこからが妥協できないかを不動産会社と共有しましょう。
なお、このような事情をしっかり考慮し、親身に相談に乗ってくれる担当者かどうかも不動産会社選びの重要なポイントです。
マンション売却の注意点【売却活動編】
売却活動は不動産会社がメインでおこないますが、売主がみずからできることもあり、それを怠ると最悪の場合、売却上手くいかない可能性もあります。
【失敗例】買主候補は現れるのに契約につながらない
依頼した不動産会社が優秀で、続々と買主候補を連れてきてくれるのに、売買契約には至らないというケースです。特に居住中のマンションを売り出す場合は、この事態に陥りやすいと言えます。
【成功へのポイント】室内の掃除をできる限りおこなう
買主候補が室内の様子を知るおもな機会は内見です。そのときの第一印象が購入を決定するかどうかに大きく関わります。
特に風呂やキッチンといった水周りの清潔感は重要です。カビや水垢、油汚れを取り除いておくことはもちろん、できるだけ生活感を出さないようにしましょう。
【成功へのポイント】アピールポイントを事前に考えておく
実際に住んでいたからこそわかるアピールポイントを用意しておき、内見に訪れた買主候補に説明できるのが理想です。具体的なアピールポイントは次のようなものが挙げられます。
- 角部屋で日当たりがよい
- エレベーターや階段から遠く、静か
- 見晴らしや風通しがよい
- 近隣のスーパーや商店街の品ぞろえが充実している
- 最寄り駅まで近く、坂や階段がない
- 学校や図書館といった教育施設がほどよい距離にある
- 24時間利用できるゴミ捨て場がある
- 収納が充実している
- 夜遅くまで開いている飲食店が多く外食に困らない
買主候補の人物像に合わせて話す内容を変えるというのも重要です。例えば、子供のいるファミリー層に対しては学校や公園の近さ、仕事中心の単身者には24時間利用できるゴミ捨て場や近隣の飲食店の情報が魅力的に映るでしょう。
【失敗例】売却希望日を超えても売れない
住宅ローンの返済期限や次の物件の決済日が近づいているのに、売れる気配がないというケースです。
現金化を急ぐあまり売り出し価格の値下げをしたり、売ることを諦めてしまったりと、当初の予定とは大きく異なる結果になりかねません。
【成功へのポイント】売却までの期間を3ヵ月は確保する
マンションに限らず、不動産売却は一般的に次のような期間を要します。
- 不動産査定~不動産会社との媒介契約:約1~4週間
- 売却活動~売買契約:約1~3ヵ月
- 手付金の受領~決済・物件引渡し:約1~2ヵ月
順調に進んでも約3ヵ月はかかります。事前準備や不動産会社選びが難航する場合の期間も含めると、4ヵ月~6ヵ月は確保しておきたいところです。
【成功へのポイント】「囲い込み」を疑う
売却活動期間を十分に確保しており、なおかつ相場から少し安い金額で売り出しているにも関わらず売れないといった場合には、不動産会社が「囲い込み」を行っている可能性も考えられます。
囲い込みは、不動産会社が売主と買主の双方から手数料を得るために、ほかの不動産会社が紹介する買主候補とのアポイントを勝手に断ってしまうというものです。
囲い込みが行われているかどうかを判断したいときは、ほかの不動産会社に相談してみましょう。不動産会社間で物件情報を共有する「レインズ」というサイトを見てもらえればわかる可能性があります。
囲い込みが行われている場合には、物件登録情報に間取りが掲載されていなかったり、取引情報が「公開中」になっていなかったりします。
また、買主候補が現れていないのに「商談中」という回答がある場合も囲い込みが行われていると判断してよいでしょう。
最大6社にまとめて査定依頼
査定依頼してみる完全無料マンション売却の注意点【決済と物件引渡し編】
買主が無事に現れて売買契約も完了し、あとは残金の受領と物件引渡しだけという段階に来ても、失敗するリスクは残されています。最後まで気を抜かずに準備を進めましょう。
【失敗例】住宅ローンに関する抵当権を抹消できなかった
マンションの住宅ローンが残っており、売却代金で完済するという場合、売買契約段階ではまだ物件に対して金融機関の抵当権が設定されています。
これ自体は問題ありませんが、一般的には抵当権がついている物件をそのまま売却することは難しいため、売買成立の条件として抵当権を抹消することが売買契約書に盛り込まれます。
つまり、この抵当権を抹消できないと、物件引渡しの段階になってから契約が白紙に戻されるリスクがあるということです。
【成功へのポイント】住宅ローンの金融機関には事前に話を通しておく
決済と物件引渡しは同日中に行われることが一般的です。そのため、売却代金を受領して、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する手続きを同時に行わなければなりません。
この迅速な対応を実行するには、決済から住宅ローンの完済、抵当権の抹消手続きの準備までを、住宅ローンを借りている金融機関の個室スペースでおこなう必要があります。
事前に金融機関へ相談し、日程を調整しましょう。買主へ物件の所有権を移転する登記や抵当権抹消登記の必要もあるため、司法書士に同席を依頼しておくことも大切です。
マンション売却時の注意点を知って準備しておこう
マンション売却における失敗例をもとに、成功へのポイントを解説してきました。失敗例だけを見れば不安になるかもしれませんが、いずれも準備さえしておけば回避できるものばかりです。
まずは相場を把握し、その情報をもとに信頼できる不動産会社を選びましょう。困ったときに相談しやすい担当者であれば、売却活動をスムーズに進められます。
また、室内の清掃や内見時にアピールできるポイントのリストアップ、契約に必要な書類の準備など買主主体で進める準備もしっかり進めましょう。