任意売却と競売の違いとは?どちらがお得か徹底比較
「任意売却」と「競売」はいずれも、住宅ローンの滞納または返済不能が起きた時に、家の売却対価を残債に充てる方法です。任意売却は銀行等との話し合いで有利に進める余地があるのに対し、競売は債務者(=家の持ち主)に有利となるような配慮はほとんどありません。
本記事では、任意売却と競売の違いを9つの項目で比較していきます。
- 任意売却と競売の売却方法
- 任意売却と競売の違い
- 任意売却と競売のどちらを選ぶとよいか
任意売却と競売はそれぞれどんな売却方法?
任意売却と競売とはどのような売却方法なのか、以下の表で見てみましょう。
任意売却とは | 競売とは |
---|---|
住宅ローンを滞納しているなど、住宅ローンの支払いに困難な人が、借入先の金融機関の同意を得て、その住宅を売ること | 借入先の金融機関が裁判所に申し立て、強制的に住宅ローンを滞納している人の住宅を売却すること |
任意売却は住宅所有者の主導で進められますが、競売の場合は強制的に売却の手続きが進みます。
金融機関に何の相談もせずローンの滞納を続けると、住宅が差し押さえられ、競売にかけられます。競売にかけられるのは、住宅ローンを滞納してから10~14ヵ月ほどです。競売を止めるには、それまでに任意売却などで売却しないといけません。
ただし任意売却を進めるためには、まずは金融機関の同意を得て、住宅につけられた抵当権を外してもらう必要があります。
任意売却について詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。
任意売却と競売の違い
任意売却と競売では、手続きの進め方やルールにさまざまな違いがあります。以下の表は、両者の違いを9つの項目別で簡潔にまとめたものです。
項目 | 任意売却 | 競売 |
---|---|---|
売却の意思 | 借入先の金融機関との協議は必要だが、売却活動は住宅所有者の意思で可能 | 住宅所有者の意思は関係なく、強制的に売却が進む |
プライバシー | 通常の売却と変わらないため、事情は知られない | 官報や競売物件情報サイトを通じて周囲に知られる可能性がある |
売却価格 | 市場価格に近い価格 | 市場価格の50%~70%程度 |
売却後の残債の額 | 競売よりも少ない | 任意売却よりも多く残る |
残債の返済方法 | 分割も可能 | 一括返済を求められる |
引越し日 | 住宅の買主と、借入先の金融機関との協議のうえ決定 | 落札者が入金するまで |
引越し費用 (売却代金からの融通) | 交渉による | 不可 |
売却費用の自己負担 | 不要(売却代金のなかから支払いできるため) | 引越し費用など一部必要(そのほかの諸費用は、任意売却と同様に売却代金から支払いが可能) |
売却のサポート | あり | なし |
ここからは、それぞれの項目について詳しく解説していきます。
売却の意思
任意売却では、借入先の金融機関から合意を得る必要はありますが、売値や売却活動、引っ越し日など、住宅所有者の希望のもとに進めることが可能です。購入者と売却日や引っ越し日のスケジュールを調整できるので、競売に比べるとはるかに融通がききます。
一方、競売では裁判所の指示のもと進められるため、すべての手続きが強制的に執行されます。売り出し価格、売買が成立する日など、家を売るときの条件の一切が裁判手続で決まってしまいます。
プライバシー
任意売却の販売活動は、通常の不動産売却と変わらないため、住所や所有者の情報は伏せて行われます。内覧の様子を目撃されて近隣に知れる可能性は残されていますが、住宅売却を通じてローンの整理に入ることを周囲に知られる可能性は低いと言えます。
一方の競売は、競売物件として裁判所のホームページなど、インターネット上に掲載されます。そのうえ、裁判所の執行官や落札目的の不動産会社の人が物件の調査に訪れるため、経済的な事情を周囲に知られてしまう可能性はあります。なかには配慮のない人が自宅周辺の調査に来て、日常生活を乱される場合もあります。
売却価格
任意売却は、競売の開札期日までという期限はあるものの、一般的な不動産の売却方法と同じように時間をかけて販促活動を行い、よりよい条件で購入してくれる人を探せます。そのため任意売却では、市場価格に近い金額での売却が可能です。
一方の競売は売却基準価格が低く、また購入者のリスクを考慮するため、市場価格よりも50%から70%程度の金額で取引されます。購入者のリスクとは例えば、内覧ができない点や、立ち退きトラブルの起こる可能性などです。
住宅ローンの返済が難しい場合、売買成立時の価格は高くなるほど有利です。対価を残債により多く充当できることで、毎月の収入から返済すべき額が減ります。このような観点で、競売より任意売却のほうが債務者にとってのメリットが大きいと言えます。
売却後の残債の額
「住宅を売却できればローン返済がなくなる」と誤解する人もいますが、住宅をローン残高よりも高く売却できなければ、残債の返済義務は残ります。
とはいえ、任意売却のほうが競売よりも高額で売却できるため、残債の額を大きく減らすことができます。
残債の返済方法
任意売却後に残った残債の返済は、基本的に分割での支払いが許可されます。返済額の相場は、債務者の今後の収入の見込みなどが考慮されますが、月々5,000円~30,000円程度となるのが一般的です。具体的な返済計画は個別相談となりますが、原則的には5年以内に完済できるのが理想的とされます。
競売では残債の一括返済が求められ、分割での支払いをお願いしても断られる可能性が高いです。支払いができない場合には、給与の差し押さえなどにより強制的に返済を迫られ、それでも支払いが難しい人は自己破産します。
しかし、自己破産をして残債の負担が無くなるのは債務者だけです。連帯保証人がいる場合は、連帯保証人に支払い責任が移ってしまうため、安易に自己破産もできません。
引越し日
任意売却では、借入先の金融機関と買主との相談のもと、任意で引っ越し日を決めることができます。売却日や引っ越しの日程を合意できる限り自由に設定できるため、引っ越し先を確保できるまで待ってもらうなどの相談が可能です。
競売では、落札者が入金した日に住宅の所有権が移るため、引っ越し先が確保できていなくても、住宅から出ていかなければなりません。引っ越しを拒否して居続けると、落札者に立ち退きを迫られ、最悪の場合は強制執行されます。
引越し費用(売却代金からの融通)
賃貸住宅に引っ越すには敷金・礼金、仲介手数料などがかかります。地域によって違うものの、賃料の3ヶ月分~半年分ほどのまとまった金額が必要です。
任意売却の場合、交渉によって引っ越し費用を売却代金の中から融通してもらえることが多いです。その金額は一般的に20~30万円程度です。金融機関によって引っ越し費用に含まれる内容は異なるため、確認しましょう。
競売には、引っ越し費用を融通してくれる制度はありません。競売によって得たお金はすべて住宅ローンの返済に充てられるため、引っ越し費用は自身で別途用意する必要があります。
売却に係る諸費用の用意
任意売却と競売のどちらも、売却に関わる諸費用は売却代金から支払い可能です。競売では、先に裁判所に納める費用は金融機関が立て替え、売却後に請求されます。
売却にかかる諸費用は、以下の表をご覧ください。
任意売却 | 競売 |
---|---|
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競売は、売却に関わる諸費用の総額が100万円を超えることも珍しくありません。とくに費用で高額なのは「予納金」です。予納金は、競売物件の管轄や住宅ローン残高などによって金額が変わります。東京地裁本庁の管轄を例に挙げると、住宅ローン残高が2,000万円未満の場合には80万円が必要です。
売却のサポート
競売は、期日を迎えてしまえば強制的に執行され、売却価格も裁判所に決められるなど、裁判所の指示通りにしか動けません。
任意売却では、売却活動や手続きを不動産会社へ依頼できるため、プロのサポートを受けながら進められます。頼れるプロの存在は、競売に比べて精神的な負担も減らしてくれるでしょう。
ただ任意売却では、通常の不動産売買とは違う法律の知識が必要になるうえ、金融機関との交渉もしなければなりません。依頼する不動産会社の選定を間違えば、売却できずに競売の期日を迎えてしまうこともあり、注意が必要です。
どこに依頼するかはとても重要で、どのように任意売却の相談先を選ぶとよいかについては、以下の記事を参考にしてみてください。
不動産売却は任意売却と競売どちらがお得なのか
任意売却のほうが高く売れる可能性は高く、競売と比べて有利な点が多くあります。残債を大きく減らせるうえに、引っ越し費用の目処も立つことが多く、金銭面での負担を軽くできるところがポイントです。
また、不動産会社に相談できるため、精神的負担も任意売却のほうが軽いでしょう。任意売却にもいくつかのデメリットはありますが、それらを踏まえても競売より任意売却を選ぶのがおすすめです。
競売よりもメリットの多い任意売却ですが、デメリットもきちんと知っておく必要があります。任意売却のデメリットについては、以下の記事を参考にしてみてください。
マイホームが選択の余地なく競売にかけられてしまうのは「住宅ローン以外にも多額の債務がある」「複数の債権者に対して約束通りの返済ができていない」などのケースです。毎月の住宅費の負担が重くなっただけのケースでは、とりあえず任意売却から検討すると良いでしょう。
任意売却と競売の違い【まとめ】
競売よりも任意売却のほうが、金銭面でも精神面でもメリットの多いことがわかりました。
ただし、任意売却はどの不動産会社に依頼するかで成否が決まるので、信頼できる不動産会社を探す必要があります。信頼できる不動産会社かを判断する材料の一つは、提示された査定額をチェックすることです。
査定額が極端に高い、もしくは低い場合は信憑性にかけるため、その会社は怪しいと判断できます。怪しさに気付けるようになるためには、自分で売却相場のリサーチと、複数社に査定依頼をして価格の見比べをするとよいでしょう。
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査定依頼してみる完全無料任意売却は金融機関を交えた手続きとなり、より多くの取引実績を持つ不動産会社でないと対応できない分野です。競売までの猶予を考えて、依頼先にはテキパキと動いてもらう必要もあるでしょう。規模の大きい、信頼できる会社に任せるのが大切です。
競売(けいばい)とは「住宅ローンを契約した銀行などが有する抵当権」に基づいて行われる強制的な手続きです。どうしても返済してくれないから、話し合うまでもなく家を売って回収するわけです。したがって、家の持ち主の意思はほとんど反映されません。