任意売却とは?利用する条件や注意点、ポイントを解説

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通常、住宅ローンを完済していなければ、その家を売却することはできません。しかし、会社の倒産や離婚など、さまざまな理由によって支払いが困難になった場合には、完済途中でも住宅を売却できる方法があり、これを任意売却と言います。

返済が困難となった場合の救済策にはなりますが、利用するには条件があり、デメリットも伴います。

そこで本記事では任意売却の基本や、利用する条件、メリット・デメリット、そして成功のポイントまでを詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 任意売却の概要
  • 任意売却を行うメリット・デメリット
  • 任意売却ができないケース
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【執筆】松元 健太郎 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。 不動産会社退職後、不動産ライターとして独立。不動産実務の経験と知識を活かしながらライターとして活動中。 法人で不動産賃貸経営も行い、不動産の現場で得た経験をもとにした原稿執筆を行う。 https://xn--lsv228akxb.com/

任意売却とは

任意売却とは

まずは、任意売却とは何か、一般的な不動産売却や競売とはどう違うのかといった点ついて解説します。

住宅ローンが残っている状態で住宅を売却する方法

任意売却とは、住宅ローン返済が困難になった際の救済策として、金融機関の同意のもと住宅を売却する手法です。一般的に、住宅ローンの残債が不動産の売却価格よりも高くなる場合に利用されます。

通常、住宅を売るには住宅ローンを完済し、抵当権を外してもらわなければいけません。抵当権とは、住宅ローンの支払いが滞ったときに、その住宅を強制的に競売にかけ、貸したお金を回収する金融機関の権利のことをいいます。

しかし任意売却では、住宅ローンを完済していない状況の方が、債権者に抵当権を外すことをお願いします。抵当権を外してもらうことで住宅を売却でき、売却によって得た資金を住宅ローンの返済資金に充てるというわけです。

【監修者コメント】
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住宅ローンは長期間にわたる返済が必要となるため、会社の倒産や急な病気、離婚などの予期せぬ出来事により、収入が減少すると返済が困難になる可能性があります。契約時には考えられないような事態も、長い返済期間中には発生するかもしれません。

一般的な不動産売却や競売との違い

任意売却と比較されやすい、通常の不動産売却、競売の2つの売却方法との違いを解説します。

任意売却は、住宅ローンの返済が困難な際に、金融機関との協議のもと進める売却手法です。通常の不動産売却は、所有者が市場に物件を出す標準的な方法です。競売は、債務不履行が生じたときに、金融機関や裁判所が強制的に実施する売却方法となります。

下表は、それぞれの違いをまとめたものです。

主な比較項目 任意売却 一般的な不動産売却 競売
売却の許可 必要 不要 - (裁判所による強制執行のため)
売却価格 市場価格に近い価格 市場価格 市場価格の50~70%程度
住宅ローンの残債 基本的に残る 残らない 基本的に残る
プライバシー 守られる 守られる 守られない

任意売却では、物件情報のみが公開され、売却者の金銭的背景は非公開となります。これは、通常の不動産売却と同じです。

一方の競売は、競売物件として情報が公開されるため、金銭的背景が第三者に知られるリスクが増します。また、競売物件の売却価格は市場の50~70%程度とかなり低い金額で取引されるため、住宅ローンの返済に充てられる額が少なくなります。

売却方法を選ぶ際は、各方法の特徴と自身の状況を考慮し、適切な選択を心がけましょう

任意売却と競売の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

任意売却を行うメリット・デメリット

任意売却は、住宅ローンの返済が難しくなった場合の救済措置です。ここでは、任意売却のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

任意売却を行うメリットはいくつもありますが、ここでは競売と比較した際のメリットについて解説します。

  • 借入先の金融機関と相談しつつ、自分の希望を反映できる(売却価格や引越し日など)
  • 市場価格に近い金額で売却ができる可能性が高い
  • 金銭的事情を知り合いに知られずに売却できる
  • 引越し費用を売却代金の中から融通してもらえる
  • 残債を、無理のない範囲で分割返済できる
  • リースバックを組み合わせることで、売ったあとも今の住宅に住み続けられる

任意売却は、金融機関との協議のもと、自分の希望を反映させることができます。これにより、売却価格や引越し日、引っ越し費用などを調整することができます。市場価格に近い金額での売却が見込まれるため、収益の最大化が期待できます。

さらに、リースバックを利用すれば、売却後も現住所に住み続けることができます。リースバックは、自宅を売却して売却代金を得たのち、買主と賃貸借契約を結んで家賃を支払い、引き続き自宅に住み続ける方法です。住宅ローンの返済資金を得られるだけでなく、引越し費用や固定資産税などの維持費が浮くといったメリットがあります。

デメリット

一般的な不動産売却と比較して、任意売却には以下のようなデメリットがあります。

  • 任意売却を扱い、得意としている不動産会社を探す必要がある
  • 精神的な負担や手間ががかかる
  • 信用情報に記録されてしまう(任意売却が理由ではなく、滞納により)
  • ローンが残った場合は支払いが必要
  • そもそも任意売却できる条件を満たせないケースも多い
  • 売れなければ競売にかけられてしまう

すべての不動産会社が任意売却の経験やノウハウを持っているわけではありません。任意売却に関する知識や経験が十分でない不動産会社に依頼すると、希望価格での売却が難しく、売れなければ競売になるリスクも増えます。

そのため、任意売却を得意とする不動産会社の選定は必須です。また、任意売却の手続きは手間がかかることが多く、金融機関との交渉や必要書類の準備など、多くのステップを踏む必要があります。

これらのデメリットを十分に理解し、適切な売却方法を選ぶことが重要です。任意売却のデメリットについて以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

任意売却を利用する条件

任意売却は、希望すれば誰でも許可されるわけではありません。住宅ローンを完済していない状況で抵当権を外せば、金融機関は無担保で住宅ローンを貸している状態になり、貸したお金の未回収リスクが高まるためです。

このため、金融機関は借り手の状況を総合的に評価し、任意売却の許可を下します。任意売却を利用するための主な条件は以下のとおりです。

  • 住宅ローンを滞納していること
  • 連帯保証人や共同名義人からの同意を得ていること
  • 税金などの滞納によって、国や自治体に差し押さえられていないこと
  • 住宅の所有者自らが任意売却の手続きを行うこと

それぞれ見ていきましょう。

住宅ローンを滞納していること

任意売却は住宅ローンの支払いが困難な人を対象として、貸したお金を回収するための措置です。そのため、住宅ローンを滞納していない人は「支払いが困難である」と認められない可能性が大きいでしょう。

ただし、将来支払いが難しくなることを説明するなどし、交渉に同意さえしてくれれば滞納していない場合でも任意売却を行えます。将来的な返済困難を明確に伝え、金融機関との信頼関係を構築することで、滞納前でも任意売却の適用が考えられます。その際は、具体的な状況の共有と交渉力が必要です。

連帯保証人や共同名義人からの同意を得ていること

任意売却を行う際には、連帯保証人や共同名義人の同意が必須です。離婚相手など、関係性が決裂している場合でも同意を得ることは避けられません。

対話が難しい場合は、不動産会社を介して手続きを進めることがおすすめです。専門家が中立的に双方の意向をまとめ、円滑な売却をサポートします。

税金などの滞納によって、国や自治体に差し押さえられていないこと

固定資産税や所得税を滞納していると、国や自治体によって住宅が差し押さえられることがあります。差し押さえられている状態では任意売却を進められないため、まずは滞納した税金の完済が必要です。

完済が困難な場合は国や自治体と交渉し、支払い計画を再編成するなどの対応が求められます。

住宅の所有者自らが任意売却の手続きを行うこと

任意売却の手続きは通常、所有者本人が行います。ただし、病気やケガといったやむを得ない場合に限り司法書士に依頼することが可能です。

また、所有者が認知症等で判断能力が不足している場合は、成年後見制度による代理人申請によって代わりに手続きを行えます。これらの特例を除き、本人の直接手続きが基本となります。

よくある任意売却ができないケース

任意売却の可否には、上述した利用条件だけではなく、債務者の経済的状況、住宅ローンの残高、不動産市場の動向など、さまざまな要因が影響します。

よくある任意売却ができない主なケースとしては、以下のようなものがあります。

  • 借入先の金融機関が任意売却を認めない場合
  • ローンを借りてから日が浅い場合
  • 住宅ローン残高が多い場合
  • 競売までの期日が迫っている場合
  • 売却活動を十分に行えない場合
  • 買い手が見つからない場合

任意売却をするためには、金融機関の合意が必要不可欠ですが、なかには任意売却を認めない方針の金融機関もあります。しかし、そのようなケースでも、交渉次第では認められる可能性もゼロではありません。任意売却を得意とする不動産会社に依頼すると交渉が有利に働きやすいでしょう。

また、高額な住宅ローン残高、競売の期日が迫る状況、十分な売却活動が行えないこと、そして買い手が見つからない場合なども、任意売却ができない要因となります。

以下の記事では、任意売却ができないケースについて、より詳しく解説しています。

任意売却の流れ

任意売却を実施する際には、全体の流れを理解し、適切なタイミングと手順で進めることが成功へのカギとなります。

以下に、任意売却の手続きの流れをまとめました。

任意売却の流れ

住宅ローンの滞納が始まると、3~6ヵ月で催促状が届き、その後一括返済を求められます。大抵の場合は一括返済は難しく、保証会社が支払いを代行します。その後、保証会社が債務者に対して請求を行い、これを放置すると競売の手続きが始まります。

競売を避けるには、一括で返済するか任意売却かの2択になるため、まずは住宅ローン残高と住宅の査定額を調べ、一括返済が可能かを判断します。住宅ローン残高よりも査定額が低い場合は任意売却せざるを得ないため、任意売却を得意とする不動産会社に相談を行い、売却に向けて動いていきましょう

なお、競売までの期日が短い場合など、任意売却を急ぐ場合は、2・3のステップを省き、すぐに不動産会社に相談を行ってください。

任意売却を行う際のポイント

ここでは、任意売却を成功させるための2つのポイントを紹介します。

できる限り早く手続きを進める

任意売却は、競売の開札日前日までというタイムリミットがあります。この期限を過ぎると住宅は強制的に競売に出されてしまいます。

実際、ローン滞納から開札日までの期間は平均10~14ヵ月程度と言われています。しかし、適切な相談や手続きには時間がかかるため、滞納開始から5~8ヵ月の間に、実績豊富な不動産会社に相談するようにしましょう。

【監修者コメント】
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競売の入札期間が終わり、開札してしまうと任意売却はできません。任意売却は、活動期間が長ければ長いほど、有利な条件での売却ができます。なるべく早くから手続きを進めることがポイントです。

任意売却の実績豊富な不動産会社を選ぶ

任意売却は、通常の不動産売却とは異なる特別な手続きが求められます。とくに金融機関との交渉は欠かせません。そのため、任意売却の手続きに詳しい不動産会社を選ぶことが大切です。適切な会社を選定することで、売却価格や期限、交渉の進行がスムーズになります。

不動産会社を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。

  • 問い合わせの回答が丁寧かつスピーディーか
  • 実績が豊富であるか
  • 売却後の相談にも乗ってくれるか
  • 法律の専門家と提携しているか
  • 交渉力があるか
  • 任意売却以外の提案もしてくれるか

任意売却は、金融機関との交渉や物件査定、売却までを、限られた時間内で行う必要があるため、迅速な対応と専門知識が求められます。このため、任意売却に強い不動産会社の選定は、成功のための重要なステップとなります。

任意売却の相談については以下の記事で詳しく解説しています。

任意売却の基礎知識【まとめ】

任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった際に、金融機関の合意のもとで住宅を売却する方法です。通常、ローン残高が物件価格を上回るケースで検討されます。

まずは任意売却をする必要があるのかを知るために、査定依頼を行いましょう。査定額が住宅ローン残高よりも高い場合には、任意売却ではなく通常の不動産売却が可能です。

査定依頼を行う際には、一括査定サイトの活用がおすすめです。一度の入力で数社の不動産会社に査定を依頼でき、時間と手間を省けます。

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【監修者コメント】
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競売は裁判所の権限により強制的に不動産を処分するため、所有者の意思とは無関係に売却が進められてしまいます。一方、任意売却は所有者の意思をくみ取って売却することが可能です。もし、住宅ローンの返済に困ったらまずは債権者である金融機関に相談しましょう。

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