両手取引とは?片手取引との違いや、問題となる囲い込みについて解説
不動産売買では、仲介の際に片手取引のほかに両手取引と呼ばれる手法があります。不動産業者が両手取引にしようとすることよって売主が不利益を被る可能性があるため、これから不動産の売却を検討している場合は予め内容を理解しておくと安心です。
この記事では、不動産業者の両手取引についてわかりやすく解説します。片手取引との違いや問題点も併せて解説するので、不動産の売却を検討している人はぜひ役立ててください。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
両手取引とは
不動産売買では、仲介の際に「両手取引」と「片手取引」と呼ばれる2種類の仲介方法があります。ここでは、不動産業者が行う両手取引を詳しく解説します。
不動産業者が売主と買主の両方と取引きするのが「両手取引」
両手取引は、不動産業者が売主と買主の両方と仲介契約を結んで取引きすることです。
不動産業者は、両手取引で売買契約が成立すると売主や買主から仲介手数料と呼ばれる報酬を受け取ります。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められおり、400万円を超える売買代金の仲介手数料の計算は、【売買代金×3%+60,000円+消費税】で求めることが可能です。
例えば、売買代金が2,500万円の場合、仲介手数料の金額は89万1,000円になります。
不動産売買で不動産業者が両手取引にしようとする理由は、売主と買主の両方から仲介手数料が得られれば利益が2倍になるからです。先ほどの例を使うと、両手取引の場合の不動産会社の報酬は172万2,000円となります。
片手取引との違い
片手取引は、不動産業者が売主と買主のどちらか一方と仲介契約を結んで取引きすることです。
片手取引で不動産業者が受け取る仲介手数料は、売主または買主のいずれかからだけになるため、利益は両手取引の半分になります。
しかし、片手取引は売主にとって大きなメリットがあります。それは、売主が仲介を依頼した不動産業者以外でも幅広く買主を探せる点です。また、不動産業者が売主の利益を優先して行動してくれるため、不本意な値下げ交渉が起きにくくなります。
両手取引の問題点について
両手取引の手法自体は違法ではないため、禁止されていません。しかし両手取引は、不動産業者による囲い込みと呼ばれる違法行為で売主が不利益を被る可能性があります。宅建業法では囲い込みも違法ではありませんが、レインズでは囲い込みを禁止しています。
ここでは両手取引で問題となる囲い込みをわかりやすく解説します。不利益を被らないためにも、両手取引の問題点について予め理解を深めておきましょう。
両手取引だと囲い込みをされやすい
囲い込みとは、不動産業者が自社の利益を優先するために、売主が売り出している物件をほかの不動産業者を介して取引きできないようにする行為です。
自社で買主を見つけるまで売買契約に進めないため、売主にとっては売却までの期間が長くなる可能性があります。
囲い込みに対して不安がある場合は、不動産業者と結ぶ媒介契約の種類の気をつけるとよいでしょう。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
このうち一般媒介契約は唯一複数の不動産業者と契約できるため、特定の業者による囲い込みを防ぐことが可能です。
双方の利益を追求できない問題点がある
不動産売買では売主はできるだけ高く売ることを望み、買主はできるだけ安く買うことを望むため、売主と買主との利益が相反します。
片手取引は依頼された側だけの希望を優先して動けるため、売主または買主の利益の追求が可能です。
両手取引ではひとつの不動産業者が売主と買主の両方を担当するため、売主と買主の両方の利益を追求することが難しくなります。
売主が不利益を被りやすい
両手取引は不動産業者にとってのメリットはありますが、売主は不利益を被りやすい行為です。
なぜなら、不動産業者は両手取引を狙って自社で買主を見つけることを優先するからです。そのため、両手取引は不動産業者の都合で買主を逃したり、値下げ交渉されたりと売主にとって不利に働くことがあります。
買主に影響がある場合も
両手取引は、売主だけでなく買主にも悪影響を及ぼす可能性があります。
買主が両手取引を狙っている不動産業者で物件探しを依頼しても、自社が担当している物件しか紹介してもらえません。
例えば、買主の希望に沿った物件が同じエリアに10件あった場合でも、囲い込みしている不動産業者で扱っている物件しか紹介してもらえないため、ほかにも同条件の物件があることを知らないまま契約してしまうケースがあります。
一方で、買主にとって両手取引が有利に働くこともあります。不動産業者が両手取引で売買契約を成立させるために、買主の希望を優先させることがあるからです。
しかし、特定の不動産業者が扱っている限られた数から希望に沿った物件が見つかるとは限らないため、両手取引は買主にとってもデメリットが大きいと言えるでしょう。
両手取引はメリットもある
両手取引は、囲い込みに遭うリスクや買主が見つかりにくくなるなどのデメリットが大きい手法です。
その一方で、両手取引が売主にもたらすメリットもいくつかあります。ここでは、両手取引のメリットを3つ解説します。
交渉がスムーズに進みやすい
両手取引は売主と買主を仲介する不動産業者が1社なので、連絡に時間がかからず伝達間違いが生じにくい点がメリットです。売主と買主を仲介する不動産業者が同じなので、窓口を一本化できるからです。
一方の片手取引は売主と買主が依頼する不動産業者が異なるため、連絡のやり取りだけでも両手取引に比べて時間がかかってしまいます。
不動産売買では、買主から値引き交渉を求められるケースがほとんどです。売主と買主が依頼する不動産業者が異なる場合は、交渉がなかなかまとまらない可能性があります。しかし、両手取引ではひとつの不動産業者が売主と買主の希望を把握しているため、スムーズな交渉が期待できます。
買主が早く見つかることもある
両手取引は、片手取引よりも買主が早く見つかることがあります。不動産業者は、自社の購入希望者リストから適した買主候補を探すことが可能だからです。
不動産業者は売主と買主の両方の希望を把握しているため、適した買主が見つかり次第、売買契約までスムーズに進められます。
ただし、リストアップされている購入希望者の数は不動産業者ごとに異なります。そのため、仲介を依頼する不動産業者は、実績や取り扱い件数なども比較して選びましょう。
仲介手数料が値引きされることがある
仲介手数料の上限額は最大で売買代金の3%+60,000円+消費税なので、売主にとっては負担が大きい費用になります。宅地建物取引業法では報酬の上限が定められているものの、上限いっぱいの報酬を支払うケースがほとんどです。
しかし、両手取引では仲介手数料が値引きされることがあります。なぜなら、両手取引の場合、不動産業者は売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れるからです。
両手取引で受け取れる仲介手数料の金額は片手取引きの2倍になるため、交渉次第では値引きしてもらえる可能性も高いでしょう。値引きのタイミングは「不動産売却で仲介手数料の値引き交渉は可能?交渉のコツとタイミング」で詳しく解説しています。
両手取引では仲介業者は、双方納得する金額での成約を目指します。つまり、売主買主どちらかの言い分だけ聞くということはありません。また、仲介業者もたいへん慎重に交渉を進めます。まずは信用できる仲介業者の担当を見つけることが大切です。
自身の契約は大丈夫?囲い込みの見分け方
不動産売買の知識が乏しい場合、知らぬ間に囲い込みに遭うリスクがあります。しかし、自身で囲い込みに遭っているかどうかを見分けることが可能です。
ここでは囲い込みの見分け方を2つ解説するので、両手取引で不動産の売却を検討している場合はぜひ役立ててください。
レインズへの登録証明書をもらう
囲い込みに遭っているかどうかは、レインズへの登録証明書で確認できます。レインズとは、不動産業者が閲覧できる物件情報システムです。不動産を売り出すときにレインズに登録すると、全国の不動産業者に物件情報を周知できるので買主が見つかりやすくなります。
レインズへの登録義務があるのは、3種類ある媒介契約のうち専任媒介契約と専属専任媒介契約です。専任媒介契約は契約から7日以内、専属専任媒介契約は5日以内での登録が義務づけられています。
レインズへの登録が完了すると、登録証明書と呼ばれる書類が発行されます。囲い込みに遭わないためにも、専任媒介や専属専任媒介契約で契約を締結した場合は、登録証明書は必ず受け取るようにしましょう。
一般媒介契約の場合、レインズへの登録は任意です。しかし、売主が不動産業者に依頼すれば登録してもらうことが可能です。
直接確認するか別の不動産会社に相談する
囲い込みに遭わないためには、複数の不動産業者と契約できる一般媒介契約を選ぶのも手段のひとつです。
専任媒介契約や専属専任媒介契約で囲い込み対策を講じる場合は、不動産業者に両手取引か片手取引かを直接確認してみるとよいでしょう。媒介契約を結んだ後に囲い込みが発覚した場合、不動産業者による背任行為として解除が可能です。
両手取引の際は囲い込みに注意
不動産売買では、両手取引をしているがケースが多いですが、不動産業者の都合で買主を逃す囲い込みに遭わないように注意が必要です。
囲い込みに遭った場合、希望する時期までの売却が叶わない可能性もあります。そのため、媒介契約を結ぶ前には希望する売却時期をきちんと伝えることが大切です。また、囲い込みが疑われる場合は、ほかの不動産業者にレインズへの登録状況を確認してもらうのもよいでしょう。
専任媒介契約と専属専任媒介契約の場合、契約できる不動産業者は1社に限られますが、ほかの不動産業者に相談すること自体は問題ありません。状況によっては、両手仲介で買主が早く見つかる場合や仲介手数料が値引きされる場合もあるため、囲い込み対策を講じて不動産の売却を成功させましょう。
レインズを見た他社の担当者が、囲い込みしている物件に問い合わせた場合、担当の営業マンは「商談中」「成約済み」といった理由でかわします。そのため、見破るのはなかなか難しいかもしれません。週ごとの媒介活動状況報告などについてしっかり状況を聞くなど、営業マンと密な関係を築くのが最も良いでしょう。
両手取引は違法ではありません。実際に仲介業者は、利益のためにまずは自社での両手仲介の成約を目指します。