不動産査定とは|2つの方法や依頼の流れ、注意点を紹介
不動産査定とは、売却したい不動産の売り出し価格を予想・算出することで、不動産会社などに依頼する方法が一般的です。
査定額は不動産会社や査定の方法によって大きく異なることがあるので、査定の基本的な流れを理解したうえで利用しましょう。
今回は、不動産査定の種類や算出方法、流れなど、不動産査定の基礎知識をわかりやすく解説します。査定額に差が出るケースなども紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 不動産査定とは何か
- 不動産査定の依頼先
- 不動産査定を利用する際に注意したいこと
【監修】松元 健太郎 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。 不動産会社退職後、不動産ライターとして独立。不動産実務の経験と知識を活かしながらライターとして活動中。 法人で不動産賃貸経営も行い、不動産の現場で得た経験をもとにした原稿執筆を行う。 https://xn--lsv228akxb.com/
不動産査定とは
不動産査定とは、売却したい不動産の売り出し価格を予想・算出することです。
不動産会社などに依頼する方法が一般的で、過去の取引履歴や不動産の状況、周辺環境といった状況を調査して、その物件がどれくらいで売却できそうなのかを算出してもらいます。
査定額はあくまでも目安で、不動産会社によって査定の基準も異なるため、結果に大きな差が出ることがあります。そのため、不動産査定をする際は、複数社に依頼して結果を比較することをおすすめします。また、査定結果が妥当かどうかを判断するために、売主自身も査定についてある程度の知識を持っておくことが大切です。
不動産査定の依頼はどこにすればいい?
不動産の査定は、不動産会社か不動産鑑定士に依頼します。
不動産会社に依頼する場合は、基本的に無料で依頼が可能です。査定は不動産会社にとって営業活動の一環であり、売買契約が成立したときに売主から成功報酬が支払われるためです。
不動産鑑定士に依頼した場合は、数万円~数十万円の費用がかかります。不動産鑑定士による査定は、遺産の相続時や裁判のための証拠として法的な書類が必要な際に依頼するものです。通常の不動産売却であれば、不動産会社に依頼して無料で査定してもらうのが一般的です。
不動産の売却を依頼する会社については、次の記事でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
不動産査定の種類
不動産の査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、どちらも無料で依頼できます。
ここでは、それぞれの査定方法について詳しく解説しますので、特徴や違いを確認しておきましょう。
机上査定
机上査定は、現地調査を行わず、物件情報などをもとに査定額を提示する方法です。
机上査定のメリットとデメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
手軽に売却価格がわかる 個人情報を開示しない匿名査定という方法もある |
訪問調査よりも査定の精度が下がる |
机上査定は手軽に査定を依頼できる反面、不動産会社ごとの査定額に差が出やすいため、複数の不動産会社に依頼して比較・検討しましょう。
不動産の売却を検討している段階であれば、個人情報の入力が不要の匿名査定もあります。匿名査定についてはこちらの記事をご覧ください。
訪問査定
訪問査定は、不動産会社の担当者が現地に出向き、物件の状況などを調査したうえで査定金額を出す方法です。
訪問査定のメリットとデメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
物件の状況を見てもらえるため精度の高い査定金額がわかる 実際に不動産会社の担当者と会って話せるため、その担当者の知識力や対応力を見ることができる |
訪問日の調整や書類の準備などの手間や時間がかかる |
訪問査定では、物件の情報や周辺環境などを不動産の担当者が目で見て調査するため、実際の売却価格に近い査定金額を算出してもらえます。また、担当者と直接会って話すことになるため、不動産会社の信頼性を判断する材料にもなるでしょう。
訪問査定のデメリットは、訪問日の調整や書類の準備などに手間や時間がかかることです。
不動産の売却を検討している段階では、おおよその金額を把握するために机上査定を利用し、売却を決めた段階で、より精度の高い訪問査定を利用するとよいでしょう。
次の記事では、不動産査定のデメリットを、より詳しく紹介しています。
不動産査定の仕方|査定額の算出方法
不動産の査定価格は、3か月以内に売却を目指すための「成約価格」になっています。査定価格を算出する方法には3種類あり、それぞれ次のような特徴があります。
■取引事例比較法
取引事例比較法は最も一般的な算出方法で、過去の売却事例から似通った物件をもとに査定額を算出する方法です。
売却予定の物件と似た状況の売却済み物件のデータを参考に、1㎡あたりの金額を算出して売却予定物件に当てはめて計算します。
■原価法
原価法は、再調達価格を築年数で原価修正し、査定額を算出する方法です。
再調達価格とは、査定する物件を同じ条件で建て直した場合の価格で、原価法には構造ごとに異なる「法定耐用年数」が決められています。
■収益還元法
収益還元法は賃貸アパートのような収益を出す物件に使われる算出方法で、「直接還元法」と「DCF法」の2種類の算出方法があります。
直接還元法では、収益から経費を引いて純収益を算出し、還元利回りで割って査定額を算出します。一方のDCF法は、物件の所有期間に得られる純収益と、その物件を現時点で売却した場合に得られる価格を合計し、現在価値に割り戻して査定額を算出する方法です。
【査定方法別】不動産査定の流れ
不動産の査定方法には机上査定と訪問査定の2種類があります。それぞれの査定の流れを知っておくことで事前準備が可能となり、売却までの段取りをスムーズに進められます。
机上査定の流れ
机上査定は、物件の情報を不動産会社に提供して査定額を算出してもらう方法です。
具体的な流れは次のとおりです。
1.個人情報や物件情報を査定サイトに入力する
2.査定額が即時表示されるか後日郵送で届く
机上査定の調査には、不動産会社の売却履歴や物件情報からAIが自動で査定額を出す方法と、担当者が査定する方法の2種類があります。
机上査定の流れを、もう少し詳しく見ていきましょう。
個人情報や物件情報を査定サイトに入力する
まずは、不動産一括査定サイトなど、査定依頼をするフォームに個人情報や物件情報を入力します。
依頼する際に必要な情報の一例は次のとおりです。
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- 電話番号
- 土地建物の面積
- 間取り
- 築年数
- 物件の現況(居住状況)
- 物件の名義
- 売却希望時期
- 売却理由
- 売却希望価格
- 住宅ローン残高
物件情報でわからない部分があれば、入力せずに項目を飛ばすこともできますが、詳細な物件情報があると査定の精度が上がります。そのため、物件情報がわかる資料を用意し、フォームをすべて入力することをおすすめします。
物件情報の入力が終わったら、査定依頼の申し込みを行います。
査定額が即時表示または後日届く
個人情報や物件情報を入力して査定依頼が完了したら、結果を確認します。
AI査定であれば結果が即時表示され、不動産会社の担当者が査定する場合は、後日メールや電話、郵送で結果が届くことがほとんどです。どちらの査定方法になるかは、依頼する不動産会社や査定サイトによって異なります。
机上査定の結果がわかったら金額や内容を比較し、気になる不動産会社に訪問査定を依頼するとよいでしょう。
訪問査定の流れ
訪問査定は机上査定のあとに行われるのが一般的で、具体的な流れは次のとおりです。
1.机上査定を依頼する
2.訪問査定を依頼する
3.現地調査を実施してもらう
4.後日、不動産会社から査定額が郵送かメールで届く
現地調査の所要時間は30分〜1時間程度です。訪問査定の各ステップを詳しく解説します。
机上査定を依頼する
まずは、一括査定サイトなどで机上調査を依頼しましょう。そのうえで、どの不動産会社に訪問調査を実施してもらうかを検討します。査定額や対応の仕方などから総合的に判断することが大切です。
訪問査定を複数社に依頼すると時間と手間がかかるため、机上査定の段階でいくつかの不動産会社に候補を絞っておくと、スムーズに次のステップへ進めます。
訪問査定を依頼する
机上査定の結果をもとに不動産会社を決めたら、実際に訪問査定を依頼します。
査定サイトから行う場合は、「訪問査定に進む」のような表示が出る場合もあります。また、不動産会社にメールや電話などで依頼することも可能です。
訪問査定の依頼が完了したら、現地調査までに家の周りの掃除など、事前準備をしておきましょう。
現地調査を実施してもらう
訪問査定の依頼をする際に、現地調査を実施する日程を決めます。その後は、約束した日時に担当者が現地を訪問し、物件を調査します。
現地調査では、物件のアピールポイントを伝えるとよいでしょう。また、把握している欠陥があれば、隠さずに伝えることが重要です。
とくに欠陥は、のちにトラブルに発展する可能性もあるため、少しでも査定額に影響がありそうなことは、不動産会社に先に伝えておくことをおすすめします。
後日、不動産会社から不動産査定書が郵送かメールで届く
訪問調査後、1週間程度で不動産査定書がメールか郵送で届きます。
査定書の内容をもとに不動産会社の質を見極め、実際に不動産を売却する不動産会社を選択します。適切な査定額になっているか、また、査定額の根拠が詳細に書かれているかどうかがポイントです。
不動産査定書から優良な不動産会社を見極めるポイントは、次の記事で詳しく解説しています。
不動産査定の前に準備しておくべきこと・ものとは
ここでは、不動産査定の前に準備しておくべきこと・ものを詳しく解説します。事前準備をすることで査定がスムーズに進み、査定の精度を高めることが可能です。
査定に必要な書類を集めておく
査定の段階で求められる書類は不動産会社によって異なりますが、基本的には次のような書類が必要です。
- 登記済証(権利証)または登記識別情報通知書
- 建築設計図書
- 地積測量図
- 耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書
- 売却予定の物件を購入した際のパンフレットなどの広告資料
- マンションの管理規約
任意提出の書類もありますが、より正確な査定額を出すために多くの書類を準備しておくとよいでしょう。
なお、机上査定では書類の提出は不要ですが、建物面積や土地面積、建築年といった情報を入力することになるため、関連する書類を手元に用意しておきます。それらの書類は、売却時にも必要となるため、事前に用意しておくと便利です。
売却を依頼する際に必要な書類は次の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
境界確定(戸建ての場合)
戸建てを売却する場合は、トラブルを避けるために隣接する土地との境界を明確にしておく必要があります。
通常は引き渡しまでに対応すれば問題ありませんが、査定の際に境界がわかっていると正確な土地の面積や形状をもとにして、より精度の高い査定が可能です。
また、境界の測量には1〜3か月程度の時間がかかるため、不動産を売却することを決めた段階での依頼をおすすめします。境界の測量は土地家屋調査士に依頼します。
境界確定が行われていないと売却時に隣地とのトラブルになるリスクを抱えているため、不動産会社に査定を断られることもあります。そのため、なるべく早めに境界を明確にしておきましょう。
修繕必要箇所やリフォーム箇所の把握
売却予定の物件について、修繕やリフォームが必要な箇所を把握しておくことも重要です。具体的には、外壁のヒビの有無や、シロアリがいないかどうかなどを調べておきます。
修繕やリフォームが必要な箇所を査定の際に知っておくと、不動産会社の担当者に今後の動き方を相談できます。相談したうえで、修繕を行う場合は対応をし、対応をしない場合は物件状況報告書にまとめる必要があります。
また、過去5年以内のリフォーム履歴は査定でプラスに働くことがあるため、情報をまとめておきましょう。
売却時期や売却額の目標設定
査定に移る前に、売却時期や売却額などの目標を設定しておきましょう。
目標が決まっていれば、不動産会社の担当者に希望を伝えられたり、査定額と比較する目安として活用できたりと、依頼先の検討材料にもなります。
売却額の目標は、住宅ローン残高や住み替え費用など、売却費用を何にあてたいのかを考えると設定しやすいでしょう。
不動産査定を受ける際の注意点・ポイント
不動産査定を受ける際の注意点やポイントは、次の通りです。
- 査定前のクリーニングやリフォームは不要
- 査定額はあくまでも予想
- 不動産の状況を正しく伝える
- 査定額に影響のある項目を知っておく
- 複数社に査定依頼を出す
それぞれ詳しく見ていきましょう。
査定前のハウスクリーニングやリフォームは不要
不動産会社は引き渡し時の状態を想定して査定するため、ハウスクリーニングをしても査定額は上がりません。ハウスクリーニングを入れるなら査定前ではなく、購入希望者が見学に来る内覧前に行いましょう。
また、査定前にリフォームを検討する売主もいますが、それによって査定額が上がる保証はないので注意が必要です。事前に不動産会社の担当者に相談してみることをおすすめします。
内覧時にハウスクリーニングやリフォームがされている物件だと、内覧客の印象が良くなり、購買意欲が高まります。その結果、早期に売却できる可能性が高まると同時に、値引き交渉がされにくくなるでしょう。
査定額はあくまでも予想であることを理解しておく
不動産会社の査定額は「助言価格」や「意見価格」とも呼ばれ、あくまでも不動産会社の見解がベースになっています。実際の売買価格とは異なるため注意しましょう。
実際の売買価格は買主との合意によって決まるため、査定額から上下する可能性があります。
売却したい不動産の状況を正しく伝える
売却したい不動産の状況は査定額に影響する可能性があるため、雨漏りや設備不良といったマイナス要素があれば、査定前に不動産会社へ正しく伝えるようにしましょう。
正しい情報を伝えられていないと、実際の売却価格と査定額の乖離が大きくなるため、なるべく多くの情報を伝えることが大切です。
また、契約違反で損害賠償を請求されるなどのトラブルを防ぐためにも、正しい情報を伝えることは重要といえます。
査定額に影響を与える項目を知っておく
査定額は、売却理由や物件の状況、周辺環境といった項目に影響を受けます。ここでは、それぞれの項目が影響を与える理由や対策などを詳しく解説します。
売却する理由
建物の欠陥やご近所トラブル、近くの工場の作業音など、不動産を売却する背景にネガティブな理由がある場合は、売却価格に影響します。ただし、売却する理由を隠して売買契約を結んでしまうと、「契約不適合責任」により、損害賠償を請求される可能性があるので注意しましょう。売主は買主に対して、契約内容に適合した物件を引き渡す責任があります。売却する理由を言いたくなくても、伝えなければなりません。
物件の状況
次のような物件の状況も査定額に影響します。
- 築年数
- 建物の劣化具合
- 建物の外装
- 土地の広さや形状
- 土地の環境
とくに、建物の劣化具合や土地の環境は、売却価格に大きく影響します。物件の状況を改善するためにリフォームやイノベーションを検討する売主もいますが、かかった費用を売却資金で回収できるかどうかを慎重に判断する必要があります。
物件の周辺環境
スーパーや駅などが近く、利便性が高いエリアは査定でプラスに働く可能性があります。一方で、工場や墓地といった嫌悪施設が近くにあるエリアはマイナスの評価につながるなど、さまざまな周辺環境が評価の対象になります。
暮らしやすいエリアや治安のよいエリアは人気が高いため、査定額も高くなりやすい傾向にあります。
複数の会社に査定を依頼する
査定額は不動産会社によって大きく異なるため、複数の会社に査定を依頼して比較しましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼することで、売却価格の相場や信頼できる不動産会社の選定基準がわかるようになります。
一括査定サイトなら、情報を一度入力するだけで複数の不動産会社に査定してもらえるため、手間や時間が削減できます。
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査定依頼してみる完全無料不動産査定のやり方・ポイントまとめ
不動産査定は、不動産会社に無料で依頼する方法と、不動産鑑定士に有料で依頼する方法があり、一般的な住宅の売買であれば不動産会社に依頼します。
査定方法には、一括査定サイトで情報を送信する「机上査定」と、売却したい不動産を実際に見てもらう「訪問査定」があります。まずは、不動産のおおよその金額を把握するために机上査定を利用し、本格的に売却を行う際に、より精度の高い訪問査定を利用するとよいでしょう。
査定を行う際は、次のような注意点やポイントを押さえておきましょう。
- 査定前のリフォームなどは不要
- 査定額を鵜呑みにしすぎない
- 情報を正しく伝える
- 査定額に影響のある項目を確認する
- 複数の不動産会社へ査定を依頼する
複数の不動産会社に査定を依頼することで、相場が把握しやすくなり、信頼できる会社に出会える可能性も高まります。
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境界確定は将来のトラブルを抑制し、土地の価値を高める重要な要素です。立地や面積、形状も重要ですが、買主が購入後に安心して暮らせることも土地の価値と言えるでしょう。