不動産売却の流れ|契約から決済までをわかりやすく解説

不動産を売却するときは、まず全体の流れを把握して、必要な期間と資金を確保しておくことが大切です。また、スムーズかつ納得できる売却を行うためには事前準備も必要です。
この記事では不動産の売却の流れ、各手順の詳細を解説し、契約方法や不動産会社の選び方のポイントを紹介します。
不動産売却の流れ

不動産売却のおもな流れは次の通りです。
1. 相場の情報収集
2. 複数社の不動産会社に査定を依頼
3. 媒介契約
4. 売却活動期間
5. 買主候補と商談・契約
6. 決済と物件の引き渡し
7. 確定申告
1. 相場の情報収集

不動産会社に相談する前に相場の情報を収集しておくことで、現実的な売却希望額を設定でき、相場より安すぎる金額で売却してしまうリスクを軽減できます。
ここでは、相場を調べるための代表的な方法を4つ解説します。
レインズマーケットインフォメーションで似た物件を探す
レインズマーケットインフォメーションは、不動産会社間で情報を共有する、国土交通大臣指定の不動産流通機構を一般人にも利用できるようにしたものです。
直近1年で実際に売り出された物件の情報が記載されており、立地や土地の広さ、物件情報が売却したい不動産と似ているものがあれば参考にできます。
ただし、取扱い物件はマンションと戸建てに限られるため、土地を売却したい場合は利用できません。
レインズマーケットインフォメーションで確認できる情報は次の通りです。
- 直近1年の取引情報グラフ
- 沿線
- 最寄り駅
- 駅からの距離
- 所在
- 1平米あたりの単価
- 専有面積
- 間取り
- 築年数
- 成約時期
- 用途地域(商業・住居など)
所在地や駅からの距離、間取りなどで絞り込んで検索しましょう。
土地総合情報システムで似た物件を探す
土地総合情報システムは国土交通省管轄のサイトで、実際に不動産を売買した人を対象としたアンケート調査結果を閲覧できます。マンションや戸建だけでなく土地も調べることができ、一般的な土地の売却とは条件の異なる農地や林地の売却情報も取得できます。
土地総合情報システムで把握できる情報は次の通りです。
- 所在地
- 地域(商業地・住宅地など)
- 最寄り駅(駅名・徒歩距離)
- 取引総額
- 土地の坪単価
- 土地の面積
- 土地の平米単価
- 土地の形状(長方形・整形・不整形など)
- 建物の間取り
- 建物の面積
- 建物の用途
- 建物の改装の有無
- 建物の築年数・建築年
- 建物の構造(木造・RCなど)
- 今後の利用目的(住宅・事務所など)
- 前面道路の情報(幅員・私道や区道などの種類・方位)
- 都市計画
- 建ぺい率
- 容積率
- 取引時期
- その他の事情
上記のように細かな情報を確認できるため、売りたい不動産と近しい条件のものを探しやすいことがメリットです。しかし、土地と建物など2つの要素がある場合でも「取引総額」しか表示されないため、それぞれがいくらだったのかは把握できません。
このほか、アンケートの回答があったものだけを掲載するという都合上、全体の物件数が少なめというデメリットもあります。
地価公示価格をもとに計算する
土地の売却において、レインズマーケットインフォメーションや土地総合情報システムで参考になるデータが見つからなかった場合は、地価公示価格をもとに計算するという方法があります。
地価公示価格は国土交通省のサイトにある「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で確認できます。
都道府県と市区町村、住宅地や商業地といった用途区分を選択して検索すると結果が出ます。結果の中から売却したい不動産に近しい所在及び地番の価格を参照しましょう。
売却相場の計算方法は次の通りです。
売却相場=公示地価(または基準地価)×面積×1.1
路線価をもとに計算する
路線価は国税庁が公開している情報で、道路に面した土地の相場を計算するときに使えます。
国税庁の「線価図・評価倍率表」で都道府県を選択し、「路線価図」の地図の中から調べたい土地を探します。
その土地が面している道路を辿ると数字が記載されているので、その数字に1,000を乗じたものを路線価として計算します。
計算式は次の通りです。
売却相場=路線価評価額(路線価×面積)÷0.8×1.1
こちらの記事でより詳しく解説しています。
土地の評価額を調べる5つの方法!売値相場を導き出すには?
2. 複数社の不動産会社に査定を依頼

相場を把握したら不動産会社に売却の相談を行い、査定を依頼する段階に移ります。この時点ではまだ契約はせず、比較検討の期間としましょう。
なお、相談・査定・比較検討にかかる期間は1週間~4週間が目安です。
複数の不動産会社に見積もり依頼する
査定依頼の時点では1社ではなく複数社に依頼しましょう。一口に不動産会社といっても、地元に強い会社や戸建て売却が得意な会社などそれぞれに得意不得意があり、その違いが査定額にも表れるからです。
また、査定額を見比べて妥当な金額を把握しておくことも、この段階の重要なポイントです。自分で調べた相場とかけ離れている場合には理由を聞きましょう。
なお自分で複数社を探し出すのは手間がかかるため、一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
最大6社にまとめて査定依頼
査定依頼してみる完全無料高すぎる見積もりには注意する
複数社の査定額を比較し、基本的にはより希望額に近い査定額を提示した会社と契約を結びます。
しかし、比較の中で極端に高い金額を提示された場合は注意しましょう。実際には高額で売れる可能性が低いにもかかわらず、契約を獲得するために高額を示してくるケースがあるからです。
査定額は実際の売却額を保証するものではないため、高すぎる金額を提示されたときは理由を聞いて納得できるかどうか検討しましょう。その上で、できればほかの不動産会社にも、その金額で売却可能かどうか相談してみることをおすすめします。
信頼できる担当者か
査定額の差以外にも、質問に真摯に答えてくれるかどうか、すぐに連絡をとれるかどうかなど、今後の取引相手として信頼できるかを重視しましょう。
また査定に来た営業員が丁寧だったとしても、売却活動の担当者は別の人に代わることもあるため、実際の担当者を確認しておくことも大切です。
こちらの記事でより詳しく解説しています。
不動産査定サイトとは?選び方のポイントと注意点を把握しよう
3. 媒介契約

不動産会社に売却活動を依頼する契約のことを「媒介契約」と言います。媒介契約は3種類あり、それぞれに次のようなメリットとデメリットがあります。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
一般媒介契約 |
・複数の不動産会社と同時に契約できる ・自己発見取引※ができる |
・不動産会社の積極的な売却活動を期待しづらい ・売却活動の報告義務がない |
専任媒介契約 |
・自己発見取引※ができる ・積極的な営業活動を期待できる ・営業活動の報告義務がある |
・1社としか契約できない |
専属専任媒介契約 |
・3種類の中で最も積極的な営業活動を期待できる ・営業活動の報告義務の頻度が高い |
・1社としか契約できない ・自己発見取引※ができない |
※自己発見取引:自分で買主を見つけて当事者同士で売買契約すること
一般媒介契約
自己発見取引 | 可 |
---|---|
レインズへの登録義務 | なし |
売主への営業活動の報告義務 | なし |
契約期間 | 期限なし |
一般媒介契約は売主の自由度の高い契約です。複数社の不動産会社と同時に契約することに制限がありません。
また、親族や知人などから自分で買主を見つけた場合には、「自己発見取引」といって、不動産会社を介さずに当事者同士で売買契約できます。不動産会社への手数料は発生しません。
一方で、不動産会社側からすると、必ずしも自社で販売できるとは限りません。そのため、専任媒介契約や専属専任媒介契約に比べると、販売活動の積極性は低くなる可能性があります。
「親族や知人が買主になる可能性が十分ある中で、不動産会社がより高く購入してくれる買主を見つける可能性に期待したい」という場合に適した契約と言えます。
専任媒介契約
自己発見取引 | 可 |
---|---|
レインズへの登録義務 | あり(媒介契約から7日以内) |
売主への営業活動の報告義務 | あり(2週間に1度以上) |
契約期間 | 最大3ヵ月 |
専任媒介契約は1社としか結べませんが、自己発見取引は可能です。契約期間は最大3ヵ月という縛りがあり、そのあいだの営業活動は2週間に1度以上報告されます。
契約期間3ヵ月以内で買主をみつけることが求められるため、熱心な営業活動を期待しやすいのが大きなメリットです。
また、不動産会社間で情報を提供し合うレインズへの登録義務があるため、不動産購入希望の顧客を抱えている別の不動産会社から、依頼した不動産会社へ連絡が入ることもあります。
親族や知人が買主になる可能性がないとは言えないものの、確度が低い場合や希望額を下回る可能性が高い場合には、この契約で依頼するのがおすすめです。
専属専任媒介契約
自己発見取引 | 不可 |
---|---|
レインズへの登録義務 | あり(媒介契約から5日以内) |
売主への営業活動の報告義務 | あり(1週間に1度以上) |
契約期間 | 最大3ヵ月 |
専任媒介契約との大きな違いは、自己発見取引ができないことです。そのため、売主がみずから買主を見つけても、依頼した不動産会社を介して売買契約するため手数料が発生します。
その分、レインズへの登録義務の日数が短く、営業活動の報告の義務の頻度が高いなど、より熱心な営業活動を期待できるのがメリットです。
自己発見取引を行う可能性がないのであれば、この契約で不動産会社に買主を見つけてもらうのが適しています。
4. 売却活動期間

媒介契約自体に時間は要しませんが、その後の売却活動期間は少なくとも1ヵ月かかります。1ヵ月は最低限必要な期間であり、一般的には専属媒介契約・専属専任媒介契約の契約期間である3ヵ月くらいを要すると考えておいたほうがいいでしょう。
その期間にどのような売却活動が行われるのか、不動産会社の営業活動と買主が対応すべきことを解説します。
不動産会社の営業活動
不動産会社の営業活動には次のようなものがあります。
- 不動産ポータルサイトに情報を掲載
- 自社サイトへの情報掲載
- チラシの配布
- レインズを活用し、ほかの不動産会社が抱える買主候補の情報を得る
専任媒介契約または専属専任媒介契約であれば、これらの営業活動の経過を報告してもらえます。
なお、広告掲載やチラシの配布にかかる諸費用は、基本的には媒介契約書に記載の手数料に含まれています。 別途費用がかかるケースとしては、媒介契約時には想定していなかった広告掲載先や方法を買主がみずから指定した場合や、買主候補の求めに応じた遠方への出張を買主が了承した場合などが挙げられます。
媒介契約をする際にどのような営業活動を想定しているのか、不動産会社に確認しておきましょう。
内見への対応
建物を売却する場合、買主候補が内見を希望する可能性があります。すでに引き払った後の空き家の内見なら不動産会社が対応しますが、売却するまで居住している場合は売主がメインで対応します。
内見に対応するときの準備として、きれいに掃除しておき、アピールポイントを考えておきましょう。
特に、水周りは購入者が重視しやすい要素のひとつです。さらに、換気したり明るい照明に替えたりすることで、第一印象が変わります。
アピールポイントは物件に応じて異なりますが、住居であれば近隣のスーパーや商店街の品ぞろえ、駅までのアクセスなどの利便性が挙げられます。家族向けの物件なら学校や公園など周辺の環境も伝えられるとよいでしょう。
5. 買主候補との商談・契約

買主候補との商談と売買契約までは1ヵ月程度の期間が必要です。商談から契約、そのほかの順序をリストで確認します。
(1)買主候補が「買付証明書」に購入意志を記載
(2)売買契約に関する条件を交渉・決定
(3)手付金の額や決済日を交渉・決定
(4)売買契約を締結
(5)買主から売主へ手付金が支払われる
(6)不動産会社へ仲介手数料の一部を支払う
売買契約に関する条件はさまざまです。例えば、買主候補が「床だけリフォームしてくれたらすぐにでも買いたい」と希望を出した場合に、売主による床のリフォームを条件として契約書に盛り込むといったことが挙げられます。
これらの細かな条件を交渉・決定してから売買契約書を作成し、締結します。なお、売買契約には印紙税がかかります。印紙代は次の通りです。
契約金額 | 税額 |
---|---|
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 |
また、売買契約成立時に不動産会社へ仲介手数料の一部を支払います。この割合は媒介契約時に定められたものです。
手付金の種類
売買契約後は買主が売主に対して、売買代金の5~15%に相当する手付金を支払うのが一般的です。決済のときに買主に返還するか、売却額の一部として充当します。
手付金には3つの種類があります。
証約手付 | 契約締結したことを証明するための手付金 |
---|---|
違約手付 | 契約違反があった場合に没収する手付金 |
解約手付 | 買主都合で契約を解除した場合に、買主が返還を求めない手付金 |
ほとんどの場合は解約手付です。なお売主都合で解約する場合は、解約手付の倍額を買主へ支払うことが求められます。
ただし、買主が住宅ローンの審査に落ちたことを理由に解約する場合はこの限りではなく、売主は買主へ解約手付金を返還しなければなりません。
住宅ローン特約に注意
住宅ローン特約は、「買主が住宅ローン審査に落ちた場合に売買契約を戻せる」という事項を売買契約書に記載するというものです。
売買契約の条件としてリフォームを行った場合でも、契約が白紙に戻ってしまえばその金額を請求できません。
このような事態にならないよう、住宅ローンの審査通過後にリフォームすることを条件にする、あるいは住宅ローン特約を盛り込まないといった対策を行いましょう。
6. 決済と物件引渡し

売買契約から決済までの期間は約1ヵ月です。買主の住宅ローン審査や資金の準備が行われ、売主にも売却する物件のローンが残っている場合は、その手続きも必要です。
売却によって住宅ローンを完済する場合の手続き
住宅ローンで購入した物件は、多くの場合その物件に対して金融機関の抵当権がついています。これは、住宅ローンの返済が滞った場合に金融機関が物件を差し押さえるための権利です。
一般的に抵当権がついている物件は買主が拒否するため、物件引渡しまでに抵当権を抹消することが売買契約書に記載されます。物件の売却代金で住宅ローンを完済する場合は、次の手続きを同時に行う必要があります。
- 売却代金の受け取り
- 金融機関への住宅ローンの完済
- 抵当権抹消登記手続き
- 不動産の所有権を買主へ移転する登記手続き
同時に行うためには、事前に金融機関へ相談しておくことが重要です。そして買主との決済を金融機関同席の場でおこない、迅速に手続きを進めます。各種登記にかかる登記費用も事前に準備しておきましょう。
なお、抵当権の抹消手続きは自分でも行えますが、スピードが求められるため司法書士に依頼して同席してもらうことが一般的です。
7. 確定申告

不動産を売却すると課税譲渡所得が発生します。この所得は給与所得や事業所得は区分して計算されるため、自分で確定申告する必要があります。
課税譲渡所得金額の計算式は次の通りです。
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
譲渡価格は売却代金のことです。取得費は不動産を購入したときの代金と不動産会社への仲介手数料の合算ですが、建物の場合は減価償却費相当額が差し引かれます。
譲渡費用は、物件を売却するときの不動産会社への仲介手数料や、売却のために行ったリフォームや測量の代金などが該当します。
特別控除は、マイホームを売却した場合に適用できる最高3,000万円の控除が代表的です。これらを計算した課税譲渡所得金額に対し、税率を乗じて所得税額が決まります。
なお、税率は不動産を売却した年の1月1日時点で、不動産の所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。 5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得と呼び、それぞれの税率は次のように設定されています。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡取得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
なお、所有期間が5年を超えるマイホームを売却した際に、課税譲渡所得金額がマイナスになるという「譲渡損失」が生じた場合には、そのほかの所得と損益通算したり、翌年以降に控除を繰り越したりできる特例があります。
不動産売却の流れを知ってしっかり準備を進めよう

不動産の売却は不動産会社に任せれば終わりというわけではありません。事前に相場の把握や内見の準備、住宅ローンの抵当権抹消、確定申告など買主が手配する項目があります。必要な期間と資金の確保も含め、全体の流れを把握し、しっかりと準備を進めましょう。
また、各種準備のためにも、困ったときに相談しやすい不動産会社を選ぶことが大切です。