不動産売却にかかる手数料や費用はどれくらい?注意点やよくある疑問についても解説
不動産を売却する際は、不動産会社に支払う仲介手数料や税金などの諸費用がかかります。
不動産の諸費用は売却価格の4~6%程度とされており、仮に3,000万円の不動産であれば、120万円~180万円程度の諸費用がかかることになります。
本記事では、不動産売却にかかる手数料や費用の目安と内訳をご説明します。この記事を参考に、手数料の金額や支払いのタイミングを把握し、準備を進めましょう。注意点や、よくある疑問についても詳しく解説しています。
【監修】松元 健太郎 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。 不動産会社退職後、不動産ライターとして独立。不動産実務の経験と知識を活かしながらライターとして活動中。 法人で不動産賃貸経営も行い、不動産の現場で得た経験をもとにした原稿執筆を行う。 https://xn--lsv228akxb.com/
不動産売却にかかる手数料・費用
不動産の売却を仲介業者に依頼する場合は、仲介手数料を支払う必要があります。そのほかにも、税金や司法書士への手続き代行依頼料など、不動産の売却にはさまざまな費用がかかります。まずは、諸費用の内訳と、それぞれの金額の目安を把握しておきましょう。
諸費用の内訳と費用の目安は次の通りです。
項目 | 費用 |
---|---|
仲介手数料 | 売却価格の3~5% |
抵当権抹消費用 | 1~2万円程度 (司法書士に依頼する場合) |
印紙税 |
最小200円・最大60万円(48万円※)
※令和6年3月31日までの間に作成される契約書は最大48万円に軽減される
<例>令和6年3月31日までの間
|
譲渡所得税 (所得税・住民税・復興特別所得税) | 売却で利益が出た場合のみ支払う※ ※利益に以下の税率を掛けた金額 <1月1日時点で不動産の所有が5年を超える場合> 20.315% <5年を超えない場合> 39.63% |
その他 |
広さや業者によって異なる
|
計算方法や内訳をもう少し詳しく見ていきましょう。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産の仲介を行った不動産会社へ支払うもので、売却が決まった際に発生する費用です。
不動産売却の仲介手数料は法律によって上限が定められており、売買価格に応じて決まります。そのため、価格の相場の調べ方を把握しておくことで、仲介手数料の上限がわかります。
不動産売却の相場の調べ方については、次の記事をご覧ください。
仲介手数料の上限金額は、売買価格を下表にある左側の金額に分けて、右側の計算式に当てはめて算出します。
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売買価格の×5%(+消費税) |
200万円超400万円以下の部分 | 売買価格の×4%(+消費税) |
400万円超の部分 | 売買価格の×3%(+消費税) |
例えば、売買価格が1,000万円であれば、1,000万円を、「200万円以下の部分」「200万円超400万円以下の部分」「400万円超の部分」の3つに分けて、それぞれ計算します。
不動産会社は、一般的に仲介手数料を上限金額に設定しているため、上限をもとにした仲介手数料の例を次で解説します。
仲介手数料の計算方法
売買価格500万円の場合と、売買価格1,000万円の場合の仲介手数料を、実際に計算してみましょう。
設定①:売買価格500万円
まず、500万円を下表の左側にある3つに分け、それぞれ右側の計算方法に当てはめて計算します。
200万円以下の部分 | 200万円×5%=10万円 | |
---|---|---|
200万円超400万円以下の部分 | 200万円×4%=8万円 | |
400万円超の部分 | 100万円×3%=3万円 | |
合計23.1万円(21万円+消費税2.1万円) |
売買価格が500万円の場合は手数料が税抜21万円となり、消費税分の2.1万円を足した合計23.1万円が仲介手数料の上限金額となります。
設定②:売買価格1,000万円
売買価格500万円の例と同様に、1,000万円を下表の左側にある3つに分け、それぞれ右側の計算方法に当てはめて計算します。
200万円以下の部分 | 200万円×5%=10万円 | |
---|---|---|
200万円超400万円以下の部分 | 200万円×4%=8万円 | |
400万円超の部分 | 600万円×3%=18万円 | |
合計39.6万円(36万円+消費税3.6万円) |
売買価格が1,000万円の場合、仲介手数料の上限金額は合計36.9万円(税込)です。
速算法を使った仲介手数料の出し方
仲介手数料の上限金額を割り出す速算法の計算式は、次の通りです。
- 200万円超400万円以下の場合:売買価格×4%+2万円(+消費税)
- 400万円超の場合:売買価格×3%+6万円(+消費税)
速算法を使って、先ほどの売買価格500万円、1,000万円の不動産の仲介手数料を計算してみると、通常の計算方法と同じ金額が算出されます。
設定①:500万円×3%+6万円+(税金2.1万円)=合計23.1万円 設定②:1,000万円×3%+6万円+(税金2.1万円)=合計39.6万円 |
ただし、売買価格が200万円以下の不動産については速算法が使えないため、最初に紹介した計算方法で算出する必要があります。
抵当権抹消費用
「抵当権」とは、住宅ローンを組む際に、金融機関などが不動産を担保にする権利のことです。
抵当権の抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、不動産を売却する際に住宅ローンが残っている場合は手続きが複雑になるため、司法書士に依頼する方法が一般的です。司法書士への依頼料は、通常1〜2万円程度になります。売却益の一部を住宅ローンの返済にあてることも可能です。
住宅ローンを完済している場合は手続きがシンプルになるため、自分で抵当権を抹消する手続きを行うことが可能です。必要な費用は、不動産1個につき1,000円の登録免許税のみになります。
印紙税
印紙税は、印紙税法で定められた文書を作成する際に納める税金です。収入印紙を購入して文書に貼り付けることで納税します。
印紙税は不動産の売却価格によって異なります。価格別の費用は次の通りです。
契約金額(売却価格) | 印紙税額 |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
50万円超え~100万円以下 | 500円 |
100万円超え~ 500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え~1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超え~5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超え~1億円以下 | 3万円 |
1億円超え~5億円以下 | 6万円 |
5億円超え~10億円以下 | 16万円 |
10億円超え~50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
なお、上の金額は平成26年4月1日〜令和6年3月31日までの間に作成される契約書における印紙税の金額となります。
譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
譲渡所得税は、不動産を売却して利益が出た場合にのみ支払う税金です。利益に応じて所得税や住民税が課せられます。
税率は不動産の所有期間によって異なり、次のようになります。なお、税率には譲渡所得の所得税に対して課せられる2.1%の復興特別所得税が含まれています。
不動産の所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下 | 39.63%(所得税30.63%・住民税9%) |
5年超え | 20.315%(所得税15.315%・住民税9%) |
例えば、不動産売却によって1,000万円の利益が出た場合、所有期間が5年超えであれば約203万円、5年以下であれば約396万円となります。
不動産売却の税金について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
その他の諸費用
ここまで紹介した費用以外にも、次のような諸費用が発生することがあります。
項目 | 費用目安 |
---|---|
書類の取得費 | 書類1部 300~600円程度 |
測量費用 | 30〜100万円程度 |
不用品処分費用 | 量に応じて15〜60万円程度 |
ハウスクリーニング費用は部屋の広さや建物の種類によって異なります。費用の目安は次の通りです。
【マンション】
- 1R・1K:2~4.5万円
- 1〜2LDK:3.5~7万円
- 3〜4LDK:5~10万円
【戸建て】
- 2~3LDK:4~10万円
- 3~4LDK:3~4LDK
- 4~5LDK:8~13.5万円
解体費用も建物の構造や広さによって異なるため、次の表を目安にしてください。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 2~6万 |
鉄骨造 | 4~7万円 |
鉄筋コンクリート造 | 3.5~8万円 |
不動産売却時にかかる手数料の注意点
次のような場合、不動産の売却時にかかる手数料が追加で請求されることがあるので注意が必要です。
通常の仲介業務以外の費用は追加請求される
仲介手数料に含まれる金額は、不動産を売却するうえで必要な通常の業務のみです。それ以外の業務に関しては、基本的に追加費用がかかります。
例えば、通常は行わない広告掲載や宣伝など、売主の希望によって発生した仲介業務は、追加で請求される可能性があります。
400万円以下の不動産は追加の仲介手数料がかかる
400万円以下の不動産は、通常の仲介手数料に加えて追加の手数料がかかります。
2018年の法改正により、あらかじめ報酬額について売主様に合意を得ている場合は、仲介手数料と現地調査などの費用を合わせて上限18万円まで引き上げることが可能になりました。
例えば、売却価格200万円の不動産の場合、本来なら仲介手数料は11万円(税込)ですが、現地調査などが必要になった場合は上限18万円まで報酬を追加できます。
この背景には、近年話題になっている空き家問題があります。
日本では、平成30年に空き家の件数が過去最多の848万9千戸になりました。国は空き家の積極的な活用を推奨していますが、地方の空き家はとくに物件の価格が低く、現地調査などを行うと不動産会社が赤字になってしまうことがあります。そこで、400万円以下の不動産については手数料を追加できるよう制度が変更されました。
不動産売却時には仲介手数料が必要で、物件価格や契約内容により異なります。注意点として、全ての業務が手数料に含まれているわけではないため、追加費用が発生することもあります。あらかじめ不動産会社に確認しておくとよいでしょう。
不動産売却の手数料に関してよくある疑問
最後に、不動産売却の手数料に関してよくある疑問と回答を紹介します。
仲介手数料は交渉できる?
仲介手数料には上限金額がありますが、下限金額は決められていないため、不動産会社の判断で引き下げることも可能です。
しかし、単純に「手数料を下げて欲しい」と交渉するだけでは要望が通りづらいでしょう。ほかの不動産会社の手数料を引き合いに出すなど、理由を述べたうえで交渉することがポイントです。
手元に残る金額を増やすには、仲介手数料の値引きを試みるだけでなく、売却価格にも着目することが重要です。
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仲介手数料は不動産会社の成功報酬であるため、売買が成立したタイミングで支払います。
一般的に、売買契約の際に半額、引き渡しの際に残りの半額を支払います。手数料は基本的に現金で支払うことが多いため、支払いのタイミングまでに用意しておきましょう。
手数料の支払いを含む不動産の売却の流れについては、次の記事で詳しく解説しています。ぜひお役立てください。
不動産売却の手数料まとめ
不動産売却にかかる手数料や費用には、次のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- 印紙代
- 譲渡所得税
- その他諸費用
仲介手数料に含まれていない業務を依頼した場合や、400万円以下の物件を売却する場合は、手数料の上限金額が適用されず、追加で費用がかかることがあるので注意が必要です。
手数料の値下げ交渉を行う際は、ほかの不動産会社を引き合いに出して、理由を明確にすることで成立する場合があります。
また、より高く売却できる優良な不動産会社を選ぶことで、手元に現金が残りやすくなります。次の記事も参考に、不動産会社の見極めをしっかりと行いましょう。
不動産売却には、仲介手数料、抵当権抹消費用、印紙代、譲渡所得税などが必要です。売却にかかる費用は物件価格や契約内容により変わり、手数料は交渉可能なケースもあります。少しでも高く売却するためには優良な不動産会社の選定が重要です。
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不動産売却にかかる手数料や費用の詳細については、不動産会社から売主に説明があるものです。売却を進めていくなかで心配事や不明な点が出てきたら売却依頼をしている不動産会社に相談し、後悔しないようにしましょう。