マンションは売却と賃貸どっちがいい?それぞれのメリット・デメリット
転勤や家庭の事情などにより所有しているマンションに住まなくなったり、相続などにより利用予定のないマンションを得たりした場合、売却しようか賃貸に出そうかと迷う人も多いかもしれません。
利用していないマンションを売却すべきか、賃貸に出すべきか、どちらがいいとは一概に言い切れません。なぜなら、それぞれにメリットとデメリットがあり、マンションのタイプや状況により、どちらを選ぶべきかが変わってくるからです。
この記事では、所有しているマンションを売却した場合と賃貸に出した場合とを比較します。それぞれのメリットやデメリットなども併せて紹介するので、所有しているマンションを売却するか賃貸に出すかで悩んでいる人は、参考にしてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
マンションは売却・賃貸どっちがいい?
利用していないマンションがある場合、売却したほうがいい場合と、賃貸のほうがいい場合、それぞれのケースがあります。ここでは、どのようなマンションが売却したほうがいいのか、また、どのようなマンションであれば賃貸に向いているのかを解説します。
売却が向いているマンション
売却に適したマンションの特徴や、売却するほうがいい状況として、次のようなものが挙げられます。
- 賃貸需要が少ないエリアにある
- 築年数が古い
- 専有面積が広く部屋数が多い
- まとまった現金が欲しい
- マンションの維持管理に手間をかけたくない
人口や人の流動が少なく、賃貸需要があまり見込まれない立地のマンションは、賃貸に出しても空室になる恐れがあります。また、専有面積が広くて部屋数の多いファミリータイプのマンションも、賃貸の需要は低いと言えるでしょう。
また、マンションを賃貸に出す場合、貸主として賃貸物件であるマンションの維持管理が必要です。このように手間や時間をかけたくない場合は、売却するのがおすすめだと言えます。
賃貸が向いているマンション
賃貸に向いているマンションの特徴や、マンションを賃貸に出すほうがいい状況として、次のようなものが挙げられます。
- 大きい会社や大学が近くにあるなど、賃貸需要が高いエリアにある
- 生活に便利で人の流動性が高いエリアにある
- 築年数が浅い
- コンパクトな広さで間取りがシンプルである
- 転勤などで一時的に住まなくなった場合
- 資産に余裕がある場合
賃貸に出したほうがいいマンションの特徴は、賃貸需要の高いエリアにあることです。人口や人の流動が多く、生活に便利なエリアにあるマンションであれば、賃貸に出しても入居者が見つかりやすいでしょう。
また、一時的に住まなくなったものの、将来、戻ってくる予定がある場合や、資産に余裕があり、すぐに売却する必要がない場合も賃貸が向いていると言えます。
マンションを売却するメリット・デメリット
今のところ利用予定のないマンションを売却するか、賃貸に出すかを検討する際には、それぞれのメリットとデメリットを把握し、比較することが大切です。ここでは、まずマンションを売却するメリットとデメリットを詳しく見てみましょう。
マンションを売却するメリット・デメリットをまとめたものが次の表です。
売却するメリット | ・まとまった現金を入手できる ・維持費がかからなくなる ・居住用なら税制優遇が受けられる |
---|---|
売却するデメリット | ・売却に諸費用や税金がかかる ・買手がすぐに見つからない可能性がある |
マンションを売却するメリット
マンションを売却すると、まとまった額の現金が手に入る、売却すれば維持管理費がかからなくなるといったメリットがあります。
それぞれのメリットについて、詳しく見てみましょう。
まとまった現金を入手できる
マンションを売却するメリットとしてまず挙げられるのが、売却代金としてまとまった額の現金を得ることができる点です。何らかの事情でお金が必要な場合、これは魅力的なメリットだと言えるでしょう。
マンションを売却しても、売却代金すべてが手に入るわけではないありません。住宅ローンが残っている場合はその残債を完済し、さらに売却費用や税金などを差し引いた分が手元に入る金額になります。それらを見越して、売却した場合のお金の計画を立てるようにしましょう。
維持費がかからない
マンションなどの不動産は、所有していると固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。さらにマンションの場合は、月々の管理費や修繕積立金などの支払いも必要です。
賃貸に出した場合、管理費は借主から徴収することも可能ですが、固定資産税や都市計画税、修繕積立金などの資産にかかる費用は、所有者が負担しなければなりません。しかし、売却すれば、そのような維持管理費がかからなくなる点もメリットだと言えます。
居住用マンションなら税制優遇が受けられる
マンションを売却して利益が生じた場合、譲渡所得税(所得税・住民税)が発生し、翌年の確定申告で納付しなければなりません。ただし、居住用にしていたマンションであれば、3,000万円の特別控除が利用できるため、譲渡所得税が減額、または利益の額によっては課せられなくなります。
しかし、この特別控除が適用されるのはマイホームだけなので、賃貸に出したマンションではこの優遇措置を受けることができません。居住用のままマンションを売却するメリットのひとつとして、このような税制優遇が挙げられると言えます。
マンションを売却するデメリット
マンションの売却には、メリットだけではなくデメリットもあります。ここでは、マンションを売却するデメリットについて詳しく見てみましょう。
売却に諸費用や税金がかかる
マンションを売却する際には、さまざまな費用や税金がかかります。おもな費用や税金をまとめたのが、次の表です。
費用の項目 | 相場の額 |
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不動産会社に支払う仲介手数料 | 取引額によって上限額が変わる。400万円を超える取引の場合の上限額の計算式は、取引額×0.03+6万円+消費税 |
売買契約書に課せられる印紙税 | 取引額によって異なる。1,000万円超~5,000万円以下の場合、軽減税率適用で15,000円 |
抵当権抹消費用(ローンを組んでいる場合) | 抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産ひとつにつき1,000円。司法書士への報酬は1~2万円程度 |
ローン一括返済手数料(ローンを組んでいる場合) | 金融機関によって異なる(数万円程度の場合が多い) |
譲渡所得税 | 売却して得られた利益に対して課せられる。利益(課税譲渡所得)と税率によって税額が変わる |
マンションを売却すれば売却代金が手に入りますが、これらの費用や税金がかかる点がデメリットだと言えるでしょう。
もっと詳しく知りたい方は下記の記事もおすすめです。
買手がすぐに見つからない可能性がある
マンションを売却するデメリットとして、買い手がすぐに見つからない可能性がある点が挙げられます。すぐに売れるかどうかは売りに出してみないとわからず、自分の好きなタイミングで買い手が見つかるとは限りません。
一般的な仲介によるマンション売却にかかる期間の目安は、4~6ヵ月ほどかかると言われています。希望する額で売却したい場合は、さらに時間がかかる場合もあります。
すぐに売却したい場合は、仲介売却以外に買取りを利用するのもひとつの手です。買取りとは、広告や宣伝をして広く購入希望者を募るのではなく、不動産会社や買取業者に直接買い取ってもらう方法です。
すぐに現金化できる点はメリットですが、売却額が相場価格の7割程度になってしまうという点がデメリットです。急ぎでお金が必要な場合や、売りに出していることを周囲に知られたくない場合は、仲介ではなく買取りを選んでもいいでしょう。
マンションを賃貸に出すメリット・デメリット
マンションを賃貸に出す場合にも、メリットとデメリットがあります。賃貸に出した場合のメリットとデメリットをまとめたものが、次の表です。
賃貸に出すメリット | ・借り手がいれば安定した家賃収入を得られる ・費用を経費に計上でき節税効果がある ・資産として所有し続けられる ・将来は居住したり売却したりすることも可能 |
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賃貸に出すデメリット | ・空室のリスクがある ・継続的に管理や維持にコストがかかる ・管理業務や入居者とのトラブルが発生する可能性がある |
マンションを賃貸に出すメリット
ここでは、利用していないマンションを賃貸に出すメリットについて詳しく説明します。
借り手がいれば安定した家賃収入を得られる
マンションを賃貸に出した場合のメリットとしてまず挙げられるのが、借り手がいて賃貸状態が続けば、毎月安定した家賃収入を得られる点です。家賃収入は、不労所得(労働によらずに得られる所得)の代表だと言えます。
ローン返済中の場合は、家賃収入をローンの返済に充てることも可能です。ただし、ローンによっては、ローンの借換えが必要な場合もあるので注意しましょう。
費用を経費に計上でき節税効果がある
マンションを賃貸に出せば、賃貸経営にかかった費用を経費として計上できるため、節税効果が得られます。
経費として計上できるおもな費用は、次の通りです。
- 入居者募集のための費用(広告料、仲介手数料など)
- 賃貸物件の設備にかかる費用
- 入退去時の原状回復費やリフォーム費用
- 管理費(管理を外注した場合)
- 固定資産税・都市計画税
- 建物減価償却費
- ローン返済の金利部分
これらの費用を経費として計上できる点が、マンションを賃貸に出すメリットだと言えるでしょう。
資産として所有し続けられる
マンションを賃貸に出しても、所有者であることに変わりはないため、そのままマンションを資産として持ち続けられる点もメリットとして挙げられます。
不動産の価格は景気や社会情勢に左右されるため、将来、値上がりする可能性もあります。賃貸に出しながら資産としてマンションを所有し続け、利益が出そうなタイミングを見計らって売却することも可能です。
将来は居住したり売却したりできる
マンションを売却せずに賃貸に出しながら所有し続けていれば、将来的に自分が住むことも可能です。また、賃借人が入居している状態で、オーナーチェンジ物件として売却もできます。
ただし、賃借人が普通賃貸借契約を結んで入居している場合は、売主の好きなタイミングで明け渡してもらうことは難しいです。このような場合は、賃借人が退去するまで待たなければなりません。
しかし、定期借家契約であれば、賃貸借契約期間の期限を定めることができます。マンションを賃貸に出したいけれども数年後に戻ってくる予定がある、子供が結婚したら住まわせたいなどといった場合は、定期借家契約を前提として賃貸に出すといいでしょう。
マンションを賃貸に出すデメリット
マンションを賃貸に出す場合、メリットだけでなくデメリットもあります。ここで、どのようなデメリットがあるかを詳しく見てみましょう。
空室のリスクがある
マンションを賃貸に出しても、借りてくれる人が現れなければ収入を得ることができません。マンションだけでなく、すべての賃貸物件には、この空室のリスクがつきまといます。
マンションを賃貸に出す場合、初期投資や維持管理のコストが必要です。そのため、空室の状態が続けば、赤字になっていくというデメリットを踏まえておくようにしましょう。
継続的に管理や維持にコストがかかる
マンションを賃貸に出すと、賃借人との契約業務から物件の管理業務、入居者からのトラブル対応といった業務の手間やコストがかかります。この点も、マンションを賃貸に出すデメリットとして挙げられるでしょう。
また、賃貸に出している場合は、賃借人の入退去時に経年劣化した部分の修繕費用や設備交換費用などの費用も必要になります。さらに、固定資産税や修繕積立金なども必要です。
入居者とのトラブルが発生する可能性がある
賃貸管理業務の負担のひとつとして、入居者のトラブル対応が挙げられます。設備の不具合や故障の際に連絡を受けたり修理の手配をしたりしなければなりません。
管理業務を管理専門業者などの外部委託する方法もありますが、相場として家賃の5%程度の費用がかかるため、委託するかどうかはよく検討することが大切です。
住宅ローンが残っている場合は切替えが必要になる可能性もある
賃貸に出すマンションの住宅ローンが残っている場合、ローンの条件によっては賃貸住宅専用のローンへの切り替えが必要になる場合があります。なぜなら、住宅ローンは、自分で住む住居用の融資だという前提があるからです。
そのため、住宅ローンが残っている場合は、借りている金融機関に相談しましょう。賃貸住宅専用ローンは、一般的な住宅ローンよりも金利が高くなるケースもあります。賃貸に出すためにローンを切り替えることで損にならないかどうか、しっかりと試算しておきましょう。
マンションを売却する方法(流れ)
利用していないマンションの売却を決めた場合、まず、マンションを売却する流れを把握しておくことが大切です。予め何をすればいいかがわかっていれば、スムーズに売却を進めることができます。
マンションを売却する際のおおまかな流れと目安期間は次の通りです。
- いくらぐらいで売れそうか、不動産会社に査定をしてもらう(1~2週間程度)
- 売却を仲介してもらう不動産会社と媒介契約を締結する(1週間程度)
- 売出価格を決めて売却活動を開始する(1ヵ月~数ヵ月、購入希望者が現れるまで)
- 契約条件がまとまったら売買契約を締結
- 引渡しと残金を受領(売買契約締結から1ヵ月程度)
マンションの売却にはさまざまな手続きが必要なため、スムーズに売却できたとしても売却開始から引渡しまで数ヵ月はかかります。
マンションを売却する際に流れや費用については、下記の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
複数の不動産会社に査定を依頼して比較する
マンションをいくらぐらいで売却できそうか、不動産会社に査定を出してもらう際は、必ず複数の不動産会社に依頼して結果を比較するようにしましょう。
これは、不動産会社によって査定額の出し方や得意分野が違うためです。また、担当者によっても、査定の根拠の説明のわかりやすさや販売戦略が異なります。マンションの売却は数ヵ月に渡る長丁場になるため、担当者の技量や相性が合うかどうかはとても大切です。
売却目的に合った相性の良い不動産会社と担当者を選ぶためにも、複数の不動産会社を比較することは欠かせません。
複数の不動産会社に査定を依頼する際に便利なのが、一括査定サイトの利用です。情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社に同時に査定依頼ができます。一括査定サイトを上手に活用して、自分に合った不動産会社を選びましょう。
マンションを賃貸に出す方法(流れ)
ここでは、マンションを売却せずに賃貸に出すと決めた場合の方法と流れについて説明します。
マンションを賃貸に出すおもな手順と流れは、次の通りです。
- 賃貸の仲介をしている不動産会社を探す
- 不動産会社と賃貸に出す条件を交渉し契約を選ぶ
- 不動産会社が入居者を募集する
- 入居希望者と賃貸借契約を結ぶ
- 管理業務開始(不動産会社や管理会社に委任する場合もある)
マンションを賃貸に出す際の契約には、普通賃貸借契約、定期借家契約、サブリースの3種類があります。
一般的な契約は、普通貸借契約です。賃借人からの退去希望がない限り、定められた契約期間が到来すれば契約が更新されます。
定期借家契約には更新がありません。定められた契約期間が満了すれば、契約終了です。引き続き賃貸する場合は、新たな契約を結ぶ必要があります。
サブリースとは、不動産会社や管理会社と賃貸借契約を結ぶことになります。マンションを借り受けた不動産会社や管理会社は、転貸という形で借主と賃貸借契約を結ぶというシステムです。入居者がいなくても不動産会社や管理会社から賃料は入ってきますが、サブリースの手数料の支払いが発生します。サブリースを契約する際は、契約内容や諸条件をよく確認するようにしましょう。
利回りを計算して実際のお金の動きを確認
マンションを賃貸に出す際は、実際に利回りなどお金の動きをシミュレーションしてみることが大切です。
表面利回りと実質利回りの計算式は次のようになります。
表面利回り(※)=(年間家賃収入÷物件価格)×100
実質利回り(※)={(年間家賃収入-年間支出)÷物件価格}×100
※表面利回り:物件価格に対してとれくらいの家賃収入が得られるかという表面的な収益性を計算した利回りのこと
※実質利回り:賃貸経営に必要な経費などを考慮して計算した利回りのこと
例えば、物件価格3,000万円のマンションを月額10万円の家賃で賃貸に出す場合、表面利回りは次のようになります。
(120万円÷3,000万円)×100=4%
この物件を賃貸に出す際に30万円の支出がかかった場合の実質利回りは次の通りです。
{(120万円-30万円)÷3,000万円}×100=3%
マンションを賃貸に出す場合は、表面利回りだけでなく実質利回りも計算して、収支を考えることが大切です。
マンションの売却と賃貸は同時に進められる?
マンションの売却と賃貸で迷った場合、両方を同時に進めて先に決まったほうを選ぶことも可能です。
賃貸と売却のチャンスがあるため、どちらかで成約する可能性が高いといったメリットがあります。一方で、両方の交渉や連絡、内覧対応する必要があるため、負担が増える点についてはデメリットです。
売却と賃貸を同時に進める場合は、不動産会社との媒介契約は「一般媒介」にしましょう。「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」だと、複数社へ依頼ができなくなるからです。
また、専任媒介や専属専任媒介で1社に任せてしまうと、賃貸よりも売却のほうが優先される可能性があります。不動産会社に連絡する手間は増えますが、売却と賃貸の仲介は別業者に依頼するのがおすすめです。
マンションの価値を調べることから始めよう
利用する予定のない所有マンションを売却する場合でも賃貸に出す場合でも、まずはマンションの価値を知っておくことが必要です。どちらにするか迷っている場合は、まずマンションの価値や価格を調べることから始めてみましょう。
所有マンションの立地やタイプ、予想売却価格を知り、売却・賃貸どちらに向いているのかを導き出します。その上で自身の状況やそれぞれのメリットやデメリットなどさまざまな観点から比較して売却するのか賃貸にするのか選ぶことがおすすめです。