初めての土地売却!かかる費用と税金・流れ・必要な書類を解説
多くの人にとって土地を売却する機会はそう何度もなく、さらに高額な取引きになることがほとんどです。「納得できる価格で売れなかった」「なかなか思うように売却が進まなかった」など、実際に売却を始めてから後悔しないためにも、土地を売却するまえには、売却に必要な基礎知識を身につけておくことが大切です。
ここでは、土地売却の基礎知識から、売却の際に必要となる手続きやおおまかな流れまで詳しく解説します。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
土地の売却方法
一般的な宅地を売却するには、現在の土地の状況により2つの売却方法があります。古い建物が建っている土地としての売却する方法と、更地にしてから売却する方法です。
ここでは、古家ありの土地として売却する方法と更地にしてから売却する方法、それぞれについて説明します。
古家ありの土地として売却する
1つ目は、築年数が経った家などをそのままにして、古家ありの土地として売却する方法です。
家をはじめとした建物には、構造によって法定耐用年数が定められており、一般的に法定耐用年数を超えた築年数の建物は、ほぼ価値がないものとされます。
例えば、住居用などの非事業用建物の法定耐用年数は、木造で33年、鉄骨造で28~51年です。よって、この年数が過ぎている家は建物としての価値がほとんどなく、売却の際は土地の価格のみで取引きされるケースが多くなります。
古い建物を取り壊さずに売却する方法は、解体費用や手間がかからない点がメリットです。よって、売却にできるだけ費用をかけたくない人におすすめだと言えるでしょう。
ただし、古家を中古住宅と見なされて売却した場合、経年劣化などによる思わぬ不具合や破損などの瑕疵(かし)があれば、その瑕疵に対して買主から契約不適合責任を問われる恐れがあります。契約時に、売主は瑕疵についての責任を負わないなどの特約を付けておくほうがいいでしょう。
また、買主によっては、購入後に古家の解体が必要になるという理由から、その費用分の値引きを交渉してくる場合があります。それらも踏まえた上で、売出価格を設定することがおすすめです。
更地にしてから売却する
もうひとつは、売却する土地に建てられている古い家などの建物を解体して更地にしてから売却する方法です。
更地にして売却するほうが、買主は購入後にすぐ土地を利用できるため、購入希望者が現れやすくなるといったメリットがあります。また、建物がなくなるため、建物の瑕疵についての責任を負う必要もありません。
一方で、古家の解体に費用や手間がかかる点がデメリットです。解体費用の相場は、一般的な木造住宅で100万円ほどになります。その費用も含めた上で、いくらぐらいで売れそうなのかを判断し、売出価格や売却予想価格の設定が大切です。
土地の売却に必要な費用・税金
土地を売却する場合、売却した代金が手に入るだけではなく、売却の際にさまざまな費用や税金がかかります。どのような費用や税金がかかるかを前もって知っておくことは、土地を売却する際の資金計画を建てる際にも必要です。
ここでは、土地の売却にかかる費用や税金を説明します。土地の売却にかかるおもな費用や税金は、次の通りです。
項目 | 内容 | 費用 | 支払いのタイミング |
---|---|---|---|
仲介手数料 | 売却が成功した不動産会社に支払う報酬 | 上限額の場合:売却金額×3%+6万円+消費税 ※400万円以上の取引きに限る |
売買契約時(引渡し時とに分割する場合もある) |
司法書士への報酬 | 抵当権抹消や相続の登記手続きなどを依頼した場合に支払う報酬 | 抵当権抹消手続きの場合、10,000~20,000円程度。相続登記の場合、10万円~12万円程度 | 登記手続きの依頼時(または、手続き完了時) |
ローン一括返済事務手数料 | 住宅ローンの一括返済にかかる手数料 | 無料~数万円(金融機関によって異なる) | 住宅ローンの一括返済時 |
土地の測量費用 | 土地の面積や境界を土地家屋調査士などに調べてもらう際に支払う報酬 | 10万円~20万円程度(土地の広さや形状によって異なる) | 土地の調査時 |
建物の解体費用 | 土地を更地にする際に、解体業者に支払う費用 | 建物の構造や大きさによって異なる | 建物の解体時 |
印紙税 | 売買契約書に貼付して納める税金 | 売却金額により変動 | 売買契約時 |
登録免許税 | 登記内容を変更する際に納める税金 | 抵当権抹消登記の場合、不動産ひとつにつき1,000円。相続登記の場合は、土地の価額の0.4% | 登記手続き時 |
譲渡所得税 | 不動産を売却して利益が出た場合に納める税金 | 課税譲渡所得に対して、所有期間5年以下の場合(短期譲渡所得)39.63%、5年を超える場合(長期譲渡所得)20.315% | 売却した翌年の確定申告 |
土地売却のおおまかな流れ
ここでは、土地を売却する際のおおまかな流れを説明します。
売却の流れを把握しておけば、売主として次に何をすればよいのかがわかりやすいです。
- 土地の情報を収集
- 必要な書類を準備する
- 複数の不動産会社に査定を依頼
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 売り出し価格を決め売却活動を開始
- 購入希望者と売買契約を締結し土地を引き渡す
- 売却した翌年に確定申告を行う
それぞれの詳細を説明します。
1. 土地の情報を収集
土地を売却するには、売却する土地の情報収集が必要です。以前の取引きから年月が経っている場合、土地の境界があいまいだったり面積が正確でなかったりする可能性があります。また、土地の現況や地目(登記されている土地の区分)によっては売却方法が変わってきます。
特に相続した土地やこれまでの取引き記録が残っていない土地の場合は、状況によっては売却前にさまざまな調査が必要です。
よって、具体的な売却活動に入る前に、土地の区域・登記されている土地の所有者・境界の状態・土地の相場価格、などの情報を収集しておきます。どうしても自分で調べられない場合は、査定の際に不動産会社に相談してみましょう。
2. 必要な書類を準備する
土地の情報の収集と同時に、売却に必要な書類の準備を進めます。これらの書類は、売却の際だけでなく不動産会社に査定を依頼する際にも必要となるものがあるので、早めに準備しておきましょう。
売却に必要な書類は、次の表の通りです。
書類名 | 内容 | 入手先 |
---|---|---|
登記済権利証(登記識別情報) | 土地の登記情報と所有者であることを証明する | 法務局(土地といっしょに取得済み) |
地積測量図・境界確認書 | 土地の面積や境界の証明 | 法務局 |
固定資産税納税通知書(固定資産税評価証明書) | 土地の固定資産税評価額の証明 | 土地が所在する市区町村役場 |
身分証明書 | 本人であることの証明 | 運転免許証など |
印鑑登録証明書(および実印) | 売買契約書に捺印する印鑑の証明 | 市区町村役場 |
住民票 | 土地の所有者情報と現在の住所が異なる場合に必要 | 市区町村役場 |
印鑑登録証明書や住民票の有効期間は取得から3ヵ月以内です。査定前に取得し、売買契約時に3ヵ月以上経過している場合は再取得が必要です。
3. 複数の不動産会社に査定を依頼
土地をはじめとした不動産を売却する際には、どれくらいの額で売却できそうかを不動産会社に査定をしてもらうことが必要です。
不動産会社の査定には、簡易査定と訪問査定があります。
簡易査定は机上査定とも呼ばれ、売却したい不動産の情報だけでおおよその査定額を出す方法です。土地の場合は立地や方向、現況、面積、道路との接地状態などの情報だけを提供して査定額を出してもらいます。
情報の提供だけで査定額がわかるので、気軽に査定を依頼できる点がメリットです。しかし、実際にその土地がどのような状態であるかを現地で確認していないため、査定額の精度はあまり高くないというデメリットがあります。
一方、訪問査定は実査定とも呼ばれ、不動産会社の営業や査定担当者が実際に売却したい不動産を訪れて査定する方法です。
情報だけでなく実際に現地を確認して査定額を出すため、簡易査定よりも精度の高い査定額を算出できます。簡易査定を行ってから訪問査定を依頼するのが一般的な流れです。
また、不動産会社に査定を依頼する場合は、最初から1社だけに査定してもらうのではなく複数の会社に査定をしてもらうようにしましょう。
複数の不動産会社に査定を出してもらうことで、それぞれの査定額や対応を比較した上で売却を依頼する不動産会社を選ぶことができます。
売却を依頼する不動産会社選びは、売却の成功を左右する大切なポイントになるため、査定時の対応を判断基準のひとつとするといいでしょう。
4. 不動産会社と媒介契約を締結する
媒介契約とは、売主と売却を依頼された不動産会社とのあいだで、売却活動の内容や売却が成功した際の報酬である仲介手数料の額などを取り決めたものです。
不動産会社に土地の査定をしてもらい売却を依頼する不動産会社を決めたら、不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約には、次の3つの形態があります。それぞれの契約内容や特徴は、次の表の通りです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
同時に複数の不動産会社との契約 | できる | できる | できない |
自分で見つけた買主との直接取引※ | できる | できる | できない |
不動産会社の売却活動の報告義務 | なし(任意) | あり(2週間に1回以上) | あり(1週間に1回以上) |
指定流通機構(レインズ※)への登録義務 | なし(任意) | あり(契約締結日から7日以内) | あり(契約締結から5日以内) |
契約期間の定め | なし(行政指導では3ヵ月以内) | あり(3ヵ月以内) | あり(3ヵ月以内) |
※直接取引とは、不動産会社の仲介を通さずに売主と買主だけで契約を結ぶこと。
※指定流通機構(レインズ)とは、不動産会社のみが利用できる物件の情報サイトのこと。レインズに登録された物件は全国の不動会社が閲覧できるようになる
5. 売り出し価格を決め売却活動を開始
売却を依頼する不動産会社と媒介契約を結んだら、いよいよ売却活動の開始です。不動産会社と相談して売出価格を決定し、購入希望者を募ります。
売出価格は査定額と相場価格を基に、値引き交渉が入ることも踏まえた上で決定することが大切です。いくらで売却する必要があるのか、どのくらいなら値引きできるように設定するかなどの資金計画をしっかりと立てましょう。
不動産会社は、レインズや不動産情報サイトへの物件の登録、チラシや広告の配布、来店顧客への紹介などを通して購入希望者を募ります。売却活動の主流は不動産会社なので任せておくとよいでしょう。
6. 購入希望者と売買契約を締結し土地を引き渡す
購入希望者が現れたら、売買取引条件の交渉をします。交渉自体は不動産会社の担当者が行うので、相談をしながら交渉の落としどころを決めていきましょう。
売主と買主、双方が納得すれば売買契約の締結です。売買契約の締結は、売主と買主、そして不動産会社の担当者が集まって行われますが、持ち回り契約と言って、契約書だけを不動産会社の担当者が持ち回って契約することもあります。
契約締結時に、買主から売主に対して支払われるのが手付金です。手付金の額は、売買額の1割程度になります。また、不動産会社への仲介手数料の支払いもありますが、売買契約締結時に半額を支払、残りを引渡し完了時に支払うとしていることが多いです。
引渡し時には、売主と買主、それぞれの不動産会社の担当者、金融機関の担当者(売主のローンの一括返済があったり買主のローン設定があったりする場合)、登記手続きを依頼する司法書士が集まって、残金の決済と引渡しが行われます。
残金の支払いが完了して司法書士が所有者変更の登記手続きを済ませれば、土地売却の引渡し完了です。
7. 売却した翌年に確定申告を行う
土地を売却して利益が出た場合は、売却の翌年に確定申告をして譲渡所得税の納税が必要です。
譲渡所得税とは、不動産を売却して得られた利益(譲渡所得)に対して課せられる税金で、所得税(および復興特別所得税)と住民税からなります。
ただし、不動産売却によって得られた譲渡所得の額すべてに課せられるのではありません。不動産を取得する際にかかった費用(取得費)や、売却の際にかかった費用(譲渡費用)および特例による控除などを差し引いた額に税率を乗じた額になります。
譲渡所得税を納める場合は、不動産を売却した翌年の確定申告を必ず行わなければなりません。譲渡所得税がなければ確定申告は不要ですが、売却や買い替えによって損失が出た際の特例を適用する場合は確定申告が必要です。
土地などの不動産を売却した翌年の確定申告が必要かどうかは、前もって確認しておくようにしましょう。
土地を希望価格で売却するためのコツ
ここでは、土地を希望価格で売却するためのコツを紹介します。
土地の相場価格を把握する
土地を売却する際は、不動産会社に査定を依頼する前に、前もっておおよその相場価格を調べておくことが大切です。
相場価格を調べておけば、土地の売却にかかわる資金計画を立てやすくなるだけでなく、不動産会社が出した査定額が妥当かどうかを判断する材料になります。
土地の相場価格は、次のようなサイトを利用して調べることが可能です。いずれのサイトも無料で簡単に調べることができます。
項目 | 調べられる内容 | 提供元 |
---|---|---|
全国地価マップ | ・固定資産税路線価など ・相続税路線価など ・地価公示価格 ・都道府県地価調査価格 |
一般財団法人資産評価システム研究センター |
土地総合情報システム | ・不動産取引価格情報 ・地価公示価格 |
国土交通省 |
レインズ・マーケット・インフォメーション | 不動産取引価格情報 | 不動産流通機構 |
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土地は清掃しておく
土地の売却活動は、売却を依頼した不動産会社が中心となって購入希望者を探してくれます。また、購入希望者が現地を確認する際の対応も、不動産会社の担当者が行ってくれることがほとんどです。
しかし、売主として何も売却活動がないわけではありません。購入希望者が現地確認をする場合に備えて、草取りをしたりゴミを片付けたりするなど、土地の清掃をしておきましょう。
土地をきれいな状態にしておけば購入希望者に与える印象がよくなるため、売却できる可能性が高くなります。
【ケース別】土地を売却する際の注意点
土地を売却する状況や理由はさまざまです。ここでは、ケース別に、土地を売却する際の注意点を説明します。
境界が不明な土地を売却する場合
何代も前から所有している土地や相続した土地の場合、隣地との境界が不明な場合があります。
境界が曖昧なままでの売却は難しく、また万が一売却できたとしても、売却後にトラブルが発生する恐れがあるため、売却前に土地の境界を明確にしておくことが必要です。
法務局から地積測量図、境界確認書を取得して調べてもわからない場合は、測量士や土地家屋調査士に依頼をして測量してもらいましょう。
測量の費用の相場は、100平方メートル程度の一般的な四角い土地の場合、10万円~20万円です。
相続した土地を売却する場合
相続した土地を売却する場合、土地の名義人を相続人に変更することが必要です。よって、まず相続手続きをして土地の名義人を変更してから売却の手続きをするようにしましょう。
相続登記は自分でもできますが、複雑な場合は司法書士に依頼します。相続登記の登録免許税は、土地の評価価額の0.4%です。司法書士への報酬は、司法書士や手続きの複雑さによって異なりますが、相場額は10万円程度になります。
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共有名義の土地を売却する場合
土地の相続人が複数人いる場合や土地の名義人が複数人いる場合など、共有名義の土地を売却する際には、全員の同意が必要です。
また、売買契約書への署名、捺印も全員分が必要なので、手続きに時間がかかることがあります。そのような手続きがたいへんな場合は、共有者同士で持分の取引きを済ませておいたり、代表者を決めて売買取引を委任したりすることも可能です。
土地売却の基礎知識と不動産会社選びが成功のポイント
土地の売却に関して、わからないことや不安なことがある場合は、専門家への相談がおすすめです。初回の無料相談を受け付けているところもあるので、調べてみるといいでしょう。
おもな相談先は、次の通りです。
- 税理士:土地の相続税や固定資産税などに関する相談
- 司法書士:土地の登記に関する相談
- 土地家屋調査士:土地の測量に関する相談
- 不動産鑑定士:土地の評価や鑑定に関する相談
これらの専門家に相談するまえに、一度、不動産会社に査定してもらいましょう。査定額がわかるだけでなく、適切な相談先を教えてくれることもあります。
査定を依頼する不動産会社を探すには、一括査定サイトがおすすめです。土地の情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社に査定を依頼できます。
土地売却の基礎知識と不動産会社選びが成功のポイント
土地の売却を成功させるためには、売却に関する基礎知識と売却の流れを知っておくことが大切です。また売却活動は不動産会社に任せることになるので、媒介契約を結ぶ不動産選びも重要になってきます。
売却したい土地の査定を出してもらうときは、複数の不動産会社に依頼することがおすすめです。そして査定額だけでなく、担当者の対応などもチェックして売却を任せる不動産会社を選ぶようにしましょう。
複数の不動産会社への査定依頼は、一括査定サイトを利用すると便利です。土地売却の基礎知識を身につけ、一括査定サイトを上手に利用して売却を成功させましょう。