離婚時に任意売却はするべき?懸念点や検討する際のポイントを解説
離婚した際に、財産分与のために持ち家を売却することはよくあることです。もし査定額が住宅ローン残高よりも低く、なおかつ自己資金での返済が難しい場合は、任意売却が売却方法の一つとして候補に挙がるでしょう。
任意売却は、金融機関の許可を得ることで、住宅ローン残高が残った状態でも不動産を売却できる方法です。
本記事では、離婚時の選択肢として、任意売却が適切なのかどうかを解説します。懸念点や検討する際のポイントも解説するので、参考にしてください。
任意売却の基礎知識については、以下の記事を参考にしてください。
- 離婚で任意売却をするべきケース
- 離婚で任意売却を選ぶデメリット
- 任意売却以外の売却方法
離婚で任意売却をするべき?
離婚をきっかけに自宅を手放す際に、任意売却をするべきかどうか迷っている方もいるでしょう。実際に任意売却を利用したほうがいいケースと、任意売却以外を利用したほうがいいケースの特徴を解説します。
任意売却をしたほうがいいケース
任意売却をしたほうがいいケースとしては、以下の2つがあります。
- 残債を支払えない場合
- 離婚後も自宅に住み続ける場合
それぞれ詳しく解説していきます。
残債を支払えない場合
住宅の査定額が住宅ローンの残債よりも少なく、差額を一括返済する資力がない場合、任意売却したほうがいいケースと考えられます。現金化して財産分与の対象にしたくても、住宅ローンが残っている限り契約した銀行等によって抵当権が設定されているため、通常の手段では売却できないのです。
もちろん、そのまま完済までローンの支払を続けるという選択肢もあります。しかし、これまで夫婦2人の収入でローンを支払っていた場合など、離婚によって支払いが困難になってしまうケースも少なくありません。
住宅ローンを支払えず、滞納が10〜14ヶ月ほど続くと、その住宅は現金化して残債に充当するため競売にかけられます。ところが、競売での売却額は市場価格の50%から70%程度にしかならないため、依然として多額の返済義務が残ってしまいます。
離婚によってローンの支払いが困難になり、なおかつ競売を避けるのであれば、任意売却が有力な選択肢となります。
以下の記事では、任意売却と競売の違いを詳しく解説しています。
離婚後も返済しつつ連帯保証人が住み続ける場合
住宅ローン返済を続けながら、夫婦のうち連帯保証人となっている人が居住を続ける場合は、将来のリスクを考慮して離婚時に任意売却を選択したほうが良いでしょう。
一般に、住宅の所有者は夫、返済する住宅ローンの連帯保証人は妻になっていることが多いです。そのようなケースでは、離婚後に元夫が住宅ローンを滞納すると、連帯保証人である元妻には一括返済するように請求されます。
支払わなければ競売にかけられ、落札されたタイミングで突然退去を告げられてしまいます。このような事態を避けるためにも、元配偶者の返済能力に不安がある場合は、早めに任意売却に強い不動産会社に相談したほうが良いでしょう。
任意売却と、後述するリースバックを併用すれば、売却後も自宅に住み続けることが可能です。次に住む場所を探す場合でも余裕を持って準備できるでしょう。
任意売却の相談先は、以下の記事を参考にしてください。
任意売却以外の売却方法を選ぶケース
以下に当てはまる方は、任意売却以外の売却方法を検討しましょう。
- 査定額が住宅ローン残高よりも高い場合
- 売却価格と残債の差額分を自己資金で補える場合
- 資金調達が困難でない場合
そもそも、住宅ローンの支払いが困難ではない場合は、原則として任意売却の同意を得ることができません。
「住宅ローンを滞納をしていなくても任意売却はできる?」と疑問のお持ちの方は以下の記事をご参考ください。
以下で、それぞれどのような売却方法が適切なのか解説していきます。
査定額が住宅ローン残高よりも高い場合
査定額が住宅ローン残高よりも高いのであれば、任意売却を選ぶ必要はありません。
任意売却は、住宅を売却しても一括返済できる見込みがないことを前提に、夫婦の離婚によって住宅ローンの滞納や返済不能が生じる恐れがある場合の方法です。不動産を売却してローンが完済できるのであれば、任意売却を選ぶ理由はなく、一般的な売却方法を選べます。
一般的な売却方法としては、不動産会社が間に入って買主を探す「仲介」と、仲介と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。
住宅価格の査定額(正確には売却価格)が住宅ローン残債を上回る状態は、アンダーローンとも言われます。都心部の中古マンションや、都心に近い土地の所有権付きの戸建てに多く見られます。
残債を自己資金で補える場合
自宅の査定額がローンの残債を下回っていても、その差額を自己資金で支払えるのであれば、ローンを完済して抵当権を抹消できるため、通常の方法で売却することができます。
ただし、必ずしも不動産会社の査定額で実際に売却できるとは限りません。提示された金額よりも売却価格が低くなる可能性もあるため、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要になってくるでしょう。
資金調達が困難でない場合
資金調達が困難でない場合は、離婚後も住宅ローンを払い続け、査定額よりも住宅ローン残債が低くなったときに売却を行うという方法もあります。
建物には耐用年数があり、その価格は時間の経過とともに下がってしまいます。一方で、土地は消耗品ではないため、地域の事情によるものの、価値が減少し続ける可能性は低いと考えられます。
一方で、住宅ローンは払い続けていれば減っていくため、いずれは住宅ローンの残債が査定額を下回り、通常の方法で売却することができるようになります。
つまり、不動産を急いで売却する必要がなく、ローンの支払いも問題ないのであれば、任意売却で売却せずに、通常の方法で売却できるタイミングを待つことも視野に入れておきましょう。
離婚で任意売却を選ぶデメリット
住宅ローンを完済しなくても売却でき、競売を避けることのできる任意売却ですが、デメリットもあります。離婚に関わる任意売却のデメリットは、以下の2つです。
- 連帯保証人や共同名義人の同意を得なければいけない
- 離婚した相手と連絡を取り合わなければいけない場合がある
住宅の売却は連帯保証人や共同名義人の同意が無ければできません。すでに離婚し、別居している場合でも、連帯保証人や共同名義人は解消されないため、連絡を取り合って同意を得る必要があります。
ただし、なかには関係性が破綻、決裂しており、同意を得られないケースもあるでしょう。このような事情がある場合は、不動産会社に間に入ってもらうことも可能です。
また、任意売却は、離婚に限らず以下のようなデメリットもあります。
- 任意売却を扱い、得意としている不動産会社を探す必要がある
- 精神的な負担や手間ががかかる
- 信用情報に記録されてしまう
- ローンが残った場合支払いが必要
- そもそも任意売却できる条件を満たせないケースも多い
- 売れなければ競売にかけられてしまう
任意売却は、これらのデメリットを踏まえたうえで検討しましょう。詳しくは以下の記事をチェックしてください。
離婚で任意売却を検討する際のポイント
離婚で任意売却を検討する際に、押さえるべきポイントを解説します。単純に任意売却するだけではなく、売却後もそのまま住み続ける方法もあるので、ぜひ参考にしてください。
離婚前に任意売却について話し合う
可能であれば、離婚前する前の状態で、任意売却について話し合っておいてください。
離婚後は、お互いを避けてしまうことも多く、連絡が取れないことや、取れたとしてもスムーズに話が進まない可能性があります。結果的に、手続きや準備に時間がかかり、競売にかけられてしまう可能性があります。
そうならないためにも、離婚前、もしくは別居までの間に任意売却について話し合い、スムーズに準備できる状態を作っておきましょう。
リースバックも検討する
任意売却にあたって、リースバックも検討しましょう。
リースバックとは、住宅を売却し売却代金を得たあとも、賃料を毎月支払うことで、売った住宅にそのまま住み続けられるという売却方法です。
任意売却はリースバックと併用することが可能です。この方法であれば、住宅ローンの支払いが難しい場合でも引越しせずに済み、引越し費用や精神的な負担を減らせる可能性があります。
また、所有権が移るため、固定資産税などの維持費を支払う必要がなくなるといったメリットもあります。
なお、リースバックの利用においても、買取価格の合意を金融機関に得る必要があります。
離婚時に任意売却をしたほうがいいのか【まとめ】
離婚時に任意売却したほうが良いケースは以下の2つです。
- ローン残債を返済できない場合
- 離婚後も連帯保証人が住宅に住む場合
離婚時に任意売却するのであれば、できる限り早めに任意売却について相談し、競売にかけられるまでに売却できるように注力しましょう。また、リースバックも検討してみてください。
反対に、査定額が住宅ローン残高よりも高い場合や、自己資金で返済できる場合は、任意売却を選ぶ必要はなく、仲介や買取で売却するのが良いでしょう。
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住宅価格の査定額(正確には売却価格)が住宅ローン残債を下回る状態は、オーバーローンとも言われます。残った返済義務の負担方法も、財産分与に関する話し合いに含める必要があり、不動産会社・金融機関・弁護士の3者を交えた複雑な対応になります。