マンションの寿命は50年?寿命に影響のあるポイントも徹底解説

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マンションの寿命はどのくらい?寿命に影響のあるポイントも徹底解説

マンションに居住中あるいは購入を検討中の人の中には、この先どのくらいの期間住めるのか不安な人も多いものです。建物には遅かれ早かれ寿命があるため、マンションも戸建てと同様に建て替えが必要な時期が訪れます。
建て替えにかかる費用はマンションの資産価値によって異なりますが、1戸あたり1,000万円程度が相場だと言われています。費用が高額なことに加えて居住者の高齢化により、建て替えが必要な時期を迎えても身動きできないマンションも多いのが現状です。
すでに居住中あるいは購入を検討中の人は、マンションが寿命を迎える時期やメンテナンス計画などをきちんと把握しておくことが大切。この記事では、マンションの一般的な寿命や影響を与えるポイントなどを解説します。

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【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!

マンションの寿命とは

マンションの寿命とは

リーズナブルな価格のマンションを見つけても、品質やメンテナンスなどのさまざまな要因で通常よりも早く寿命を迎える可能性もゼロではありません。まずはマンションの一般的な寿命を把握し、通常ならどのくらい住み続けられるかをチェックしてみましょう。

寿命は品質やメンテナンスで変わる

躯体(鉄筋コンクリート)の寿命は100年以上ですが、マンションでは50年程度で建て替えられることが多いです。

国土交通省が平成25年9月26日に公表した研究結果では、RC系住宅の平均寿命は68年であることが示されています。

RCは鉄筋コンクリート造と呼ばれることもあり、鉄筋コンクリートを用いた建築工法です。研究結果の中ではここ20~30年に建てられた住宅の場合、適切なリフォームやメンテナンスによって100年でも十分にもつとも示されています。

つまり、マンションの寿命は建物の品質とメンテナンスで変動するというわけです。 しかし日本では新築が好まれる傾向のため、本来の寿命よりも早めに取り壊されることがほとんどです。

出典:国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取り組み紹介(平成25年9月26日)

マンションの寿命=法定耐用年数ではない

マンションの寿命は、法定耐用年数を目安に考えられることもあります。法定耐用年数とは、減価償却の計算を行うために法律で定められた年数です。建物の法定耐用年数は、構造や用途ごとに定められています。

住宅用建物の法定耐用年数は次の通りです。

構造 法定耐用年数(用途:住宅用)
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年

マンションは基本的に鉄筋コンクリート造なので、法定耐用年数は47年になります。ただし、法定耐用年数はあくまで減価償却費の計算に用いる基準です。そのため、法定耐用年数とマンションの寿命はイコールではありません。 

マンションの寿命に影響を与えるポイント

マンションの寿命の寿命に影響を与えるポイントは、次の2つです。

  • マンションの建物の品質
  • マンションのメンテナンス状態

各ポイントを詳しく解説します。

マンションの建物の品質

建物の品質と一口に言ってもひとつだけではありません。マンションの寿命に影響を与える品質は、耐震基準・建材・配管などがあります。

マンションの耐震基準

マンションの寿命は、旧耐震基準と新耐震基準のどちらの適用で建てられたかで異なります。耐震基準は、1978年に発生した宮城県沖地震をきっかけに見直されました。

耐震基準 目安
新耐震基準 震度6強~7程度の揺れでも倒壊しない
旧耐震基準 震度5程度の中規模地震で建物が崩壊しない

1981年6月1日以降に建てられたマンションには新耐震基準が適用されているため、大規模地震が発生しても建物へのダメージが少ないです。その一方で旧耐震基準が適用されたマンションは、大規模地震でダメージを受けると寿命が短くなる可能性があります。

2000年には1995年に発生した阪神淡路大震災をきっかけに改正が行われ、耐震基準はより厳しいものになりました。2000年基準によって義務化された項目は次の通りです。

  • 地耐力に適した基礎設計
  • 柱・梁・筋交いの接合部に固定金具を取りつける
  • 耐力壁をバランス良く配置する

旧耐震基準でも、耐震補強工事を行えば建物の強度を上げることはできます。しかし、耐震補強工事には高額な費用がかかるため、寿命を迎える前に建て替えを選ぶマンションも少なくありません。 

マンションの建材

マンションの寿命は建材次第で変動します。良い建材を使用しているマンションは、一般的な寿命よりも長くなる可能性があります。高品質の建材とは鉄筋を覆う部分が分厚く、セメントに対する水の比率が低いものなどです。

築年数が古いマンションの場合、低品質の建材が使用されていることがあります。とくに1970年代はマンションの建設ラッシュで低品質の建材が使用されていることが多かったため、築10年経った頃に雨漏りが発生する事例も相次ぎました。

マンションの寿命に影響がある建材は、構造に関するものだけではありません。メッキ銅管の給排水管は錆びやすいため、マンションの劣化につながります。一方で塩化ビニール管は腐食や詰まりに強いため、マンションの寿命を延ばせます。 

マンションの配管

マンションの寿命は、給排水管の取りつけ方が影響するケースもあります。従来は、給排水管がコンクリートに埋めるタイプや天井裏を通すタイプが主流でした。

コンクリートに埋めるタイプは、配管が劣化しても交換工事を行えません。一方の天井裏を通すタイプも階下の天井を剥がす必要があるため、交換工事は非現実的です。そのため、従来の工法で取り付けられたタイプは、給排水管と同時にマンションも寿命を迎えてしまう可能性があります。 

マンションのメンテナンス状態

マンションを建てた後は定期的にメンテナンスが必要です。適切な時期に十分なメンテナンスが行われているマンションは、法定耐用年数よりも長期間の維持ができますが、メンテナンスを行わなければ寿命が短くなることがあります。

最近建てられたマンションには長期修繕計画書が作成されており、定期的なメンテナンスが行われています。計画書には数十年単位での修繕計画や収支がまとめられているため、適切な時期に必要なメンテナンスがスムーズに行えるというわけです。

一方で築年数が古いマンションには長期修繕計画がなく、不具合が生じてからメンテナンスを行うケースも多いです。マンションの寿命は定期的なメンテナンスに加えて、立地条件に適した内容であるかも重要になります。 

マンションが寿命を迎えたらどうなる?

マンションが寿命を迎えたらどうなる?

寿命を迎えたマンションは、そのまま住み続けることが難しいケースもあります。劣化が著しく住み続けるのが難しい場合は、建て替えや売却の検討が必要です。寿命を迎えたマンションの居住者の選択肢は次の通り。

  • 建て替える
  • 売却する
  • そのまま住み続ける

各項目を詳しく解説します。

建て替える

寿命を迎えたマンションで検討される選択肢のひとつは、建て替えです。

しかし、建て替えが必要な時期を迎えても、スムーズに工事に移れるわけではありません。建て替える場合は高額な費用が発生し、区分所有者である居住者の負担となります。

また、居住者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要となるため、必要な賛成数に至らなければ建て替えできず、売却やそのまま住み続けるなどのほかの選択を余儀なくされます。

建て替えには、1戸あたり1,000万円程度の負担が必要なため、実際に建て替えに至った事例はかなり少ないです。居住者の経済的な負担を軽減するためには、建て替えと同時に戸数を増やし、販売で得た費用を資金に充てる方法もあります。ただし、敷地内に戸数を増やせる環境があることや好立地などが前提条件になります。 

売却する

マンションが寿命を迎えた際には、デベロッパーに建物ごと売却するのもひとつの手です。具体的にはマンションの売却益を居住者が受け取った後、それぞれほかの場所に転居する方法です。

売却したマンションは、新たなマンションや商業用ビルなどに生まれ変わります。新たな建物を建てるためには、既存のマンションの解体が必要です。解体費用は売却費用から差し引かれるため、居住者に配分される売却益は十分ではありません。

居住者の中には、新たな住まいを用意する費用が足りない人もいるでしょう。そのため、デベロッパーへの売却に反対する居住者も多いです。 

そのまま住み続ける

建て替え決議は、マンションの管理組合が開く集会によって行われます。管理組合を滞りなく運営するためには、居住者の協力が必要です。ここで、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」を紹介します。

管理組合運営における将来への不安に対し、区分所有者の高齢化と回答した人が最も多かったことがわかっています。

管理組合運営における将来への不安 割合
区分所有者の高齢化 53.1%
居住者の高齢化 44.3%
修繕積立金の不足 31.2%
大規模修繕工事の実施 27.8%

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」

今回の調査では、区分所有者や居住者の高齢化に不安を感じている人が多いことがわかります。マンションは新築のときから住み続けている居住者も多いため、寿命を迎えた時点で高齢になっているケースも珍しくありません。

また、高齢の居住者が多いマンションの場合、転居先を探す費用や気力がない人も多く、建て替えが必要な時期を迎えても住み続ける選択をする人も多いのが現状です。

寿命の長いマンションか見極めるには

寿命の長いマンションか見極めるには

マンションに居住中あるいは購入を検討中の人は、そのマンションの寿命が長いかを見極めることが大切です。築年数が古いマンションの場合、耐震基準が不十分だったり長期修繕計画がなかったりするからです。

また、寿命を迎えたときに建て替えを希望しても、一定の賛成数が得られなければ実現に至りません。ここでは、寿命の長いマンションを見極める方法を解説します。

マンション寿命を決めるポイントを確認

まずは、マンションの寿命に影響を及ぼすポイントをチェックしましょう。

  • 耐震性
  • 配管の状態
  • コンクリートの状態
  • 塗装のひび割れ
  • メンテナンスの状態
  • 今後の修繕計画
  • 修繕積立金の徴収状況 など

これらのポイントをチェックすると、マンションの寿命が長いかがわかります。

修繕積立金は、居住者が毎月管理費とともに支払う費用です。徴収状況が悪いと十分なメンテナンスが行えず、マンションの寿命が短くなることが考えられます。

このほかにマンションの寿命をチェックするポイントには、劣化対策等級があります。劣化対策等級とは、建物の劣化対策がどの程度行われているかを評価する住宅性能表示制度です。等級は、建物の長持ち具合が3段階で評価されます。

等級 評価内容
等級3 3世代(75年~90年程度)まで長持ちする
等級2 想定される自然条件および維持管理条件次第で2世代(50年~60年程度)まで長持ちする
等級1 建築基準法が定める対策が講じられている

マンションの品質がわかる制度も活用

マンションには、新築と中古それぞれに品質がわかる制度が導入されています。

【新築:住宅性能表示制度】

住宅性能表示制度は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて2000年4月1日に施行されました。具体的には施工会社が設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書に沿って調査し、買い手に「住宅性能評価書」を提示して結果を知らせるというものです。

住宅性能評価書に記載されている項目は次の通りです。

  • 地震などに対する強さ
  • 火災に対する安全性
  • 柱や土台などの耐久性
  • 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策
  • 省エネルギー対策
  • シックハウス対策・換気
  • 窓の面積
  • 遮音対策
  • 高齢者や障害者への配慮
  • 防犯対策

【中古:安心R住宅マーク制度】

安心R住宅マークは、国土交通省が定めた基準を満たした住宅の広告のみに表示が認められているロゴマークです。ロゴマークがある中古マンションは、施工会社や専門家によるインスペクションが行われています。

インスペクションとは言わば住宅の健康診断で、品質や耐震性などを一定の基準に沿って行う評価です。インスペクションを行っているのがわかれば、住宅の欠陥などがないかを事前に知れるので購入時のリスクを軽減できます。

マンションのメンテナンス計画を確認してみよう

マンションのメンテナンス計画を確認してみよう

マンションに居住中または購入を検討中の人は、まずは長期修繕計画書を取得しましょう。計画書は、マンションの管理会社経由で取り寄せることが可能です。建物に目立つキズやひび割れがある場合でも、近い将来に修繕が行われる予定が記載してあれば安心です。

また、計画書では、今の修繕積立金で今後の修繕費用がカバーできるかもチェックしておきましょう。カバーできない場合、居住者の負担が大きくなるからです。法定耐用年数に近づいたマンションでも、十分にメンテナンスされていればより長く維持することが可能です。

計画書をチェックし、これからも長く住み続けられるマンションかどうかを見極めましょう。

この記事についてのおさらい

マンションの寿命はどれくらい?
寿命の長いマンションの見極め方
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