マンション売却後の確定申告に必要な書類一覧|控除についても解説
不動産を売却して出た利益を「譲渡所得」と呼びます。マンションなどを売却して譲渡所得が出た場合は、確定申告をして給与などの所得税とは別に税金を納めなければなりません。しかし、譲渡所得が出たとしても、要件を満たせば確定申告時に課税されなかったり税金が軽減されたりする場合があります。
この記事では、マンション売却後、確定申告をどのようにすればよいのか、必要な書類は何か、節税するための注意点などを詳しく解説。これからマンションを売却する人や、将来売却の予定がある人は、ぜひ参考にしてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
マンション売却後の確定申告について
確定申告とは、国税庁が主体となって行われる税金の申告制度。1年間(1月1日~12月31日)で得たすべての所得と、それに対する所得税などの税金を計算して、翌年の定められた期間内に確定申告書を提出して税金を納める(または還付を受ける)手続きです。
マンションなどの不動産を売却して譲渡所得があった場合は、売却した翌年に確定申告が必要です。
確定申告は、税務署の窓口で行うだけでなく、郵送や「e-tax」という電子申告納税システムを利用して行うこともできます。
確定申告の時期
確定申告の時期は暦によって異なりますが、原則として毎年2月16日~3月15日のあいだです。定められた期間内に確定申告をしないと、無申告加算税が課せられてしまいます。
無申告加算税は納付すべき税額によって異なり、税額が50万円までの部分は15%、50万円を超える部分については20%です。
ただし、本来ならば無申告加算税が課される期限後申告であっても、法定申告期限から1ヵ月以内に自主的に申告したり、これまでに無申告加算税などを課されたことがなかったりなどの要件を満たせば、無申告加算税が課されないこともあります。
無申告加算税が課されない場合でも、申告期限日から申告した日までの延滞税の支払は必要になるので、確定申告の期日を必ず守るようにしましょう。
確定申告が不要なケース
マンションなどの不動産を売却して利益(譲渡所得)が出ず、納める税金がない場合は確定申告の必要はありません。つまり、売却した翌年に確定申告をしなくても、特に法的な問題は生じないと言えます。
ただし、売却によって損失がでた場合の控除や損益通算などの特例は、確定申告をしなければ適用されないものがほとんどです。
確定申告をしないことで損をする恐れもあるため、マンションなどの不動産を売却した翌年には、確定申告をしておくほうがいいでしょう。
詳しくは下記の記事で紹介しています。
マンション売却の確定申告に必要な書類一覧
マンション売却後の確定申告の際に必要な書類は、次の通りです。それぞれの必要書類について詳しく説明していきます。
書類の種類 | 取得または申請場所 |
---|---|
確定申告書B様式 | 税務署の窓口、または国税庁サイトからダウンロードで入手できる |
確定申告書第三表 | 税務署の窓口、または国税庁サイトからダウンロードで入手できる |
譲渡所得の内訳書 | 税務署の窓口、または国税庁サイトからダウンロードで入手できる |
不動産の売買契約書のコピー | 売買契約を結んだ際に取得 |
仲介の手数料などの領収書 | 仲介手数料など、マンションを売却した際にかかった費用の支払い後に取得 |
取得費用の領収書 | 売却したマンションを購入した際にかかった費用の支払い後に取得 |
売却した不動産の全部事項証明書 | 法務局の窓口かオンライン申請で入手できる |
源泉徴収票または事業の確定申告に関する書類 | 勤め先などから発行してもらったもの |
マイナンバーを提示できる書類 | マイナンバーカードや住民票(役所で入手) |
社会保険料、生命保険料、地震保険料等の控除に係る書類 | それぞれの保険会社から発行されたもの |
税務署で手に入れる書類
税務署の窓口、または法務局のサイトからダウンロードで入手できる書類は次の通りです。
- 確定申告書B様式(譲渡所得がある場合に必要となる書類)
- 確定申告書第三表(分離課税がある場合に必要となる書類)
- 譲渡所得の内訳書(譲渡所得の内訳の記入に必要となる書類)
窓口で入手してもダウンロードで入手しても記入例がいっしょに手に入るので、それに従って記入するといいでしょう。
自分で手に入れておく書類
自分で取得する必要書類は、次の通りです。
- マンションを売却したときの売買契約書(コピーを準備)
- 売却時の仲介の手数料などの領収書(それぞれのコピーを準備)
- 売却したマンションを購入したときにかかった手数料などの領収書(それぞれのコピーを準備)
- 売却したマンションの全部事項証明書
- 源泉徴収票または事業の確定申告に関する書類
- マイナンバーを提示できる書類
- 社会保険料、生命保険料、地震保険料等の控除に係る書類
売買契約書を紛失することは少ないかもしれませんが、仲介手数料など売却や購入にかかった費用の領収書は紛失しがちです。失くしてしまった場合、再発行できないこともあるため、大切に保管しておきましょう。
売却したマンションの登記事項証明書(全部事項証明書)は、法務局の窓口かオンライン申請で入手できます。オンラインで申請をして、郵送や窓口に出向いて受け取ることも可能です。
確定申告に必要な課税譲渡所得の計算方法
マンションなどの不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、確定申告で税金を納める必要があるのは先に述べた通りです。しかし、得られた利益すべてに税金が課せられるわけではありません。
売却によって得られた譲渡所得から、売却した不動産を購入した際にかかった費用(取得費)と、売却の際にかかった費用(譲渡費用)、さらに特別控除が適用できる場合は控除額を差し引いた額(課税譲渡所得)に税金が課せられます。
実際に課税される譲渡所得の額(課税譲渡所得額)の計算式は、次の通りです。
課税譲渡所得額=譲渡所得-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
取得費として含まれるものは、マンションを購入した代金や購入時の仲介手数料などです。また、譲渡費用としては、マンションを売却した際の仲介手数料などの費用が含まれます。
次のようなマンションを売却した場合の課税譲渡所得額を計算してみます。
購入した価格:3,500万円
購入時の取得費:100万円
売却した価格:7,500万円
譲渡費用:200万円
特別控除がなければ、課税譲渡所得の額は次の通りです。なお本来であれば、購入した価格から建物部分の減価償却費を差し引いた額で計算しますが、今回の計算では減価償却費を差し引いていません。
7,500万円-(3,500万円+100万円+200万円)=3,700万円
特別控除がなければ、この3,700万円に譲渡所得税の税率を乗じた譲渡所得税が課せられることになります。
ただし、マイホームを売却した場合、要件を満たせば「マイホーム売却時の3,000万円の特別控除」の特例が適用されるため、課税譲渡所得が3,000万円までなら譲渡所得税が課されません。
特別控除や特例などについては、後ほど詳しく説明します。
譲渡所得税の税率
課税譲渡所得額の算出方法がわかったところで、次は譲渡所得税の税率について詳しく説明します。
マンションを売却した際の譲渡所得に課せられるのは、所得税と住民税です。2037年(令和19年)12月31日までは、所得税額に対して2.1%の復興特別所得税も加算されます。この3種類の税金をまとめて「譲渡所得税」と呼ぶことがほとんどです。
長期譲渡取得と短期譲渡取得
譲渡所得税の税率は、売却した不動産の所有期間によって変わります。所有期間のカウント方法は、取得してから売却した年の1月1日時点で5年を越えているかどうかが基準です。
所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」の税率が適用されます。
所有期間 | 税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 不動産の所有期間が5年以下 |
39.63% (所得税:30.63%、住民税:9%) |
長期譲渡所得 | 不動産の所有期間が5年超 |
20.315% (所得税:15.315%、住民税:5%) |
※所得税には復興特別所得税2.1%が含まれます。
税額の計算方法
国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」や確定申告ソフトを利用する場合、申告書の必要記入事項に正しい情報を入力していくだけで、譲渡所得税がかかるかどうか、またかかるのであればいくらになるかが自動で計算されます。そのため、前もって計算する必要はありません。
しかし、マンションを売却した際の資金計画を立てるのであれば、おおよその税額を把握しておくほうが便利です。
また、短期譲渡所得と長期譲渡所得との違いを確認することで、売却時期を決めるポイントにもなります。先ほどの計算例で、確認してみましょう。
購入した価格:3,500万円
購入時の取得費:100万円
売却した価格:7,500万円
譲渡費用:200万円
マイホーム売却時の3,000万円特別控除が適用された場合の課税譲渡所得額の計算は次の通りです。
7,500万円-(3,500万円+100万円+200万円)-3,000万円=700万円(課税譲渡所得額)
本来であれば、購入した価格から建物部分の減価償却費を差し引いた額で計算することになりますが、今回の計算では減価償却費を差し引いていません。
短期譲渡所得税の税率を乗じると、譲渡所得税の額は次のようになります。
700万円×0.3963(39.63%)=277万4,100円
(所得税:210万円、住民税:63万円、復興特別所得税:44,100円)
長期譲渡所得税の税率を乗じると、譲渡所得税の額は次のようになります。
700万円×0.20315(20.315%)=144万2,050円
(所得税:105万円、住民税:35万円、復興特別所得税、22,050円)
この計算からわかるように、所有期間が5年以下と5年を超える場合とでは、譲渡所得税の額が大きく違ってきます。
売却時期が5年を超えるか超えないかの場合は、5年を超えてから売却するほうが税金を抑えられます。
詳しくは下記の記事で紹介しています。
マンション売却に適用可能な各種控除
最後に、マンション売却時に適用できる控除や特例などについて説明します。ここで紹介する控除や特例は、いずれもマイホームを売却したという前提です。
マイホーム売却時3,000万円の特別控除の特例
この特例は、売却したマンションや家などの不動産が居住用であった場合、売却して得られた譲渡所得から最大3,000万円が控除されるというものです。
適用される要件としては、売却した不動産が居住用であることのほかに、住まなくなってから3年以内に売却することや売却先の相手が夫婦や親子などの特別な関係でないことなどがあります。
居住用ではない別荘やセカンドハウスなどの売却には適用できません。詳しい適用条件については、国税庁のサイトで確認できます。
軽減税率の特例
この特例は、売却したマンションなどのマイホームの所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得が生じた場合、6,000万円以下の部分については長期譲渡所得よりも低い税率の14.21%(所得税:10%、住民税:4%、復興特別所得税:所得税額の2.1%)が適用されるというものです。
6,000万円を超える部分については、長期譲渡所得と同じ税率の20.315%になります。
マイホーム売却時の3,000万円特別控除の特例とは併用可能です。しかし、ほかの特例では併用できないものもあります。また、適用するためにはさまざまな要件を満たすことが必要です。詳しい適用要件などについては、国税庁のサイトで確認できます。
買い替えの特例
これは、マンションなどのマイホームを売却して新たに住居を購入する買い替えにおいて、今回の売却で譲渡所得が発生したとしても翌年の確定申告時に課税されず、将来、買い替えた住居を売却する際まで繰り延べられるという特例です。
控除や減税になるわけではなく、繰り延べであるという点に注意が必要ですが、将来の売却時に売却損が出た場合は、今回の譲渡と損益通算および繰越控除することができます。
この特例は、マイホーム売却時の3,000万円特別控除の特例、またはマイホームを売ったときの軽減税率特例などとの併用はできません。
また、ほかにも適用要件があります。詳しい内容については、国税庁のサイトで確認できます。
譲渡損失が生じた場合の特例
マイホームを売却した際に、なお住宅ローンが残っているなどの譲渡損失が出た場合、所有期間が5年を超えるマイホームの売却であれば損失分をその年のほかの所得から損益通算できるというのが、この特例です。
一定の要件を満たせば、マイホーム売却時の譲渡損失(住宅ローンの残高からマイホームの売却代金額を控除した額を上限とする)の額を給与所得などから差し引けるため、所得税を抑えることができます。
その年の所得で損益通算をしても控除しきれなかった分は、売却した年の翌年から3年以内であれば繰り越して控除することが可能です。
この特例の申請をする場合は、「特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」と「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書」、住宅ローンの残高証明書が必要です。
そのほかにも適用要件があります。詳しい内容は、国税庁のサイトで確認できます。
マンション売却後の確定申告に必要な書類を把握しておこう
マンションなどの不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告をして税金を納めます。その際にはさまざまな書類が必要となるので、本記事を参考に予め準備しておくといいでしょう。
また、利益がなければ納税しなくてもいいので確定申告する必要がないと思われがちですが、控除や軽減税率などの特例を適用する場合にも確定申告が必要です。必要書類を把握して揃えておいた上で、売却の翌年に確定申告するのを忘れないようにしましょう。