任意売却できない10のケース|できない時に検討したい2つの方法も紹介
通常、不動産を売却するためには、住宅ローンを完済しなければなりません。しかし、ローンの返済が困難な場合は、借入先である金融機関の合意のもと「任意売却」できる可能性があります。
任意売却の最大のメリットは、デメリットが多い「競売」を回避できる点にあります。しかし、誰もが簡単に任意売却を選べるわけではなく、特定の条件や手続きが必要です。
本記事では、任意売却ができない10のケースと、できない際の対策などを解説していきます。
なお、任意売却の基本的な知識や詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
- 任意売却ができないケースがわかる
- 任意売却ができなかったその後のことがわかる
- 任意売却ができない場合の2つの代替方法がわかる
任意売却ができないケースとは
住宅ローンの返済が困難になると、任意売却を考えるかもしれません。しかし、特定の状況や条件下では、この選択肢が制限されることがあります。
ここでは、任意売却ができない10のケースについて詳しく解説します。
- 住宅ローンを滞納していない場合
- 借入先の金融機関が任意売却を認めない場合
- 連帯保証人・共同名義人の同意が得られていない場合
- ローンを借りてから日が浅い場合
- 住宅ローン残高が多い場合
- 競売までの期日が迫っている場合
- 売却活動を十分に行えない場合
- 国や自治体に差し押さえられている場合
- 所有者が手続きを行えない場合
- 買い手が見つからない場合
1つずつ見ていきましょう。
住宅ローンを滞納していない場合
任意売却をするためには借入先である金融機関の同意が必要ですが、住宅ローンの滞納がない状態で同意を得ることは困難です。なぜなら、任意売却によって一括返済が行われると、金融機関は予定していた金利収入を失うからです。
そのため、金融機関は基本的に、住宅ローンの継続的な支払いを望んでいます。任意売却の同意は、返済が困難となった、つまり滞納が生じている人を主な対象としています。
しかし、未だ滞納はしていないものの、将来的な返済困難を予見し、その理由をしっかりと説明することで、金融機関の同意を取り付けることも考えられます。
借入先の金融機関が任意売却を認めない場合
金融機関のなかには、自己破産手続きによるローン免責のリスクを避けるため、原則として任意売却を認めないところも存在します。正確にいうと、金融機関が使っている保証会社が任意売却を認めなければ、金融機関はその判断に従うこととなります。
しかし、売却後に残る債務が返済可能であるとの見込みが持てる場合、保証会社(金融機関)もその状況を考慮し、例外的に任意売却を認める可能性が考えられます。
連帯保証人・共同名義人の同意が得られていない場合
任意売却の際には、金融機関だけではなく、住宅ローンの連帯保証人や自宅の共同名義人の同意も得る必要があります。
連帯保証人は、金融機関から融資を受けた人が返済を滞った場合にその責任を肩代わりする人物で、共同名義人は不動産の共同所有者です。これらの人々の同意なしに物件を売却することはできません。
多くは親族や配偶者がこれらの役割を果たしますが、関係が悪化している場合は、同意を得るのが難しいこともあるでしょう。同意が得られないと、売却にかけられる時間が減ってしまい、最悪、競売に進むこともあります。問題解決のためには、冷静な対話が必要です。
ローンを借りてから日が浅い場合
ローンは、金融機関が借り手の信用を基に融資を行うものです。したがって、ローンを組んでから短期間で返済困難となると、債権者である金融機関はその信用を疑問視するでしょう。
このような状況では、任意売却の申し出は認められないケースがほとんどです。ただし、債務者の状況によっては、ローンを借りてから日が浅い場合でも任意売却の許可を得られることもあります。
住宅ローン残高が多い場合
滞納しているローン残高が多い場合、売却後も大きな残債が生じる可能性が高いです。そういった状態での任意売却の申し出は、返済が不確実だと判断され、認められないことが多いでしょう。
とくに、今後の返済が困難とみられる場合、金融機関は自己破産の可能性を警戒し、任意売却への同意を渋ることが考えられます。しかし、しっかりとした返済計画を立て、その実行が現実的であるとアピールすれば、任意売却の承認の可能性も出てきます。
不動産会社などの専門家との相談を通じて、最適な解決策を模索することが重要です。
競売までの期日が迫っている場合
任意売却の活動期間が長ければ長いほど、有利な条件での売却が可能です。任意売却の最終期限は競売開札日の前日までと定められていますが、実際にはその直前での金融機関との合意は難しいとされています。
そのため、住宅ローンの滞納から約5~8ヵ月の間が、任意売却の相談を行う最適な時期といえます。競売の開札日を迎えてしまうと、任意売却は不可能になるので注意が必要です。
任意売却をするには、期日に余裕をもって準備を整える必要があります。
売却活動を十分に行えない場合
任意売却では、通常の不動産売却と同様、物件の情報の公開や内覧が必要です。もし、物件の公開や内覧を避けたい理由がある場合、任意売却の手続きは難しくなります。
任意売却の際、多くの場合、現在の住民が居住中の状態で購入希望者が物件を見に来ます。家族と一緒に住んでいる場合、全員の協力が求められます。もし何らかの理由で内覧が難しい場合、その問題を解決するアプローチが必要です。
国や自治体に差し押さえられている場合
税金や健康保険料の未払いが続いていると、国や地方自治体から不動産の差し押さえの措置が取られることがあります。このような状況下で任意売却を検討する場合、2つのアプローチが考えられます。
1つは、未払いの税金や保険料を全額支払う方法。もう1つは、任意売却を完了したあとに、その売却代金から未払い分を返済するという方法です。
後者を選ぶ際には、任意売却を得意とする不動産会社に相談し、適切な手続きや返済の見込みをしっかりと確認して進めることが重要です。
所有者が手続きを行えない場合
任意売却の手続きは、原則として不動産の所有者が直接行うものです。そのため、所有者が特定の事情で手続きに参加できない場合、任意売却の進行が難しくなります。
しかし、病気などの特別な理由がある場合、司法書士の代行を利用することができます。また、所有者が判断能力を失っている場合は、成年後見制度を通じて代理人を指定する必要があります。
この代理人の指定には1ヵ月から6ヵ月程度の時間がかかることもあり、その間に競売の手続きが進行してしまうリスクも考慮する必要があります。
買い手が見つからない場合
金融機関の同意を得ても、適切な買い手が見つからなければ任意売却は成立しません。とくに人気の少ないエリアや、予算が見合っていない、欠陥のある物件などは売却が難しいのが実情です。
任意売却を得意とする不動産会社を選ぶことで、適切な買い手が見つかる可能性が高まります。信頼できる不動産会社を選ぶためには、不動産会社のホームページや査定サイトを活用して、相場を調査することが重要です。
ズバット不動産売却のような一括査定サイトを利用すると、全国の売却相場を簡単に確認できます。
エリアや築年数、専有面積、間取り、取引時期などの条件を選択することで、自身の物件と似た条件の取引データを参照し、適切な価格帯を把握することが可能です。適切な価格の設定や信頼できる不動産会社の選定ができると、任意売却の成功率は上げられるでしょう。
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ここまで、任意売却ができないケースの具体例を紹介してきました。では、任意売却ができない場合、具体的にどのような影響や結果が待ち受けているのでしょうか。
強制的に競売が実行される
任意売却が競売の直前までに成立しない場合、競売が進められます。競売で物件が新しい所有者に移ると、元の所有者は住宅を退去しなければなりません。退去しない場合、違法に居住していると判断され、強制的に退去させられます。
また、競売が実行されると物件が公開されるため、金銭的背景が第三者に知られるリスクがあることも理解しておきましょう。
残債を支払えないと自己破産になる可能性がある
競売による売却は、通常市場価格の50~70%に抑えられるため、ローン残高が大きいと完済が難しくなることが多いです。
既にローンを分割する権利(期限の利益喪失)が失われているため、基本的には一括返済が求められます。一括返済が不可能な場合、返済方法の再交渉や、最終手段として自己破産を検討せざるを得ません。
自己破産を選択すれば、借主の残債はなくなりますが、連帯保証人の負担が増えるリスクがあります。さらに、税金の滞納は自己破産で免除されないため、資産の差し押さえを避けるためにも、破産前に税金の納付が必要です。
任意売却できないケースを避けるには?
住宅ローンの返済が困難になった際に任意売却できないと、競売や自己破産など、より厳しい選択を余儀なくされる場合もあります。ここでは、任意売却できない事態を未然に防ぐために、対策や考慮するべき点を紹介していきます。それぞれ見ていきましょう。
返済方法を変更する
住宅ローンの返済が困難になったら、まずは金融機関に相談をすることが重要です。返済回数を増やしたり、金利を見直してもらうことで、月々の返済額を軽減する方法が考えられます。
しかし、返済期間が長くなると返済総額が増加することもあるため、短期的な対応としては有効でも、長期的な視点での解決策としては十分ではないかもしれません。
そのため、返済方法の変更を検討する際は、将来的な返済計画や家計全体を見据えて、慎重に判断することが求められます。
借り換えをする
住宅ローンの金利が高い時期に契約した場合、低金利時代である現在に借り換えを検討することで、毎月の返済額を削減することが期待できます。
これにより、返済計画を再構築し、より安定した返済が可能となるかもしれません。しかし、借り換えを行う際には金融機関の審査が必要となり、返済状況や信用情報によっては承認されないこともあります。
さらに、登録免許税や手数料などの借り換えに伴う諸経費についても考慮する必要があります。そのため、借り換えを検討する際は、全体のコストや将来的な返済計画をしっかりと試算し、総合的な判断が必要です。
不動産会社や金融機関に早めに相談する
多くの任意売却できないケースは、競売の日が近づいていることが大きな要因となっています。住宅ローンの返済が困難になった際は、早急に行動を起こすことが重要です。
任意売却を得意とする不動産会社は、債務整理に詳しい弁護士や司法書士と提携しているケースが多いものです。
一刻も早く専門の不動産会社や金融機関に相談することで、適切な対応や解決策を見つけることができるでしょう。迅速な行動が、将来の損失を防ぐカギとなります。
任意売却ができないケースに検討したい2つの方法
任意売却が難しい状況に直面したとき、どのような選択肢を考えるべきでしょうか。ここでは、任意売却ができない際に検討すべき2つの方法を紹介します。
不動産会社を選びなおす
任意売却のプロセスは一般的な不動産の売却とは異なり、特有の手続きや交渉が必要となります。そのため、任意売却を得意としている不動産会社を選択することが成功の鍵となります。
もし現在の不動産会社との進行が停滞している場合、その背景には会社の経験不足や専門知識の不足があるかもしれません。このような状況では、任意売却を得意とする不動産会社への切り替えが有効です。
任意売却に関する経験や知識が十分にあり、弁護士・司法書士などの専門家と提携している不動産会社であれば安心して任せられるでしょう。
任意売却の相談先や、見極め方については以下の記事で詳しく解説しています。
ほかの売却方法を選択する
任意売却ができなくても、競売以外の選択肢がなくなるわけではありません。他の売却方法を検討すると、売却金額が高くなる可能性があります。
例えば、物件を売却した後も住み続けられる「リースバック」は、市場価格の60~80%での売却が見込めます。さらに、不動産業者が直接購入する「買取」は、70~80%の価格が一般的です。
これらの方法は、競売の50~70%よりも高い売却価格を期待できます。また、リースバックや買取は迅速に取引が完了するため、時間に制約がある場合にも適していると言えるでしょう。
ただ、ローン残債が存在すると、一部の業者が買取を避けることも考えられます。このようなデメリットを考慮し、最適な方法を選ぶためには、専門家や不動産会社への相談が必要です。
なお、任意売却のデメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。
任意売却ができないケース【まとめ】
住宅ローンの返済が困難になった際の救済策として知られている任意売却ですが、すべてのケースで可能なわけではありません。本記事では、任意売却ができない10の具体的なケースを解説しました。
また、それらのケースに直面した際に検討すべき2つの代替方法も紹介しました。住宅ローンの返済に困難を感じている方は、これらの情報を参考に、最適な解決策を見つける手助けとしてください。
住宅ローンの返済が困難になったからといって必ずしも任意売却ができるとは限りません。記事で紹介したように任意売却できないケースも存在します。任意売却を検討される方は本記事を参考に、自身に該当するか確認しながら進めていきましょう。
ローンが払えずに代位弁済や一括請求が来ると、ショックから自暴自棄になってしまう方も少なくありません。しかし、任意売却ができる期間には限りがあります。返済が困難になった時はなるべく金融機関に相談することをおすすめします。