不動産売却損が出ても確定申告は必要?税の軽減措置の特例とは

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不動産売却損が出ても確定申告は必要?税の軽減措置の特例とは

不動産売却の利益は税金の用語で「譲渡所得」と呼ばれており、所得税と住民税をあわせた譲渡所得税が課せられます。一方、不動産を売却して出た損失は「売却損」と呼ばれており、税金の用語では譲渡損失と言います。

譲渡所得が生じた場合は確定申告が必要ですが、売却による損失(売却損)が出た場合は原則として不要です。ただし、確定申告をすれば軽減措置や特例などを受けられることがあります。

この記事では、不動産の売却で損失が出た場合に受けられる税金の軽減措置や確定申告の手順について解説していきます。

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【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!

不動産の売却損がある場合も確定申告したほうがいい

不動産の売却損がある場合も確定申告したほうがいい

土地やマンションといった不動産を売却して譲渡損失が出た場合、原則として確定申告は不要です。

しかし、確定申告をすると税金の軽減措置や繰越控除が受けられるため、譲渡損失が出た場合でも確定申告をするほうがいい場合があります。特例はいくつかありますが、利用するには一定条件を満たす必要があります。

そのため、まずは特例の内容と条件を確認しましょう。

不動産売却で損失が出た場合の特例

不動産売却で損失が出た場合の特例

損失時に利用できる特例として「繰越控除」「損益通算」があります。どちらも最長で4年間の所得税と住民税が軽減されるというものです。

不動産を売却して譲渡損失が出た場合、ほかの土地または建物の譲渡所得の金額からは損失額を控除できますが、ほかの所得からの控除はできません。

しかし、長期譲渡所有(5年超え所有)の不動産の場合は、一定の要件を満たせば、譲渡した年の事業所得や給与所得などほかの所得との「損益通算」が可能です。

さらに、その年の損益通算を行っても控除しきれない損失分については、譲渡した年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。

損益通算や繰り越し控除が利用できる特例は、不動産を売却した目的によって次の2種類に区分されています。

  • 家を買い換えた場合
  • 買換えでない場合

家の買換えで出た譲渡損失の繰越控除の特例

家の買換えで出た譲渡損失は、売却した年を含む最長4年間、給与所得や配当所得といったほかの所得から損益通算されて控除されます。

家の買換えで出た譲渡損失の繰越控除の特例を適用するための要件の一部として、次のようなものが挙げられます。

売却する家の条件

特例はすべての家が対象ではありません。適用できる家の条件があります。

  • 居住していた家であること
  • 所有期間が5年超であること
  • 敷地面積が500平方メートル以内の部分まで
  • 合計所得金額が3,000万円以内であること

以前に住んでいた家の場合は、転居の日から3年目の年末までに売却する必要があります。

所有期間の5年超とは、家を売却した年の1月1日時点での年数です。敷地面積が500平方メートル以上の部分は、特例の適用外となります。

なお、譲渡損失の繰越控除は住宅ローン控除との併用が可能です。ただし、住宅ローン控除は課税対象となる所得を得ていることが前提です。そのため、特例の利用で所得がゼロになった年は、住宅ローン控除が適用されません。

購入する家の条件

購入する家の条件は次の通りです。

  • 売却した年の前年の1月1日から翌年の年末までに新たな家を購入すること
  • 購入した年の翌年の年末までに入居または入居見込みであること
  • 床面積が50平方メートル以上であること
  • 返済期間が10年以上の住宅ローンを利用して購入すること

返済期間が10年以上の住宅ローンを利用することが条件ですが、借入先が親族の場合は特例自体が適用されません。

住宅ローンが残っている家の譲渡損失繰越控除の特例

譲渡損失の繰越控除の特例は、家の買換え以外でも利用できます。買換えでない場合の特例は、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。

この特例は譲渡損失の繰越控除の特例と同様に、売却する家に対していくつかの条件が設けられています。

売却する家の条件

売却する家の条件は次の通りです。

  • 居住していた家であること
  • 所有期間が5年超であること
  • 敷地面積が500平方メートル以内の部分まで
  • 合計所得金額が3,000万円以内であること
  • 売却の前日時点で住宅ローンの残債があること

条件は譲渡損失の繰越控除の特例とほとんど変わらず、500平方メートル以上の部分は適用外です。譲渡損失の繰越控除の特例と異なるのは、住宅ローンに関する内容が条件になります。住宅ローンについては、売却の前日時点で返済期間が10年以上残っていることが必要です。

特例の限度額

買換えでない場合、家の売却価格が住宅ローンの残債を上回っていれば特例の適用外となります。

譲渡損失の繰越控除で損益通算できる限度額は、家を売却する前日時点の住宅ローンの残債から売却価格を差し引いた金額です。

国税庁の「譲渡損失の損益通算限度額」を元に説明します。

  • 家の購入代金:6,000万円(住宅ローン5,000万円を借りて購入)
  • 家の売却代金:2,000万円の場合

⇒譲渡損失は6,000万円-2,000万円=4,000万円となります。

ローン残高が3,000万円の場合

損益通算できる額の計算は、売却した時点での住宅ローンの残債から売却額を引いた額です。
そのため、3,000万円-2,000万円=1,000万円になります。

確定申告の手順

確定申告の手順

確定申告は、家を売却した翌年の決められた期間内に手続きをします。確定申告のおおまかな手順は次の通りです。

1. 必要書類を準備する
2. 確定申告書を作成する
3. 確定申告書を提出する

1. 必要書類を準備する

必要書類は利用する特例によって異なります。各必要書類と入手先の一覧は次の通りです。

必要書類 入手先
共通 譲渡所得の内訳書 税務署の窓口またはオンライン
確定申告書B様式 税務署の窓口またはオンライン
確定申告書第三表 税務署の窓口またはオンライン
売買契約書の写し(取得時と売却時) 各自で準備
売買にかかった費用を記した領収書の写し 各自で準備
売却した不動産の全部事項証明書 法務局の窓口またはオンライン
源泉徴収票やマイナンバーなど 各自で準備
譲渡損失の繰越控除の特例を利用する場合 居住していたことを証明する書類 各自治体の窓口
売買契約書の写し 各自で準備
購入した家の全部事項証明書 法務局の窓口またはオンライン
住宅ローンの残高証明書 借入先の金融機関
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 税務署の窓口またはオンライン
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 税務署の窓口またはオンライン
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 居住していたことを証明する書類 各自治体の窓口
売買契約書の写し 各自で準備
譲渡資産の借入金残高証明書(売買契約前日時点) 借入先の金融機関
特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 税務署の窓口またはオンライン
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 税務署の窓口またはオンライン

家の買換えで出た譲渡損失の繰越控除の特例を利用する場合

特例の利用に関わらず譲渡所得の内訳書や確定申告書B様式といった書類が必要です。家の買換えが目的で不動産売却損が出た場合、次の書類をあわせて提出します。

  • 居住していたことを証明する書類
  • 売買契約書の写し
  • 購入した家の全部事項証明書
  • 住宅ローンの残高証明書
  • 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書

売買契約書の写しは各自で準備します。税務署や法務局で取得できる書類は、窓口に行かなくてもオンラインで取得可能です。

買換えでない場合の譲渡損失の繰越控除の特例を利用する場合

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を利用する場合、次の書類が必要です。

  • 居住していたことを証明する書類
  • 売買契約書の写し
  • 譲渡資産の借入金残高証明書(売買契約前日時点)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書

確定申告の際には、譲渡損失の繰越控除の特例と同様に譲渡所得の内訳書や確定申告書B様式といった書類が必要です。

また、借入先の金融機関で取得する借入金残高証明書は、売買契約前日時点のものでなければなりません。

2. 確定申告書を作成する

必要書類を準備した後は、確定申告書を作成しましょう。確定申告書は、税務署の窓口または国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。

また、国税庁のウェブサイト上の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力するだけで、数値の計算や必要箇所への反映が自動で行われます。入力ミスや計算ミスにも気づきやすいため、書類不備による再提出の回避にもつながります。

3.確定申告書を提出する

必要書類を揃えて確定申告書の作成後は、決められた期限内に提出しましょう。確定申告書は、税務署の窓口または郵送で提出します。このほかにはe-Taxと呼ばれるオンライン提出も可能ですが、予め利用者識別情報取得や電子証明書の取得といった手続きが必要です。

なお、確定申告書の提出は、毎年2月16日から3月15日で期限が設けられています。不動産を売却した場合、翌年の期限内に確定申告書を提出しましょう。

万が一期限を過ぎても提出できますが、期限後申告とみなされて無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられる可能性があります。

不動産の売却損を少なくするための工夫

不動産の売却損を少なくするための工夫

不動産を売却しても、必ずしも利益が出るとは限りません。売却価格よりも住宅ローンの残債が多い場合は、手持ちの資金を充てるといった手段を用いなければならないこともあります。

ただし、不動産売却損を少なくするためにできることもいくつかあります。

複数社に見積もりを依頼する

不動産の売却は不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。しかし、最初から1社に絞って査定を依頼すると、相場よりも安く売却してしまう可能性もあります。

不動産会社によって算出される査定額が少なからず異なるため、複数の不動産会社に依頼して査定額を比較検討することが大切です。

不動産の売却損を少なくするには、より高い査定額を提示した不動産会社に売却を依頼しましょう。

複数社に査定を依頼する際には、一括査定サイトを利用すると便利です。一括査定サイトなら所在地や敷地面積といった物件情報を入力するだけで一度に複数社に査定を依頼できます。

査定結果はメールや電話で連絡が来るケースがほとんどです。電話連絡で不要な営業を受けたくない場合は、メールでのやりとりをおすすめします。

不動産の売買が得意な業者を選ぶ

不動産は個人でも売買できますが、不動産会社に売却活動を依頼するのが一般的です。また不動産会社でも得意分野が異なります。そのため、不動産会社を選ぶ際には売却対象の物件種別に詳しく、そのエリアに精通しているかどうかが重要なポイントです。

不動産の売却損が出たら確定申告をして特例を適用しよう

不動産の売却損が出たら確定申告をして特例を適用しよう

不動産の売却損が出た場合でも確定申告をすれば、軽減措置や特例などを受けられることがあります。特例としては「繰越控除」や「損益通算」などがあります。ただし、特例が適用されるか、限度額がどのくらいなのかは家の条件によって異なります。

確定申告を行う場合は、毎年2月16日から3月15日までという期限が設けられています。期限内に間に合うように余裕をもって手続きを済ませましょう。

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