媒介契約とは?3つの種類別にメリット・デメリットを解説!

戸建てやマンションなどの不動産を売買する際には、不動産会社に販売活動を依頼するのが一般的です。不動産は個人間でも売買できますが、専門知識が必要なことに加えて、素人間の取引きだと後々トラブルに発展するリスクがあるからです。
不動産会社に販売活動を依頼するためには、媒介契約と呼ばれる契約の締結が必要です。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれ特徴が異なるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
この記事では、媒介契約の特徴やメリット・デメリットを種類別に解説します。事前に媒介契約への知識を深め、不動産の売買を成功させましょう。

【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
媒介契約とは

不動産を売買する際には、不動産会社に査定を依頼することからスタートします。査定を受けるときには、販売活動を依頼する不動産会社選びも並行して行いましょう。なぜなら、不動産の売買を成功に導くためには不動産会社選びが重要になるからです。
販売活動を依頼する不動産会社が決まったあとは、売主と不動産会社で媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産の販売活動を依頼する際に売主と宅地建物取引業者である不動産会社のあいだで取り決める契約のことです。
媒介契約のおもな内容は、不動産会社による成約に向けた販売活動のルールや成約に至った際の報酬などです。
媒介契約を締結する際には媒介契約書が作成される
宅地建物取引業者に対して必要な規制を定めた宅地建物取引業法では、媒介契約を締結する際に、取り決めた内容を記載した媒介契約書と呼ばれる書面の交付が義務づけられています。媒介契約書を交付する目的は、販売活動の内容や成約時の報酬をめぐるトラブルを回避するためです。
売主に交付される媒介契約書は、原則、国土交通省によって基本事項が網羅された「標準媒介契約約款」を用いることになっています。また、媒介契約書には不動産会社が書面に記名・押印しなければなりません。
標準媒介契約約款を使用する目的は、基本事項を網羅しないことで消費者に不利な媒介契約が締結されるのを防止するためです。標準媒介契約約款に記載されていない条件を媒介契約に追加する場合は、必ず書面に追加してもらいましょう。
媒介契約の種類は3つ

売主と不動産会社で締結する媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。媒介契約によって自己発見取引の可否やレインズへの登録義務などが異なるため、自分に合うものを選ぶことが大切です。
レインズ(REINS)とは「Real Estate Information Network System」の頭文字をとったもので、不動産会社が物件情報を共有できるネットワークシステムです。物件情報をレインズに登録すると多くの不動産会社が閲覧できるため、買主が見つかりやすくなります。
レインズへの登録義務があるのは、専任媒介契約と専属専任媒介契約です。売却期間に余裕がない場合は、専任媒介契約または専属専任媒介契約を選ぶといいでしょう。
それでは、媒介契約の種類別に特徴を解説します。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数社との契約 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引き | 可 | 可 | 不可 |
レインズの登録 | 任意 | 契約から7日以内(休業日を含まない) | 契約から5日以内(休業日を含まない) |
販売活動報告 | 規定なし | 2週間に1回以上(休業日を含める) | 1週間に1回以上(休業日を含める) |
契約期間 |
規定なし ※行政指導では3ヵ月を推奨 |
最長3ヵ月 | 最長3ヵ月 |
一般媒介契約
複数の不動産会社を契約できるのは、一般媒介契約だけです。ほかの不動産会社で買主を見つけられるだけでなく、自分で見つけた買主とも不動産会社を介さずに直接取引きできます。自己発見取引の場合、仲介手数料の支払いは不要です。
ほかの媒介契約と異なり契約期間の規定はありませんが、行政指導に従って3ヵ月を上限に設定するのが一般的。一般媒介契約は制限が少ないため、比較的自由度の高い契約形態と言えます。
一般媒介契約には明示型と非明示型がある
一般媒介契約には明示型と非明示型の2種類があり、売主の希望に沿って選ぶことが可能です。
明示型とは、契約した不動産会社の数や会社名を各不動産会社に知らせるタイプ。一方の非明示型は、契約した不動産会社の数や会社名を各不動産会社に知らせないタイプです。
非明示型は各不動産会社がライバルを把握できないため、営業戦略が立てにくかったり信頼関係を築きにくかったりする点がデメリットと言えます。そのため、一般媒介契約を締結したすべての不動産会社に情報を知られると困る特別な事情がない限りは、明示型がおすすめです。
なお、売買契約が成立した場合は、どちらのタイプも媒介契約を締結している不動産会社すべてに知らせる必要があります。
専任媒介契約
複数の不動産会社と契約を締結できる一般媒介契約に対し、専任媒介契約を結べるのは1社に限られます。しかし、契約を締結できる不動産会社が1社に限られるのは決してデメリットではありません。なぜなら、積極的に販売活動を行ってもらいやすくなり、やり取りの負担も少ないからです。
契約から7日以内にレインズへの登録も義務づけられているため、多くの不動産会社に物件情報が共有されて買主も見つかりやすくなります。また、販売活動の報告は2週間に1回以上受けられるため、状況を把握しやすいと言えます。
専任媒介契約をより詳しく知りたい方には、下記の記事もおすすめです。
専属専任媒介契約
連絡の手間を抑えつつ、売却が難しそうな物件や早く売却したい物件の場合におすすめなのは、専属専任媒介契約です。
契約を締結できる不動産会社は専任媒介契約と同じく1社に限られるため、積極的に販売活動を行ってもらいやすい媒介契約と言えます。
さらに、専属専任媒介契約には、早く買主を見つけやすいルールが定められています。それはレインズへの登録が契約から5日以内で、販売活動の報告義務も1週間に1回以上である点です。専任媒介契約よりもレインズへの登録日数が早く、販売活動の報告義務も短期間に設定されています。
契約期間は、専任媒介契約と同じく最長3ヵ月です。専属専任媒介契約については、下記の記事でより詳しく解説しています。
媒介契約の種類別メリット・デメリット

3種類ある媒介契約には、それぞれメリットもあればデメリットもあります。不動産の売却を希望する時期や目的を考慮し、自分に合った媒介契約を選ぶようにしましょう。ここでは、媒介契約のメリット・デメリットを種類別に解説します。
一般媒介契約のメリット・デメリット
一般媒介契約のおもなメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | ・人気の高い物件はより良い条件で売却できる可能性がある ・不動産会社選びで失敗するリスクが少ない ・物件情報を公開せずに販売活動が行える |
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デメリット | ・積極的に販売活動が行われない可能性がある ・販売状況が把握しにくい ・独自のサービスが受けられない可能性がある |
一般媒介契約のメリット・デメリットのより詳しい内容は下記の記事で解説しています。
一般媒介契約のメリット
駅近や築浅などの人気の高い物件は、一般媒介契約を選ぶとより良い条件で売却できる可能性があります。なぜなら、明示型を選べば売買契約の成立に向けて各不動産会社が競争するため、好条件で買主が見つかる可能性が高いからです。複数の不動産会社と契約を締結できるため、1社で失敗しても他社でカバーできます。
また、不動産を売りに出していることを周囲に知られたくない場合は、レインズへの登録義務がない一般媒介契約を選ぶといいでしょう。
一般媒介契約のデメリット
交通アクセスが悪い、特殊な間取りであるなど、ニーズが少ないような物件は、一般媒介契約を選ぶと積極的に販売活動が行われない可能性があります。売れにくい物件の販売活動を熱心に行っても、他社が売買契約を成立させれば仲介手数料が得られないだけでなく、時間やコストが無駄になるリスクがあるからです。
ほかの媒介契約のように販売活動の報告義務がないため、売主は販売状況の把握が難しい点もデメリットと言えるでしょう。
また、不動産会社の中には、売主に対してハウスクリーニングやホームステージングなどの特典を用意している場合もありますが、専任媒介契約や専属専任媒介契約に限った特典であるケースが多いため、一般媒介契約だと受けられない場合があります。
専任媒介契約のメリット・デメリット
専任媒介契約は、一般媒介契約と専属専任媒介契約の中間的な位置付けになります。専任媒介契約のおもなメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | ・不動産会社の積極的な販売活動が期待できる ・販売状況を適度に把握しやすい ・自分で買主を見つけられる |
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デメリット | ・囲い込みに遭うリスクがある ・売主の都合で契約を解除する場合は費用を請求される可能性がある ・不動産を売り出していることが周囲に知られる可能性がある |
専任媒介契約をさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
専任媒介契約のメリット
専任媒介契約の場合、一般媒介契約に比べて不動産会社の積極的な販売活動が期待できます。契約を締結できる不動産会社が1社に限られるため、売買契約が成立すれば必ず仲介手数料を得られるからです。
販売状況の報告頻度は2週間に1回と義務付けられているため、不動産が売れそうかどうかを適度に把握できます。
また、専任媒介契約は、一般媒介契約と同じく自己発見取引が可能です。売主が買主を見つけた場合は不動産会社を介さず売買契約を締結できるため、仲介手数料の支払いが不要になります。
専任媒介契約のデメリット
専任媒介契約で契約を締結できる不動産会社は1社ですが、レインズへの登録義務によって他社が物件情報を閲覧することは可能です。他社からの問い合わせで買主が見つかり次第、売主は売買契約を締結できます。
しかし、専任媒介契約の場合、このルールを不動産会社が無視して「囲い込み」と呼ばれる行為をする可能性があります。囲い込みとは売主と買主の両方から仲介手数料を得るために、故意にレインズで物件情報を公開しなかったり他社からの買主の紹介に応じなかったりする行為です。
レインズに物件情報が登録されると登録証明書が発行されるため、契約から7日以内に必ず受け取りましょう。囲い込みに遭っている可能性が疑われる場合には、その行為自体を知っていることを不動産会社に伝えてみるのも手段のひとつです。
また、専任媒介契約は売主の都合で契約期間内に解除すると、それまでの販売活動に要した費用を請求される可能性もあるため注意しましょう。
専属専任媒介契約のメリット・デメリット
専属専任媒介契約のおもなメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | ・不動産会社による積極的な販売活動が期待できる ・販売状況を把握しやすい ・比較的早く売却できる可能性がある |
---|---|
デメリット | ・囲い込みに遭うリスクがある ・売主が買主を見つけた場合でも不動産会社を介する必要がある ・希望に近い条件で売却できるかは不動産会社の力量に左右される |
専属専任媒介契約のメリット
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同じく契約を締結できる不動産会社は1社に限られるため、積極的な販売活動が期待できます。レインズへの登録は契約から5日以内で専任媒介契約よりも短いため、比較的早く売却できる可能性が高いです。
また、販売活動の報告義務は1週間に1回の頻度となり、進捗状況を短いスパンで把握できる点がメリットです。
専属専任媒介契約のデメリット
専属専任契約は1社の不動産会社としか契約を締結できないため、専任媒介契約と同じく「囲い込み」に遭うリスクがあります。不動産の売却を成功に導くためには、販売活動を依頼する不動産会社選びが重要です。
専属専任媒介契約は、自分でも買主を探そうとしている人にはとっては自己発見取引がないこともデメリットになります。例えば、売主が買主を見つけた場合でも不動産会社を介する必要があり、仲介手数料も発生します。
売主はどの媒介契約を選べばいいのか?

ここでは「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」のうち、どの媒介契約を選べば良いのかを解説します。
一般媒介契約がおすすめの場合
一般媒介契約は複数の不動産会社と契約が締結でき契約期間が規定されていないなど、ほかに比べて制限が少なく自由度が高い契約です。一般媒介契約は、おもに次のような場合におすすめです。
- 人気物件を売却したい場合
- 複数の不動産会社と契約したい場合
一般媒介契約には、ほかの不動産会社に契約した不動産会社名を知らせる明示型と呼ばれるタイプがあります。明示型の場合、不動産会社同士が売買契約の成立に向けて競争するため、人気物件は好条件で買い手が見つかる可能性が高いです。
専任媒介契約がおすすめの場合
専任媒介契約は、一般媒介契約と専属専任媒介契約の中間的な位置づけになります。専任媒介契約は、おもに次のような場合におすすめです。
- どの媒介契約を選ぶか迷っている
- 人気物件ではない不動産を売却したい
- 複数の不動産会社とのやり取りが面倒 など
専任媒介契約はバランスの取れた媒介契約なので、どれを選ぶか迷っている場合にはおすすめです。また、ニーズが少ない物件を売却したい場合や複数の不動産会社とのやり取りが面倒な場合は、専任媒介契約を選ぶといいでしょう。
専属専任媒介契約がおすすめの場合
専属専任媒介契約は、おもに次のような場合におすすめです。
- 手間をできるだけ抑えたい
- 売却までの多くを不動産会社に任せたい
- スピーディに売却したい
- 売れにくい不動産を売却したい など
専属専任媒介契約はほかの媒介契約に比べて制限が多いため、不動産会社とのやり取りをできるだけ抑え、不動産会社に作業や手続きのほとんどを任せたい場合におすすめです。
また、古家付き土地や旗竿地などの売れにくい物件を売却したい場合は、契約からレインズへの登録までが短く、積極的に販売活動を行ってもらいやすい専属専任媒介契約を選ぶといいでしょう。
媒介契約を締結する際の注意点

ここでは、媒介契約を締結する際に注意したい点を解説します。
- 仲介業務の内容
- 仲介手数料の支払い時期
- 契約解除や違約金など
仲介業務の内容
不動産の販売戦略や用意されているサービスなどは、不動産会社ごとに異なります。そのため、販売活動を依頼する不動産会社を選ぶ際には、販売活動の内容や報告内容、サービス内容などをチェックしましょう。
専任媒介や専属専任媒介契約者に対してハウスクリーニングやホームステージングなどのサービスが用意されていても、一般媒介契約は対象外のケースもあります。媒介契約を締結する前に仲介業務の内容や適用されるサービスなどを確認しておくと、後々のトラブルを回避できます。
仲介手数料の支払い時期
媒介契約を締結した不動産会社で買主が見つかった場合、仲介手数料の支払い義務が発生します。仲介手数料は成功報酬なので、売買契約が成立しなければ支払いは不要です。
支払いのタイミングは、売買契約の締結時と物件の引渡し時の2回に分けるのが一般的です。ただし、仲介手数料を支払うタイミングは法律で規定されているわけではありません。不動産会社ごとに支払いのタイミングが異なる可能性もあるため、媒介契約を締結する際に確認しておきましょう。
契約解除や違約金など
契約内容をめぐるトラブルを回避するためにも、解除ができるケースや違約金が発生するケースを事前に確認しておくことが大切です。
基本的には、不動産会社側に問題があって解除する場合、違約金は発生しません。一方で、契約期間中に売主の都合で解除する場合は、それまでの販売活動で要した費用を請求される可能性があります。
また、1社の不動産会社としか契約を締結できない専任媒介契約と専属専任媒介契約では、契約期間中に他社で売買契約が成立した場合、違約金が発生します。
自分に合った媒介契約を選ぼう

販売活動を不動産会社に依頼する場合、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約のいずれかを締結する必要があります。3つの種類の媒介契約にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
契約の締結後に不動産会社選びに失敗したと気づいた場合、契約期間内であっても基本的には解除できます。しかし、売主都合の解除の場合は違約金が発生することがあるため、不動産会社選びは慎重に行うことが大切です。