家を売る理由は買主に伝えるべき?一般的な売却理由とネガティブな理由の伝え方

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家を売る理由は買主に伝えるべき?一般的な売却理由とネガティブな理由の伝え方

戸建てやマンションなどの家を売る理由は、人によってさまざまです。この記事では、ポジティブな理由で家を売るケースと、ネガティブな理由で家を売るケースに分けて解説します。

家を売る理由がネガティブな場合、買主にもネガティブな印象を与えることが多いため、内容によっては不動産会社や買主にきちんと伝えなければなりません。一方で、内容によってはストレートに伝える義務がないため、工夫次第でネガティブな印象を抑えることが可能です。ネガティブな理由で家を売る際の伝え方のポイントも併せて解説しているので、役立ててください。

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【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。

家を売る理由によっては売却時に影響がある

家を売る理由によっては売却時に影響がある

家を売る理由は、大きく分けるとポジティブな理由の場合とネガティブな理由のどちらかです。ポジティブな理由で家を売る場合は、査定や買主の心象に影響することはありません。

しかし、家を売る理由がネガティブなケースの場合、詳細にもよりますが、周辺の類似物件に比べて低い価格での売り出しを余儀なくされることもありえます。

また、買主がなかなか見つからず、平均で3~6ヵ月程度かかるといわれている家の売却期間が、通常よりも長期化する可能性も少なくありません。そのため、ネガティブな理由で家を売る場合は売却に影響が出る可能性が高いと言えます。

家を売る理由に挙げられる一般的な例

ポジティブな理由で家を売る例とネガティブな理由で家を売る例

家を売る人の理由はさまざまですが、売主がポジティブな理由で家を売る場合は買主もポジティブな印象を受けることが多いでしょう。同様に、ネガティブな理由で家を売る場合は買主もネガティブな印象を持ちやすいと言えます。

ここでは、一般的によくある売却理由をポジティブな理由とネガティブな理由にわけて紹介し、買主が受ける印象についても解説します。

ポジティブな理由で家を売る例

家を売る理由のうち、次のようなケースは一般的にポジティブな理由として分けられ、買主にもポジティブな印象を与えられます。

  • 家族構成が変化したため
  • 相続した家を使用しないため
  • 勤め先が変わったため
  • よりよい環境へ住み替えるため

それぞれをひとつずつ見ていきましょう。

家族構成が変化したため

一般的に家を売る理由が家族構成の変化である場合、買主はポジティブな印象を受けることが多いでしょう。家族構成の変化とは例えば次のようなケースが挙げられます。

  • 出産によって部屋が手狭になった
  • 子供の成長に合わせて広い部屋が必要になった
  • 両親との同居が必要になった など

このほかには、単身時に購入した家を結婚後に売却したり、子供の独立によって家族の人数が減ったことを理由に売却したりするケースなどがあります。

相続した家を使用しないため

相続した家を売る場合は、一般的に買主にとってネガティブな印象にはならないことがほとんどです。誰も使用しない場合は空き家となり、適切に管理しなければ老朽化に伴う倒壊のリスクや資産価値の減少につながります。

空き家がある場所によっては管理や活用が難しく、そのまま所有していても税金や費用がかかるので売ってしまう人も少なくありません。

また、戸建てやマンションなどの不動産は、現金のように平等に分割しにくい財産です。そのため相続人が複数の場合は家を売り、現金化した上で平等に分割するケースもあります。

勤め先が変わったため

転勤や転職で勤め先が変わったことが売却理由の場合、一般的に買主にとってポジティブに捉えられるケースがほとんどです。

転勤となった家族が単身赴任したり、住んでいる家を賃貸に出したりするのも選択肢のひとつですが、家を売って家族全員での転居を決断するケースも少なくありません。特に転勤の場合はいつどのタイミングで辞令が出るかわからないため、購入して間もない家を売ることになる可能性もあります。

よりよい環境へ住み替えるため

家を売る人の中には、ライフステージに応じたより良い環境を求めて住み替える人も少なくありません。例えば子供の進学に合わせて学区を変更する場合や、老後を見据えた住み替えなどが挙げられます。

騒音や異臭などの近隣トラブルで家を売る場合は買主にネガティブな印象を与えますが、理想の住環境を求めた住み替えの場合はポジティブな印象に捉えられることが多いでしょう。

ネガティブな理由で家を売る例

売主がネガティブな理由で家を売る場合は、買主にもネガティブな印象を与えてしまう可能性が高いでしょう。一般的にネガティブな印象を与える売却理由には次のようなケースが挙げられます。

  • 離婚するため
  • 住宅ローンの支払いが困難になったため
  • 家が老朽化したため
  • 事故や事件が発生したため

それぞれをひとつずつ見ていきましょう。

離婚するため

結婚を機に家を購入する人がいる一方で、離婚が原因で家を売る人もいます。離婚が理由で家を売るのは、住宅ローンの完済あるいは財産分与が目的のケースがほとんどです。

離婚が原因で売られる家は縁起が悪いと考える人もいるため、買主にネガティブな印象を与える可能性が高いでしょう。しかし、離婚に対する価値観は人によって異なるため、家を売る理由が離婚でも気にしない人もいます。

詳しくは下記の記事で紹介しています。


住宅ローンの支払いが困難になったため

「住宅ローンの支払いが困難になったために家を売る」といったケースも少なくありません。その原因は、おもに病気やリストラなどによる収入減少です。

離婚と同様に縁起が悪いと敬遠する人もいるでしょう。しかし、経済的な理由は買主にとってはデメリットがあるわけではないため、売却に大きく影響が出るとは考えにくいと言えます。

家が老朽化したため

家の築年数が経つほど、老朽化によってさまざまな場所に不具合が生じます。定期的にメンテナンスを施している場合でも、経年劣化による不具合が避けられないケースも少なくありません。

家の老朽化は買主にネガティブな売却理由として捉えられますが、きちんと伝えなければなりません。

事故や事件が発生したため

殺人事件や自殺が発生したことが理由で家を売る人もいます。この場合、一般的に相場よりも価値が下がります。売却理由としてネガティブに捉えられる事件や事故は、おもに次の通りです。

  • 変死
  • 殺人
  • 自殺
  • 焼死 など

浴室での溺死や転落などの不慮の事故や、孤独死があった家は事故物件扱いにはなりません。ただし、このような理由でも売却時は買主に伝えたほうが良いでしょう。

告知義務について

事故物件には告知義務があるため、買主にきちんと伝える必要があります。賃貸の場合は事件や事故の発生から3年経てば告知義務はなくなりますが、売買の場合は年数に関係なく伝えなければなりません。

ネガティブな理由で家を売る際のポイント

ネガティブな理由で家を売る際のポイント

ネガティブな理由で家を売る場合でも、伝え方を工夫したり不動産会社に相談したりして売却することは可能です。ここではネガティブな理由で家を売る際のポイントを4つ解説します。

瑕疵がある場合は隠さずに伝える

不動産に不具合や欠陥がある家は、瑕疵(かし)物件と呼ばれています。瑕疵がある家を売る場合、売り手は買主に対して告知義務を果たさなければなりません。

実際の告知は売り手自身が行うのではなく、物件状況確認書または告知書と呼ばれる書類で伝えられます。瑕疵を隠したまま家を売った場合、契約不適合責任(※)に問われる可能性があるので注意が必要です。
※契約不適合責任:種類・品質・数量について契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合に売主が買主に負う責任のこと

瑕疵には物理的瑕疵・心理的瑕疵・環境的瑕疵・法律的瑕疵の4種類があり、種類ごとの瑕疵の例は次の通りです。

瑕疵の種類 瑕疵の例
物理的瑕疵 ・雨漏り
・シロアリ被害
・耐震基準不適合
・床下浸水
・アスベスト
・土壌汚染
・地中埋没物
・地盤沈下 ・軟弱地盤 など
心理的瑕疵 ・変死
・殺人
・自殺
・火災 など
環境的瑕疵 ・騒音
・振動
・異臭
・日照障害
・近隣トラブル
・近隣に嫌悪施設がある ・近隣に暴力団事務所がある など
法律的瑕疵 ・建築制限
・建築基準法違反
・消防法違反 ・埋蔵文化財包蔵地 など
【監修者コメント】
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厳しい言い方をすると、売却する不動産の悪い点を隠さなくても伝えないだけで法律的責任を負う可能性があります。

それは最長で10年後でも言われる可能性がありますので、デメリットは包み隠さず伝えてください。

プライベートな理由は買主に伝える義務がない

ネガティブな理由のうち、シロアリ被害や事故物件などの瑕疵は告知義務がありますが、プライベートな内容は必ずしも伝えなければならないわけではありません。

プライベートな理由とは、おもに次のような内容です。

  • 離婚
  • 借金返済
  • 住宅ローンの滞納 など

ネガティブな理由を伝える場合は、ストレートに伝えてしまうことで買主の購入判断に悪影響を与える可能性があるので注意しましょう。

例えば、縁起が悪い理由で手放す家を購入したくないと考えている人に対し、離婚が原因であることをそのまま伝えるということは控えたほうがいいです。

このようなケースでは、「家族構成が変わった」と伝える方法があります。また、実家に戻る場合は「実家の親と同居することになった」と伝えれば嘘にはなりません。ただし、嘘はつかないようにしましょう。

【監修者コメント】
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私の個人的な見解ですが、プライベートな理由でもそのまま伝えるのが望ましいです。

なぜなら、売り主のプライベートにそもそも買主は興味はありません。

むしろ包み隠したほうが「本当はなんかとんでもない売却理由があり、それを隠しているのではないか」と疑心暗鬼になるものです。


必ずしも伝える理由はありませんが、伝えられるのであれば隠す必要はありません。

買主への伝え方をひと工夫して、ネガティブな印象を変える

告知義務のないプライベートな理由な場合でも、故意に隠すことで買主の不安を煽り売買契約につながらない可能性があります。

買主の購入判断に影響する可能性があるネガティブな理由は、伝え方の工夫次第で印象を変えることが可能です。また、売主にとってはネガティブな理由でも、買主にとってはポジティブである可能性もあります。

例えば、深夜まで営業している飲食店があり騒がしいことが理由で家を売る場合は、近くに飲食店が多く生活に便利な場所であると言えます。また、人けがなく不便なことが理由で家を売る場合は、静かで閑静な地域であると言えます。

このように、デメリットをメリットとして伝えられないか工夫してみるといいでしょう。

【監修者コメント】
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後々トラブルにならないための伝え方は1つ。書面です。

ネガティブな内容は「間違えなく伝えた」というものにするために、契約書の特約条項に入れるべきです。「買主が把握し、そのまま渡すことを了承した」まで入れます。


具体的には「第〇条 本物件の周辺には店舗や公園など不特定多数の来客者などが通行することがあり、その際夜間も含め来客者による歌唱、雑談などにより多少騒がしいことがあるが、買主はそれを把握し了承するものとする」等です。

買主への伝え方は不動産会社に相談しながら決める

家を売る際には、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。家を売る理由を買主にどのように伝えるのか迷った場合は、不動産売買のプロである不動産会社の担当者に相談しながら決めましょう。

瑕疵がある場合は告知義務があるため、家を売るのがどのような理由でも不動産会社には正直に伝えておくことが大切です。不動産会社はさまざまな理由で家を売る人を見てきているため、買主への上手な伝え方を数多く知っています。

ネガティブな理由でも家の売却を成功に導くためには、仲介を依頼する不動産会社選びが重要です。不動産会社ごとに得意分野や実績などが異なるため、最初から1社に絞るのではなく複数社を比較して選ぶといいでしょう。

信頼できる不動産会社を探す際には、「ズバット 不動産売却」のように複数社に査定を依頼できる一括査定サイトの利用がおすすめです。

【監修者コメント】
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仲介により売却する場合は、仲介業者はこういった対応についてはプロですから一任しておくとよいでしょう。

後々言った言わなかったとならないように口頭によりまず伝えてもらったうえで、契約書特約条項に書面として明記してもらうことが重要です。

家を売る理由は工夫して買主に伝えることが大切

家を売る理由は工夫して買主に伝えることが大切

家を売る理由は買主にポジティブな印象を与えるケースだけだとは限らず、なかには離婚や騒音トラブルなどのネガティブな印象を与えるケースも少なくありません。

シロアリ被害や事故物件などの瑕疵に該当する内容は告知義務があるため、買主には必ず伝える必要があります。瑕疵を隠して家を売った場合は契約不適合責任に問われ、トラブルになるので仲介を依頼する場合は不動産会社にも必ず伝えておきましょう。

一方で、告知義務にならないプライベートな理由の場合は、買主に必ずしもストレートに伝える必要はありません。家を売る理由を買主が気にするケースもあるため、不動産会社の担当者にプライベートな理由の伝え方を予め相談しておくといいでしょう。

【監修者コメント】
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「なんとなく気分で不動産を売りたくなりました」という人には会ったことがありません。

家を売る理由というのは明確でたいていの場合シンプルです。

換金目的、離婚、死亡、破産などです。

たとえネガティブな理由でも隠す必要はありませんので、そのまま担当者へ伝えましょう。

この記事のおさらい

家を売る理由がネガティブ。不動産会社には本当のことを言うべき?
ネガティブな理由、買主への伝え方に迷った場合はどうする?
58秒で入力完了売りたい物件を無料査定!
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