不動産売買時の仲介手数料はいくらかかる?値引き交渉は出来る?計算方法も紹介!
不動産の売買をする際には、さまざまな費用がかかります。そのため、家やマンションの売買費用のみで資金計画を立てていると、後で資金繰りに困ってしまうことも。
売買にかかる費用の中でも大きな割合を占めるのが、仲介手数料です。予め仲介手数料がいくらぐらいかかるのかを把握しておくことで、不動産売買の資金計画を立てやすくなります。
この記事では、不動産売買時にかかる仲介手数料について詳しく説明しますので、家やマンションなどの売買予定のある人はぜひ参考にしてみてください。
【監修】西崎 洋一 宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産コンサルタント・不動産プロデューサー。不動産業界10年以上の専門家。物件調査、重説作成・説明などの実務経験が豊富。特に土地の売買、マンション管理に精通。大阪を中心に活動を行っている。
不動産売買における仲介手数料とは
仲介手数料にはどのような費用が含まれるのか、仲介手数料の計算方法について解説します。
仲介手数料は売買仲介の成功報酬
不動産会社に家やマンションなどの売買を依頼した際に支払う仲介手数料は、売買仲介の成功報酬です。不動産取引きが成立しないと仲介手数料は発生しません。
また、不動産売買仲介はサービスの提供になるため、仲介手数料は消費税の課税対象になります。
なお、事務所や事業用の土地などを売却した際、仲介手数料は「支払手数料」として会計処理が可能です。
仲介手数料に含まれる費用
仲介手数料には、次のような費用が含まれます。
物件の広告・宣伝費 |
・物件の広告やチラシの作成 ・不動産情報ポータルサイトへの掲載 など |
---|---|
販売営業活動費 |
・チラシのポスティング ・購入希望者への内覧の対応 ・情報収集 など |
契約手続き代行 |
・契約条件の調整作業 ・売買契約書や重要事項説明書など契約書類の作成 ・重要事項説明の実施 ・契約から引渡しまでの諸事務処理 など |
仲介手数料は成功報酬のため、費用をかけて物件の広告や宣伝をしても、契約が成立しなければ支払いは発生しません。そのため、予め仲介手数料に含まれている宣伝費の枠があります。
仲介手数料に含まれている枠以上の宣伝や広告などを希望する場合は、別途、費用がかかることがあります。
仲介手数料は上限額のみ定められている
仲介手数料は上限額が宅地建物取引業法で定められているだけで、定価や下限額の決まりはありません。
そのため、宅地建物取引業法で定められた上限額までの範囲であれば、不動産会社が自由に仲介手数料の額を決めることが可能です。不動会社によっても異なりますが、定められた上限額を仲介手数料の額と定めていることが多いです。
上限額以上の仲介手数料を請求されることはないため、資金計画を建てる際には上限額で試算しておきましょう。仲介手数料の上限額の計算方法は、後ほど詳しく説明します。
媒介契約による仲介手数料の差はない
不動産会社に売却の仲介を依頼した場合、売却を依頼した旨や販売活動の内容などの取り決めとして媒介契約を結びます。購入を依頼する場合も媒介契約を結ぶ場合がありますが、購入する不動産会社を決めるのは自由であるため、特に結ばないことがほとんどです。
媒介契約には、専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類があります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産会社との契約 |
できない (1社のみ) |
できない (1社のみ) |
できる |
自分で見つけた買主との直接契約 | できない | できる | できる |
売主への売却活動の報告 |
報告義務あり (1週間に1度、口頭または書面で) |
報告義務あり (2週間に1度、口頭または書面で) |
義務なし (任意) |
レインズ(不動産情報システム)への物件情報登録 | 義務あり(契約締結日から業者の休日を除いた5日以内に) | 義務あり(契約締結日から業者の休日を除いた7日以内に) |
義務なし (任意) |
契約期間 | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 | 定めなし |
それぞれの契約内容は異なりますが、いずれの契約を結んだとしても仲介手数料に差はありません。
契約を締結するまでは、仲介手数料の支払い義務はありません。支払義務が発生するのは契約締結時です。しかし、不動産取引は契約を締結すれば終わりというわけではなく、その後の引渡しまで仲介業務は続きます。
そのため、一般的には契約締結時に仲介手数料の半額を支払い、引渡し時に残りの半額を支払うことがほとんどです。
不動産売買の仲介手数料の計算方法
ここでは、宅建業法で定められている仲介手数料の上限額の計算方法について説明します。
仲介手数料上限額の計算方法
仲介手数料の上限額は取引額から算出されます。
取引額を200万円以下の部分、200万円超~400万円以下の部分、400万円超の部分に分けて計算します。
例えば、2,000万円の取引きの場合だと、以下のような計算式になります。
200万円(200万円までの部分)×5%+200万円(200万円を超えて400万円までの部分)×4%+1,600万円(400万円を超える部分)×3%=66万円
仲介手数料は消費税が課せられるため、最終的に支払う仲介手数料の上限額は以下の通りです。
66万円+(66万円×0.1)=72万6,000円
ただし、この方法だと計算式が複雑になります。そこで便利なのが、速算式です。
【200万円以下の取引きの速算式】
取引額×0.05(5%)
【200万円超~400万円以下の取引きの速算式】
取引額×0.04(4%)+40,000円
【400万円超の取引きの速算式】
取引額×0.03(3%)+60,000円
現在の不動産取引は400万円を超えるものが多いため、取引額×0.03(3%)+60,000円の速算式が使われることがほとんどです。
先ほどの2,000万円の取引きの場合、速算式で計算してみると、2,000万円×3%+60,000円=66万円となり、通常の計算と同額になることがわかります。
廉価物件の場合の仲介手数料
取引額が廉価な物件の場合、不動産会社が得られる仲介手数料は安くなります。
しかし、地方の空き家物件などは概して交通が不便な場所や市街地から遠い場所に所在することが多く、取引きを成立させるまでに交通費や通信費などが通常よりもかかることがほとんどです。
そのような状態を解消するために「空き家等の売買または交換の媒介における特例」が定められました。
この特例は、廉価物件の場合、取引額が400万円以下であっても、仲介手数料の上限額を400万円超の取引きの部分(取引額×0.03(3%)+60,000円)まで引き上げて請求ができるという特例です。
この特例を適用するには、売主側に対し予め説明が必要になります。売主からの合意を得なければ請求できません。
仲介手数料の一覧表
売買価格/th> | 仲介手数料(税込) |
---|---|
100万円 | 55,000円 |
200万円 | 110,000円 |
500万円 | 231,000円 |
1,000万円 | 396,000円 |
1,500万円 | 561,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
2,500万円 | 891,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
仲介手数料の値引きは可能?
結論から述べると、仲介手数料の値引きは可能です。
しかし、安易に値引きを交渉するのは得策ではありません
ここでは、仲介手数料の値引きのポイントやタイミング、仲介手数料値引きのデメリットや注意点について説明します。
仲介手数料値引き交渉の条件
まず、仲介手数料の値引き交渉の条件を紹介します。
専属専任媒介か専任媒介契約を結ぶ
値引き交渉をする際には、売却の媒介契約の種類を専属専任媒介契約か専任媒介契約を結ぶことを条件に出してみましょう。
専属専任媒介契約と専任媒介契約では不動産会社1社としか契約を結ぶことができないため、ほかの不動産会社に契約を取られる心配がありません。そのため、ほとんどの不動産会社は、売却の媒介契約を専属専任か専任のどちらかで結びたいと考えています。
よって、どちらかで媒介契約を結ぶことを条件にして仲介手数料の値引きを持ち出せば、交渉がうまくいく確率が高くなるでしょう。
売却、購入ともに仲介を依頼する
買い替えの場合、売却と購入の両方を行うことになり、仲介手数料も売却と購入それぞれの分が必要です。売却と購入を異なる不動産会社に依頼することも可能ですが、1社にまとめると連絡や手続きがしやすくなるだけでなく、仲介手数料の値引き交渉も通りやすくなります。
買い替えの場合は、売却と購入の仲介を1社に依頼することを条件にして、仲介手数料の値引きを交渉するといいでしょう。
中小の仲介業者を選ぶ
大手の不動産会社は仲介手数料をはじめ、さまざまなことがシステム化されているため、値引きが難しい場合も多いです。そのため、中小規模の不動産会社のほうが、仲介手数料の値引きだけでなく、いろいろな点で自由度が高いと言えます。
ただし、値引きをしてもらいやすいかどうかは、必ずしも不動産会社の規模と一致しているわけではありません。
仲介手数料の値引きを切り出すタイミング
仲介手数料の値引きは、媒介契約を結ぶまでに切り出すようにしましょう。
媒介契約を結ぶ際に仲介手数料の内容が決定してしまうと、後で値引きを切り出しても通らないことがあります。最悪の場合、契約違反にもなりかねないため、値引きを切り出すタイミングには注意しましょう。
仲介手数料の値引きのデメリットと注意点
仲介手数料の値引きによって起こり得るデメリットと注意点を説明します。
仲介活動に支障をきたす場合がある
仲介手数料の値引きを強いることで、不動産会社や担当者のモチベーションが下がってしまう恐れがあります。
仲介手数料は仲介をおもな業務としている不動産会社にとって重要な収益源です。
その仲介手数料が安くなることで売却活動に支障をきたし、その結果、売却に時間がかかってしまうことも考えられます。
十分な売却活動を望むのであれば、無理な仲介手数料の値引きは控えたほうがいいでしょう。
囲い込みをされる恐れがある
売却の仲介手数料が安くなると、不動産会社は買主から仲介手数料を得ることに注力し、その結果、囲い込みをされる恐れが生じることがあります。
囲い込みとは、不動産会社が両手仲介(売却と購入、両方の仲介を自社で受けること)を狙うあまり、ほかの不動産会社から紹介された購入希望者に対して物件を紹介しなかったり勝手に断ってしまったりする行為のこと。
売主側からの仲介手数料が十分に得られないとなると、不動産会社は買主も自社で見つけて、買主からの仲介手数料を得ようとします。そのため、囲い込みをして他社からの買主を受け付けないようにするのです。
囲い込みをされてしまうと買主が現れにくくなるため、売却に時間がかかったり、値下げをせざるを得なくなったりする場合があります
不動産売買で仲介手数料以外にかかる費用
最後に、不動産の売却時にかかる仲介手数料以外の費用について説明します。どのような費用が必要かを把握しておくことは、売却計画を立てるための大切なポイントです。
売却時にかかる費用
家やマンションなどの不動産を売却するときにかかる費用として、仲介手数料以外に次のような費用が必要です。
- 印紙税(売買契約書に課税)
- 登記費用(抵当権抹消などの費用、司法書士報酬)
- 住宅ローン繰上げ返済事務手数料
- その他必要に応じて支払う費用(測量費、解体費、廃棄物処分費など)
印紙税
印紙税は、売買契約書に税額分の収入印紙を貼付して納めます。契約書に記載されている取引額が税額の基準です。
2024年(令和6年)3月31日までは軽減税率が適用されているため、本則税額の約半分になっています。1,000万円超~5,000万円以下の取引きの場合、印紙税額は軽減税率で10,000円です。
登記費用
所有者が変わることによる登記手続き(所有権移転登記)の登録免許税は、一般的には買主が負担するため売主が支払う必要はありません。
ただし、住宅ローンを返済中の家やマンションを売却する場合は、住宅ローンの担保として設定されている抵当権を抹消する登記手続きが必要なので、その登記費用がかかります。
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産ひとつにつき1,000円です。司法書士に手続きを依頼する場合は、その報酬も必要になります。
住宅ローン繰上げ返済事務手数料
抵当権を抹消するために住宅ローンを一括返済する際には、手続きのための事務手数料が必要です。金融機関によって手数料の額は異なり、無料のところもあります。住宅ローンを設定している金融機関に問い合わせてみるといいでしょう。
購入時にかかる費用
家やマンションなどの購入時にかかる費用は、次の通りです。
- 印紙税
- 登記費用(所有権移転登記、抵当権設定登記などの費用、司法書士報酬
- 不動産取得税(不動産を取得した際に支払う税金)
- 固定資産税・都市計画税(購入した年の分を売主に清算金として支払う)
- 住宅ローン事務手数料(保証会社、団体信用生命保険など)
- 各種保険費用
印紙税は売却時と同じです。登記費用は、所有者が変わったことによる所有権移転登記と、住宅ローンを設定する場合は抵当権設定登記の登録免許税が必要になります。
登記費用
所有権移転登記の登録免許税は不動産の固定資産評価額の2%(2024年(令和6年)3月31日までは軽減措置のため1.5%)、抵当権設定登記は住宅ローンの借入額の4%(2024年(令和6年)3月31日までは軽減措置のため1%)です。
不動産取得税
不動産取得税も通常は固定資産税額の4%ですが、2024年(令和6年)3月31日までは軽減税率が適用され3%になっています。また、取得した建物によって税率が異なるため、詳しい内容は国税庁のウェブサイトなどで確認しましょう。
固定資産税・都市計画税
固定資産税と都市計画税は売主がその年の分をすでに支払っているため、一般的には引渡し日以降の分を精算して買主が売主に支払います。
ただし、必ず精算をしないといけないわけではなく、交渉次第では買主が負担しなくてもよい場合もあるため、契約時に確認しておくようにしましょう。
不動産売買にかかる費用を含めた資金計画を立てよう
不動産の売買にはさまざまな費用が必要です。その中でも大きな割合を占める仲介手数料は、取引額によっては高額になることがあります。予めどれぐらいの取引きになりそうか目途をつけておき、おおよその仲介手数料の上限額を試算しておくと、不動産売買の資金計画を立てやすくなるでしょう。
仲介手数料の値引き交渉は可能ですが、仲介担当者のモチベーションが下がるなどのデメリットがあるため慎重に行うことが大切です。むしろ、仲介手数料を値引きなしで支払い、良い条件で取引きしてもらうほうが結果として手元に残るお金が多くなることもあります。
仲介手数料の仕組みや計算方法を把握し、資金計画に活かして、不動産売買をぜひ成功させてください。
不動産取引においては、個人で取引する場合等を除きほとんどの場合仲介手数料がかかります。
この仲介手数料は媒介を行う不動産業者の大きな収入源でもありますから、それ相応の業務を全うしてもらったとすると、気持ちよく払える費用ではないでしょうか。
やはり相性の良い担当者を通して売買できることを目指しましょう。
できれば値引きをお願いする「大義名分」が欲しいですね。
例えば、自分で買主候補を見つけたとか、広告費がかかっていないからとかです。
しかし過度な値引きは媒介業者との信頼関係をこちらから損ねてしまうため、うまく駆け引きしてみてください。