【マンション売却の種類】売却方法・媒介契約の種類をわかりやすく紹介
マンションを売却する場合のオーソドックスな方法は、不動産会社と媒介契約を結ぶ仲介です。このほかにも買取やリースバックなどの方法があり、事情に応じて基本的に売り手が自由に選べます。しかし、どの方法を選んでも同じ条件でマンションを売却できるわけではありません。マンションの売却方法次第では、失敗する可能性があります。
マンションの売却後に後悔しないためには、事前にどのような方法があるのかを把握し、自身に適したものを選ぶことが大切です。この記事では、マンションの売却方法をわかりやすく解説します。媒介契約の種類も併せて解説するので、この記事を参考にしてどの方法でマンションを売却するのがベストなのかを比較検討してみてください。
【監修】穂坂 潤平 宅地建物取引士。仲介営業13年(宅建は新卒の時に取得)、不動産仲介会社起業3年の経験を経てウェブクルーに入社。趣味は何でも遊びにすること。仕事では「喜ばれる仕事をして、自らも喜ぶこと」をモットーに日々ご提案しております!
マンションの売却方法の種類
一口にマンションの売却方法と言っても、実はいくつかの種類があります。おもなマンションの売却方法は、仲介・買取・リースバック・任意売却の4種類です。それぞれ特徴が異なり、メリットもあればデメリットもあります。
まずは、マンションの売却方法の種類を把握して、自身の希望に沿うものはどれかを見極めてみましょう。それでは、マンションの売却方法の種類をひとつずつ解説します。
仲介 | 買取 | リースバック | 任意売却 | |
---|---|---|---|---|
売却相手 | 一般の個人 | 不動産会社 | おもに不動産会社 | 一般の個人 |
売却価格 | 相場に近い価格 | 相場の7~8割程度 | 相場よりも低い | 相場の7~8割程度 |
売却日数 | 買い手が見つかるまで(平均で3~6ヵ月程度) | ・売却までが早い ・即時買取:最短3日~1週間程度 |
売却までが早い | 買い手が見つかるまで |
売却費用 |
・仲介手数料 ・登録免許税 ・印紙税 ・住宅ローンの一括繰上返済手数料 など |
・登録免許税 ・印紙税 ・住宅ローンの一括繰上返済手数料 など |
・登録免許税 ・印紙税 ・住宅ローンの一括繰上返済手数料 など |
・仲介手数料 ・登録免許税 ・印紙税 など |
仲介
マンションをはじめとする不動産を売却する際に、オーソドックスな方法として利用されているのが仲介です。
仲介は不動産会社と媒介契約を結び、買い手を探してもらって不動産を売却する方法です。
媒介契約とは、不動産を売却する際に売り手と不動産会社が結ぶ契約のことです。不動産会社は、売買契約を成立するために売り手に代わって売却活動を行います。媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があり、売り手が自由に選ぶことが可能です。
なお、媒介契約の種類は次の項「不動産会社と結ぶ媒介契約の種類」で詳しく解説します。仲介の買い手は一般の個人となり、相場に近い価格で売却できる可能性が高いです。
売買契約が成立すると不動産会社に仲介手数料を支払う必要がありますが、買取よりも高く売却できる可能性があります。
仲介でのマンション売却にかかる期間は、平均で3~6ヵ月程度です。買い手が見つからなければ売却できないため、買取に比べて売却までに時間がかかりやすくなります。
買取
マンションを売却する場合、買取と呼ばれる方法で売却することもできます。買取とは、一般の個人ではなく不動産会社にマンションを買い取ってもらう方法です。仲介のように買い手を探すための売却活動は行わないため、スピーディーに売却できます。
買い手が不動産会社なので、売り出し情報が不動産ポータルサイトや広告に掲載されることはありません。そのため、近隣の住人にマンションを売り出していることを知られずに済みます。
しかし、売却価格は仲介よりも低くなる点がデメリットです。買取の場合、売却価格は相場の5~8割程度が目安です。買取には、即時買取と買取保証の2種類があります。
即時買取
即時買取は、不動産会社にマンションをすぐに買い取ってもらう方法です。仲介と同様に机上査定や訪問査定が行われますが、売り手と不動産会社の合意次第で売買契約に進むことが可能です。
売却までの期間は不動産会社ごとに異なるものの、最短3日~1週間程度と考えておくといいでしょう。
買取保証
買取保証は、まず仲介と同様に売却活動を行い、一定期間内に買い手が現れなかった場合に不動産会社が買い取る方法です。売却活動の期間内に買い手が見つかれば、相場に近い価格での売却が可能になります。
仲介で買い手が見つかった場合、不動産会社に対して仲介手数料の支払いが必要です。買い手が見つからず買取に至った場合は、事前に売り手と不動産会社で取り決めた価格で買い取ってもらえます。この際、仲介手数料は不要です。
買取の詳しい内容については下記の記事で紹介しています。
リースバック
リースバックはマンションを売却して現金化した後、賃貸借契約を結んで家賃を支払ってそのまま住み続ける方法です。一時的にまとまったお金が手に入り、住み慣れたマンションから転居する必要がありません。
買い手との協議次第では、将来的にマンションの再購入も可能になります。ただし、リースバックを利用するためには一定の審査や条件のクリアが必要です。また、売却価格は相場よりも低くなり、家賃は高くなりやすい傾向にあります。
また、同じマンションに住み続けられても、一度売却しているので所有者の名義が変わってしまう点がデメリットです。そのため将来的に子供への相続を考えている場合は、再購入しなければなりません。
任意売却
任意売却はマンションの住宅ローンが返済できない状況で、売却代金で完済も望めない場合に利用できる手段です。
通常、住宅ローンを借入れる際には、返済できなくなったときのために金融機関がマンションを担保に抵当権を設定します。つまり、住宅ローンの返済を数ヶ月に渡り滞納すると、金融機関の抵当権の実行によりマンションは差し押さえられ、競売にかけられる可能性が高いです。
また、抵当権を外すには売却時に住宅ローンの残債を一括返済することが条件になります。しかし、すでに住宅ローンを滞納している場合や、売却代金で住宅ローンを完済できない場合でも競売を避ける方法があり、それが任意売却です。
任意売却は競売を回避するために、買い手と債務者、債権者の3者が納得のいく価格での売却を実現する仕組みです。売却活動は仲介と同様に行われるため、購入希望者が現れた場合には内覧の対応も必要です。ただし、売却価格は相場の7~8割程度になります。
任意売却であれば、金融機関に相談することで、住宅ローンで完済ができなくても抵当権を外してもらったり、通常のマンションの売却と同様に進めてもらったりすることが可能です。また、売却代金で完済できなかった場合の残債は、金融機関に分割返済していくことになります。
任意売却については下記の記事でより詳しく紹介しています。
不動産会社と結ぶ媒介契約の種類
仲介や買取保証などの不動産会社に売却活動を依頼する売却方法では、売り手と不動産会社の間で媒介契約と呼ばれる契約を結びます。
媒介契約は、マンションを売却するために不動産会社に仲介を依頼し、買い手を探してもらう契約のことです。売り手自身が買い手を見つけて個人間で売買契約を結ぶこともできますが、通常の取引きでは不動産会社と媒介契約を結んで仲介を依頼するのが一般的です。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
このうち専任媒介契約と専属専任媒介契約は不動産会社1社としか契約を結べず、不動産会社は決められた期間内に指定流通機構への登録が必要です。指定流通機構は不動産会社同士で物件情報を共有できるシステムで、レインズとも呼ばれています。
指定流通機構に物件情報を登録するとより多くの不動産会社が閲覧できるため、買い手が見つけやすくなる点がメリットです。それでは、媒介契約の種類をひとつずつ詳しく解説します。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への依頼 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
契約期間 | 任意 ※行政指導では3ヵ月以内が推奨 |
3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 |
依頼主への販売状況報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
指定流通機構への登録 | 任意 | 契約から7日以内 | 契約から5日以内 |
一般媒介契約
一般媒介契約は、ほかの媒介契約と異なり同時に複数の不動産会社との契約が可能です。自己発見取引も可能なので、売り手自身が買い手を見つけた場合でも不動産会社を介さず売買契約を結べます。
ただし、同時に複数社と契約を結ぶと自社で確実に利益を得られるかどうかわからないため、各不動産会社が売却活動を積極的に行ってくれない可能性があります。また、契約期間は任意ですが、行政指導で推奨されているのは、ほかの媒介契約と同様に3ヵ月以内です。
一般媒介契約には、明示型と非明示型の2種類があります。不動産会社と一般媒介契約を結ぶ場合、いずれかの選択が必要です。
【明示型】
明示型は、どの不動産会社と契約を結んでいるのかといった情報を各社に開示するタイプです。不動産会社が営業戦略を立てやすくなるため、各社が積極的に売却活動を行ってくれる可能性があります。
【非明示型】
非明示型は、明示型と対照的にどの不動産会社と契約を結んでいるのかを各社に開示しないタイプです。
売り手としては、各社に情報を伝える必要がないので手間が省けます。一方で不動産会社にとってはライバルとなる不動産会社が把握できないため、各社が売却活動を積極的に行ってくれない可能性があります。どちらを選択するかは売り手次第ですが、非明示型よりも明示型の方が情報をオープンにできるため、不動産会社との信頼関係もアップしやすいです。
一般媒介契約については下記の記事で詳しく解説しています。
専任媒介契約
専任媒介契約は、契約を結べる不動産会社数が1社に限られます。そのため、複数社と契約できる一般媒介契約に比べ、不動産会社が売却活動を積極的に行ってくれやすいです。
自己発見取引も可能なので、売り手自身が買い手を見つけた場合は仲介手数料を支払うことなく取引き可能です。ただし、1社の不動産会社としか契約できないため、希望通りに売却できるかどうかは担当者の腕次第になります。
また、囲い込みに遭った場合は、本来よりも売却までに時間がかかる可能性があります。囲い込みとは、不動産会社が売り手と買い手の両方から仲介手数料を得るために、他社から紹介された購入希望者を勝手に断ってしまうことです。
専任媒介契約は指定流通機構への登録が義務づけられているため、物件情報を見たほかの不動産会社から問い合わせがある可能性も十分にあります。囲い込みに遭わないためには、指定流通機構に登録した際に交付される登録証明書を受け取り、自分の物件の状況ステータスがどうなっているのかをきちんと確認するようにしましょう。
専任媒介契約に関しては下記の記事でわかりやすく解説しています。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様に契約を結べる不動産会社数は1社のみです。売り手自身が買い手を見つけた場合でも自由に取引きできず、不動産会社を介して売買契約を結ぶ必要があります。
売却活動を1社の不動産会社に頼る形になるため、受けられるサポートも手厚く、比較的早く売却できやすいです。デメリットは、自己発見取引きが認められていないため、自分で買主を見つけたとしても不動産会社に仲介手数料を支払わなければならない点です。
また、マンションを希望通りの価格や期間で売却できるかどうかは不動産会社の腕次第なので、専属専任媒介契約を結ぶ際には慎重に選ぶようにしましょう。
次の記事で専任専属媒介契約、契約書の内容についての詳細を解説しています。
結局どの媒介契約を結べばいい?
媒介契約には3種類あり、それぞれ特徴が異なります。ここでは、どのような場合にどの媒介契約を選べばいいのか解説します。
一般媒介契約を選ぶといいケース
一般媒介契約を選ぶといいケースは、おもに次の通りです。
- 人気エリアのマンションを売却したい
- 築浅のマンションを売却したい
人気エリアにあるマンションや築浅のマンションを売却したい場合、一般媒介契約がおすすめです。購入希望者が集まりやすいため、複数の不動産会社と契約していても各社が積極的に売却活動を行ってくれる可能性が高いからです。
専任媒介契約を選ぶといいケース
専任媒介契約を選ぶといいケースは、おもに次の通りです。
- どの媒介契約を結べばいいか悩んでいる
- 複数の不動産会社とのやり取りが面倒に感じる
- 自身で買い手を見つける可能性が高い
どの媒介契約を結べばいいか悩んでいる場合は、専任媒介契約がおすすめです。専任媒介契約は3種類の媒介契約の中間的な位置づけで、不動産会社に積極的な売却活動を行ってもらいやすく、自己発見取引きもできるバランスの取れた媒介契約だからです。
1社の不動産会社としか契約できないため、複数社とのやり取りが手間だと感じる場合にも適しています。
専属専任媒介契約を選ぶといいケース
専属専任媒介契約を選ぶといいケースは、おもに次の通りです。
- 立地条件が良くないエリアのマンションを売却したい
- なるべく短期間で売却したい
駅からの距離が遠く人気のないエリアのマンションを売却したい人には、専属専任媒介契約がおすすめです。1社の不動産会社としか契約できないため、どのような条件でも積極的に売却活動を行ってくれる可能性が高いからです。
また、ほかの媒介契約よりも販売状況の報告頻度が高いため、不動産会社は積極的に売却活動を行ってくれます。さらに、専任媒介契約と同様に1社の不動産会社としか契約できないため、不動産会社とのやり取りを最小限に抑えられます。
媒介契約に関する疑問を解決
ここでは、媒介契約に関するよくある質問を解説します。
媒介契約を締結したら仲介手数料は発生する?
仲介手数料は成功報酬型なので、売買契約が成立した場合のみ支払う必要があります。そのため、媒介契約を結んだだけでは仲介手数料は発生しません。金額は宅地建物取引業法で上限が決められており、売買価格の金額に応じて計算方法が異なります。
売買価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売買価格×4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売買価格×3%+消費税 |
例えば売買価格が2,400万円だった場合、仲介手数料の計算式と金額は次の通りです。
(200万円×5%)+(200万円×4%)+(2,000万円×3%)=78万円
上記の金額に消費税(78,000円)がプラスされると、仲介手数料は85万8,000円(税込)になります。
また売買価格が400万円を超える場合は、「売買価格×3%+6万円+消費税」で求めることも可能です。
2,400万円×3%=72万円
(72万円+6万円)×1.1(消費税)=85万8,000円
なお、仲介手数料は、売買契約を結んだときと物件を引渡したときに50%ずつ支払うのが一般的です。
仲介手数料については下記の記事で詳しく紹介しています。
媒介契約は締結後に解除できる?
どの媒介契約を結んでいても、基本的にいつでも解除可能です。ただし、専任媒介契約と専属専任媒介契約は契約期間が決まっているため、契約期間内に解除する場合は費用(違約金)が発生することがあります。
一般媒介契約の場合
一般媒介契約は、ほかの媒介契約と異なり法律で契約期間が定められていません。そのため、契約時に契約期間を定めていない場合はいつでも解除が可能です。契約を解除する際には、不動産会社に伝えるようにしましょう。
専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、契約期間中であっても基本的に解除が可能です。不動産会社に問題があって解除する場合は、違約金が請求されることはありません。例えば、納得のいく売却活動が行われない場合や販売状況の報告がきちんとされていない場合などです。
一方で売り手の都合で解除する場合、これまでの売却活動でかかった費用を請求される可能性があるので注意しましょう。
媒介契約書を締結する際の確認ポイントは?
不動産会社と媒介契約を結ぶ際には、トラブルを回避するためにも媒介契約書の記載内容をきちんと確認しておきましょう。
媒介契約を結ぶ際に確認しておきたいポイントは、おもに次の通りです。
- 媒介契約の種類
- 標準媒介契約約款に沿っているかどうか
- 仲介手数料を支払うタイミング
- 物件情報
- 不動産会社の売却活動方法 など
国土交通省の標準媒介契約約款では、消費者が不利益を被らないために媒介契約で定めるべき基本事項を網羅しています。媒介契約書の内容が標準媒介契約約款に則っていない場合、使用しない理由を不動産会社に確認することが大切です。
このほかには、契約の有効期間と更新方法、解除条件も併せて確認しましょう。
マンション売却前に売却方法や媒介契約の種類を理解しよう
マンションの売却の種類は売却方法が4種類、不動産会社と結ぶ媒介契約は3種類です。それぞれメリットとデメリットがあるため、売却の目的や状況に応じて適切な方法を選択しましょう。
また、どのような方法で売却するにしても、早く高く売るためには契約する不動産会社選びがとても大切です。複数社に査定をしてもらい比較することで信頼できる不動産会社を見つけやすくなります。複数社の不動産会社へ査定を依頼するときは、一度の入力で複数の不動産会社に査定依頼できる一括査定サイトの利用がおすすめです。