通信制高校の学費が払えない? 対策や使える制度を解説
公開日:2025年06月18日 更新日:2025年06月18日
通信制高校に通っている、または通う予定の生徒や保護者の方で、学費が払えない場合はどうしたらよいか悩む人もいるでしょう。 この記事では、通信制高校の学費負担を軽減できる公的な制度や、それ以外の方法について解説します。 経済的な不安を減らし、安心して学業に専念できる環境作りに役立ててください。
通信制高校の学費平均は?
通信制高校の学費平均(年間)は、公立で約30,000円、私立で約36万~40万円です。
| 公立 | 私立 | |
|---|---|---|
| 1年間の授業料 (約25単位) |
約10,000円 ※1単位400円の場合 |
約30万円 ※1単位12,000円の場合 |
| 1年間の諸費用 | 約20,000円 | 約6万~10万円 |
| 1年間の学費合計 | 約30,000円 | 約36万~40万円 |
| 3年間でかかる学費 | 約90,000円 | 約108万~120万円 |
上記には、教材費・設備費・行事費などが含まれます。
学校やコースによって異なるため、特に私立の場合は平均額以上に学費がかかる場合も多いです。
また、全日制高校や定時制高校の学費と比較すると下表の通りです。
| 通信制 | 全日制 | 定時制 | |
|---|---|---|---|
| 公立 | 約30,000円 | 約29万円 | 約8万~10万円 |
| 私立 | 約36万~40万円 | 約69万円 | 約25万円 |
公立の場合、通信制高校の学費が一番安くなります。
私立の場合、通信制高校の学費は、全日制高校よりも安く、定時制高校よりも高くなっています。
詳しくは、こちらの記事「通信制高校の学費は安い?3年間でいくらかかるか全日制・定時制高校と徹底比較」を参考にしてください。
学費が払えないときに使える制度
通信制高校の学費は、全日制高校と比べると安価ですが、学費が払えない状況であれば、公的制度を利用しましょう。
これにより、経済的な負担を大きく軽減することが可能で、授業料を実質無償にできる場合もあります。
高等学校等就学支援金
高等学校等就学支援金は、経済的な理由で高校進学を諦めなくて済むように、設けられた制度です。いわゆる「高校無償化」の制度です。
本来は高等学校に在籍する生徒を対象に、授業料として一定の金額が給付されます。通信制高校も対象となります。
世帯年収や家族構成、学校によって支援金額が異なりますが、通信制高校の場合、支援金額(上限)は以下の通りです。
- 年収590万円未満:29万7,000円/年
- 年収590万円以上910万円未満:11万8,800円/年
私立の通信制高校の学費は平均30万円ほどなので、世帯年収590万円未満の場合、実質無償となります。
高校生臨時支援金(令和7年に限り)
高等学校等修学支援金は、年収910万円未満の世帯が対象ですが、令和7年度に限り、年収910万円以上の世帯も、高校生臨時支援金を受け取ることができます。
支援金(上限)は以下の通りです。
- 年収910万円以上:11万8,800円/年
つまり、令和7年度に限っては、高等学校等修学支援金の所得制限が一部撤廃されるということです。
高校生等奨学給付金
高校生等奨学給付金は、経済的な理由で教育を受けることが難しい生徒が、安心して学業に専念できる環境を整えることを目的として提供されています。
高等学校等就学支援金の対象は授業料であるのに対して、高校生等奨学給付金の対象は授業料以外の教育費です。
支給金額は下表の通りです
| 世帯状況 | 公立の給付額(年額) | 私立の給付額(年額) |
|---|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 32,300円 | 52,600円 |
| 非課税世帯 | 50,500円 | 52,100円 |
高校生等奨学給付金は、高等学校等就学支援金との併用が可能です。
高等学校等就学支援金や高校生等奨学給付金について、詳しくはこちらの記事「通信制高校の学費を無償化!利用できる公的制度を徹底解説!」を参考にしてください。
自治体の学費免除・補助制度も
国が提供する公的制度以外に、独自に就学支援を実施している自治体もあります。
例えば、東京都が実施している私立高等学校等授業料軽減助成金では、以下の支援を受けられます。
| 片働き世帯年収目安 | 共働き世帯年収目安 | 助成金額(年額) |
|---|---|---|
| 約910万円以上 | 約1,090万円以上 | 26万5,000円 |
| 約590万円~約910万円未満 | 約740万円~約1,090万円未満 | 14万6,200円 |
| 約590万円未満 | 約740万円未満 | 0円(※) |
※国の支援金で満額支給されるため東京都からの助成金額は0円となります。
出典:東京都「私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金(都の制度)」
高等学校等就学支援金が支給されない、年収910万円以上の世帯も対象となります。
また、大阪府が実施している大阪府高校等授業料無償化制度では、所得にかかわらず授業料が無償化されます。
教育ローンも選択肢の1つ
通信制高校の学費を払えない家庭に対して、さまざまな支援制度が用意されています。ただし、これらの制度には年収制限がある場合があり、すべての家庭が利用できるわけではありません。また、自治体の学費免除・補助制度も、自治体によっては実施していない場合もあります。
支援制度を利用しても学費が不足する場合や制度自体が利用できない場合、教育ローンの利用も有効です。
教育ローンには、国の教育ローンと民間の教育ローンがあり、下表のような違いがあります。
| 国の教育ローン | 民間の教育ローン | |
|---|---|---|
| 運営機関 | 日本政策金融公庫 | 民間の金融機関 |
| 金利 | 年1.95% (条件により1.55%) |
2~5% |
| 申し込み条件 | 世帯年収の上限790~1,190万円 (子どもの人数で変動。緩和要件あり) |
金融機関により異なる |
| 借入金額の上限 | 最大450万円 | 1,000万円以上 |
国の教育ローンは金利が低いですが、借入条件に年収制限があります。
一方、民間の教育ローンは、金利が高い傾向があります。
教育ローンについて、詳しくはこちらの記事「おすすめの教育ローン!借りるならどこがいい?金利や借入可能額を比較」を参考にしてください。
学費が払えないとどうなる?
すでに通信制高校に通っている場合、学費が払えないからと言って、すぐに退学させられるわけではありません。
学費の滞納が確認された場合、まずは学校から通知が届くことが一般的です。
それに対して無視を続けると問題が深刻化しますが、学校もできるだけ生徒の学業継続を支援したいと考えているので、すぐに退学の措置に至ることは稀です。
とはいえ、学費を滞納する可能性がある場合は、できるだけ早く学校に相談することが重要です。学校によっては支払い方法の見直しや、支援制度の紹介が受けられるかもしれません。
学校によっては、卒業後の支払いを認めてくれる場合もあります。
通信制高校だと学費が抑えられる理由
通信制高校は、さまざまな理由で学費を抑えることができます。
- 全日制高校より学費が安い
- 私立でも授業料が実質無料
- 通学の交通費を抑えられる
- 働いて稼ぎながら通える
全日制高校より学費が安い
通信制高校の学費は、全日制高校と比較して安いと言えます。
■年間の学費平均
| 公立 | 私立 | |
|---|---|---|
| 通信制 | 約30,000円 | 約36万~40万円 ※オンラインコースの場合 |
| 全日制 | 約29万円 | 約69万円 |
特に公立の通信制高校の学費はとても低額で、公立の全日制高校と比べると10分の1程度です。
私立でも授業料が実質無償
前述した高等学校等就学支援金や高校生等奨学給付金は、私立の通信制高校も対象になります。
そのため、年間授業料が30万円以内の学校であれば、公的制度を利用することで、授業料は実質無償になります。
授業料が高めの学校でも、支援金制度を利用することで、授業料の大半をカバーできるでしょう。
通学の交通費を抑えられる
通信制高校の学費が抑えられる理由の1つは、通学の交通費があまりかからないことです。
全日制高校の場合、毎日の通学が必要となり、電車やバスなどの交通費がかかります。しかし、通信制高校では自宅学習が主体のため、学校に通う頻度が低くなります。
学校やコースによっては、スクーリングのために学校を訪れるのは、月に数回や年に数回という場合があります。その場合、交通費の負担は大幅に減ります。
働いて稼ぎながら通える
働きながら学べる点も、通信制高校のメリットの1つです。
全日制高校では毎日の通学が求められるため、働ける時間が制限されます。
一方、通信制高校は自宅学習が中心のため、自分のスケジュールに合わせて学習を進めることができます。仕事と学業の両立がしやすく、仕事で得た収入を学費や生活費に充てることができます。
よくある質問
ここでは、通信制高校の学費にかかる一般的な疑問についてまとめます。
Q.全日制と通信制ではどちらが安い?
A.全日制と通信制の高校では、通信制高校の方が学費が安いです。
■年間の学費平均
| 公立 | 私立 | |
|---|---|---|
| 通信制 | 約30,000円 | 約36万~40万円 |
| 全日制 | 約29万円 | 約69万円 |
Q.通信制高校の学費は無償?
A.無償ではありません。
しかし、高等学校等就学支援金制度を利用することで、一定の条件を満たせば授業料が実質無償となることがあります。
年収590万円未満の場合、支援金の上限額は年間29万7,000円です。通信制高校の授業料がこれを下回る場合、実質無償となります。
通信制高校の3年間の費用はいくら?
通信制高校の3年間にかかる費用は学校やコースによって異なりますが、平均額は下表の通りです。
| 公立 | 私立 | |
|---|---|---|
| 1年間の学費合計 | 約30,000円 | 約36万~40万円 |
| 3年間でかかる学費 | 約90,000円 | 約108万~120万円 |
Q>母子家庭で通信制高校に通う場合の学費は?
A.高等学校等就学支援金や高校生等奨学給付金は母子家庭でも利用できるので、通う高校によっては学費が実質無償になる可能性があります。
そのほか、母子家庭・ひとり親家庭が活用できる奨学金などもあります。
詳しくはこちらの記事「母子家庭・ひとり親家庭が給付型奨学金を受けるには?給付条件や注意点などを紹介」をご参照ください。
まとめ
通信制高校は、比較的学費が安く、公的な支援制度を利用すれば、高校によっては学費が実質的に無償になります。
公的な支援が受けられない場合や、お金が足りない場合は、教育ローンの利用も検討してみましょう。
万が一学費が払えない状況になったとしても、すぐに退学させられることはありません。できるだけ早く学校に相談をしましょう。

