通信制高校・定時制高校の本当のデメリット ~イメージや先入観で判断せず、正しい知識を~

通信制高校や定時制高校とは、いったいどんな学校なのでしょうか。多くの保護者にとって「当事者になるまでは通信制高校や定時制高校のことはほとんど知らない」というのが実情で、どこかで見聞きした情報を元にイメージだけが先行してはいないでしょうか。ここでは、改めて通信制高校や定時制高校がどういった場所で、編入や転入にあたってどのようなデメリットがありえるのかを整理してみましょう。

通信制高校や定時制高校に対して、ネガティブなイメージを抱いていませんか?

通信制高校や定時制高校と聞いて、保護者の皆さんはどんなイメージを抱くでしょうか。全日制の高校で何か問題を起こしてしまった生徒や人間関係でうまくいかなかった生徒など「何か問題を抱えている人」が集まる学校というイメージを持ってはいないでしょうか。確かにそのような生徒がいることは間違いではありません。さまざまな理由で全日制に「通えなくなってしまった」人たちが、次の選択肢として通信制高校や定時制高校を選択しているケースは少なくないのです。

しかし実態としては、高校卒業という目標以外にも明確な夢やビジョンを持っているがゆえに、授業のスケジュールがしっかりと決まっている全日制の高校だと都合が合わずに、自主的に通信制高校や定時制高校を選ぶ生徒もたくさんいます。「問題のある人ばかり」という先入観やイメージだけで通信制高校や定時制高校という選択肢を消してしまっているとしたら、それは本当にもったいないことです。

このページでは、皆さんが抱いているであろうさまざまな懸念や不安について、ケース別に見ていきます。

ケース1:「みんなが行かない学校」と決めつけてしまっている

周りに通信制高校や定時制高校に通っている子供がいないことを理由に、「みんなが行かない学校に通わせるのは不安」と思う人もいるかもしれません。

2018年に行われた文部科学省の調査によると、2018年5月1日時点で通信制高校や定時制高校に通っている生徒数は合計27.1万人。全日制を含めた生徒数全体のおよそ8%に及ぶ比率です。8%という数字を少ないと感じるか、思ったより多いと感じるかは人それぞれでしょう。

高等学校(全日制・定時制・通信制)の生徒数

しかし、例えば中学校の1クラスが40人だったとします。彼らが卒業したあと、クラスの8%、つまり3~4人が通信制高校や定時制高校に進学すると考えてみるとどうでしょうか。さほど少ないとは感じないはずです。このように、身近な例に当てはめてみると、通信制高校や定時制高校は「みんなが行かない学校」ではないことがわかります。

ケース2:進学や就職など、将来の選択肢に不安を感じている

通信制高校や定時制高校に進学すると、「就職がしづらくなるのでは?」と感じたり、「将来の選択肢を限定してしまうことにつながるのではないか」と懸念する人もいるかもしれません。

まず前提として知っておかなければいかないのは、通信制高校も定時制高校も「すべて同等の高校卒業資格である」という点です。そのため、履歴書等には学校名を記載する必要はありますが、そこが通信制高校や定時制高校であったことを記載する必要はありません。

もちろん、場合によっては面接等で質問され、答えなければいけない場面はあり得ます。その際、通信制高校や定時制高校に対する面接官の知識が乏しく、先述のようなネガティブなイメージを抱かれてしまう可能性がないとは言い切れません。ただ、乱暴を承知であえて言うならば、その場をいかにして乗り切るかは「本人のアピール次第」です。

通信制高校や定時制高校を経て大学に進学する生徒はたくさんいます。その場合の最終学歴はその大学になり、卒業した高校の影響というのは少なくなります。あるいは資格の取得などによって、「どこの高校を卒業したか」ということ以上の強みや魅力を身につけることもできるでしょう。もちろん、直面した問題を通信制高校に通う過程で乗り越えたこと自体がその生徒自身の魅力になることも十分にあります。

通信制高校や定時制高校は、全日制高校と比べて時間の自由度が高いという特徴があるため、その自由な時間を活用することで、他の人にはない魅力や強みを身につけることもできるのです。

ケース3:「通信制高校に通っていた」ということを引け目に感じるのではという懸念

「自分は全日制高校ではなく、通信制高校に通っていた」という事実が将来、周囲から白い目で見られたり、あるいは本人が引け目を感じたりしてしまうのではないか、といった不安を抱く保護者の方もいるかもしれません。

まず、高校卒業以降に出会った知人や友人の出身高校を知っているか、考えてみてください。おそらくほとんどの人が出身高校など知らず、気に留める機会もないはず。「母校が甲子園に出場した」「出身地が同じだ」というケースでもない限り、「出身高校」に言及する機会というのは実際とても少なく、会社などでも「出身大学」に言及されることはあっても、「出身高校」に話題がおよぶケースは極めて稀と言えるのではないでしょうか。

また本人が通信制高校や定時制高校に通っていた事実をどう捉えるか、という問題ですが、これも結局は「本人次第」です。もう少し言及すると「本人が通信制高校や定時制高校でどんな高校生活を過ごすか」次第です。通信制高校はサポート校の存在や、スクーリング制度など、全日制高校にはない仕組みが数多く存在します。それらをしっかりと理解し、比較し、本人が充実した高校生活を送れるような選択をすることが何よりも重要なのではないでしょうか。

通信制高校や定時制高校の「本当のデメリット」はどこにあるのか

さて、ここまではイメージや先入観によって抱いていた漠然とした不安を整理してきました。ここからは、改めて正しいデメリットを理解しましょう。詳しくは「通信制高校のメリット・デメリット、全日制・定時制との違いも徹底比較!」に詳しく書かれているため、ぜひそちらを一読いただきたいのですが、共通する大きなデメリットは大きく2つ存在します。

デメリット1:「自由度の高さ」というメリットは、そのままデメリットにもなりえる

通信制高校は学習ペースが生徒に任されるケースがほとんど。定時制高校は全日制高校と比べると授業時間が少ないことが特徴です。そのため全日制高校と比べるとかなり自由度が高くなります。

スマホゲームやネット動画など、さまざまな魅力あるコンテンツが簡単に手に入ってしまう現在、「強制的に自由を制限され、管理されること」というのは、意思を強く持つことが苦手な人にとっては意外と重要です。

自由度が高いということは、行動の責任を自身が負う、ということでもあります。自由度が高い中でも、「自分がやりたいこと」だけではなく「自分がやるべきこと」をしっかりと行っていく意志の強さが必要になります。その点において、通信制高校や定時制高校の自由度の高さがデメリットになってしまうケースがあるのです。

もちろん多くの通信制高校では、そういった生徒をサポートする制度が充実しています。「自由度の高さがデメリットになってしまうのでは」と不安に思ったら、まずはどのようなサポート制度があるかを確認してみましょう。

デメリット2:学習内容がやさしすぎる

もうひとつの大きなデメリットは、学習内容の難易度です。通信制高校も定時制高校も、さまざまな生徒に門戸を開く、という観点から、全日制と比べると学習内容がやさしいものになっています。そのため大学進学を目指す生徒にとっては、通信制高校や定時制高校の学習内容だけでは十分な内容とは言えない状態になってしまうのです。

もちろん、学校の学習で足りない分は自身で学習できるというのであれば問題はありません。通信制高校によっては進学コースなども用意されているため、それらを活用するのもひとつの方法です。

 

通信制高校や定時制高校は、生徒によっては心強い選択肢になり得るもの。それなのに、正しい知識を持たずに、漠然とした不安のせいで選択肢から外してしまうのは本当にもったいないことです。将来に関わる大事な選択だからこそ、正しい知識を得て、デメリットを正しく理解した上で、そのデメリットを回避できるような方法や学校を検討する、という適切なステップを踏むようにしましょう。