高校を中退したらどうなる?その後の影響や選択肢を解説

高校中退を考える際に特に気になるのは、どのような進路があるかや、就職できなくなるのかといったことでしょう。 高校中退者は全体の約1.5%で、年々増加している状況です。しかし、高校を中退すると、進学や資格取得が難しくなり、就職や収入に影響が及ぶ可能性があります。 この記事では、高校中退の現状や高校を中退することで生じる影響、高校を中退する前にできることや、中退後の進路について解説します。

高校中退の現状

文部科学省が公表している「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 概要」によると、2023年度に高校を中退した人数は4万6,238人となっています。全国で292万5,515人が高校に在籍しているため、約1.5%が中退している計算です。

2021年度の中退者数は約3万9,000人であったことから、この2年で増加していることがわかります。

高校を中退することで生じる影響

高校を中退することで生じる可能性がある影響は、以下の通りです。

  • 進学や資格取得が難しくなる
  • 就職や収入に影響が及ぶ
  • 友人との交流が希薄になる
  • 社会性を養う機会を失ってしまう

進学や資格取得が難しくなる

大学、短期大学、専門学校などの多くは、高校卒業を受験資格としています。そのため、高校を中退すると最終学歴は中卒となり、基本的に進学ができなくなります。

また、栄養士や看護師など、一部の国家資格では「高卒以上」が受験資格となっている場合があります。高校中退により、取得できる資格や目指せる職種の選択肢が狭まる可能性があることも考慮しましょう。

就職・収入に影響が及ぶ

就職活動においても、多くの企業が高卒以上の学歴を求めています。そのため、正規雇用の求人に応募できない、または採用されにくい可能性があります。

令和5年若年者雇用実態調査の概況」によると、若年労働者のうち雇用形態が正社員となっている人の最終学歴は、中卒が34.0%、高卒が63.5%、大学卒が87.3%となっています。学歴が高くなるほど正社員の割合が高くなることがわかります。

最終学歴が中卒になると、必然的にアルバイトや契約社員など非正規での求人の割合が高くなるため、収入が低くなりやすいでしょう。

友人との交流が希薄になる

高校を中退すると学校から離れることになるため、友人や同年代の人との交流が少なくなります。

在学時の友達や、小中学校時代の友達と連絡を取ることはもちろんできますが、環境の違いから話が合わないと感じることがあるかもしれません。引け目や疎外感を抱いて疎遠になってしまう可能性もあります。

学生時代は、将来の社会生活に必要なコミュニケーション能力を培う大切な時期なので、この変化が将来の人間関係に影響を与えることも考えられます。

社会性を養う機会を失ってしまう

高校を中退すると、集団の中で生活する機会が失われてしまいます。そのため、社会性を得る経験ができず、他人との関わり方に不安や苦手意識を持ってしまう可能性もあります。

また、学校は色々な人がいて、さまざまな意見や考え方に触れられますが、高校を中退すると情報源がインターネットなどに限定されやすくなります。その結果、考え方が偏ったり、視野が狭まったりする恐れもあります。

高校を中退する前にできること

学校の先生やスクールカウンセラーに相談することで、中退しなくても済む方法を教えてもらえるかもしれません。

高校中退を検討する人は、おそらく何らかの悩みを抱えているケースが多いです。

文部科学省「令和5年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」によると、高校中退の理由として最も多いのが「転学・進路変更」です。ほかにも、「学生生活になじめない」「学習意欲が低下した」「経済的に苦しい」などが挙げられています。

こうした悩みを一人で抱えてしまい、中退を選択するケースもあるはずです。しかし、信頼できる人に悩みを相談すると、中退以外の選択肢を見つけられる可能性があります。

高校中退後の進路

高校中退後は、以下のような進路があります。

  • 高卒認定試験を受ける
  • 別の全日制高校へ編入する
  • 定時制高校へ編入する
  • 通信制高校へ編入する
  • 就職・起業する
  • 海外留学

高卒認定試験を受ける

高校を中退しても、高卒認定試験を受けて合格すれば、大学や専門学校への進学が可能となります。

2023年度の高卒認定試験では、約1万7,000人の受験者に対し、約8,000人が合格しています。

ただし、高卒認定資格を得ても、大学に進学して卒業しなければ、最終学歴は「中卒」となるので注意しましょう。

高卒認定試験については、通信制高校で取得できる高卒資格と高卒認定はどっちが良いの?メリット・デメリットも解説も参考にしてください。

別の全日制高校へ編入する

もし中退後に学び直しをしたい場合、別の全日制高校への編入も考えられます。新たな環境に身を置いて、新しい友人に囲まれながら過ごすことができるでしょう。

しかし、どの高校も編入を受け入れているわけではなく、欠員がなければ募集しなかったり、募集期間が限定されていたりとハードルは高めです。

また、高校1年生を修了して退学をした場合は2年生から編入できる場合もありますが、1年生の途中で退学した場合は、編入すると再び1年生からやり直す必要があります。

定時制高校へ編入する

定時制高校は、主に昼間や夕方から授業が行われます。学生の年齢層が幅広いことも特徴です。高校を中退したけど学校に通うこと自体に抵抗がないという人は、定時制高校へ編入することも考えてみましょう。

ただし、全日制と同じく定員に空きがなければ募集がなく、編入できる時期も限定されています。

定時制高校については、定時制高校とは?全日制との違いをわかりやすく解説!も参考にしてください。

通信制高校へ編入する

通信制高校は、提供された教材をもとに自宅で好きなタイミングで学習できる学校です。全日制や定時制の高校などに比べて定期的な通学が必要ないため、自分のペースで無理なく学習を進められます

また、通信制高校では常に編入を募集しているところもあり、入学試験が書類審査や面接のみで済むことが多いため、入りやすくなっています。

さらに、以前の高校で取得した単位を引き継げることもあります。

通信制高校への編入については、通信制高校への編入と転入の違いを解説!注意点から判断ポイントまで紹介も参考にしてください。

就職・起業する

高校を中退して就職する方法もあります。中退したことで就職活動が不利になることも考えられますが、若い人の体力や、新しい価値観、柔軟な発想力などを重視して採用している企業もあります。

また、高校中退した人の中には自分自身で起業をする人もいます。起業には学歴は関係なく、事業を成功させて利益を生み出す技術やアイデアが求められます。

高校中退からの就職については、高校中退、中卒の就職。公務員や正社員になれる?も参考にしてください。

海外留学

日本での生活が自分に合わないと感じたら、海外へ留学するのもひとつの選択肢です。

海外の学校を卒業すると、高卒資格を得られるだけでなく、現地の言語や文化に触れられ、視野を広げるきっかけにもなります。留学期間によっては、帰国してから帰国子女枠で進学できる可能性もあります。

ただし、留学には多くの費用が必要になるのに加えて、異なる環境での生活に適応する力や心身の負担への備えも必要です。

よくある質問

高校中退について、よくある質問を紹介します。

Q.高校中退は何年生が多い?

A.文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、高校の中退者の中で、特に多いのは1年生となっています。これは、中学から高校に入学して、新しい学校生活へなじめないことなどが理由のひとつとして考えられます。

2年生では全体の21%、3年生では8%と学年が上がるにつれて中退者は少なくなっています。

Q.高校を中退する場合の手続きは?

A.中退する場合の手続きは学校によって異なりますが、基本的には以下の流れとなります。

  1. 先生・保護者との面談
  2. 退学届の作成・提出
  3. 学費などの清算
  4. 私物や書類の持ち帰り

高校を中退する場合、まずは学校の先生や保護者と面談を行い、退学の意志や理由を確認します。

退学届などの書類の作成や学費の清算は、予想以上に時間がかかることがあります。あらかじめ手続きやスケジュールを確認して、計画的に進めるようにしましょう。

まとめ

高校生の約1.5%が高校を中退しています。高校を中退すると、進学や資格取得が難しくなり、就職や収入に影響が及ぶことがあります。

しかし、中退後も進学や就職の道は閉ざされていません。高卒認定試験を受けたり、通信制高校へ編入したりする方法もあります。

通信制高校は、通学の必要がなく、送付されてくる教材をもとに自宅で学習できます。自分の生活スタイルや予定に合わせて無理なく学習を進められます。一人で悩まずに周りに相談をしてみて、自分に向いている方法を選びましょう。

通信制高校について詳しく知りたい人は、通信制高校とは?カリキュラムや全日制との違いをわかりやすく解説!を参考にしてください。