通信制高校の単位制とはどんな仕組み?学年制との違い

通信制高校の多くは、必要な数の単位を修得すると卒業できる「単位制」という仕組みを用いています。一般的な全日制、定時制の高校で用いられているのは「学年制」です。高校ではあまりなじみのない「単位制」の仕組みやメリット、効率よく卒業するための単位修得プランの立て方などを紹介します。

学年制と単位制の違い

高校には大きく分けて、「学年制」と「単位制」のふたつの仕組みがあります。学年制は、一定の成績と出席日数を修めると次の学年に進級し、3年生を終えると卒業するという仕組みで、多くの全日制高校が採用しています。一方、単位制は、多くの通信制高校が取り入れている仕組みで、一定の成績を修めると単位を修得し、定められた数の単位を修得すると卒業できます。

ちなみに、あまり意識することはありませんが、学年制の高校でも、進級が決まった時点でいくつかの単位を修得しています。高校卒業に必要な単位数は74単位以上で、これは学年制でも単位制でも同じです。つまり、通信制高校でも、全日制高校でも、卒業するには同じだけの勉強が必要になるのです。

単位は、科目ごとに定められた学習量を表しています。定められた時間の授業を受けるなどして学習量を満たし、試験で一定以上の成績を修めると単位が認められます。定められた学習量を満たすことを履修、単位が認められることを修得といいます。

学年制の高校における単位の履修と修得

全日制、定時制高校などの学年制の高校では、年間35単位時間(1単位時間50分間)の授業を受けたり、夏休みの課題を提出したりすることで履修し、理解が目標を達成したと認められる(試験で定められた点数以上を取る等)ことで単位を修得できます。

例えば、国語の現代文で4単位が必要となっている場合、週に4単位時間の現代文の授業があり、規定以上の授業に出席することで履修が認められます。履修後、試験等で理解が目標を達成したと認められると、現代文で4単位を修得することになります(試験のない科目もあります)。

通信制高校における単位の履修と修得

通信制高校の単位は、レポート(添削指導)を規定回数以上行い、スクーリング(面接指導)を規定の単位時間受けることで履修できます。その後、単位認定試験で学校が求める成績を達成すると、単位修得となります(単位認定試験のない科目もあります)。
履修…単位修得に必要な出席、学習を行うこと。

レポートとは、学校からの課題を提出して添削などの指導を受けることで、スクーリングとは、実際に授業を受けることをいいます。基本的に通信制高校では、レポートとスクーリングを繰り返すことで単位を修得します。学校によって異なりますが、レポートは自宅で行い、スクーリングのときだけ学校へ通うのが一般的な通信制高校の学習スタイルです。

通信制高校では、74単位を修得し、さらにホームルームなどの特別活動を30単位時間履修することで卒業できます。

通信制高校によっては、スクーリングで行う授業をオンライン授業にしている学校もあります。そういった学校の場合は、体育の授業やホームルームなどの特別活動だけ通学するので、スクーリングを年間数日程度にまで抑えることができます。

■通信制高校における単位修得の例

通信制高校における単位修得の例

■通信制高校の卒業要件

通信制高校の卒業要件

■科目ごとの1単位の修得に必要なレポート回数とスクーリングの単位時間

教科・科目 レポート スクーリング
国語、地理歴史、公民及び数学に属する科目 3回 1単位時間
理科に属する科目 3回 4単位時間
保健体育に属する科目のうち「体育」 1回 5単位時間
保健体育に属する科目のうち「保健」 3回 1単位時間
芸術及び外国語に属する科目 3回 4単位時間
家庭及び情報に属する科目並びに専門教育に関する各教科・科目 必要に応じて2~3回 必要に応じて2~8単位時間

学年制のメリット・デメリット

学年制は、多くの全日制高校が採用している仕組みで、3年で卒業できるようにカリキュラムが組まれています。そのため、学校に通って授業に出席し、試験で基準点以上の結果を出していれば、確実に3年で卒業できます。また、クラス単位で授業を受け、同じ時間で活動するため、友達が作りやすいというメリットもあります。

一方で、単位をひとつでも修得できないと、原級留置処置、いわゆる留年となります。留年すると、落第した学年の単位をすべて修得し直さなくてはなりません。ほかにも、朝から夕方まで時間割が決められているので、自由になる時間は少なくなっています。学校によってさまざまですが、校則は厳しい傾向にあります。

単位制のメリット・デメリット

単位制は、多くの通信制高校で採用されている仕組みで、全日制高校でも採用する学校が増えつつあります。通信制は、在学している間に定められた単位(74単位)以上を修得し、3年以上の在籍、30単位時間以上の特別活動を行うことで卒業できます。在学中に卒業に必要な単位を修得すれば良い、という仕組みなので、学年制のような留年がありません。もし、修得できなかった単位があったとしても、また修得し直すことができます。

一方で、単位修得のスケジュールは、個人個人に任されているため、学習のモチベーションを保ち続けるのが大変です。3年で卒業するつもりが、4年かかってしまうことも珍しくありません。また、学校での活動日程も個人に任されているので、親しくなるきっかけが難しく、友達が作りにくいと言われています。

そういった単位制のデメリットを解消するため、私立の通信制高校では、3年で卒業するためのサポート体制を整えていたり、生徒同士が交流できる機会を設けていたりします。

単位制の学校への転入・編入

学年制から単位制の学校へ転入する場合、前の学校で修得した単位がそのまま引き継がれます。また、学年制ですでに2年以上在籍していた場合は、通信制高校で必要な単位を修得し、1年以上在籍すれば、卒業できます。
学年制の単位は、その学年を修了したときに修得するので、中途退学すると前の学年で修得した単位だけが引き継がれます。1年生で中途退学した場合、修得した単位はありません。

いつでも編入転入を募集している通信制高校4選

通信制高校への編入転入を検討しているのであれば、まずは随時編入や転入を募集している通信制高校をチェックしてみてください。
学校によっては入学時期が決まってるところがあります。パンフレットや、学校に問い合わせて、しっかり確認しておきましょう。

卒業までの単位修得スケジュールを考える

通信制高校は、74単位の修得、30単位時間の特別活動、3年以上の在籍の条件を満たせば、卒業できます。学年制のように、学校が定めたカリキュラムに従う必要はなく、単位制の通信制高校では、自分のペースで学習を進めて、卒業を目指すことができます。3年で卒業するのが難しい人は、時間をかけて少しずつ単位を修得して卒業することも可能です。

一方で、自分に学習のペースを任されているので、しっかりとした自己管理が重要になります。うまく自己管理ができないと、単位制の学校では、3年で卒業するつもりが、4年以上かかってしまうことがあります。目標をしっかりと見据えて、単位修得のスケジュールを立てておきましょう。

もし、計画通りにいかなかったとしても、計画を調整してやり直せば大丈夫です。途中でやり直しができるのが、単位制の学校のメリットです。

卒業までの単位修得プラン

通信制高校では、卒業までのカリキュラムを自分で組み立てるのが基本です。学校に相談することもできますが、おおまかな計画は自分で立てなくてはいけません。卒業後の進路や高校生活など、さまざまな要素を検討し、自分なりに計画してみましょう。

1年間に修得できる単位数の上限は、学校によって異なります。ただ、就学支援金制度で支給対象が年間30単位までと定められているため、30単位を上限としている学校が大半です。1年間でもっと単位を修得できる学校もありますが、まずは30単位を上限に検討してみましょう。

学校とプライベートの両立

3年で74単位以上を修得するには、1年で平均24~25単位の修得が必要です。1年で25単位は、無理なく学習しつつ、プライベートの時間もたっぷりととれるくらいのペースです。アルバイトをしたり、受験勉強をしたりと時間の使い方は自由です。全日制高校に通っていては、得られないような体験をすることもできるでしょう。

学校とプライベートの両立

大学受験を最優先

大学受験を目標に、早い段階で卒業に必要な単位を修得するプランです。通信制高校の学習内容では不安がある、難関大学を狙いたい、という人は、3年次に受験勉強の時間を大きく割くため、74単位を早めに修得してしまいましょう。
ただし、大学受験のモチベーションを保ち続けるため、無理しすぎないことも大切です。詰め込みすぎたと思ったら、学習のペースを落としましょう。大学受験向けのコースがある通信制高校なら、そういったコースを選択するのもひとつの方法です。

大学受験を最優先

じっくり卒業を目指す

病気やケガで勉強を続けるのが難しいという人は、3年間での卒業にこだわらないことも大切です。通信制高校には留年がないので、時間をかけて卒業を目指す人は少なくありません。卒業までの期間を長めに考えて、じっくりと卒業できるプランを立てましょう。慣れてきたら、徐々に修得する単位の数を増やすこともできます。

じっくり卒業を目指す