通信制高校の公立と私立、何が違う?卒業率やサポート体制に注目しよう

全日制の高校に公立と私立があるように、通信制高校にも公立と私立があります。通信制高校の公立と私立で、基本的な学習内容や卒業に必要な単位数(74単位以上)に違いはありません。しかし、学費や設備には大きな違いがあるので、「通信制高校なんてどこも同じ」と安易に考えないようにしましょう。この記事では、通信制高校の公立・私立それぞれの特徴や、メリット・デメリットなどについて解説します。

通信制高校は全国に288校!

通信制高校は、大きく分けると公立と私立の2種類。さらに、独立校と併置校の2種類に分けられます。独立校とは、通信制課程を単独で開設している通信制高校のこと。一方で併置校は、全日制や定時制課程と併置している学校を指します。

また、通信制高校には、協力校と呼ばれる学校もあります。協力校とは、自宅から本校までの距離が遠い生徒のために設けられている学校です。生徒は本校に在籍するものの、協力校になっている他の高校の校舎などに通うことで、単位を取得することが可能です。

文部科学省の「学校基本調査(令和5年度)」によると、通信制高校の独立校と併置校の数は全国に288校、協力校は310校あります。

学校種別 設置数
独立校 公立 6校
私立 125校
併置校 公立 72校
私立 85校
協力校 公立 157校
私立 153校

※出典:文部科学省「学校基本調査(令和5年度)」高等学校(通信制)

【公立 通信制高校の特徴】学費の手ごろさが魅力

通信制高校は、もともと、働きながら高卒資格を得るために利用している生徒が多い学校でした。そのため、仕事と両立して学べるように、生徒の学費負担を減らす仕組みになっています。しかし、公立の通信制高校は、生徒へのサポート体制が乏しいため、自分で学ぶ意欲を維持することが大切です。

公立の通信制高校のおもな特徴は、次のとおりです。

  • 学費の手ごろさ
  • きめ細やかな指導やフォローは望めない
  • 勉強は基礎力が問われる
  • 卒業が難しい

それでは、各項目を詳しく解説します。

学費の手ごろさ

公立の通信制高校の最大のメリットは、卒業までに必要な学費(受講料)の安さです。受講料は各都道府県の教育委員会が設定するため地域により異なりますが、1単位あたり175~700円で、レポート(添削指導)やスクーリング(面接指導)を受けられます。

受講料以外にも入学金や教材費などの諸経費が必要ですが、就学支援金制度(※)を活用することで、卒業するまでにかかる学費は数千円から数万円、受講料の高い地域でも十数万円で済む計算になります。単純には比較できませんが、年に十数万円が必要な全日制高校と比べて、学費は3割から1割以下におさえられます。また、私立の通信制高校の学費と比べても10分の1以下で済むため、経済的な負担が軽いのが公立の通信制高校の特徴です。

※『高等学校等就学支援金制度』により、1単位あたり336円の支給を受けられます(世帯の収入により変動)。

きめ細かな指導やフォローは望めない

公立の通信制高校のデメリットとして、教職員数の少なさが挙げられます。公立の通信制高校に配置される教職員数は「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」により、生徒数が600人以下の学校の場合、生徒46.2人に対し教員1人。生徒数が1,201人以上の学校の場合、生徒100人に対し教員1人と定められています。全日制高校は、生徒20人に対し教員1人と定められているので、生徒と教職員数の比率差は、2分の1以下~5分の1になります。

もちろん、通信制高校を運営できる教職員数として定められていますが、規模の大きな学校だと教員の負担は大きく、生徒一人ひとりに対してきめ細かな指導やフォローはあまり期待できません。

勉強は基礎力が問われる

通信制高校は、レポートを学習の柱としています。自宅でコツコツとレポートをまとめるには、「自身で学ぶ力」「自身を管理する力」を必要としますが、すべての生徒が持っているわけではありません。

加えて各教科・科目の指導内容は、生徒に中学校を卒業した基礎学力と理解力があることを前提にしています。中学校時代の不登校等が原因で、学力が中学校の卒業レベルに達していない場合、まず自力で中学卒業レベルまで学力を引き上げないと、最初からレポートについて行けません。すると、提出すべきレポートが溜まり、最終的には単位修得をあきらめることとなる可能性があります。

もちろん、教員も可能な限りフォローや救済措置を取ってくれますが、対応しなくてはならない生徒数が多いため、生徒にとって最良の指導を行うことは難しいでしょう。学力に不安がある場合は、サポート校を活用するのも手段のひとつです。

卒業が難しい

通信制高校は、生徒が3年以上在籍できることや、新入生のほか、途中で多くの転入生と編入生が加わるため、全日制高校のように明確な卒業率は算出できません。参考値ではありますが、公立通信制高校の場合、単純に卒業できた生徒の割合は40%ほど、3年で卒業できた生徒は17~18%となっています。

公立の通信制高校を卒業するには、生徒に学習力や管理力、基礎となる学力などが求められます。コツコツと自宅学習を進めるのが苦手な人や、課題を期限通りに終わらせることが苦手な人は、通信制高校を卒業するのにたいへんな努力が必要です。

公立の通信制高校で卒業する自信がない人は、サポート校への入学も検討するか、私立の通信制高校も検討しましょう。

【私立 通信制高校】充実したサポートが魅力

私立の通信制高校には「学費が高い」という問題があります。ただ、充実したサポート体制が整っています。進学や資格取得を目指すのであれば、私立のサポート体制はとても心強いでしょう。 私立の通信制高校のおもな特徴は、次のとおりです。

それでは、各項目を詳しく解説します。

少子化の中でも学校数が増え続けている

少子化により、全日制高校、定時制高校、公立通信制高校の数は大きく減少しています。しかし、2000年には44校しかなかった私立通信制高校が、2022年には120校まで増加しています。 通信制高校にかかる学費(入学金や受講料などを含む)は、私立と公立で比べると10倍以上になることもあります。その代わり、私立の通信制高校では教職員数や教材、設備などが充実した学習環境と、行き届いたサポート体制を備えています。学費のデメリットを大きく上回る魅力が、私立の通信制高校にはあるのです。

また、文部科学省は就学支援の一環として、私立高校に通う生徒に対し、就学支援金制度を設けています。支給金額は世帯所得や学校種別によって異なりますが、就学支援金制度が利用できれば、経済的負担の軽減につながります。就学支援金制度についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

「就学支援金制度」で通信制高校の授業料が無償に!? 支給額や申請方法を確認しよう

さらに、通信制高校の学費については「通信制高校の学費(授業料)が高い理由・安い理由を詳しく解説!」で詳しく紹介していますので、こちらも合わせて確認してみてください。

自分に合った学び方を選べる

私立の通信制高校は、学校ごとに特色のある運営がされています。特に、生徒をサポートする体制が優れている学校がたくさんあります。例えば、生徒の学力に応じてスクーリングの回数を増やしたり、スクールカウンセラーに相談できたりと、さまざまなサポートがあるようです。

通信制高校は、自宅学習が基本です。そのため、レポートを作成するときに自分で解決できない問題を抱えてしまうと、スクーリングの機会まで解決を先延ばしにしなくてはなりません。公立の通信制高校は、生徒を個別にサポートする体制に限りがあり、もっと学校に通いたい、必要なときに質問したい、というニーズには応えられないのが現状です。学習意欲のある生徒にはもどかしい状況です。

しかし、私立の通信制高校は学校によって体制が異なります。常に授業が行える施設を持ち、教員を配置している通信制高校を選べば、毎日学校へ通うこともできます。通学できる学校やコースを選べば、一般的な高校と同じような学校生活を送ることもできるのです。最近では、オンライン学習を取り入れている学校も増えてきているため、自宅にいながらパソコンやタブレットを活用した学習も可能です。自分にあった学び方、学校との関わり方を自由に選択できるのが私立の通信制高校の強みと言えるでしょう。

小中学校の勉強をやり直せる

小・中学校の勉強を復習できるカリキュラムを用意している通信制高校もあります。小学校や中学校で勉強につまずいてしまっても、卒業に必要な学力を身に付けられるように学力の底上げをしてくれるのです。きめ細かなサポートとフォローにより、確実に単位を修得して卒業を目指すことができます。

生徒の都合にあわせやすいスクーリング

公立の通信制高校では、スクーリングや単位認定試験の日程が決まっていて、生徒は学校のスケジュールにあわせて通学します。私立の通信制高校でも、レポートを提出し添削を受け、スクーリングを行うという基本の流れはまったく同じです。しかし、通信制高校では多くの学校で、スクーリングや単位認定試験の日程が多く用意されているため、生徒の都合で通えるようになっています。

常に教員のいる通信制高校であれば、週に5日間学校に通い、本来なら自宅で作成するレポートを教員の指導のもとで進めることができます。さらに、インターネットを利用して授業を受けたり、相談したりできる学校もあります。

通信制高校によっては、まとめてスクーリングを行い、単位を修得できる集中スクーリングを行っています。集中スクーリングには、合宿施設に泊まり込んで、数日でスクーリングを終えるタイプもあります。スクーリングの頻度を自分の希望にあわせて選択できる自由度も私立の通信制高校の特徴です。

3年で卒業できるサポート体制

通信制高校は単位制で留年がなく、必要な単位数を修得できた時点で卒業となります。自分で学習の計画を管理しなくてはならないので、3年で必要な単位を修得できず、何年も在籍してしまうことがあります。

しかし、私立の通信制高校は生徒へのサポート体制が整っているため、卒業率が高くなっています。中には、100%近い卒業率を誇る学校もあります。3年間で卒業できるように、学校が生徒をサポートしてくれるのです。「同学年の友達と同じタイミングで大学に進学したい」という人は、3年間で卒業できるようにサポートしてくれる私立の通信制高校が安心でしょう。

また、中学校で不登校だったため、きちんと学校に通って卒業できるのか心配な人もいるでしょう。そういった人には、カウンセラーが在籍している通信制高校がおすすめです。カウンセラーのいる通信制高校であれば、カウンセリングで不安を和らげながら、生徒にあった学習方法のアドバイスを受けられるので、再び不登校に陥ることを未然に防げます。

高校の勉強だけでなく専門知識や技術を学べる

高校の卒業後は、大学や専門学校などへの進学、就職など人によって進路はさまざまです。私立の通信制高校には、コンピューターエンジニアや美容、福祉、調理といった専門的な知識や技術を学べるコースを用意している学校があり、高校卒業だけでなく、資格の取得も目指せるので、卒業後の進路の幅が広がります。

ほかにも、プロスポーツ選手を目指すカリキュラムや大学受験に備えて学力の向上を目指すコースがあります。コースの種類は学校によってさまざまなので、興味があれば、各学校の資料を取り寄せて比較してみましょう。

  • 少子化の中でも学校数が増え続けている
  • 自分に合った学び方を選べる
  • 生徒の都合にあわせやすいスクーリング
  • 3年で卒業できるサポート体制
  • 高校の勉強だけでなく専門知識や技術を学べる

公立・私立の通信制高校のメリットとデメリット

同じ通信制高校ですが、公立と私立ではまったく別物と考えても良いでしょう。通信制高校へ進学する場合は、それぞれの違いを理解した上で学校を選ぶことが大切です。どちらにもメリットとデメリットがあるので、比較して検討しましょう。

■公立・私立の通信制高校の比較

  公立 私立
学費
かなり安い
×
公立より高額
サポート体制
不足はないが、きめ細かな対応は望めない

規定以上の教員が所属し、カウンセラーがいる学校もある
サポートの指導や学習のフォロー
定められた指導以上は望めない

インターネットで授業や指導を受けたり、小中学校の復習ができたりする学校もある
スクーリングのしやすさ
日程が限られている

自分にあわせて通学日数を選べる。週5日も可能。集中スクーリングもある
専門的な学習 ×
普通高校の学習範囲のみ

オプションコースを選択することでさまざまな専門的な知識や技術が学べる
卒業のしやすさ
卒業率は40%程度。自分で管理できないと難しい

100%近い卒業率の学校もある

大学進学は公立・私立どちらがしやすい?

文部科学省の「学校基本調査(令和4年度)」によると、2021年(令和3年)度に通信制高校を卒業して進学した生徒のうち、大学に進学した生徒は公立が1,260人で13.9%、私立が15,162人で24.4%でした。また、専修学校に進学した生徒は、公立が1,420人で2.3%、私立が16,684人で26.9%です。

データを見ると、通信制高校からの進学率は大学・専修学校ともに公立よりも私立のほうが高いことがわかります。

※出典:文部科学省「学校基本調査(令和4年度)」状況別卒業者数

まとめ

公立と私立の通信制高校では、おもに学費やサポート体制に違いがあります。確実に3年で卒業を目指すのなら、私立のサポート体制は魅力的です。また、通信制高校というと自宅学習が基本ですが、私立であれば、全日制の高校と同じように学校に通って学ぶというスタイルも選択できます。

一方で、卒業までの時間は気にせず高校卒業の資格を目指すなら、学費の安い公立の通信制高校でじっくりと単位修得をするほうがいいかもしれません。