通信制高校の公立と私立の違い

全日制の高校に公立と私立があるように、通信制高校にも公立と私立があります。通信制高校であれば、公立と私立で基本的な学習内容や、卒業に必要な単位数(74単位以上)に違いはありません。しかし、学費や設備には大きな違いがあるので、「通信制高校なんてどこも同じ」と安易に選ぶべきではありません。

【公立 通信制高校】卒業率の低さが課題

通信制高校は、本来、働きながら高卒資格を得るための学校でした。そのため、仕事と両立して学べるように、生徒の負担を減らすしくみになっています。しかし、公立の通信制高校は、生徒へのサポート体制が乏しいため、自分で学ぶ意欲を維持することが大切です。

学費の手頃さが最大の魅力

公立の通信制高校の最大のメリットは、卒業までに必要な学費(受講料)の安さです。受講料は各都道府県教育委員会が設定するため、地域により異なりますが、1単位あたり175~700円で、レポート(添削指導)やスクーリング(面接指導)を受けられます。

受講料以外にも入学金などの諸経費が必要ですが、就学支援金制度(※)を活用することで、卒業するまでにかかる学費は、数千から数万円、受講料の高い地域でも十数万円で済む計算になります。単純には比較できませんが、年に十数万円が必要な全日制高校と比べて、学費は1/3から1/10以下になります。

私立の通信制高校の学費と比べると1/10以上も安く、経済的な負担が群を抜いて軽いのが公立の通信制高校の特徴です。

※『高等学校等就学支援金制度』により、1単位あたり336円の支給を受けられます(世帯の収入により変動します)。

きめ細かな指導やフォローは望めない

公立の通信制高校のデメリットとして、教職員数の少なさを挙げられます。公立の通信制高校に配置される教職員数は「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」により、生徒数が600人以下の学校の場合、生徒46.2人に対し教員1人。生徒数が1,201人以上の学校の場合、生徒100人に対し教員1人と定められています。全日制高校は、生徒20人に対し教員1人と定められていますから、生徒と教職員数の比率差は、1/2以下~1/5になります。

もちろん、通信制高校を過不足なく運営できる教職員数として定められているのですが、規模の大きな学校だと教員の負担は大きく、生徒一人ひとりに対してきめ細かな指導やフォローはあまり期待できません。

勉強は基礎力が問われる

通信制高校は、レポートを学習の柱としています。自宅でコツコツとレポートをまとめるには、自身で学ぶ力、自身を管理する力を必要とします。しかしすべての生徒が、自身で学ぶ力、自身を管理する力を持っているわけではありません。

加えて各教科・科目の指導内容も、生徒に中学校を卒業した基礎学力と理解力があることを前提にしています。中学校時代の不登校等が原因で、学力が中学校の卒業レベルに達していない場合、まず自力で卒業レベルに運べなければ、最初からレポートについて行けません。すると、提出すべきレポートが溜まり、ついには単位修得をあきらめることとなります。

もちろん教員も可能な限り、フォローや救済措置を取ってくれますが、対応しなくてはならない生徒数が多いため、生徒にとって最良の指導が行えるかは疑問が残ります。

公立通信制高校の卒業は難しい

通信制高校は、生徒が3年以上在籍できることや、新入生のほか、途中で多くの転入生と編入生が加わるため、全日制高校のように明確な卒業率は算出できません。参考値ではありますが、公立通信制高校の場合、単純に卒業できた生徒の割合は40%ほど、3年で卒業できた生徒は17~18%となっています。

公立の通信制高校を卒業するには、生徒に学習力や管理力、基礎となる学力などが求められます。コツコツと自宅学習を進めるのが苦手な人や、課題を期限通りに終わらせることが苦手な人は、通信制高校を卒業するのにとても努力が必要となります。

公立の通信制高校で学ぶ自信がない人は、サポート校への入学も検討するか、私立の通信制高校も検討しましょう。

【私立 通信制高校】充実したサポートが魅力

私立の通信制高校には「学費が高い」という問題があります。しかし、通信制高校の問題点を解消するためのサポート体制を受けられます。進学や資格取得を目指すのであれば、私立のサポート体制は、とても心強いでしょう。

少子化の中でも増え続ける私立通信制高校

少子化により、全日制高校、定時制高校、公立通信制高校は大きく減少しています。そういう状況の中で、私立通信制高校は、2000年の44校から2016年に167校と大きく数を増やしています。

ところが、私立と公立で比べると、通信制高校にかかる学費は、入学金や受講料などを含めると、10倍以上になることもあります。その代り、私立の通信制高校では、教職員数や教材、設備などの充実した学習環境と、行き届いたサポート体制を備えています。学費のデメリットを大きく上回る魅力が、私立の通信制高校にはあるのです。

通信制高校の学費については「通信制高校の学費(授業料)が高い理由・安い理由を詳しく解説!」で詳しく紹介しています。通信制高校にかかる費用について知りたい方はぜひご覧ください。

自分が学びやすい方法を選べるのが魅力

私立の通信制高校は、学校ごとに特色のある運営がされています。特に、生徒をサポートする体制に優れている学校が少なくありません。

通信制高校は、自宅学習が基本です。そのため、レポートを作成するときに自分で解決できない問題を抱えてしまうと、スクーリングの機会まで解決を先延ばしにしなくてはなりません。公立の通信制高校は、生徒を個別にサポートする体制に限りがあり、もっと学校に通いたい、必要なときに質問したい、というニーズには応えられないのが現状です。学習意欲のある生徒にはもどかしい状況です。

しかし、私立の通信制高校は、学校によって体制が異なります。常に授業が行える施設を持ち、教員を配置している通信制高校を選べば、毎日学校へ通うこともできます。通信制高校の基本は自宅学習ですが、学校を選べば、一般的な高校と同じような学校生活を送ることもできるのです。自分にあった学び方、学校との関わり方を自由に選択できるのが私立の通信制高校です。

小中学校の勉強をやり直せる

小中学校の勉強を復習できるカリキュラムを用意している通信制高校もあります。小画工や中学校で勉強についまずいてしまっても、卒業に必要な学力を身に付けられるように、学力の底上げをしてくれるのです。
きめ細かなサポートとフォローにより、確実に単位を修得して、卒業を目指すことができます。

生徒の都合にあわせやすいスクーリング

公立の通信制高校では、スクーリングや単位認定試験の日程が決まっていて、生徒は学校のスケジュールにあわせて通学します。私立の通信制高校でも、レポートを提出・添削を受け、スクーリングを行うという基本の流れはまったく同じです。しかし、多くの学校で、スクーリングや単位認定試験の日程が多く用意されているため、生徒の都合で通えるようになっています。

常に教員のいる通信制高校であれば、週に5日間学校に通い、本来なら自宅で作成するレポートを教員の指導のもとで進めることができます。これにより、より正確に勉強することができます。さらにインターネットを利用して授業を受けたり、相談したりできる学校もあります。

通信制高校校によっては、まとめてスクーリングを行い、単位を修得できる集中スクーリングができる学校もあります。集中スクーリングには、合宿施設に泊まり込んで、数日でスクーリングを終えるタイプもあります。スクーリングの頻度を自分の希望にあわせて選択できる自由さも私立の通信制高校の特徴です。

3年で卒業できるサポート体制

通信制高校は留年がなく、必要な単位を修得できた時点で卒業となります。しかも、自分で学習の計画を管理しなくてはならないので、3年で必要な単位を修得できず、何年も在籍してしまうことがままあります。

しかし、私立の通信制高校は、生徒へのサポート体制が整っているため、卒業率が非常に高くなっています。中には、100%近い卒業率を誇る学校もあります。3年間で卒業できるように、学校が生徒をサポートしてくれるのです。同学年の友達と同じタイミングで大学に進学したい、という人であれば、3年間で卒業できるようにサポートしてくれる私立の通信制高校が安心です。

また、中学校で不登校だったため、ちゃんと学校に通って卒業できるのか心配な人もいるでしょう。そういった人には、カウンセラーを用意している通信制高校がおすすめです。カウンセラーのいる通信制高校であれば、カウンセリングで不安を和らげながら、生徒に沿った学習方法のアドバイスを受けられるので、再び不登校に陥ることを未然に防ぐことができます。しっかりと勉強して、卒業を目指せるようになるでしょう。

高校の勉強だけでなく専門知識や技術を学べる

高校の卒業後は、大学や専門学校などへの進学、就職など人によって進路はさまざまです。私立の通信制高校には、コンピューターエンジニアや美容、福祉、調理といった専門的な知識や技術を学べるコースを用意している学校があります。高校卒業だけでなく、資格の取得も目指せるので、卒業後の進路の幅が広がります。

ほかにも、プロスポーツを目指すカリキュラムがあったり、大学受験に備え、学力の向上を目指すコースがあったりします。コースの種類は学校によってさまざまなので、興味があれば、各学校の資料を取り寄せて比較してみましょう。

公立・私立の通信制高校のメリットとデメリット

同じ通信制高校ですが、公立と私立ではまったく別ものと考えてもいいでしょう。通信制高校へ進学する場合 は、それぞれの違いを理解したうえで学校を選んでください。公立にも私立にもメリットとデメリットがあるので、よく比較して検討しましょう。

■公立・私立の通信制高校の比較

  公立 私立
学費
かなり安い
×
公立より高額
サポート体制
不足はないが、きめ細かな対応は望めない

規定以上の教員が所属し、カウンセラーがいる学校もある
サポートの指導や学習のフォロー
定められた指導以上は望めない

インターネットで授業や指導を受けたり、小中学校の復習ができたりする学校もある
スクーリングのしやすさ
日程が限られている

自分にあわせて通学日数を選べる。週5日も可能。集中スクーリングもある
専門的な学習 ×
普通高校の学習範囲のみ

オプションコースを選択することでさまざまな専門的な知識や技術が学べる
卒業のしやすさ
卒業率は40%程度。自分で管理できないと難しい

100%近い卒業率の学校もある

公立と私立の差で、もっとも大きいのは学費の違いでしょう。しかし、確実に3年で卒業を目指すのなら、私立のサポート体制は魅力です。大学受験の勉強も学校でできるので、予備校や塾にも通うことを考えたら、私立の通信制高校のほうが便利かもしれません。通信制高校というと自宅学習が基本ですが、私立であれば、一般の高校と同じように学校に通って学ぶというスタイルも選択できます。

逆に卒業までの時間は気にせず、単に高校卒業の資格がほしいだけであれば、公立の通信制高校で自分のペースでじっくりと単位修得をするほうがいいかもしれません。